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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い
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遠征先でつかむ喜び

違う環境に身を置いたほうがモチベーションが高まる、と寺地騎手は言う。
見かけによらず“安定より波乱を求めるタイプ”のようだ。しかし一方で「自分は社交性に欠ける、
交渉事も苦手だ」とも。初めての土地で新しい環境に馴染むにはかなりの努力と時間が必要だろう。
ましてや、そこには勝負の世界。ライバル一人でも少ないほうがいい、と地元騎手は思っているはず。
そういう世界に単身飛び込んで自分の居場所を確保し、持ち味をアピールしてきたのだから精神面の強さは並ではない。
寺地騎手から感じられるのは「柳の枝に雪折れなし」という芯の強さだ。

「交渉事は苦手なんですけど、ぶつかっていくしかないんです。以前、笠松に行ったときは大変だった。
一週間に7頭ぐらいしか攻め馬がなくて。実質ゼロから始まって、
それで「乗せてください、乗せてください」と声をかけるんですけど、
すぐには先生方の顔も覚えられないし、同じ人に「乗せてください」と言ってイヤな顔されたり…。
まぁ、100回声かけて1回のチャンスをもらえるぐらい。それぐらい厳しかった。
でも、その大変さを乗り越えるだけの魅力とやり甲斐を感じるんです。
新しい人間関係に馴染むまで時間はかかるんですけど、でも、皆さんいい人だったんですよ、
基本的には。ただ勝負事なんで、頼んで「はい、どうぞ」というわけには行かない。やっぱり大変は大変です。
だけど結果を出せば向こうからオファーが来ることも確か。
笠松のときは、最終的にはぼくが一番いい馬に乗ってるんじゃないかと思うぐらいでした。
頑張ればその喜びも味わえるんです。

海外競馬に求めるもの

オーストラリア、韓国といった海外志向が強かっただけに、今回はとくにモチベーションが高い。
寺地誠一が海外競馬に求めるものは何なのか。

「国が違ったら競馬の内容も違うと思うし、新しい競馬に触れてみたい。
そういう体験は将来ぜったい役に立つと思うんです。自分の技量がどこまで通じるかとか、
自分のスキルがよその国で通用するかとか――本来そういう意気込みを持つべきなんでしょうけど――
正直、まだそこまで強気になれない。ひとつ勝つのも遠征では難しいことなんです。
プレッシャーはいつも感じてます。調教師の先生方がぼくのレースを見て「あいつも乗せてみよう」と思ってもらわないと
始まらないんで。馬場でアピールできるよう常にプレッシャーを感じながら乗ってます。
韓国でもその気持ちを忘れずに頑張りたい」