5年ぶりの遠征馬勝利!
2016年03月5日
園田競馬場で唯一2400mで行われる重賞レース『六甲盃』。今年の覇者は名古屋からの遠征馬ベルライン。遠征馬の勝利は5年ぶり、管理する角田輝也調教師は10年前の制覇以来、同レース2勝目。騎乗した丸野勝虎騎手は、2008年『園田ユーズカップ』以来、園田で2度目の重賞勝ちとなった。
レース結果
ハルイチバンの3連覇なるかどうかが、最大の注目だった。兵庫県競馬では、アラブ時代にさかのぼっても、フェイトスターしか達成していない同一重賞3連覇(95年~97年摂津盃)。サラブレッドでは初の快挙となるが、果たしてその記録は枠順発表直前に夢と消えたのだった。
右前脚に不安が生じ、ハルイチバン回避の報せが六甲盃の2日前、園田競馬第1レースのパドック解説中に伝わった。
3連覇を達成しようが他馬が阻止しようが、ハルイチバンがいてこそ話題になる。残念だがしかたがない。とはいえ、出走メンバーは興味深い顔ぶれとなった。
1番人気に支持されたのは、B1クラスからの挑戦となるステージインパクト。格下ながら、JRAから移籍後6連勝。しかもレースごとに強さを増し、レース内容はオープンでも十分通用すると思わせるものだった。初のオープン挑戦が重賞となったが、ファンは期待を寄せた。
前走でハルイチバンを5馬身以上ちぎったバレーナボスが2番人気。出遅れ癖が解消され、スタートが決まり出した。となれば、武器である鋭い決め脚の確実性が高まる。折り合いにも注文がつかないので、長丁場は持って来い。
リーディングトレーナー新子厩舎とリーディングジョッキー下原騎手とのコンビで臨むタガノプリンス。JRAからの移籍後は準オープンで2着、1着。オープンに昇級した初戦が重賞だが、やはりリーディングコンビの信頼度は絶大で、3番人気に支持された。
笠松からの遠征馬クワイアーソウルが4番人気。管理する尾島調教師は、騎手時代マルヨフェニックスでこのレースを制していて、トレーナーとしても勝利を期待されての出走となった。
5番人気は名古屋のベルライン。JRA時代は短距離馬で、地方に移籍後長い距離にも対応している。ただ、さらなる距離延長がプラスに働くとは思えないでいた。
ほぼ揃ったスタートで幕を開けた六甲盃。バレーナボスは、今回も良いスタートを切った。もう本物だ。
逃げたのは12歳馬のダイナミックグロウ。2番手に木村と初コンビを組むキングブラーボ。3番手の内側にベルライン、その外にステージインパクトが付けた。クワイアーソウルとタガノプリンスがそのあとに続き、バレーナボスは後ろから3、4頭目あたりに取り付いた。
2400mはスローになりがちで、残り800mまで動かない上がり勝負になるケースがほとんど。今回も早めに動く馬は見当たらず、結局残り800mまで静かに進んで行く。
動いて行ったのは中団にいたメイショウヨウコウ。早めに外に出してマクリを決めたかったが、内に閉じ込められていて、思うように動けず勝負どころを迎えていた。そのために前を行く各馬にも余裕があり、なかなか差を詰められないでいる。
バレーナボスは外から動いて行き、3コーナーでは一気に3番手グループまで進出する。
ここで押し出されるように先頭に立ったのがキングブラーボ。そこへ外からステージインパクトが並びかける。さらに外からバレーナボスも接近する形となった。
4コーナーを迎える場面、内で脚を溜めていたベルラインが巧く捌き先頭の外に馬体を併せて行く。
先頭で直線を迎えたキングブラーボが押し切らんとするところを、遂に捉えたベルライン。さらに外から追い上げてきたバレーナボスの追撃ををも振り切り、ベルラインが先頭でゴールを駆け抜け優勝した。
バレーナボスが2着、キングブラーボが3着。笠松のクワイアーソウルが4着、1番人気のステージインパクトは直線、伸びを欠いて5着に敗れた。
勝ったベルラインは6歳牝馬。牝馬がこのレースを制したのは、サラブレッド導入後初めてのこと。2400mの重賞で牝馬が勝つこと自体初めてのこととなった。
