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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い
山田騎手インタビュー01競馬に対する意識改革が成長のカギ。

5年後のトップ5入りを目指す!

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    山田 雄大プロフィール

2着を減らし、取りこぼしなく勝つ。―

伸び盛りの若手ジョッキーが自盆の成長の度合いを確認するのに「昨年より勝ち鞍をいくつ伸ばせたか」というのが
ひとつの目安になる。
もちろん騎手それぞれ毎年の騎乗回数が異なるのだから一概に言いきれないが、
それでも若手にとっては一つでも勝利がふえることが励みになる。

 

山田雄大騎手は毎年のように「前年より勝ち鞍をふやすこと」を目標に掲げてきた。
これまで順調に目標をクリアしてきたわけではないが、しかしデビュー7年目の今年は少し様相がちがう。
8月20日(取材日)の時点ですでに昨年の勝ち鞍(21勝)を超え、23勝を挙げている。
順調に勝ちを重ねていけば昨年の2倍、40勝超まで伸びそうな気配だ。

 

「いやぁ。デキすぎです」という言葉が返ってくるかと思っていたらそうではなかった。
山田自身、今年は「月3勝を挙げること」を目標にスタートしたのだという。
8月半ばの23勝は、だから想定内の数字なのである。
好調の要因として「今年は2着が少ない」ことを挙げた。

 

「勝てるところはきっちり勝ってるんじゃないかなと思っています。
ここまで2着は15回ほど。で、勝ち鞍が23なんで。取りこぼしもあるんですけど、
でもある程度、取りこぼしなく勝ててるのかなと」

 

2着を減らし、取りこぼしなく勝ちを拾い、成績向上に結びつける。
それを現実のものとするために、ここ数年、彼はさまざまな意識改革に取り組んでいる。
そうしたこれまでと明らかに違う点を探っていくと、
山田雄大の「自分を高めることだけに集中している姿」が見えてきた。

 

「考える競馬」とフィジカル強化。

競馬に対する考え方が変化し始めたのは2、3年前だという。
「それまであまり深く考えてなかったですね。レース内容を見てて、
この馬はこうしたらいいとか…ただ単にこの馬のレースはこうなんやと思って乗ってただけ。
固定概念にとらわれていました。最近はそうじゃなくて、
固定した馬のイメージをそのまま頭に入れずに、自分のなかで咀嚼(そしゃく)して、応用できています。
まわりの人に意見を聞きながら自分の考えと照らし合わせて、
イメージにとらわれない乗り方を自分で考えるようになりました」

 

初めて乗る馬に関しても、その馬の過去のレースを参考にして馬の特徴を自分なりに見極め、
乗り方を研究するようになったという。

 

「ちょっと勝ちだしたなと思えるようになった頃、もうちょっと勉強したら自分は伸びるんじゃないかなと思って。
それ、もっと早く気づけばよかったんですけど…」と大事な作業をおろそかにしていた自分を嗤(わら)う。
この時期を境に、山田は「考える競馬」を身につけはじめたといえる。

 

自分を伸ばすための努力は体力強化にもあらわれている。旧知のスポーツトレーナーの指導のもと、
週2日のペースで筋トレに打ち込み、マンツーマンでコーチングしてもらっている。

 

「片足で爪先立ちのスクワットとか、競馬のレースが大体1分半から2分ぐらいなので、
それを想定して2分間空気椅子に坐ってダンベル4kgを持ち上げる運動を3セットとか。
結構汗だくになります」。休憩をはさまず1時間半、筋持久力を高める運動メニューをこなす。
「木村さんや吉村さんと直線競り合うと、びっちり追ってくるんで最後はバテてしまう。
それに対抗するには瞬発力より持久力を鍛える必要があるんです」。
こうしたフィジカル面の強化が成績に反映していることは間違いない。

 

デルマコナキジジで得た自信。

山田の最近の騎乗を「積極性が表にあらわれ、個性がでてきた」と見る傾向が多い。
「3年程前までは遠慮がちな競馬だった」と自身も認めるところだか、
ここにきてようやくひと皮むけた感がある。派手さもでてきた。

 

「レース中も冷静に前を見られるようになりました。いま誰も動かへんから自分が動いとこって。
人気してない馬でどれだけ見せ場をつくれるか。負けたにせよ、一瞬でも、おっ!と思う場面がつくれたら、
まわりへのアピールになるし、また自分も乗せようと思ってもらえる。
ぼくが乗っている以上、ほかの騎手とちがうものを見せないとダメだと思っています」

 

昨年、自信を得るきっかけになったレースがある。デルマコナキジジという馬に騎乗して3連勝したレース。
それまで木村、川原という実力派が乗って結果がでなかったが「ぼくが乗ったときに1発目で勝って、
それから3連勝しました。ベテランが乗って勝てなくて、ぼくが結果をだせたことはすごい自信になりました。
あの馬での経験がすごく勉強になりましたね」。
それ以後、ネガティヴな考え方になったときは、そのレースを見て自信を取り戻すのだそうだ。

 

デビュー前の実習期間にくるぶしを骨折したこと、デビュー直後の調教中に落馬して鎖骨骨折した経験を話したあとで、
彼はこう言った。「いまは絶対ケガできないです。大事な時期なんで…」。
現在の自分のポジションと高まりつつある期待値を自覚した頼もしい発言だ。

 

ここ2、3年で性格も明るくなり積極性がでてきた。と自身の変化を認める。
「親にも『最近よう喋るなぁ』って言われています(笑)。もともと無口で人見知りで、
ガツガツしないタイプやったんですけど…。以前の自分ならこの仕事に向いてないと思う。
いまの自分やったら向いてる」と、大きな変化に自分でも驚いている様子だった

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