初代王者はマイタイザン~西日本ダービー~
2016年11月4日
雲ひとつない青空の広がった11月2日、新設された重賞『西日本ダービー』(1870m)が行われ、1番人気のマイタイザンが堂々逃げ切り優勝。初代西日本王者に輝いた。同馬は2歳時の『兵庫若駒賞』以来の重賞2勝目。騎乗した杉浦健太騎手は4勝目のタイトル。管理する新井隆太調教師は重賞3勝目で、今年は『兵庫ダービー』に続く2勝目。同一年度に『ダービー』と冠するレースを2勝したことになった。
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◆出走馬
①ネーブルホープ(佐賀) 山口以和騎手 11番人気
②クラルテアンジュ(金沢) 松戸政也騎手 12番人気
③メディタレーニアン(笠松) 藤原幹生騎手 6番人気
④ハイジャ(笠松) 佐藤友則騎手 7番人気
⑤ディアマルコ(高知) 佐原秀泰騎手 2番人気
⑥タケマルビクター(兵庫) 田中学騎手 4番人気
⑦マイタイザン(兵庫) 杉浦健太騎手 1番人気
⑧ハルノフェスタ(高知) 西川敏弘騎手 8番人気
⑨ブライトエンプレス(金沢) 畑中信司騎手 9番人気
⑩アサクサセーラ(兵庫) 木村健騎手 3番人気
⑪イザシュツジン(佐賀) 竹吉徹騎手 10番人気
⑫センターフォワード(名古屋) 岡部誠騎手 4番人気
西日本地区6県交流の重賞が新設された。その幕開けは園田競馬場で、このあと佐賀競馬場→金沢競馬場→高知競馬場→笠松競馬場→名古屋競馬場と開催場を変えていく。出走馬はそれぞれの生え抜き限定とされた。
名古屋競馬所属で、全国レベルの活躍をしている強豪カツゲキキトキトが出走できないことで物議を醸した。笠松でデビューして名古屋に移籍した経緯があったからだ(笠松では2戦)。
その強さを間近で観てみたかったがしかたがない。となると、実力的に抜けている兵庫勢と高知のディアマルコに注目が集まった。
1番人気はマイタイザン。2歳時に『兵庫若駒賞』を制し最優秀2歳馬に輝いた。3歳になり『兵庫ダービー』で1番人気の期待を集めたが、7着に大敗していた。秋は古馬に編入されて、準オープンを2勝して軌道修正がなった。
高知の二冠馬で、園田でも重賞2勝しているディアマルコが2番人気。昨年、17年ぶりに始まった高知の新馬戦。その中からいきなり飛び出した大物牝馬。遠征経験も豊富で、兵庫勢にとっては最大の脅威となる。
31戦の最多キャリアを誇るアサクサセーラが3番人気で続く。使われるごとに強くなり、8月にはJRA交流競走を楽勝している。切れる脚はないが、持ち前のしぶとさで初タイトルを狙う。
4番人気はタケマルビクター。春の『菊水賞』で惜しい2着。休み明けを1度叩かれて上昇ムード。目標通りのローテーションで、大輪を咲かせるか?
