今年はじめ、大山真吾は「最低でも100勝」と周囲に今年の目標を語った。
デビューわずか9ヶ月で重賞制覇(04年「菊水賞」)というシンデレラボーイぶりをみせた真吾が、
ここ5年ほど低調な成績がつづいている。その原因は何なのか。
年間100勝超えを達成し。かつての輝きを取り戻すために
――彼の決意を聞きだすはずだったが、インタビューは思わぬ方向に…。
過去の成績をみると、2007年(119勝)、2008年(127勝)、2009年(108勝)。
この3年間が連続100勝超えでランキング5位を保ち、ひときわ光彩を放っている。
しかし、それ以降は成績にバラつきが目立ち、周囲の期待に応えているとは言い難い。
注目を集めたデビュー当初が鮮烈だっただけに、そして100勝超えが定着するかと期待されていただけに、
残念で仕方がない。真吾自身はそのことについて「ダメな年はすごくリズムが悪いと思います。
うまく説明できないですけど…」と歯切れが悪い。
「レースに関しては、あんまり考えたら裏目に出るんですよね。
レース前はある程度、展開とか考えるんですけど、考えすぎるとうまくいかない。
ゲートが開いてもう無心で走るほうが…よし行こうってときに行ったほうが結果はいいかなと」
100勝超えがつづいた3年間は真吾自身に勢いがあり、自信がみなぎり、いい馬にも巡り会った。
ところが、その後リーディング順位が下がると人気馬の騎乗も減る。
その時期に踏ん張りが利かず波に乗り切れなかったのが、いまさらに惜しまれる。
まわりはもっとやれる騎手だと見ているだけに奮起を促したいところだ。
――ほかの騎手と比べて、自分に足りないものは何だと思う?
「あ~、むずかしいですね…」
――周囲の期待を裏切ってることはどう感じている?
「それは奮起しないといけないなと思ってます」
のれんに腕押し、ちゃんとした答えが返ってこない。ガツンと跳ね返ってくるものがない。
もともと真吾はおっとりした気のいい好青年なのだか、言葉数が少なく感情を表に出すタイプではないので、
会って話すとどうしても物足りなさを感じてしまうのだ。
真吾の乗り鞍はトップ3にヒケをとらないくらい多い(昨年は1071戦)。
が、着外もべらぼうに多い(4着以下が813回)。攻め馬は午前1時~8時半までびっしり20頭をこなす。
調教師に頼まれれば攻め馬にしろ騎乗依頼にしろ断ることはない。
彼の人柄の良さは誰もが認めるところで周囲のウケはまんべんなくいい。
それだけ重宝がられているということになる。
逆にいえばその点が災いしているのかも知れないが、
オープン馬の乗り馬に現在これという馬がいない。アピールする馬がいない、というのが弱みであるのはたしかだ。
当面の目標を訊くと「やっぱり、5番目には食い込みたいです」と言う。
トップ3につぐ下原、吉村、真吾の3人が団子状態で競り合う姿をファンは期待しているのだけれど、
昨年の勝率をみると7.7%(1071戦84勝)と低い。
つねに10%キープの勝率を維持しなければ、5位に食い込むのはむずかしいだろう。
「だから、もっと数字にこだわるべきだ」と同席していた竹之上次男アナがアドバイスを送る。
昨年は5位に入った吉村智洋騎手に勝ち鞍で15差つけられ6位に甘んじた。
「悔しいですし、頑張らないといけないと思いますけど…でも、タイプは全然違うと思うので…」
「真吾は感情を表に出すタイプやない。それはわかるけど、まわりの見方はこうなんや、
ということだけは認識せんといかん。それで変えていけるところは変えていく。
吉村のようなレースぶりをしろと言うんじゃなくて。去年は途中まで吉村と同じぐらいの勝ち鞍だったのが、
最後のほうで引き離されてしまった。そこには何か二人のあいだに差があったということだと思う。
そのへんは考えなアカン」
大山真吾にハッパをかけ、奮起を促したいと竹之上アナは考えたようで、以後、説教口調になっていった。
アピール力が足りない、印象が地味、と真吾の欠点を突く。
「基本的に真吾は先行タイプの競馬が得意。それで1230mの成績がほかの距離と比べていい。
データを調べたら1230mの勝率は11.6%あるんやから。もっと自信を持ったらいい。
ほかの騎手が不得意な分野で目立つというのも大事やと思う。
それが結果的にいい方向に向かっていく可能性もあるんやから。
だから自分にはアピールポイントがあるということをしっかり認識せなアカン」