2023 兵庫ユースカップ レポート
2023年03月7日
2023年03月02日(木)
2003年に創設されたが、その後2013~2018年の6年間休止を挟んで、2019年に復活。
過去の優勝馬にはオオエライジンやジンギといった兵庫を代表する名馬達も名を連ね、昨年の兵庫ダービー馬バウチェイサーもこのレースを勝つなど、クラシックへ直結する登竜門レースとして知られる。
2021年に東海・北陸・近畿地区交流戦から高知・佐賀勢も出走可能な西日本地区交流戦と生まれ変わり、同時に「兵庫ユースカップ」とレース名称が変わった。
昨年は出走全馬が地元馬だったが、今年は佐賀勢が初めて1頭参戦し10頭立て。今年は2年ぶりに姫路競馬場が戦いの舞台となった。
まず、注目の的は、門別4勝の実績馬ニシケンボブ。
兵庫の高本友芳厩舎への移籍初戦となった3歳AB特別ではのちに兵庫クイーンセレクションを勝つサラキャサリンに完勝し、続く笠松のゴールドジュニアも好位から抜け出すレースで重賞初制覇。
勝負所で遊ぶところがあり少しもたつく面を見せるが、エンジンがかかれば他馬を凌駕する末脚を見せる。
その豪快な勝ちっぷりからファンの期待を集め、単勝1.2倍という断然の1番人気となった。
もう一頭の重賞ホース、デビューから3連勝で兵庫若駒賞を制したベラジオソノダラブにも注目が集まった。
距離が伸びた1700m戦で連敗したものの、園田ジュニアカップは最後までスマイルミーシャに食い下がる走りを見せての2着。
デビューから手綱を取り続けた田中学騎手に替わって、坂本厩舎所属の竹村達也騎手と初めてタッグを組むことに。
レース当日は朝からずっと3番人気に甘んじていたが、締め切り間際で逆転して最終的には2番人気(単勝5.3倍)だった。
JRAの芝で未勝利戦を勝ち上がったが中央1勝クラスで苦戦、しかし兵庫移籍後に鋭い末脚を繰り出してオープン連勝を飾ったビキニボーイが3番人気(単勝5.6倍)の支持を受けた。
2度にわたる中1週での出走という強行軍が懸念材料ではあったが、田中学騎手が継続騎乗ということもあって重賞馬ベラジオソノダラブと差のない人気を集めた。
あとは佐賀のテクノゴールドが大きく離れた単勝21.2倍の4番人気で続き、オッズの上では、横綱ニシケンボブにベラジオソノダラブとビキニボーイの2大関がどこまでやれるのか・・・そんな戦前の雰囲気だった。
スタートは、ニシケンボブとベラジオソノダラブは五分に出た一方で、ビキニボーイはやや出遅れてダッシュもつかなかった。
1コーナーまでにディオスメッセージがハナを奪うと、ベラジオソノダラブがその外2番手へ。ニシケンボブはやや進みが悪く、出鞭が数発入って中団ポジション。ビキニボーイは馬群から離れた最後方追走となった。
いつも勝負所でエンジンのかかりが遅いニシケンボブは、それを見越して吉村騎手が向正面入口から早目の仕掛け。一気に中団から好位に押し上げると、その動きを気にしていた竹村騎手も残り600m標識でベラジオソノダラブに鞭を入れてゴーサインを出した。3コーナー手前で逃げるディオスメッセージを抜いて先頭に立ったベラジオソノダラブが、最後の直線もそのまま後続の追い上げを封じ切り優勝。
3頭大激戦の2着争いは、道中インをロスなく立ち回ったビキニボーイがハナ差2着に上がり、3着にニシケンボブ。2頭の真ん中で逃げ粘ったディオスメッセージがアタマ差で4着だった。
ベラジオソノダラブが兵庫若駒賞に続く2度目の重賞制覇を果たした。
鞍上の竹村達也騎手は前日(3/1)に40歳の誕生日を迎えたばかり。師匠である坂本和也調教師の「弟子にタイトルを取らせてあげたい」という想いから回ってきたチャンス。師匠とオーナーの期待に、“勝利”の一発回答できっちり応え、30代は取れなかった重賞タイトルを12年ぶりに掴んだ。
レース結果はこちら>>>
ベラジオソノダラブは、昨年の兵庫若駒賞以来となる重賞2勝目。
1400m戦はこれで4戦4勝となった。
<獲得タイトル>
2022 兵庫若駒賞
2023 兵庫ユースカップ
竹村達也騎手は重賞3勝目。
2011年に当時福山競馬場で行われていた若草賞をリジョウクラウンで制して以来、12年ぶりとなる重賞制覇。
地元重賞は2010年の園田プリンセスカップ(リジョウクラウン)以来の勝利。
姫路の重賞は初制覇。
坂本和也厩舎は重賞7勝目。
ベラジオソノダラブで勝利した昨年の兵庫若駒賞以来の重賞制覇。
姫路の重賞は2021年の兵庫ウインターカップをナリタミニスターで制して以来となる2勝目。
◆出走馬
1番 ビキニボーイ 田中学騎手
2番 スマルト 下原理騎手
3番 ディオスメッセージ 広瀬航騎手
4番 ニシケンボブ 吉村智洋騎手
5番 ベラジオソノダラブ 竹村達也騎手
6番 ブエラフェルテ 鴨宮祥行騎手
7番 (佐)テクノゴールド 石川慎将騎手
8番 ヤシロケンチャン 田野豊三騎手
9番 スネークアイズ 杉浦健太騎手
10番 ウィンチップ 川原正一騎手
◆レース
前日は実況席の温度計でも17℃くらいまで上がって春の陽気だったが、前夜の雨を境に気温は低下。レース発走時には7℃まで冷え込んだ。お天気は回復したが、馬場状態「やや重」でスタートを迎えた。
【スタート】 3ディオスメッセージが好スタート。人気の4ニシケンボブと5ベラジオソノダラブは五分のスタート。1ビキニボーイがやや立ち遅れダッシュもつかず最後方に。
【1周目スタンド前】 好発の3ディオスメッセージが逃げ、その外に5ベラジオソノダラブがつけた。さらに外から佐賀の7テクノゴールドが3番手。好位に2スマルト、6ブエラフェルテとなった。