逃げ宣言マイタイザンと高知のディアマルコのハナ争いでレースが始まった。
「何がなんでも行こうと思ってました。競り合った分、少し折り合いを欠いてしまいました」とマイタイザンに騎乗した杉浦騎手。一方、ディアマルコの佐原騎手も「行けるなら行こうと思っていましたが、相手が速かった」と控えざるを得なく、4番手まで下げた。
2番手に付けたのはアサクサセーラ。こちらも「行く気で行ったんですけど…」と木村騎手が言ったようにハナを目指したがマイタイザンのテンのスピードに屈して控えた。名古屋のセンターフォワードが3番手で、タケマルビクターは中団でレースを進めた。
少しかかった分、2番手以下に4馬身くらいの差をつけて逃げる格好となったマイタイザンが、やや速い流れを作ってしまう。距離に不安がありながらの出走だけに、スタミナが心配された。
展開的には差し馬には絶好の流れ。アサクサセーラの木村騎手も「いい眺め」と感じていた。ところが、マイタイザンの逃げ脚は一向に衰えず、3番手のセンターフォワードが早々と後退。2番手のアサクサも、先に手応えが怪しくなってしまう。
そこへディアマルコが進出、4コーナーで2番手に上がり、マイタイザンに迫って来る。その後ろにタケマルビクターが続く。
直線は人気を分け合った2頭の争いに。
さすがにいっぱいになったところを、追い上げてきたディアマルコが迫ったが、もうひと踏ん張りしたマイタイザンが1馬身1/4差凌いで逃げ切り。初代の西日本3歳王者に輝いた。
3着にはアサクサセーラが続き、タケマルビクターは4着。1番人気~4番人気の順ですんなり着順が決まる力通りの結果となった。
初代王者となったマイタイザンは1年ぶりの重賞勝ち。人気で敗れた『兵庫ダービー』を想い、一瞬こみ上げるものがあった杉浦騎手。「悔しい想いがあったので、きょう決められて良かったです」と喜びをかみしめた。
控える競馬で威力をそがれていたいくつかのレースとは違い、逃げたときは強さが際立つ。今回も完全に差し馬の流れを作りながら、最後まで並ばせなかったのが何よりの証だ。
意外に個性のある逃げ馬というのは出現しないものだ。20年ほど前に、ノースタイガーという逃げ馬のスターホースがいた。マイタイザンにはそんな個性のあるスターホースになってもらいたい。
外から並ばれると過剰に怯えてしまう気性がある。それなら、並ばれない程のスピードを磨けばいい。追いかけて行く馬が、先につぶれてしまうような逃げっぷり。レースをするたび、その存在感を大きくさせるような成長を期待させる勝利だった。
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男
未勝利馬の重賞制覇!~兵庫若駒賞~
2016年10月29日
10月27日、2歳重賞『兵庫若駒賞』が行われ、デビューから2戦未勝利だったナチュラリーが優勝。初勝利が重賞制覇という、兵庫県競馬にサラブレッドが導入されて以来初の快挙を成し遂げた。管理する新子調教師は、2歳重賞は初制覇で、通算13個目のタイトル獲得。騎乗した下原騎手は同レース7年ぶり3度目の制覇、通算では44勝目の重賞勝ちとなった。
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◆出走馬
①エイシンウルル 竹村達也騎手 4番人気
②ナチュラリー 下原理騎手 3番人気
③キョショウ 大山真吾騎手 7番人気
④キューティハーバー 吉村智洋騎手 2番人気
⑤フォルメンテーラ 永島太郎騎手 11番人気
⑥コパノアーデン 笹田知宏騎手(松浦政宏騎手からの乗り替わり) 8番人気
⑦ラダムドゥラメール 高畑皓一騎手 12番人気
⑧スターレーン 田中学 1番人気
⑨バッチャミ 板野央騎手 10番人気
⑩パールアッシュ 鴨宮祥行騎手 9番人気
⑪センカンドインパクト 杉浦健太騎手 5番人気
⑫エピステーメ 川原正一騎手 6番人気
有力馬のナンネッタ、ブレイヴコールの回避で、一転小粒なメンバー構成となった今年の『兵庫若駒賞』。そんな中、人気を集めたのがホッカイドウ競馬から移籍初戦を快勝した3勝馬のスターレーン。そのとき2着だった1勝馬のキューティハーバーの2頭だった。
3、4、5番人気はいずれも未勝利馬で、手薄なメンバーを物語る人気となった。