この週の園田の馬場は、内が軽い印象があり、好位の内で脚を溜めている馬が直線伸びて来るシーンが多く見られていた。それを知っていたかのような丸野騎手のレース運び。理想の流れで『六甲盃』を制したのだ。
ところが、実はそうではなく「ハナを奪うつもりが、躓いて控える形になってしまいました」と偶然の位置取りだったと丸野騎手は振り返った。
とはいえ、馬群に怯むことなく、折り合いも付き、最後の直線勝負でもスタミナを切らせなかったのだから立派。
管理する角田調教師は、10年前に勝利していて、昨年は2着だった。そして今年もまた勝利と、さすが昨年の全国リーディングトレーナー、しっかりと結果を残して行った。
逆に、2着に負けたバレーナボスは、終始外を回らされるロスが響いた格好。それでも最後はクビ差まで詰めてきたのだから、内容は一番強いと言える。スタートを確実に決められるようになってきたのだから、今後の重賞戦線でも当然主役級の活躍が期待できるだろう。
ステージインパクトは格上挑戦で、初オープンが初重賞。そして2400mも堪えたか。それでも差のない5着ならば悲観することもない。次こそ楽しみになってくる。
年度最終の重賞が終わり、古馬たちは次の狙いに照準を合わせる。そして春の大目標は5月5日の『兵庫大賞典』となる。
ここにはアクロマティック、サウスウインド、エーシンクリアーなども加わわって、ゴールデンウィークシリーズを興奮のうちに締めくくってくれるだろう。
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男
再び3連勝で笑顔の戴冠~園田QS~
2016年01月23日
明け3歳牝馬限定重賞『園田クイーンセレクション』は、1番人気のスマイルプロバイドが優勝。同馬は9戦6勝で重賞初制覇。鞍上の杉浦健太騎手は重賞3勝目。管理する飯田良弘調教師は、これが嬉しい重賞初制覇となった。
レース結果はコチラ。
人気は三分。地元のスマイルプロバイド、ランランラン。そして名古屋からの遠征馬キニナルーイが人気を分け合った。
スマイルプロバイドはデビューから3連勝をいずれも逃げ切り、4戦目の『園田プリンセンスカップ』で一気に重賞制覇を目論んだ。ところが、初めて揉まれる形となり、敢え無く8着に敗れていた。
その後も連敗して臨んだ7戦目、馬群や砂を被ることを克服して勝利。続くレースでも並ばれてからもうひと伸びするしぶとさを発揮して、再びスターダムへのし上がってきた。
ランランランはスマイルが初黒星を喫した『園田プリンセスカップ』の勝ち馬。当時は道営所属で、レース後に兵庫の盛本厩舎に移籍。兵庫の所属になってからは笠松、JRA(2回)と遠征を重ね、地元戦としては今回が初めての園田。
まずはこの2頭の再戦に注目が集まった。
他地区の馬では道営→金沢→佐賀→名古屋と転籍しているキニナルーイ。佐賀から4連勝中と勢いに乗っての参戦。逃げ脚もあって展開のカギを握る存在として、注目も人気も集めた。
好スタートから注文通りハナを奪ったキニナルーイ。スマイルプロバイドは「どこからでも競馬ができるのが強みです」とレース前から語っていた杉浦騎手。愛馬の成長を感じながら、無理なく2番手に取り付く。
ランランランも、本来は逃げ馬だが、近走は控えるレースができるようになり、多少行きたがる仕草を見せるながらも3番手を進む。人気上位馬が先団を形成する流れとなった。
いいペースに持ち込んだキニナルーイに、ピッタリ寄り添って追走するスマイルプロバイド。ペース自体は緩いが、マークはキツいという流れ。その後ろにランランランが追走するので、当然キニナルーイの末脚に響いてくる。
結果的には2番手でありながら、スマイルプロバイドがレースの主導権を握っていたと言える。
4コーナーでは外からランランランが良い手応えで迫って来て、内でキニナルーイが粘る中、ちょうど間に挟まれる格好となったスマイルプロバイド。
デビュー当初なら怯んで馬群に沈んでいたに違いない。ところがモデルチェンジした同馬にとっては、勝負根性を発揮するまさに格好の場面になっただけ。