【1~2コーナー】 4ニシケンボブは序盤出鞭も入っていたが中団となり、その外に9スネークアイズ。後方に8ヤシロケンチャンと10ウィンチップで、最後方にポツンと1ビキニボーイ。馬群全長は10馬身ほど。
【向正面入口】 向正面に入る手前から最後方にいた1ビキニボーイが内から上がる構えを見せ、4ニシケンボブにも残り800m過ぎで早くも鞭が飛んだ。人気馬2頭が早くも仕掛ける展開に。
【3コーナー手前】 盛んに後ろを警戒していた5ベラジオソノダラブの竹村騎手だったが、外の4ニシケンボブの上昇を確認するとこちらもスパート、鞭を入れて一気に先頭を奪う。4ニシケンボブが外3番手、1ビキニボーイも中団まで浮上。
【3~4コーナー】 5ベラジオソノダラブが2馬身リードを広げて先頭。2番手に3ディオスメッセージと4ニシケンボブ。1ビキニボーイは内を捌いて4番手へ。
【最後の直線①】 残り200m、馬場の真ん中に持ち出された5ベラジオソノダラブが2馬身のリード。2番手は内中外で3頭が横に広がって並ぶ。
【最後の直線②】 早目先頭の5ベラジオソノダラブが粘る。2番手争いは依然として横一線。逃げ粘る3ディオスメッセージの内から1ビキニボーイ、大外4ニシケンボブ。
【最後の直線③】 5ベラジオソノダラブの脚が止まらない。竹村騎手の12年ぶりの栄冠が目前。
【ゴールイン】 5ベラジオソノダラブが後続に2馬身半差をつけて優勝。兵庫若駒賞に続く重賞2勝目を挙げた。大激戦の2着争いは、最内の1ビキニボーイが制し、外の4ニシケンボブが3着。人気薄ながら良く粘った3ディオスメッセージが4着だった。
ベラジオソノダラブが2番手追走から早目に先頭立って、そのまま押し切り重賞2勝目を挙げた。
デビューから手綱を取り続けた田中学騎手に替わって、今回は竹村達也騎手との初コンビだった。
竹村騎手は、溝橋一秀厩舎所属時代の2010年にリジョウクラウンで園田プリンセスカップを制し、デビュー10年目にして重賞初制覇を果たした。翌年には、同じくリジョウクラウンで福山の若草賞を制し重賞2勝目を挙げたが、その後タイトルとは無縁の30代を過ごした。
この間、松浦正勝厩舎、盛本信春厩舎と所属厩舎を変え、2020年2月から坂本和也厩舎所属となっていた。
それから丸3年、厩舎の一員として努力している姿を見続けていた坂本師は、年末の園田ジュニアカップのあとオーナーに「年明けの一発目はうちの竹村で行かせてください」と打診、「弟子に重賞を取らせたい」という想いを酌んでオーナーサイドも快諾したという。
かくして兵庫ユースカップに臨んだベラジオソノダラブと竹村騎手。
「調教からしっかり乗っているので、レースでは馬の気持ちを崩さずリズムよく走ることを意識していた。スタートだけは集中して、出れば前に行けると思っていた」という竹村騎手の言葉通り、スタートを決めて2番手で流れに乗る理想的な展開に持ち込んだ。
「逃げか2番手で進めて、3コーナーから離していけば勝てる」と坂本師から指示を受けていた竹村騎手は、ニシケンボブの仕掛けのタイミングを気にして、向正面で何度も外を確認。そして、外からライバルが上がってきたタイミングに合わせて鞭を入れてスパートした。
「後ろから来るのは分かっていたので、早目に仕掛けるイメージはしていました。3コーナーで振り切れば、(ゴールまで)押し切れると考えて乗りました」と、きっちり役目を果たした。
前日が40歳誕生日。“不惑”を迎えた竹村騎手は、まさに“迷いのない”騎乗ぶりで12年ぶりとなるタイトルを手にした。
「所属騎手を使って勝ちたい」という師とその決断を信じたオーナーが見つめる中でレースに臨んだ竹村騎手。
勝利騎手インタビューでは「素直に嬉しい気持ちです。オーナーさんと先生にチャンスをいただいたことに感謝しています。プレッシャーもあったんで、ホッとした気持ちが大きいです」と話し、安堵の表情を浮かべていたのが印象的だった。
<竹村達也騎手 優勝インタビュー>
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
一方の坂本師も、「普段は重賞でもそんなに緊張しないけど、今回はドキドキした。1回のチャンスを活かすも殺すも彼次第。もし負けたら色々と言われるかもしれないが、それも覚悟の上で決断した」と、弟子の騎乗を固唾を呑んで見守っていた。
「大きなプレッシャーの中で勝ったら成長に繋がる」という言葉は、竹村騎手にもそして坂本師自身にも言えることなのだろう。
「難の有る人生の方が”有難い”」と、敢えての挑戦をこれからも続けていく。
出世レースの兵庫ユースカップを制したベラジオソノダラブは、今後4/6(木)の菊水賞に直行するプランだという。竹村騎手とのコンビは、まずは今年初戦のみとの戦前より約束があったとのことで、次からは田中学騎手に手綱が戻る予定だ。
竹村騎手は、「距離も問わない。(ポイントは)折り合いだけ。乗りやすい馬で、また活躍すると思うので応援よろしくお願いします」と愛馬の将来性を語った。
兵庫三冠の初戦でもある菊水賞には、園田ジュニアカップで接戦の末に敗れた相手スマイルミーシャが休み明けで出走を予定している。
また、今回は3着に敗れたものの管理する高本師が戦前「千七から千八の方が良いタイプ」と話していたニシケンボブや、中1週ずつの厳しいローテーションで出遅れながら2着に好走したビキニボーイも1700m戦ではさらに上積みがありそうだ。
園田の名を日本全国に轟かせたいとの思いで名づけられた「ベラジオソノダラブ」。姫路で得た2つ目のタイトルを引っさげ、今度は園田でライバルと激突する。
写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと
