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2013年、初のリーディングタイトルを手にした川原正一騎手(267勝)と柏原誠路調教師(84勝)。KKコンビの活躍は、NARグランプリ全国リーディング(川原騎手)、最優秀勝率調教師(柏原師)というダブル受賞を達成し、新しい時代を予感させる

価値あるメモリアル・イヤーとなった。信頼の絆で結ばれた二人の勝負師

進化するKKコンビが”勝つための競馬”を語り合う。



レース後のディスカッション

―― 兵庫県の初タイトルとNARグランプリ受賞おめでとうございます。

昨年はお二人のめざましい活躍が光りましたが、KKコンビでどれぐらい

勝っているのか、ここ2年間の成績を見ると、一昨年が176戦45勝、

昨年は同じく176戦して72勝を挙げています。勝率なんと40.9%なんですね。

4割以上の勝率というのは、川原さんにすれば勝つことを計算に入れて

乗れるんじゃないですか?

川原
 勝つ計算をしながら競馬なんかできるわけないよ(笑)
柏原
 ぼくら、こういう数字はまったく気にしない。いま初めて知ったよね
川原
 柏原厩舎は、レースに使う馬は100頭なら100頭全部勝ちに行くレースをする。そういうふうに先生が調教してローテーションを組んでるからね。そういう使い方をしてるから、

常に勝ちを求められる乗り方をこっちはしないといけない。

4割勝っても残りの6割は負けてる。その6割のレースを反省材料にして次に生かす調教と乗り方をね…。

柏原
 レース後、二人でよくディスカッションするよね。
川原
 先生とはいつもそうですね。馬の動きはどうだったと聞かれたら「今日はちょっと良くない」とか「今日はいい走りをしてた」とか。「負けてもいい走りをしてた」とかね。ぼくが感じたありのままを…。

柏原
 うん。川原さんの言葉は100%信頼してるね。本当の、正味のところを教えてくれるもん。他の騎手から聞くコメントと川原さんのとはまったく違うよね。この馬は3角でちょっと怖がるとか、

細かく具体的。それを教えてもらったら、ぼくはぼくなりに考えて、あぁ、そうか…それなら今度は

こうやってみようかと。馬が怖がるなら逆に併せ馬をした方がいい。川原さんのひと言で次の対策を練ってみる。

レース後の川原さんのコメントは的確で、貴重なんですよね。

リリーフから先発へ

―― 柏原師は西脇所属で、川原さんは園田。なのにどうして川原さんをいつも選択するのですか?
柏原
 彼はつねに優先的に乗ってくれるから、ありがたい。他の騎手だとドタキャンされたりするからね(笑)。とくに園田の人気ジョッキーはそれぞれ事情もあるしね。

ぼくは西脇だから4番手、5番手評価にどうしてもなってしまう、彼らにとってはね。

川原
 乗り役はそれぞれ優先順位があるからね。ぼくの場合、最初は柏原厩舎のリリーフ役の立場だった。先発は田中学とか木村健とか。ぼくはリリーフで先発騎手が乗れなくなった馬がぼくにまわってきてた。

柏原
 プロ野球で言えば中継ぎ登板だったよね、当初は。
川原
 それでよく勝たせてもらえるようになって、それからですよね。
柏原
 そう、乗るたびに結果を出してくれる。最初の頃は「あれっ!?」と思って。それで何回か乗る機会を増やしていくと「あれっ!?」が「アララ!」になった(笑)。

グングン評価が上がってきたんですよ。

川原
 その頃になると「先発の馬、ぼくにもまわして!」って頼んだよね、冗談っぽく(笑)
柏原
 はじめは先発3人、中継ぎ3人、抑えの切り札1人か2人、そう決めていました。だけど騎手の優先順位があるもんやからなかなか乗ってくれない。で、たまに空いてるときもある。

むかし、ある騎手が落馬して乗れなくなって誰が空いているかとなったとき、

たまたま川原さんが空いていたんですよ。「じゃ、川原さんにお願いします」なったときに、

もう持ったままで楽勝だったんです。あのときのレースはあとでぼくなりに研究しました。

いままでの騎手が乗った時と川原さんが乗ったときの状態とかいろんなことを考えて。

そのときぼくの頭の中で、あぁ、この人やっぱりレベルが違うなと。

他の騎手が一生懸命必死でやってもハナ差、クビ差で勝つのが大変やのに、

この人は平然と何馬身も離して「おいで、おいで」みたいな感じで勝つ。それが技術の差なんですよ。


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