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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い
マスコットホースマコーリー01愛すべきバイプレイヤー、マコーリーの心意気。

園田のマスコットホース、マコーリーが15年間の誘導馬生活を終え、この秋、引退した。年齢30歳、
人間年齢に直すとほぼ100歳の長寿馬。老体にムチ打って頑張った“じいちゃん”に、ファンからの感謝を伝えにいった。

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    誘導馬マコーリー

 

観客の目がマコーリーに釘づけ―

 去る10月16日、重賞レース『姫山菊花賞』の誘導業務がマコーリーに与えられた最後の仕事になった。
いつもどおりの本場馬入場。鞍上は気ごころ知れた誘導員・大當紗也華(おおとうさやか)嬢。
白い馬体が各馬を先導し、レースコースに姿をみせた。普段なら来場者の視線はそれぞれの注目馬に移る。
ところが、この日はちがった。
出走馬そっちのけで観客はマコーリーを追いかけ、カメラを向ける異様な光景に。ほぼマコーリーに釘づけなのだ。

 

「出走馬の紹介をしていても、誰も出走馬を見ていない。
ああいう光景をはじめてみた」と、実況の竹之上アナは証言する。

 

 競走馬ではない、むろんレースで観客を沸かせたこともない一頭の誘導馬、
いわば裏方の黒子的存在のマコーリーに観客が沸き返り、最後の晴れ舞台を記憶にとどめようと奔走する。
こんな光景が競馬界においてかつてあっただろうか。
ファンに愛されつづけ、多くの人を惹きつけてやまない宝石のような存在――
マコーリーの魅力をさぐりに装鞍所を訪ねた。

 
 

持って生まれた愛すべき品性

 引退後は、装鞍所内の馬房で静かに余生をおくっている。
余生をおくっているという表現が適切かどうかはわからないが、縁側で独りのんびり日向ぼっこをしている老人のように
所在なげにみえる。白い馬体につぶらな瞳、チャームポイントのピンク色の鼻が愛くるしい。
近づいて撮影すると、しきりに前肢でもって地面を掻く。食べ物をねだっているのだ。

 

 齢三十を迎えたマコーリーのたたずまいは、眺めているだけで思わず微笑んでしまうようないい姿である。
ここまで人々に愛されるというのは、この馬の持つ「徳」というものであろう。
人徳ならぬ馬徳。持って生まれた愛すべき品性が多くの人を惹きつけるのだと思う。
そのうえ、この馬には天から与えられた長寿が備わっている。

 

「愛称はじいちゃんです。わたしたち、マコーリーとは言わないですね。いつもじいちゃん、じいちゃんと呼んでます」。
誘導員歴3年の大當さんがじいちゃんをいたわるようにやさしく鼻筋を撫でる。

 

「今年の夏はメッチャしんどがってましたね。それでもなんとか頑張ってくれました。
夏場は誘導の回数を減らしてもらって、比較的涼しいナイター競馬のメインに働いてもらいました。
いまは曳き馬の運動量を短くしてます。
食欲は落ちないんですけど、食べても体重は減ってゆく。筋肉が落ちているのは確かです」

 

すでに数年前から衰えが出始めていたことはファンも関係者も感じていた。
しっかりと歩を進めることができず、脚を引きずってしまうため馬場に砂の線ができてしまうこともあった。
そろそろリタイアかなという周囲の空気をはねのけ、現役続行を決断させたのはファンの後押しがあったからだ。

 

装鞍所の管理者である稲葉収(いなばおさむ)さんは「夏場めっきり痩せてきたのを感じてました。
もう限界かなと思ってた矢先、大當から体力が落ちているという話がありましたので、
10月16日の重賞に合わせて、そのタイミングで…」と、引退を決めたいきさつを語る。

 

「レースが終わったあとにリンゴやアメをファンの方から頂戴するんですよ。
マコーリーにって。うれしいですね。引退が決まったときはハガキが届きましてね、
宛名は〈 園田競馬場マコーリー様 〉。それでちゃんと届いたんです。
長いあいだお疲れ様でした――と書かれていました」

 

マコーリーに逢いたい、という問い合わせは全国から来る。
先日は「逢えるときは事前に教えてほしい」と札幌のファンから連絡があったという。
稲葉さんはマコーリーファンのために今後はさまざまなイベントを、例えば人数限定でレース終了後に
装鞍所に招待してマコーリーの姿を見てもらうといったバックヤードツアーを考えている。

 

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