2023 兵庫ウインターカップ レポート
2023年02月27日
2023年02月23日(木)
元々は2017年に古馬短距離路線の充実を図るため「園田ウインターカップ」として創設された「兵庫ウインターカップ」。
2021年、開催地が姫路に移ったことで今の名称に変更、同時に全国交流重賞となってから今年で3年目を迎えた。
今年は、川崎から2頭、大井から1頭の他地区馬3頭を加えた10頭で行われた。
去年の1、2、3着馬が顔を揃えた今年の一戦。
川崎のインペリシャブルは去年、伏兵の10番人気ながら、道中インで脚を溜め、直線はスムーズに外に出して差し切り勝ちという鴨宮騎手の神騎乗が光った。
今年は金沢の名手吉原寛人騎手に手綱は変わったが、去年東海桜花賞を勝っているコンビだ。
今年は佐賀ゴールドスプリントで3着からの臨戦となり、主役候補の1頭として連覇を狙った。
同じく川崎所属で去年2着のベストマッチョ。10歳にはなったが、笠松グランプリで3着とこちらもここまで衰え知らず。
そして去年3着の地元馬サンロアノークは、前走笠松の白銀争覇で悲願の初タイトルを獲得。今年は堂々重賞ウィナーとして参戦した。
それらに加えて注目を集めたのは3頭目の遠征馬、大井のマックスだった。前走佐賀ゴールドスプリントは、初の遠征、初の重賞挑戦で2着。
めきめきと力をつけてきた上がり馬が初重賞制覇を目論んで姫路にやってきた。
その他には、去年ノンタイトルながらも佐賀サマーチャンピオン(JpnⅢ)で2着と好走、一昨年の園田チャレンジカップ以来の重賞勝ちを狙うコウエイアンカや、
得意の姫路で再び軌道に乗りたいエイシンビッグボス、かつてはオープンまで7連勝した、紅一点パールプレミアなど重賞ウィナーらが顔を揃えた。
去年の上位馬が揃ったが、蓋を開けてみると、それらリピーターをおさえてマックスが単勝2.9倍の1番人気に支持された。
去年の覇者インペリシャブルが2番人気4.0倍、3番人気はサンロアノークで差のない4.3倍。ベストマッチョが6.7倍、コウエイアンカが7.1倍で続き、
南関東馬と地元実績馬が入り混じる混戦模様となった。
枠入りでは、例によってコウエイアンカが若干ゲート入りを嫌ったが、今回は比較的時間をかけずに収まった。好スタートを決めたのはパールプレミアとマックス。
対照的に連覇を狙うインペリシャブルは立ち遅れ、最後方からの競馬に。
好発からすんなりとハナを取ったパールプレミアが主導権握り、エイシンビッグボス、ベストマッチョが続いて先団を形成。スタートを決めたマックスは無理せず好位のインにつける競馬。サンロアノークが好位の外、スタート後手から巻き返してインペリシャブルが後方から4頭目、その内でコウエイアンカが続いて、向正面へ。
久々に自分の形、逃げの手に持ち込めたパールプレミアがマイペースで運び、3角手前までほぼ隊列変わらず、この間、好位で運んでいたサンロアノークは、
早めに吉村騎手が鞭を入れて促すも上昇できない。
一方、後方になったインペリシャブル、コウエイアンカもなかなか前との差を縮められないまま、3、4角中間に入る。
マックスが内から外へと進路を切り替え、2番手に浮上、パールプレミアは徐々にピッチを上げて後続と2馬身差をつけて直線へ。
パールプレミアが1馬身半リードを保ったまま、直線残り150m。外から追いすがるマックス、コウエイアンカが馬群の中からじわじわ追い上げて3番手に浮上、
サンロアノーク、インペリシャブルは後方で伸びあぐねる。
残り50mでも脚色衰えず、粘りを見せるパールプレミア、じわじわ差を詰めるマックス。ゴール手前、この2頭の一騎打ち。最後の最後はマックスに半馬身迫られたが、全国交流の舞台でパールプレミアがまんまと逃げ切ってみせた。鞍上笹田知宏騎手の序盤の判断、絶妙なペース配分が久々の重賞勝利を呼び込んだ。
マックスは2度目の重賞挑戦も惜しい2着。3着は4馬身離れてコウエイアンカ。格好は付けたがいつもの鬼脚は鳴りを潜めた。
4着に8番人気のタガノプレトリアが善戦。新子厩舎の2頭が人気薄ながら1着、4着と改めて層の厚さをみせた。サンロアノークは道中の反応が今ひとつで、
インペリシャブルもスタートの後手が響く形となった。
2021年名古屋の若草賞以来となるパールプレミア2度目の重賞制覇は、単勝7番人気、32.1倍というあっといわせる金星だった。
曇天の空の下、無傷の姫路で輝き放ったパールプレミア。これで姫路は無敗の3勝目。混戦ムードの全国交流は、紅一点の鮮やかな逃走劇で幕を閉じた。
パールプレミアが久々に逃げの形に持ち込んで優勝。
自身にとって2021年名古屋の若草賞以来、2度目の重賞制覇となった。
<獲得タイトル>
2021 若草賞(名古屋)
2023 兵庫ウインターカップ
笹田知宏騎手は重賞11勝目。新春賞をアキュートガールで制したのに続き、今年2勝目。
本レースは園田開催時の2019,2020年にナチュラリーで連覇しており、通算3勝目と相性の良さをみせた。
新子雅司厩舎は重賞55勝目。イグナイターで圧勝した高知の黒潮スプリンターズカップに続いて、今年3度目の重賞勝利となった。
本レースは、2019,2020年にナチュラリーでの連覇以来、笹田騎手との師弟タッグでの3勝目。
新子厩舎は、先日のNARグランプリ表彰式典で年度代表馬イグナイターが表彰されたばかり。花を添える勝利となった。
加えて4着のタガノプレトリアの健闘もあり、「新子厩舎、ここにあり」をまざまざと見せつけた。
レース結果はこちら>>>
◆出走馬
1番 (大)マックス (高)赤岡修次騎手
2番 タガノプレトリア 松木大地騎手
3番 (川)ベストマッチョ 田中学騎手
4番 サンロアノーク 吉村智洋騎手
