５年目の誓い

―――杉浦騎手は最近、騎乗回数が増えてきていますよね

杉浦：そうですね。これまで騎乗依頼のなかった厩舎からも声がかかるようになりました。

田野：調教の営業も積極的にやってますしね。

杉浦：それは努めてやるようにしてます。

―――田野騎手は彼のそういう積極性も見習いたいわけですね？

田野：そうですね。まあ、彼の環境が自厩舎以外にも多く乗れるフリーのような立場である
　　　ということもあるでしょうけど。

※地方競馬の騎手は、必ず厩舎に所属しなくてはならない

杉浦：確かに動きやすい環境に先生がしてくれていますね。

―――それに対して、田野騎手は尾林調教師(元１０００勝騎手)のもとで厳しく育てられているんですよね。
　　　それでも最近は褒められることも多いでしょ？

田野：期待どおりの結果を出したら率直に褒めてもらえます。これまで厳しい指導があったから、
　　　褒められるとなおさらうれしいですね。こういうレースをしたら勝てるというポイントをレースを
終えた直後に細かく指導してくれます。すごく勉強になります。

自信と不安はつねに背中合わせ

―――二人とも今年２月に通算１００勝を超えたわけですが、これまでで印象深いレースと言えばどのレースですか？

杉浦：やっぱり初騎乗初勝利ですね。一生に一度しかできないことですし、いつまでも忘れられないレースです。
　　　ホッカイパルニという馬で、逃げ切ったんです。すごく緊張してゲートに入ったのを覚えています。
　　　先生から逃げたらいいと言われていたので、それだけを考えて…。
　　　ゴールの瞬間は「ああ、勝った…」ぐらいの感じで、なんか訳がわからないままゴールしてました(笑)

―――二人はデビュー日も同じ２０１０年４月１３日。田野騎手の初騎乗はどうでした？

田野：第１レースに乗って５着でした。

―――第６レースで杉浦騎手が先に勝ちました。そのあと第８レースと最終レースで田野騎手が勝ち、
　　　新人として非常に珍しい初騎乗日に２勝するという快挙を成し遂げたんですよね。

田野：最終の１１レースに乗る馬が本命馬だったんで、厩務員さんや関係者の人たちから「これはたぶん勝てるで」と
　　　言われていたんです。だから最終レースまでに経験を積んでレース慣れをしておこうという気持ちで乗ってました。
　　　１レースで逃げたときは、後ろで脚をためていた馬に直線で内をすくわれて勝たれました。

　　　それがあったので８レースでは、逆に自分がすくってやろうと思い、なぜだかうまくいって勝てたんです。
　　　それで最終レースを迎えるときにはだいぶ気分が落ち着いていましたね。

―――ところで、騎手としてやっていけそうだという自信はいつ頃もてるものなのですか？一年を終えたころですか？

杉浦：いや、まだまだ自信なんてとんでもないです。１年目に２１勝を挙げられて、
　　　ちょっと出来すぎかなという思いがありました。それで減量がとれて一度ガタンと成績が落ちてしまって…。
　　　あのときは悩みました。それでいろんな先輩ジョッキーのビデオを見たり、話を聞いたりして、
　　　なんとか気持ちを立て直そうとしました。ぼくは木村さんにいろいろアドバイスしてもらいました。
　　　一緒にビデオをみるときは、細かいところをあれこれ教えてもらっています。

　　　※兵庫県競馬では、通算２０勝で減量の恩恵がなくなる。