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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い
02 インタビュー宮下康一騎手インタビュー

「ゴール前、目の前に光が出ていた―」

  • 宮下康一

西脇一のクセ馬で4112日ぶりの勝利

 その金ナイターがあった10月10日は、宮下騎手にとって忘れられない日となった。
カクテル光線に照らされた最終レース。
彼が乗ったテイケイカトレヤ(8番人気)は4角で果敢に馬群に突っ込む
アグレッシブな競馬でゴール板を1着で駆け抜けた。復帰16戦目、
宮下騎手にとってはじつに4112日ぶりの勝利。
むろん日本競馬史上の最長間隔勝利記録である。このレース、
3000勝に王手をかけていた木村健騎手騎乗のカプチーノは単勝1.1倍。
大本命馬を抑えての見事な勝ちっぷりだった。

 

 「テイケイカトレヤは西脇一のクセ馬で、こっちに来たときから乗ってた馬なので
クセは完璧に分かっていました。
でも、まさか一番手のかかる馬で勝てるとは思ってなかったです(笑)」

 

 11年ぶりの勝利の味はどんなだっただろう。
この日を待ち望んでいた妹の瞳さんからすぐに電話とメールが届いた。
「妹は名古屋時代から親しくしている競馬場の食堂のおばちゃんと見ていて、
勝った瞬間喜んで一緒に泣いたって言ってました」

 

「いやぁ、うれしかったですね。騎手に復帰してホント良かったって思いました。
あの瞬間、目の前に光が出てました。ヴィクトリーロード?
ええ、馬場が光って見えました」

 

 40歳のルーキーは照れくさそうに、そう言って笑顔になった。

 

文:大山健輔
写真:斎藤寿一

 

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