5番 ネクストムーブ 廣瀬航騎手
6番 パールプレミア 笹田知宏騎手
7番 マイネルサーパス 長尾翼玖騎手
8番 コウエイアンカ 大山真吾騎手
9番 (川)インペリシャブル (金)吉原寛人騎手
10番 エイシンビッグボス 下原理騎手
◆レース
気温は13℃台。この日は当週の3日間連続開催の中では最も暖かい気温の下、競馬が行われていたが、夕方になってからは陽が遮られ、若干冷たい空気の中、
メインの発走時刻を迎えた。馬場状態「やや重」でスタートが切られた。
【スタート】 6パールプレミアと1マックスが好発。8コウエイアンカは五分のスタート、前年の覇者9インペリシャブルは後手を踏み、最後方からの競馬に。
【ホームストレート】 6パールプレミアが好スタートからすんなりハナへ。久々に逃げの形に持ち込む。2番手に10エイシンビッグボス、
3番手に去年2着の3ベストマッチョが続いて、好発を決めた1マックスは無理せず、そのインの4番手に控える形。
その外に4サンロアノーク、2タガノプレトリアが好位から中団を形成。
【1~2コーナー】 後方は、スタート後手から巻き返す9インペリシャブル、並んで内を立ち回る8コウエイアンカ、
置かれ加減で5ネクストムーブと7マイネルサーパスが最後方を追走。隊列は15~16馬身も、先頭集団は一団でペースはさほど上がらない。
【向正面】 リード1馬身半、マイペースで運ぶ6パールプレミア。2番手以下、3ベストマッチョ、10エイシンビッグボス、1マックスが続き、ほぼ隊列変わらず。
徐々にピッチが上がる中、5番手の外につけた4サンロアノークは吉村騎手が早めに鞭を入れて促すも反応鈍く、ポジションを上げられない。
8コウエイアンカ、9インペリシャブルも前との差6,7馬身を縮められないまま3角を迎える。
【3~4コーナー】 鞭が入り、後ろを離しにかかる6パールプレミア。その2馬身後方、2番手3ベストマッチョに1マックスが外に切り替えて並んでくる。
4番手4サンロアノーク、その内を進んで8コウエイアンカがポジションを上げる。
【最後の直線①】 残り200m、1馬身半のリードを保ったまま6パールプレミアが先頭をキープ。外から1マックスが追いすがる。この2頭が抜け出し、一騎打ちムード。
【最後の直線②】 一杯になった3ベストマッチョに代わって8コウエイアンカが3番手に、内から4タガノプレトリアが4番手に上がってくる。
【最後の直線③】 逃げ粘る6パールプレミアに、ジリジリ迫る1マックス。その差がなかなか縮まらない。
【ゴールイン】 ゴール目前、ようやく馬体が合うも時すでに遅し。半馬身のリードを守り、6パールプレミアがまんまと逃げ切り勝利。
1マックスも懸命に追い詰めたが、体半分届かなかった。4馬身差で8コウエイアンカがなんとか3着に入った。
1着パールプレミア、3着コウエイアンカが上がり3F2位の38.0、2着マックスが1位の37.7、4着タガノプレトリアが4位の38.3 という結果に。
後続には厳しい流れとなった。
鞍上の笹田知宏騎手は、好スタートから迷わずハナへ。久々の逃げの手で勝利に導いた。
「本馬場に入る前に、(新子)先生と”ゲート出たら思い切った競馬をしてみます”と伝えて、先生も”気分を害さないように乗ってきてくれ”と言われたんで」と笹田騎手。勝利の要因となった逃げについては、レース前に思い描き、そして新子師とそのプランを共有していたことを明かした。
その思惑通り、好スタートを決めて、すんなり逃げの形に持ち込めた。
「ちょっとここ最近は我慢させる競馬を続けてしまったので馬にはストレスががかかっていたんですけど、今日は思い切った競馬をしてみようと思って。
それが良かったのか、今日は終始気分良く走ってくれてたんで」と新子師の注文通り、気分良く走らせてレースを運んだ。
マイペースのまま先頭をキープも、4コーナーから大井のマックスが迫り、最後は一騎打ちとなった。
「4角からずっと足音が聞こえていたので、なんとか(もってくれ)の気持ちだったんですけどね。
本当に最後までよく頑張ってくれたと思います」と鞍上は愛馬を讃えた。
「この馬はずっとデビューの時からコンビを組んでるんでね、こうやってまた大きいところを勝たせてもらえるってなると、感慨深いものがありますね」。
パールプレミアの全21戦中、実に20戦コンビを組んでいる笹田騎手。残りの1鞍は落馬負傷で戦線離脱を余儀なくされた時期のものだ。
自身にとって”特別な馬”での勝利に、インタビュー中は自然と笑みが溢れた。
笹田騎手にとっては新春賞に続き、早くも今年の重賞2勝目となった。これに関しては「本当に良い時に乗せてもらっているだけなんで」と謙遜していたが、
今年の2勝は陣営の仕上げに加えて、笹田騎手の手腕によるところも大きいだろう。ずっとコンビを組んでいたことが実を結んだ。
「まだまだ使っている回数は少ないのでこうやって成長は見せてくれていますし、大きいところで戦える力は見せてくれているので
これからも皆さんに見てもらえるように頑張りたいですね」と最後は今後への期待と意気込みを語ってくれた笹田騎手。
強力南関東勢を破った自信を胸に、これからもパールプレミアと人馬一体で挑み続ける。
<笹田知宏騎手 優勝インタビュー>
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
メンバー中、唯一の牝馬で見事全国交流重賞を勝利したパールプレミア。去年はオープンまで7連勝を飾った期待馬が大舞台で躍動した。
「前走時よりもちょっと元気が出て、馬はすごくいい状態で作ってもらってたんで」と笹田騎手が振り返ったように、
