logo


クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い
02夢を目標にかえる男 新子雅司

新子雅司

朝イチから馬場へ、調教頭数15頭

開業2年足らずで100勝超えというのは兵庫県では記録であろう。ジョッキー時代の勝ち鞍は126勝。
騎手引退後の厩務員時代(7年余り)にも担当馬の100勝超えを経験している。
「ジョッキーと厩務員と調教師でそれぞれ100勝を挙げたのはぼくぐらいじゃないですか」と謙虚に笑う。
そうして「どのポジションで勝ったときが一番うれしかった?」と訊くと、
一番うれしかったのは厩務員時代と答えた。馬ともっとも密に接していた時期の勝利の喜びが最上だというところに、
彼の馬への限りない愛情が感じとれて好感が持てる。

新子調教師がほかの調教師より抜きん出ている点のひとつが、自ら調教する頭数がきわめて多いということだ。
普段は午前1時に馬場に入り、午前8時半までたっぷりと。管理馬21頭のうち15頭は彼自身が調教をこなす。
馬を育て鍛えあげる職人としての喜びは、厩務員時代から一貫して変わっていないのである。
「ぼくが思うには、この仕事をいかに面白くできるかと考えたとき、馬に携わっていないと面白くないんですよ、
勝ったときに。ただボーっと見て管理しているだけじゃつまらない。
実際に追い切り、攻め馬をやって、日頃から自分で乗って調教で手応えを感じてね。
いい結果が出たときの喜びがそこで初めて湧いてくる。いまは以前ほど携わることができていないのですが、
まぁスタッフを信頼していますし、だから、いまはみんなで喜びを分かち合えるようになった。
ぼく一人の喜びじゃなくなった分、チームの喜びに変わりました」

角居厩舎で受けた衝撃、究極の調教師とは…

開業前、まだ調教師の卵だった時期に新子はかけがえのない経験をしている。
それは目からウロコが落ちるほどの衝撃だったという。

 2011年12月にJRAの角居厩舎に2週間程度研修に出かけた。
角居勝彦調教師といえば、いつも温和で人への接し方がやさしく、周りから尊敬されている調教師の一人である。
以前から新子は、師の仕事ぶりや競馬観に接したいと思っていた。

「園田にもスゴ腕の厩務員さんがいましたから技術面のことは学んでいたんです。
だから結構、馬をつくる自信はあったんですけど、角居厩舎にいったときに考え方が変わりました。
調教技術であったり馬への接し方であったり、先生の考え方であったり。いろんなことでくつがえされましたね。
いま、調教でよく動き回りますけど、たぶん角居先生の方が動き回っていますからね。
日本のトップの先生がこれだけ動くんだったら新人のぼくはもっと動かないといけない、と胆に銘じました。
あの2週間はぼくにとってかなり衝撃でしたね」

「調教現場には、先生は必ずおられます。ミーティングも欠かさないですし…
それに、例えば小倉開催のときなんかですと、土日に小倉で使ってた(出走がある)としても、
土曜日に小倉から栗東(トレーニングセンター)に戻って、朝調教して馬の具合を見てからそしてまた小倉に戻る。
そういう先生です」

内容の濃い2週間を体験し「調教師とはどういうものか、その究極を見た」と新子は言う。
調教師人生のスタートにあたって、そういう幸運に巡り会えたことが有形無形の財産になっていることは容易に想像できる。



前のページへ


次のページへ

クローズアップbacknumber