並ばれてからビュンとひと伸びを見せる。内のキニナルーイはたまらず後退。外のランランランも伸びあぐねている。
そこへ、道中5番手を追走してヒタヒタと詰めって来た笠松のベッロポモドーロが脚を伸ばす。
ひと際目立つ末脚を使ってグングン迫って来る。ピッタリ並んでの追い比べなら負けないところだが、やや離れた位置から追い上げて来られると厳しくなる。
それでも「離れてたんですけど、いつも通り根性を見せてくれました」と杉浦騎手は愛馬を讃えます。
最後はアタマ差。ベッロポモドーロの追撃を振り切って勝利を収めた。
3着にはランランラン。控えて後半の脚に懸ける競馬では、それほど切れ味を発揮できないタイプかも知れない。
もう一度スピードを十分に活かす逃げの戦法も見てみたい。
4着になったキニナルーイは全く落ち度のない乗り方。この結果は現状の力の差と思える。
勝ったスマイルプロバイドは3連勝のあと3連敗。そして復活の3連勝で重賞初制覇。逃げ切り3連勝と華やかすぎるデビュー。その後に敗戦を繰り返すと、早熟という烙印が押されがち。
そのような空気が競馬関係者に漂ったが、6戦目で4着に敗れたときに、キラリと光る復活への息吹が感じられた。
その後の3連勝で遂に重賞タイトルを手にすることになる。
素質馬の復活はしばしば見る光景だが、こうも簡単に弱点を克服して、再び連勝街道を突き進む馬は稀有だ。
鞍上の杉浦騎手の成長もしかり。昨年の9月に同馬とともに初重賞制覇に挑んだときは、プレッシャーに押しつぶされ、道中もリズムがバラバラだった。
しかし、1ヶ月後にマイタイザンで『兵庫若駒賞』を、年末の『園田ジュニアカップ』ではノブタイザンで重賞制覇して、すっかり大舞台でも動じない精神力を養った。
『園田プリンセスカップ』の敗戦から、このコンビがわずか4ヶ月の間にこれほどまでに成長を遂げることを誰が想像できただろうか。
「何回勝っても重賞は嬉しいので、もっと勝ちたいと思います」とはつらつと応える杉浦騎手。
その言やよし!
伸び行く若者の屈託のない言葉に、園田競馬の明るい未来しか思い浮かばない。
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男
平成27年優秀競走馬が決定!
2016年01月9日
平成27年優秀馬選考会が行われ、選考委員15名の投票でそれぞれの最優秀馬を選出。その中から代表馬を決定しました。
選考結果は次の通りです。
※昨年の年齢で表記しています。
◆年代表馬 最優秀4歳以上馬 最優秀牝馬
エーシンサルサ(牝5・橋本忠男厩舎)
戦績:9戦【4-1-2-2】
重賞:兵庫サマークイーン賞 1着
兵庫クイーンカップ 1着
園田金盃 1着
◆最優秀2歳馬
マイタイザン(牡2・新井隆太厩舎)
戦績:6戦【4-0-0-2】
重賞:兵庫若駒賞 1着
◆最優秀3歳馬
インディウム(牡3・田中範雄厩舎)
戦績:7戦【5-0-0-2】
重賞:菊水賞 1着
兵庫ダービー 1着
◇特別優秀馬
タガノジンガロ(牡8・新子雅司厩舎)
戦績:8戦【4-1-1-2】
重賞:兵庫大賞典 1着
サマーカップ(笠松) 1着
サマーチャンピオン(佐賀・JpnⅢ) 2着
黒船賞(高知・JpnⅢ) 3着
トーコーヴィーナス(牝3・吉行龍穂厩舎)
戦績:9戦【4-2-1-2】
重賞:園田クイーンセレクション 1着
梅桜賞(名古屋) 1着
東海クイーンカップ(名古屋) 1着
のじぎく賞 1着
『GRANDAME-JAPAN2015』3歳シーズン総合優勝
◇特別敢闘馬
いずれも10連勝を達成した馬が受賞
エーシンプレジャー(牡5・橋本忠男厩舎)
ヒャクマンバリキ(牡4・柏原誠路厩舎)
トランヴェール(牡4・長南和宏厩舎)
※今年からは、10連勝達成した馬が出た場合、10連勝表彰として達成時に表彰されることに変更となりました。
表彰式は1月21日(木)、園田競馬場西ウイナーズサークルでで行われます。
大混戦の新春賞はアクロマティック!