管理する新子師は全国交流でもしっかり勝負になる状態でレースに送り届けた。
「ナイス騎乗!」と愛弟子を讃えた新子師は4着のタガノプレトリアについても「次につながるレースが出来た」とコメント。
新子厩舎の伏兵は伏兵ではないと改めて層の厚さを世に知らしめた。
一方、敗れた陣営も次走に再起を図る。3着のコウエイアンカについては「直線がいつもの伸びではありませんでした」と大山真吾騎手。
管理する保利良平調教師は「この時期でも走らないことはなかった。次はもっと良くなる」と悲観はしていなかった。
5着に甘んじたサンロアノークも「直線は確実に寄せてくる面も、道中の手応えもいつもと違う感じだった」と吉村騎手が振り返るように本来の走りにはなかった模様。地元実力馬の巻き返しにも期待したい。
パールプレミアの次走はまだ白紙のようだが、去年まで厩舎を支えたステラモナークが去った今、アキュートガール共々、厩舎における看板牝馬を担うことになるのは間違いない。
NARグランプリ2022年度代表馬イグナイターや兵庫最優秀中長距離馬ラッキードリームなどスター揃いの厩舎にあって、
それら男馬に負けない輝きをこれからも放ち続けてもらいたい。
写真:齋藤寿一
文:木村寿伸
2023 白鷺賞 レポート
2023年02月6日
2023年02月02日(木)
姫路競馬の再開に合わせて復活し4年目を迎えた西日本交流の古馬重賞「白鷺賞」。
今年は、佐賀と笠松から2頭ずつ、高知から1頭の他地区馬5頭を加えた12頭で行われた。
2020,2021年の2年連続年度代表馬に輝いたジンギは、昨春に白鷺賞・兵庫大賞典・六甲盃と重賞3勝を挙げたが、秋には兵庫に新加入したラッキードリームに連敗し、年度代表馬の座を明け渡すこととなった。明け7歳となった2023年、王座復権を狙って今年も白鷺賞からの始動。史上初の白鷺賞三連覇をかけて出走した。
そのジンギの前に大きく立ちはだかったのが、佐賀からの遠征馬ヒストリーメイカー。JRAから佐賀に移籍し、地方移籍初戦を姫路で迎えることとなった。
JRA時代は重賞勝利はなかったものの、G32着4回の成績は目を見張るものがあり、JRA最後のレースとなったカノープスSも2着に好走。大きく成績を落とした中での地方転出ではないことに加え、のちに東京大賞典、川崎記念とG1→Jpn1を連勝することになるウシュバテソーロと差のないレースをしていたことも注目を集めた。
ヒストリーメイカーが単勝1.6倍に対しジンギが1.9倍。3番人気のエイシンナセルは大きく離れた21.7倍と、完全に2強ムード。
兵庫重賞で2頭が単勝1倍台というのは、2013年兵庫ジュニアグランプリ(スザク1.8倍で6着、ニシケンモノノフ1.9倍で1着)以来、約9年ぶりのことだった。
園田金盃は大きな出遅れが影響して2着に敗れたジンギだが、本来のジンギらしく今回は好スタートを決めた。すんなりと好位3番手にポジションに収まると、その背後に忍び寄ったのはヒストリーメイカーだった。ジンギの真後ろにつける徹底マークの態勢を取った。
1周目スタンド前でジンギの内に進路を取ったヒストリーメイカーは、向正面入口から先に動き、ジンギを一気に内から抜いて先頭へ。負けじとジンギも動き、残り600m標識で早くも二強が抜け出す展開。中団にいたグリードパルフェ(高知)もこの2頭の後ろから早々と3番手に進出して直線を迎えた。
内のヒストリーメイカーを1馬身差で外から追うジンギ。直線230mを一杯に使った追い比べの中で、徐々にジンギが詰め寄り、最後に並びかけたところがゴール。
残り50mではジンギが差し切る勢いにも見えたが、並ばれたところからヒストリーメイカーももうひと踏ん張りした。アタマ差ジンギの追い上げを振り切ったヒストリーメイカーが地方移籍初戦で悲願の重賞初制覇を果たした。園田金盃に続きこの白鷺賞もジンギは三連覇の夢破れてしまったが、元JRAの強豪馬相手にさすがはジンギという走りを見せてくれた。
グリードパルフェ(高知)もこの2頭に食らいついて3/4馬身差3着なのだから、東京ダービー4着馬、やはり力はある。
2020年に復活した白鷺賞。復活4年目にして他地区の馬が初めて優勝。
ヒストリーメイカーにとって9歳にして嬉しい重賞初制覇。
<獲得タイトル>
2023 白鷺賞
佐賀の石川慎将騎手は重賞21勝目。佐賀以外の他地区での重賞制覇は初めて。
姫路初騎乗で重賞を勝利して見せた。
また、この勝利は地方通算999勝目で1000勝のメモリアルに王手をかける勝利ともなった。
手島勝利厩舎は兵庫重賞2勝目。
2014年の園田FCスプリントをエスワンプリンスで制して以来の勝利だった。
レース結果はこちら>>>
◆出走馬
1番 エイシンアンヴァル 永井孝典騎手
2番 (笠)ナラ 深澤杏花騎手
3番 メイプルブラザー 鴨宮祥行騎手
4番 エイシンナセル 吉村智洋騎手
5番 (佐)ヒストリーメイカー 石川慎将騎手
6番 ユウキラフェール 杉浦健太騎手
7番 (笠)ミスティネイル 松本剛志騎手
8番 エイシンダンシャク 大山龍太郎騎手
9番 ジンギ 田中学騎手
10番 (高)グリードパルフェ 赤岡修次騎手
11番 アワジノサクラ 廣瀬航騎手
12番 (佐) シャンパンクーペ 山田義貴騎手
◆レース
気温は6℃台。大寒波が訪れた前週ほどの寒さではないが、冷たい空気に包まれる中、馬場状態「良」でスタートが切られた。
【スタート】 ほぼ横一線。5ヒストリーメイカーが若干出負け加減見えたが大きな影響はなし。前走大きく出遅れた9ジンギも今回はスタートを決めた。
