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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い
02坂本和也が描く「明日へのカタチ」

騎手生活を終え、調教師人生への第一歩を踏みだした坂本和也。

坂本 和也
 
 

「らしく、ぶらず」

 

乗り役時代からずっと、これまで多くのことを本から学び吸収してきた。自分を支え、励ましてくれたたくさんの
人生訓が頭のなかやノートに詰まっている。
悩んだとき、挫けそうになったとき、彼はそういう言葉を反芻しながら自らを元気づけ、奮い立たせた。
「いい意味でのマインドコントロール」だと言う。

 

気に入っている言葉をひとつ――。

 

(難が無い人生は無難な人生、難が有る人生は有り難い人生)

 

「いい言葉をどんどん自分のなかに吸収していって……やっぱり大きな人間になりたい。
人間として、幅のある大きな人間に……」

 

「調教師になっても、ぼくは性格は変わらない」と自信を持って言う。
まわりの誰彼なしに気軽に声をかけ、分からないことは素直に訊ねる。変なプライドは持たない。
下のものを見下すような態度はとらない。芸人が自戒をこめて使う「らしく、ぶらず」という言葉が、
坂本和也にも当てはまるようだ。
「調教師らしく、調教師ぶらず」。調教師の自覚を持ちつつ、自らを律して、謙虚に人と接する。
決して偉ぶらない。その姿勢に好感が持てる。

 

 初年度の目標は数字ではない、ときっぱり断言した。

 

「結果なんてあとからついてくるもの。結果を求めるがゆえにおかしくなるんです。
どんなことでもそうだけど、土台さえちゃんとしていたら、少々のことではへこたれない。
この世界、勝つことは絶対条件。それがなかったらダメなんです。決してそれを忘れてる訳じゃない。
しかし、ぼくが考えるのは勝つためにどうすべきかのほうが重要であって、それが数字じゃなくてもいいということなんです。
馬をきちんと管理する、基本と土台。まず、それをしっかり築きたい。
いい馬を入れてもらうというのは結果です。
その結果をだすために一番初めにしないといけないことがぼくのなかにあるということなんです」

 

 一時間の取材中、彼は本音で喋ってくれた。話を聞いていて、彼が目指している厩舎の全体像が
おぼろげに見えてきたように思えた。
坂本和也の素直な人柄、堅実さ、実行力、明るさを持ちつづけながら邁進すれば、おのずと結果は出るだろう。
そう思わせる人間力を彼は持ち合わせている。
これから始まる調教師人生、失敗を恐れずガンガン突き進んでほしいものだ。
仕事は日々細かなことの積み重ね。失敗も含めてそこには無駄はひとつもないのだから。
坂本和也のこれからの調教師人生にたくさんの難が有ることを祈って……。

 

 文:大山健輔
写真:斎藤寿一

 
 
 
 
 
 
 
 
 

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