2016年01月5日
本命不在で大混戦となった『新春賞』。勝ったのは昨年のリーディングトレーナー新子調教師が送り込んだアクロマティックだった。同馬は初重賞制覇。新子師、下原騎手ともに同レース初優勝。通算では新子師が8勝目、下原騎手が39勝目の重賞勝ちとなった。
レース結果はコチラ。
『園田金盃』の勝ち馬エーシンサルサ、明け4歳馬のチャンピオン、トーコーヴィーナスが出走していれば、ともに大きな印をもらっていたはず。ところがエーシンサルサは1月14日の『白銀争覇』(笠松・1400m)に向かうことになり回避。トーコーヴィーナスはクラス編成上の障壁で出走にこぎつけられなかった(前日のB1に出走して快勝)。
一転、大混戦の様相となり、どの馬にもチャンスが巡って来た。
人気は割れに割れた。
※単勝最終オッズ
1番人気 エーシンクリアー 4.2倍
2番人気 サウスウインド 4.4倍
3番人気 ホクセツサンデー 6.5倍
4番人気 オーケストラピット 6.9倍
5番人気 アクロマティック 8.2倍
6番人気 バレーナボス 9.1倍
7番人気 トーコーニーケ 15.5倍
8番人気 アランロド 18.2倍
9番人気 メイショウヨウコウ 24.0倍
10番人気 ニシノイーグル 24.6倍
11番人気 トリニティチャーチ 30.5倍
12番人気 ダイナミックグロウ 33.5倍
単勝ひと桁台が実に6頭。最低人気でも33.5倍となるオッズは珍しい。3連単の1番人気は、単勝上位順の組み合わせで48.1倍。14番人気から万馬券になるという好配必至のオッズ。
どんなペースになるのか?どの馬が逃げるのか?注目されたスタートは、ややバラついた。
オーケストラピットが前走のように立ち後れてしまう。バレーナボスも後手に回るが、これはいつものこと。ニシノイーグルも例によって後方となった。
ダッシュを利かせて先行争いを演じたのはダイナミックグロウ、サウスウインド、エーシンクリアーの3頭。結局ダイナミックグロウが抜け出してハナを奪う。
エーシンクリアーが2番手になったところでトーコーニーケが外から並びかけて3番手。サウスウインドは4番に控えた。
ホクセツサンデーが5番手。真後ろにアクロマティックが付けて脚をためる。中団外目をメイショウヨウコウとトリニティチャーチ。
末脚に賭ける後方勢はアランロド、バレーナボス、オーケストラピットが並ぶ。その後ろにニシノイーグルがいつものように最後方から。
淀みなくレースは流れて行く。
58kgという斤量を意識してか、向正面でやや手を動かして先頭に並びかけるエーシンクリアーの大山騎手。それを見ながら大柿騎手のサウスウインドは一旦呼吸を置いて前の動向を伺う。
その間にラチ沿いを押して上がって行ったのがアクロマティックの下原騎手。オープン連勝は1400mで、距離が心配される中での早めの進出で勝負に出る。
逃げていたダイナミックグロウは苦しくなって後退。エーシンクリアーが先頭に立とうとするところへサウスウインドが良い手応えで並びかけ先頭を奪って行く。そこへ接近するアクロマティック。勝負はこの3頭に絞られた。
先頭に立ったサウスウインドにしぶとく食い下がるエーシンクリアー。その外に持ち出したアクロマティックがグングン迫る。
あれだけ早めの進出にもかかわらず、連勝したときのような末脚を発揮するアクロマティック。
先に抜け出した2頭は、切れ味よりも平均的に脚を使うタイプ。決め手を要求されると苦しい。
その決め手の差で、外からアクロマティックが差し切って、大混戦に終止符を打った。
しぶとさ比べになった2着争いは、58kgながら力を示したエーシンクリアー。サウスウインドは一旦先頭の場面がありながら3着に敗れた。
大混戦だったが、終わってみればこの3頭が4着以下に6馬身もの差を付けていた。ハンデも上位の3頭で、順当な結果と言える。ただ、3連単の配当は2万3620円もつく好配当となった。馬券は難しい…。
4着には4年連続連対を狙ったニシノイーグルが食い込んだ。5着にバレーナボス。復活が期待されたホクセツサンデーは11着と大敗した。
さすがリーディングトレーナーの手腕。距離不安も一掃する見事な勝利。「1700mでもいいレースをしていましたし、内ラチ沿いを回れば走る馬ですし心配はしてませんでしたね」と飄々と語る新子調教師には、既に風格さえ感じられた。
それにしても下原騎手も上手く乗った。ロスなく内ラチ沿いを忍者のごとく前へと押し上げた。そして外に持ち出し鮮やかに決めてみせた。
新子師は、昨年掲げていたリーディングの座を有言実行で掴み獲った。
最初は意識していなかった年間100勝という偉業も、こだわりを見せて掴みに行った。
結果、12月は15勝するという大攻勢に繋がった。
新年を迎えて行われた大観衆が見守る『新春賞』は、伏兵視される出走馬で鮮やかな勝利を挙げ、その名を知らしめた。
アクロマティックとは、何にも染まらないという意味だそうだが、いまの園田は新子師の思い描く通りに染め上げられている。
園田競馬を大きく変える、ニューリーダーが誕生したのではないか。
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男