【1周目向正面】 9ジンギがダッシュ良く先頭に立ちかけるが、内から気合いを付けられた1エイシンアンヴァルが出ていく。さらに3メイプルブラザーも促されて前を目指す。JRA時代は差しに構えるレースが多かった5ヒストリーメイカーは巻き返して好位へ。9ジンギの真後ろのポジションを取った。
【1周目ホームストレート】 1エイシンアンヴァルが後続を4馬身離すやや大逃げの形。3番手に9ジンギで、その内にコースを取った5ヒストリーメイカーが4番手。その外に8エイシンダンシャク。2ナラ、4エイシンナセル、10グリードパルフェが中団。
【2周目1~2コーナー】 後方はバラけて、12シャンパンクーペ、引退レースの6ユウキラフェール、11アワジノサクラ、7ミスティネイルと続いた。馬群全長は16~7馬身で縦長の展開に。
【2周目向正面】 向正面に出て残り800m標識を通過したところから一気に5ヒストリーメイカーが動きを見せ、9ジンギを内から抜いていく。そして加速した勢いそのままに残り600mで先頭に立つ。9ジンギも仕掛けられて1馬身差で追っていく。
【2周目3~4コーナー】 早目先頭の5ヒストリーメイカーについていく9ジンギ。その2馬身後方、10グリードパルフェが3番手に押し上げ、4エイシンナセルと8エイシンダンシャクが4,5番手。
【最後の直線①】 残り200m、各馬深い内を空けて、馬場の真ん中より外での追い比べ。9ジンギが5ヒストリーメイカーに一歩ずつ迫る。
【最後の直線②】 粘る5ヒストリーメイカーにジワジワと詰め寄る9ジンギ。10グリードパルフェも差を詰め、11歳馬4エイシンナセルも追い上げる。
【最後の直線③】 残り50m、9ジンギがぐいっと伸びて5ヒストリメイカーを捉えそうな勢いを見せる。
【最後の直線④】 ゴール直前、9ジンギに並ばれた5ヒストリーメイカーがもうひと伸びを見せる。見ごたえのある激しい追い比べに。
【ゴールイン】佐賀の5ヒストリーメイカーがわずかにアタマ差、9ジンギの追い上げを振り切る形で優勝。佐賀への移籍初戦で重賞初制覇を飾った。兵庫生え抜き9ジンギは三連覇ならず、今年は2着。3着に3/4馬身差まで差を詰めていた高知の10グリードパルフェが入った。
鞍上の石川慎将騎手は姫路競馬場初騎乗だったが、見事ヒストリーメイカーを勝利に導いた。
「結果が出てすごく安心していますし、嬉しいです」と重賞21勝目にして、遠征では自身初となる重賞制覇を喜んだ。
「(今の姫路は)外目を通るレースばかりだったし、(地元の)ジョッキーに訊いてもみんな外が有利ということだったが、それを意識しながら乗りすぎてもいけないな」とレース前は色々と考えたという。
そんな中でも、「やっぱり力を信じて乗ろう」と腹を括り、「ジンギだけを見てレースできれば」という思い描いていた理想の展開に持ち込めたことを勝因に挙げた。
このレースのハイライトは2周目向正面入口での仕掛けだろう。
向正面に入った瞬間にメイプルブラザーの内に進路を取った石川騎手が早くもヒストリーメイカーを促してスピードアップ。ジンギよりも先に仕掛けて、先手を打つ競馬をした。
「もう学さん(田中学騎手)も自分が動くのを待っていた感じだったので、向こうの思うようにしたくなかった。『自分の馬の方が強いんだ』と切り替えて、早目に自分から動こうと思って内を選んで空いているところから行きました」と石川騎手は振り返ったが、仕掛けられた瞬間にしっかり反応してスッと動けたヒストリーメイカーもさすがだった。人馬共にお見事とという他ない。
直線に向いてマッチレースとはなったが、「抜け出してからちょっと遊ぶような感じだったので、何か一頭来てくれたらなと思っていた」という石川騎手。
「ジンギが来てもう一回スイッチ入ってくれたんで、安心してゴールまで追えました。どこまで行っても交わされず、あのままだったかな」とアタマ差という着差以上に余裕もあったとのことだが、「さすがにジンギも強いなと思いました」と名勝負を作り出した好敵手も労った。
<石川慎将騎手 優勝インタビュー>
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
「西日本の大将格であるジンギとやって勝てて自信になりました、佐賀の代表として全国的に有名な馬になれるよう頑張っていきたいです。自分が子供の時からお世話になっている先生と子供の頃から一緒にいた厩務員さんとで、すごく思い入れのある中、重賞に挑みました。1戦目で勝てたことはすごく嬉しかったですし、これからまたこのチームで大きい所を取れるよう頑張りたい」と、様々な想いを背負っての重賞制覇だったとのことだ。
白鷺賞で地方通算999勝目となりメモリアルの1000勝に王手をかけたが、「今週末佐賀でスムーズに1000勝挙げられるよう」との言葉の通り、土曜最初の騎乗でいきなりメモリアルVを決めたのだから有言実行、さすがである。
見事に重賞初制覇を果たしたヒストリーメイカー。管理する手島師は「これほどの馬を預かった以上負けられないと思っていたので、勝ててホッとしました」とコメント。
次走はまだ未定とのことだが、地元佐賀で3/12(日)に行われるはがくれ大賞典が視野に入る。
はがくれ大賞典は、交流戦となって以降9年間で兵庫勢が7勝もしている兵庫勢には相性抜群のレース。
(14,15エーシンクリアー、16サウスウインド、18,19,21,22エイシンニシパ)
兵庫勢に蹂躙されてきた佐賀の看板レース。佐賀勢にとっては忸怩たる思いがあるだろう。
今年は“佐賀の”ヒストリーメイカーが地元の期待を背負って、堂々と兵庫勢を迎え撃つことになる可能性が高い。
過去4勝のエイシンニシパは故障で離脱中の今年、兵庫からどの馬がヒストリーメイカーに挑戦するのかも含めて楽しみにしたい。
そして、2着に敗れたジンギの次走は?
