トーコー軍団にはこれまで挫折、失敗を繰り返した苦い経験がある。トーコーオリンポス、トーコーゼウス、
トーコーペルセウスといった期待をかけて育てた馬たちが思い通りにいかなかった。
一昨年は1995万円の高額馬トーコースバルがデビューすることなく終わった…。
そうした躓きを経験したうえでの今回の躍進なのである。ここにきて、
ようやくトーコー軍団の取り組みが結実したと見る向きが多い。
5頭の市場取引価格を記しておこう。3歳馬のガイア(2415万円。収得賞金1607万円)、
ポセイドン(1260万円。収得賞金1573万円)、ニーケ(1050万円。収得賞金2734万円)。
2歳馬はヴィーナス(3150万円、収得賞金300万円)、ファラオ(1470万円。収得賞金18万円)。
3歳の2頭ポセイドンとニーケは、すでに取引価格を上回る賞金を稼いでいるが、ガイアはまだ到達していない。
「でも、これからの活躍を考えると、もう回収したのと同じでしょ」と吉行師は余裕のコメント。
3頭の馬は園田で着実に勝ちを重ね、遠征でも高額賞金を稼いで戻る。馬主からすれば理想的な展開である。
「園田で3本の指に入ったらそこそこは稼げる。そう考えると、オオエライジンって凄かったなぁ。
あの馬は全国区やったもんね。いまのガイアではまだ全国区にはなりきれない」
3歳馬への期待をたずねると「3歳はある程度結果が出てる。正直なところ、いまは頭にあるのは2歳やね。
これからどこまで成長してくれるか…」
ヴィーナスとファラオ、周囲も俄然この2頭に鋭い視線を向け始めている。
ヴィーナスは牝馬で3000万円超という破格の馬。吉行師はその走りを見て「ガイアとは全然違う」と言う。
「ヴィーナスは(スタートで後手に回ると致命的な)820mで出遅れても勝つ。それぐらいの馬です」。
デビュー2戦2勝がそれを証明しているが、2歳馬2頭ともにデビューまではかなり苦労させられたらしい。
ファラオは育成場からの入厩だっただけに、どれだけ乗りやすいだろうと思われたが、期待は見事に裏切られた。
入厩当初は馬場をスムースに廻ることすらできず周りの失笑を買ったという。
「ヴィーナスもファラオ同様、最初は苦労したんです。やたら暴れるし、人を乗せたら嫌がって背中を丸めるし。
デビュー戦を騎乗した木村が、初めて跨ったときに、この馬、ホントの何もしてない2歳や!とびっくりしてたもん(笑)」
競馬をまったく知らない無垢の馬を競走馬に仕上げるまでは並大抵ではなかったようだ。