人気薄のキョショウとコパノアーデンが競り合い、速い流れを作る。その後ろにナチュラリーが続き、スターレーンがその直後。いつものようにスタートで後手に回ったキューティハーバーは中団から競馬となった。
人気各馬にとっては絶好の流れとなったが、最初に動きを見せたのはナチュラリーだった。
3コーナーのカーブ付近で前の2頭に並びかけると、そのまま先頭立って4コーナーを迎える。
「(先頭に立つのが)ちょっと速かったかなぁ」と鞍上の下原騎手は思ったそうだが、それを直後で見ていたスターレーンの田中騎手は勝機を感じたことだろう。
このときさらに後ろにいたキューティハーバーは、素早く反応できず、一旦置かれてしまう。替わってセカンドインパクトが追い上げて3番手に上がる。
直線に向いてもしぶとく粘るナチュラリー。外から懸命に並びかけるスターレーンだが、なかなか差が詰まらない。
内側からセカンドインパクト詰め寄り、3頭の争いに。
ようやく捉えたかに見えたゴール前では、ナチュラリーがハナ差でスターレーンの追撃を凌いでいた。
さらに半馬身差でセカンドインパクトが3着。キューティハーバーは4着に敗れた。
未勝利馬による重賞制覇は、兵庫県競馬にサラブレッドが導入された1999年以降初めての快挙。アラブ時代を通じても初めての可能性が濃いと思われる。
未勝利馬が優勝した背景には、有力視されていた馬の回避も大きな要因のひとつだが、兵庫県競馬組合の番組体系も大きな要因だ。
2歳戦は賞金でクラスを(一組、二組、三組…)区切ってしまうため、入着賞金だけで一組に編入されることがある。
今回しんがり負けを喫したキョショウは1勝馬。道営でデビューし移籍直前のレースで3着した以外は、ほとんどしんがり負けという成績。それが前走で兵庫の2歳三組(この時点での最下級)に編入され、あっさり勝利を手にしていた。
もし、ナチュラリーが同じレースに同じ未勝利馬として出走していたら、おそらく楽勝していたことだろう。
兵庫県の競馬では、2歳未勝利戦は組まれず、賞金を稼いでいる未勝利馬は、一番強いクラスで闘わざるを得ない。これではなかなか勝つのも難しくなり、未勝利のまま重賞を迎えることも不思議ではなくなる。
強いメンバーと闘っていくうち、徐々に力を付け、遂に勝利を手にする瞬間がやって来る。それが重賞であってもなんら不思議ではない。
必然と言っていい事象で、このままの番組体系なら、また起こりうることだろうと思う。ただ、やっぱり改善してもらいたい。
実際、賞金獲得額で言えば、このレース前の時点で、キョショウは54万5000円(内、道営で4万5000円)で、ナチュラリーは44万円だった。
2歳時はクラス分けなどせず、強い馬が勝ち上がるレース体系を作ってもらいたい。未勝利戦というふるいにかけて、強い馬を抽出して欲しい。今も実力がありながら埋もれている未勝利馬がいるのだから。
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男
二強を抑えてサウスウインド~姫山菊花賞~
2016年10月15日
ナイター照明に彩られる中、交流重賞『姫山菊花賞』が10月14日に行われ、3番人気に支持されたサウスウインドが堂々逃げ切り優勝した。同馬は重賞3勝目だが、これまではいずれも他地区で挙げたもので、地元では嬉しい初重賞となった。管理する山口浩幸調教師は通算4勝目のタイトル。同レースは実に12年ぶりとなる2度目の制覇。騎乗した高知の赤岡騎手の兵庫での重賞勝利は、昨年の園田FCスプリント(高知サクラシャイニー)に続く2勝目となった。
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◆出走馬
①サウスウインド 赤岡修次(高知) 3番人気
②エーシンクリアー 田中学 1番人気
③タガノトリオンフ 吉原寛人(金沢) 5番人気
④ダイナミックグロウ 松浦政宏 8番人気
⑤マークスマン 木村健 6番人気
⑥ヴェリイブライト(名古屋) 加藤総一(名古屋) 9番人気
⑦オウマタイム(船橋) 山口達弥(船橋) 4番人気
⑧ビービーガザリアス(笠松) 竹村達也 11番人気
⑨ウォースピリッツ(笠松) 杉浦健太 12番人気
⑩ディーセントワーク(笠松) 岡部誠(名古屋) 7番人気
⑪メイショウヨウコウ 大山真吾 10番人気
⑫アクロマティック 下原理 2番人気