ここ2年同様に名古屋大賞典(Jpn3)を目指すのか、あるいはこれまた三連覇がかかる兵庫大賞典に向け、今年は別のローテーションとなるのか。
ロードバクシンの持つ兵庫生え抜き馬の重賞最多勝記録(12勝)に並ぶのはどの舞台か。
2/9(木)の佐賀記念(Jpn3)に挑戦するラッキードリームとの再戦に向け、引き続き7歳となったジンギの走りにも注目だ。
写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと
2023 兵庫クイーンセレクション レポート
2023年01月30日
2023年01月26日(木)
◆重賞『第24回兵庫クイーンセレクション』(姫路1400m) ◆
3歳牝馬限定の重賞競走「兵庫クイーンセレクション」、姫路競馬場に舞台を移して今年で3年目。
過去にはマンボビーン、トーコーニーケ、トーコーヴィーナス、ステラモナークなど、兵庫で活躍した名牝が制している出世レース。昨年に続き地元馬のみで争われた。
園田ジュニアカップの勝ち馬、スマイルミーシャや同レース3着馬のヒメツルイチモンジは不在。春の兵庫クラシック戦線、またはグランダムジャパン3歳シーズンを目指したい精鋭10頭が顔を揃えた。
1番人気は、単勝2.4倍でサラキャサリン。道営から転入3戦目。転入初戦は逃げ切りで9馬身差の完勝。前走は2着だったが3着馬とは6馬身差をつけていた。昨年6月の道営デビューから9戦続けて3着以内と安定した走りを続けている。
2番人気は、兵庫生え抜き馬のイケノシイチャンで単勝2.6倍。園田プリンセスカップは見せ場たっぷりの4着。雪が舞う中行われた前走のフォーマルハウト賞(佐賀)で初重賞制覇を飾る。高馬厩舎に初タイトルをプレゼントした。
3番人気は、単勝4.4倍のエイシンレゲンダ。園田プリンセスカップ6着後に兵庫へ移籍。転入初戦のオープン特別は逃げ切り勝ち。園田プリンセスカップで敗れたアドワンにリベンジを果たす。続く2歳特別も制し3連勝で重賞初制覇を目指す。
4番人気は、マルグリッドで単勝7.3倍。道営からの移籍初戦は兵庫若駒賞勝ち馬のべラジオソノダラブ、兵庫ジュベナイルカップ勝ち馬のアルザードを破り認定戦勝利。デビューから7戦全て4着以内と堅実な走りが光る。
スタートは最内枠のサラキャサリンがトップスタートを切るとすんなり先手を奪った。隣の馬よりも1馬身以上前に出ると少しずつ馬場の真ん中へ進路を取る。過去2走とも逃げているエイシンレゲンダは2番手。イケノシイチャンは五分の発馬から好位3番手につける。マルグリットは前回に続き発馬で出負けし中団6番手で脚を溜める。
主導権を握ったサラキャサリンは道中で力むこと無く気分良く逃げる。向正面から少しずつ後続との差を広げる。残り600m付近からイケノシイチャン騎乗の吉村智洋騎手が気合を入れながら進出を始める。マルグリットも中団から徐々に前との差を詰めるが、エイシンレゲンダは3角過ぎから後退し脱落。イケノシイチャン、マルグリットの2頭が逃げるサラキャサリンを追撃し直線へ。
自分のペースを守ったサラキャサリンの脚色は最後まで衰えなかった。イケノシイチャンとマルグリットの追い上げを封じ重賞初制覇を飾った。
サラキャサリンの背中を追い掛けた二頭の争いはマルグリットが内から伸びて2着。イケノシイチャンは直線で一杯になり3着だった。
エイシンレゲンダは上位3頭とは離されたが4着は確保した。
サラキャサリンは重賞初挑戦で初制覇。
エスポワールシチー産駒は同レース2勝目。2020年のステラモナーク以来3年ぶりの勝利。
<獲得タイトル>
2023 兵庫クイーンセレクション
松木大地騎手はデビュー9年目で嬉しい重賞初制覇。
2015年4月に高知競馬でデビュー。兵庫移籍5年目で初タイトル獲得。
新井隆太厩舎は、重賞15勝目。
重賞勝利は2021年の兵庫ユースカップ(サラコナン)以来。
兵庫クイーンセレクションは初制覇。
レース結果はこちら>>>(NAR 地方競馬情報サイト)
◆出走馬
1 サラキャサリン 松木大地騎手
2 ジョイブラック 広瀬航騎手
3 アイガットユー 井上幹太騎手
4 フェイスナイン 鴨宮祥行騎手
5 マルグリット 下原理騎手
6 クールフレア 大山真吾騎手
7 イケノシイチャン 吉村智洋騎手
8 ピーチクパーチク 竹村達也騎手
9 エイシンレゲンダ 田中学騎手
10 レスプレンドール 永井孝典騎手
◆レース
10年に一度の大寒波が日本列島を襲った。姫路競馬場は火曜日の夕方から大雪に見舞われた。
水曜日の開催は降雪の影響で中止。金曜日に代替開催が行われることとなったが、開催に向けて関係者による除雪作業、馬場整備が行われ、重賞当日の木曜日はレースを実施することができた。
木曜日も雪が降る時間帯もあったがレースへの影響は無かった。気温は上がらず日中でも3℃前後。
開幕週に続き深い内側を避けながらのレースが続く。内枠に入った馬達は苦戦を強いられていた。
