貴重な経験とウォン
気負いなく、平常心で新しい環境に身を置き、これまで活路を見出してきた。
ただ、今回は初の海外遠征。舞台はソウル競馬場に決まった。
ソウルは釜山に比べ外国人騎手の騎乗チャンスは“狭き門”だと言われている。
言葉の壁やシステム面での不安はないのだろうか。
「韓国語はちょっとずつ勉強しています。向こうで乗った経験のある騎手たちに聞くと、
少しでも喋れたほうがいいって言いますね。
向こうに行って言葉を学ぼうとしない騎手は嫌われるって聞きますし、
韓国語をしゃべる努力は絶対に必要だと思う。何に不安を感じてるかと言えば何もないんです。
不安と言えばすべてが不安(笑)。
行ってみないと分からない部分があるので――騎乗機会がどれぐらい廻って来るのか――
不安要素は多いんですけど、がむしゃらにぶつかっていくだけです。
正直、稼ぎたいですね(笑)。プロでやってる限り収入面は大事ですから。
勝ち鞍は2ケタが目標です。期間延長を申請して通れば、長期の滞在も可能なので、
できれば1年は向こうで頑張りたいですね。これまでの経験から言えることは、
遠征に行ったらプラスになることばかり。マイナス面は絶対にない。
目に見えない何かプラス面が必ずありますから。
これまでいろんな競馬場で乗ってきたというのがぼくの強みかなと思う。
その強みを韓国で出すことができればいい。良い報告ができるよう頑張ってきます」
その後、寺地騎手から報告があり、遠征後2戦目で海外初勝利を挙げたことが伝えられた。
4ヶ月の遠征期間は始まったばかり。早くも1勝を挙げたことで、周りからの見方も変わることでしょう。
これまで各地で培ってきた遠征経験が、いまこそ試されるとき。応援せずにはいられない。
文 大山健輔
写真 斎藤寿一