兵庫県競馬の年代表馬の行方を占う意味で重要な一戦となった今年の『姫山菊花賞』。そこへ、休み明けとは言え、船橋から昨年南関東三冠路線で中心を担ったオウマタイムが加わり、さらに注目度が増した。
1番人気に支持されたのはエーシンクリアー。2歳時から5年連続重賞勝ち。今年は5月の『兵庫大賞典』を圧勝し、前走の金沢『イヌワシ賞』でも快勝して絶好調で当日を迎えた。昨年に続く連覇にも大いに期待がかかる。
一方、このエーシンと今年の対戦成績を3勝2敗とリードするアクロマティックが2番人気。1月3日の『新春賞』に始まり、名古屋の『梅見月杯』を3月に、『名港盃』を7月に制している。決め手は随一で、当然主役候補。
3番人気がサウスウインド。これまで重賞では善戦どまりだったが、今年に入って3月に佐賀で『はがくれ大賞典』を勝利して、重賞初制覇。前走で笠松の『オータムカップ』も制して花開いた。本格化して二強に立ち向かう。
4番人気に船橋のオウマタイム。骨折で休み明けも、力が力だけに克服も十分可能。5番人気にタガノトリオンフ。条件戦で10連勝後、連敗したオープンの壁を打破するため、金沢の吉原騎手が起用された。
全馬素晴らしいスタートとなったレースの幕開け。サウスウインド、エーシンクリアー、タガノトリオンフが絡み合うが、結局最内のサウスウインドがハナを奪った。
タガノが2番手となり、エーシンが3番手のポジション。オウマタイムは5番手でやや折り合いを欠く仕草を見せる。アクロマティックは中団からの競馬となった。
「オウマタイムが逃げると思ってたんですが、行かなかったので、それならエーシンクリアーより前でレースをしようとハナに行きました。1番枠ですから包まれてしまうのも嫌でしたし」と赤岡騎手は、とっさの判断でハナに立ってペースを握って行く。
レースは淀みなく流れて、前は決して有利ではないが、追って行く後続もなし崩しに脚を使わされる展開。
再び向正面に入った残り800m辺りからサウスウインドに迫る各馬だったが、なかなかその差が詰まらない。益々快調のサウスは2番手のタガノトリオンフに1馬身差をつけたまま3コーナーを迎える。この時点でオウマタイムは後退していく…。
懸命にこれを追うエーシンクリアー。ようやく中団からアクロマティックも差を詰めて4番手に進出。
直線に向いてさらにひと伸びを見せるサウスが突き放す。2番手のタガノが苦しくなり後退。変わってエーシンが追う。外に持ち出してアクロマティックも渾身の追い込みを見せる。
それでもサウスウインドの逃げ脚は衰えず、エーシンクリアーに1馬身3/4差をつけて逃げ切った。さらにクビ差でアクロマティックが3着となった。
タガノトリオンフは4着に敗れたが、強豪相手に堂々と正攻法で渡り合っての4着は立派。オウマタイムは早々と失速したように、休み明けで息がもたなかったが、それにしても負けすぎた印象。折り合いを欠いたように、短距離の方が向くタイプなのかも知れない。
「まだホッカイドウ競馬からの疲れが残っている中でのこの走りですから」と赤岡騎手は同馬に4度目の騎乗だけに、さらなる伸びしろを感じ取っていた。※同馬は佐賀で重賞を勝利したあと、ホッカイドウ競馬に移籍して3戦1勝の成績。前走から兵庫の籍に復帰していた。
サウスウインドは今年の重賞3勝目。一躍、年代表馬の有力候補にのし上がった。
サウスウインド、エーシンクリアー、アクロマティックの三強がほぼ横一線に並んだ格好だ。
ただ今年はこの他に、別路線を歩む牝馬のトーコーヴィーナスがいる。牝馬重賞2勝に加えてダートグレードの『レディースプレリュード(JpnⅡ)』2着の実績が大きい。ことあと『兵庫クイーンカップ』で重賞勝ちを増やす可能性も高い。
さらには3歳馬のエイシンニシパも重賞2勝。上記の3強が再び集う『園田金盃』で勝つようなことがあれば、劇的な逆転ホームランとなるかも知れない。
もっと言えば、無敗の2歳馬ナンネッタが、ダートグレードレースや南関東の重賞を制することがあれば、たちまち12年ぶりに2歳馬の代表馬(2004年レッドペガサス以来2度目)となってもおかしくない。
今年の兵庫勢は他地区の重賞を13勝するほど、これまでにない活躍を見せている。それゆえに有力候補が乱立し、それゆえに面白味が増している。
これから迎える重賞路線で代表馬争いがどう決着するのか、各陣営の苦しい思いをよそに、観る側としては楽しみでならない。