【スタート】 スタートは1サラキャサリンがトップスタート。大きな出遅れはないが5マルグリッドは若干出負けした。
【スタンド前~】好発から徐々に進路を外へと持ち出す1サラキャサリンが先手を奪う。9エイシンレゲンダ、10レスプレンドールも外から前へ進出。7イケノシイチャンも位置を取りに行く。
【ゴール板~1コーナー】5番手付近は大集団に。8ピーチクパーチク、2ジョイブラック。5マルグリッドは馬群の真ん中から少しずつ位置を押し上げる。後方に4フェイスナイン、6クールフレア、3アイガットユーが続く。
【1~2コーナー】 理想通り主導権を握った1サラキャサリン。よどみない流れで自分の展開に持ち込む。ただ後続は離されず先頭から最後方まで10馬身圏内で向正面へ向かっていく。
【向正面】 逃げる1サラキャサリンに対して、7イケノシイチャン騎乗の吉村騎手が鞭で気合いを入れ始める。5マルグリッドも下原騎手が促しながら先行集団との差を詰める。
【3~4コーナー中間】 9エイシンレゲンダの脚色が鈍り、7イケノシイチャンが内から抜き去り2番手に浮上。5マルグリッドも続く。
【4コーナー】 手応えに余裕がある1サラキャサリン。背後に迫る7イケノシイチャン。5マルグリッドはインから9エイシンレゲンダを捕らえ3番手に浮上。9エイシンレゲンダは遅れを取る。
【最後の直線①】 残り200m、逃げる 1サラキャサリンを7イケノシイチャン、5マルグリッドの2頭が追う。前3頭の争いとなる。
【最後の直線②】 気分よく逃げる1サラキャサリンが止まらない。5マルグリッド、7イケノシイチャンも懸命に追うが中々差が詰まらず2着争いまで。
【最後の直線③~ゴールイン】 ゴール手前でまた差を広げる1サラキャサリン。勝利を確信した松木大地騎手が右手で渾身のガッツポーズ。3馬身差の快勝で重賞初制覇を果たした。2着は内から伸びた5マルグリッド。課題を残しながらも賞金上積みに成功した。3着は7イケノシイチャン、早めに逃げ馬を捕まえに行くが最後は力尽きた。
今年の姫路開催は1月17日から始まったが内枠勢が苦しんだ。スタート後は深い内側を通ることになり行き脚がつかない。開幕週を終えた時点で1枠は僅か1勝だった。
松木大地騎手コメント
「枠が1番になったときは笑うしかなかった。逆にやる事は一つしかないと割り切れたので馬を信じて邪魔をしないように気を付けました。今回は良いスタートが切れてスムーズに外へ持ち出せた。馬の持ち味を活かすために3角から早めに動いていく形になりました。直線は長く感じましたね。」
サラキャサリンは重賞初挑戦初制覇。昨年6月にホッカイドウ競馬でデビューしてから10戦連続3着以内。逃げる競馬だけでなく、控える競馬でも崩れていない。
華麗なる逃走劇を披露したサラキャサリンは一息入れて春に備える。
今年の兵庫3歳牝馬は非常に層が厚い。
園田ジュニアカップを制したスマイルミーシャ、3戦2勝のヒメツルイチモンジ。マルグリッド、イケノシイチャンに重賞好走歴のあるカタラもいる。春は兵庫三冠クラシックにグランダムジャパン2023の3歳シーズンもあり、各陣営がどの路線に進むのか?
3歳重賞戦線が今から楽しみだ。
姫路競馬場のウイナーズサークルは今年の開催前にゴール前へ移設された。
リニューアルされて最初のインタビューは松木大地騎手。
第一声は「うれしいです!!」
デビュー9年目での初重賞制覇。
2015年4月に高知競馬でデビュー。兵庫へ移籍して5年目で初タイトル獲得。
普段気持ちを表に出さないタイプの松木騎手。
だが初重賞タイトル獲得となると溢れる気持ちが爆発。
ゴールでは大きなガッツポーズが飛び出した。
雪が残る姫路に緑の大地が躍動した。
「デビューしてからの下積み時代の記憶が1つずつ蘇った。高知の雑賀正光先生に厳しく育てて頂き、兄弟子の永森騎手、岡村騎手の背中を見てきました。兵庫へ移籍してから雑賀伸一郎先生をはじめ、先輩騎手、調教師の先生、厩務員さんに温かく迎えてもらい親切に教えてもらえた結果だと思っています。」
思うように勝てない時期の事を思い出すと目に涙を浮かべた。
<松木大地騎手 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
2018年のヤングジョッキーズシリーズはファイナルラウンド3位。
2020年には年間60勝を挙げ、自身のキャリアハイを更新した。
だが、ここ2年は勝ち鞍が伸び悩んでいた。
苦しい中でも一つ一つ、コツコツ積み上げた努力が結果となって表れた。
「ここ数年父親が体調を崩していた事もあり、どうしてもタイトルを獲りたかった。」
現地に駆け付けていたご両親の前で重賞制覇を成し遂げた。レース後は親子で抱き合って喜んだ。
「高知も勢いがありますけど、園田・姫路競馬も日本一熱いレースをしていると思うので、沢山馬券を買って応援をお願いします。」
競馬に対して真面目に取り組んできた努力が報われた瞬間だった。
一皮むけた松木大地騎手のさらなる飛躍を期待したい。
写真:齋藤寿一
文:鈴木セイヤ