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男
ナンネッタってアイドル♪
2016年09月24日
園田競馬場で行われる最初の2歳重賞、牝馬限定『園田プリンセスカップ』は、1番人気のナンネッタが5馬身差の圧勝。デビュー2戦目でタイトルをゲット。鞍上の大山真吾騎手は重賞8勝目。管理する吉行龍穂調教師は重賞29勝目。同レースは一昨年以来2度目の勝利となった。
レース結果はコチラ>>>
◆出走馬
①バッチャミ 松浦政宏騎手 9番人気
②エピステーメ 竹村達也騎手 3番人気
③セカンドインパクト 杉浦健太 7番人気
④ナンネッタ 大山真吾騎手 1番人気
⑤コパノアーデン(北海道) 川原正一騎手 5番人気
⑥イケノアサ(北海道) 永島太郎騎手 4番人気
⑦フィールザファイア(北海道) 下原理騎手 2番人気
⑧シニヨン 田中学騎手 6番人気
⑨フォルメンテーラ 山田雄大騎手 10番人気
⑪アドラーブルヒナノ 鴨宮祥行騎手 11番人気
⑫ビックアマゾネス 吉村智洋騎手 8番人気
直前で笠松のハリアーが除外となり、11頭立てとなった今年の『園田プリンセスカップ』。1番人気に支持されたのはデビューから2戦目のナンネッタ。新馬戦で8馬身差の圧勝を演じたとはいえ、もっとも浅いキャリアで断然の人気は荷が重すぎるようにも思える。それでもこの馬だけは違うと思わせる強さを、関係者一同が感じていた。
ただの8馬身差ではなく、期待される素質馬を打ち負かしての圧勝で、この時点から『園田プリンセスカップ』の大本命と目されていた。
ここ3年で2頭の勝ち馬を輩出している北海道勢は、今年は3頭が出走。デビュー勝ちのあとオープンで4着と好走したフィールザファイアが2番人気。メンバー中、唯一の2勝馬イケノアサが4番人気。新馬戦の1000mで圧勝のスピード上位のコパノアーデンは5番人気に支持された。
地元のエピステーメが3番人気となったが、さしづめ“ナンネッタVS北海道勢”という図式となった。
速い馬が揃い、注目された先行争いはナンネッタがハナを奪い切った。
「(スタートの)出は良くなかったんですけど、二の脚が速かったですね」と大山騎手が振り返るように、ダッシュの違いで先行争いを捌ききった。
2番手に付けたのが川原騎手が騎乗したコパノアーデン。3番手にフィールザファイア。そのあとに地元勢のエピステーメ、セカンドインパクト(7番人気)が続く。
地元の人気馬の逃げに、北海道所属の馬に川原騎手が騎乗してプレッシャーを与えるのは、昨年と同じ形。プレッシャーを受けた当時1番人気だったスマイルプロバイドは敢えなく馬群に呑まれてしまった。
そんな記憶が頭をかすめた3コーナーだったが、失速して行ったのはコパノアーデンの方だった。
すぐさま二の矢が飛んでくる。下原騎手が騎乗したフィールザファイアにとっては絶好の流れとなり、ナンネッタに襲いかかる。
並の馬なら沈んでしまうところを、踏ん張って、さらに突き放してしまうのだから凄い。とてもデビューから2戦目の2歳牝馬とは思えない。
「(コパノアーデンのプレッシャーは)息が入って走ってたんで、しんどくないと思ってました。(フィールザファイアの追撃は)物見をしてたんでまだ余裕があるのかなと…」とぼんやり答える大山騎手。案外、ナンネッタもこんな感じで若馬らしからぬ落ち着きを見せていたのかも…。
直線ではみるみるその差が広がり、最後は5馬身の差をつけて、ナンネッタが楽勝した。
2着にフィールザファイアが粘ったが完敗。3馬身差の3着には地元のセカンドインパクトが食い込み、イケノアサは4着だった。
勝ち時計の1分28秒9は、同レースが重賞に格上げされてからのレースレコード。過去の『兵庫ジュニアグランプリ(JpnⅡ)』と比較しても遜色ない時計だ。
500キロを超える雄大な馬体に、2歳牝馬とは思えぬ大人びたレースぶり。今後にますます期待が持てる。
次の目標は11月3日、JBCが行われる当日の川崎競馬『ローレル賞』となる。全国の視線が集まる中でお披露目だ。
本馬場入場の紹介で「ナンネッタって~ア~イド~ル♪」と三宅アナが唄ったが、遊びや冗談ではなく、本気でそう思っているから。園田競馬関係者一同の気持ちを調べに乗せたのだ。
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男