2022 のじぎく賞 レポート
2022年05月16日
2022年05月12日(木)
◆3歳牝馬重賞『第60回のじぎく賞』(園田1700m) ◆
グランダムジャパン3歳シーズンの第6戦として行われた3歳牝馬の全国交流重賞「のじぎく賞」。
今年は、川崎、浦和、金沢からの遠征馬3頭を加えた12頭で争われた。
毎年高配当が飛び出しているこのレース。
今年も混戦ムードが漂っていた中、1番人気はニフティスマイル。(単勝3.4倍)
勝利こそ新馬戦の1勝だけだが、兵庫クイーンセレクションでハナ差の2着と力を見せた。競馬上手な馬で、前走ル・プランタン賞では、距離延長、長距離輸送といったハードルをも乗り超えて2着。タイトルまであと一歩のところまで来ている。
2番人気は、単勝3.7倍のケウ(川崎)。
牝馬ながら580kg前後というまさに“稀有”な馬体の持ち主で、前走ル・プランタン賞で重賞初制覇。デビューから全レースコンビを組んできた岡村健司騎手が羽田盃の騎乗と重なり、今回は伊藤裕人騎手が初めて手綱を取った。
3番人気は、単勝3.9倍のスターオブケリー(浦和)。
門別デビューで2勝した後に浦和に移籍。移籍後は、勝利こそないものの安定感あるレースぶり。前走の東海クイーンカップで8番人気ながら逃げて2着にしぶとく粘っており、展開の鍵を握る一頭と目された。
兵庫クイーンセレクションで無類の根性を発揮してハナ差逃げ切ったニネンビーグミが単勝6.2倍の4番人気。
前走JRA交流の広峰山特別を勝ったセトノダイヤモンドが単勝16.1倍の5番人気で続いた。
雨の降る中、重馬場で行われたレースは、スタートでケウが半馬身出遅れて後方から。3頭の逃げ争いとなったが、内枠を利してデータアナリシスがハナを奪い、ニネンビーグミが2番手、スターオブケリーは外3番手となった。ニフティスマイルは中団6番手で脚を溜める中、スタートで最後方だったケウが1周目スタンド前で外から動いて好位の後ろまでポジションを上げた。
落ち着いていたペースが一気に上がったのは2周目向正面。バックストレートに出たところで早くもニネンビーグミがピッチを上げてデータアナリシスの外から先頭に立つ勢いを見せると、後続各馬も遅れまいと一斉に追い出しを開始。
南関東からの遠征馬で人気上位のスターオブケリーとケウが3~4角でついていけなくなる中、馬群を捌きながらニフティスマイルが追い上げていく。
残り300m地点まで追い出されることなく手応え抜群だったニネンビーグミが、最後の直線で迫るニフティスマイルを危なげなく抑えて勝利。兵庫クイーンセレクションに続く重賞2勝目を挙げた。
ニフティスマイルはこれで3度目の重賞2着とまたしても悔し涙を呑んだ。
3着には差しに構えた11番人気のラッキーライズが末脚を伸ばして飛び込んだ。人気薄ながら、園田プリンセスカップ4着、兵庫クイーンセレクション3着に続き、大舞台での好走が光った。ケウは8着、スターオブケリーは11着と奮わなかった。
上位3頭は4番人気→1番人気→11番人気の決着で、三連単は60,910円。
奇しくも、兵庫クイーンセレクションと1~3着馬は全く同じ結果となった。
ニネンビーグミは、兵庫クイーンセレクションの逃げ切り勝利に続く重賞2勝目。
今回は2番手追走から抜け出してタイトルを手にした。
田中学騎手は、重賞73勝目(今年7勝目)。
のじぎく賞は昨年に続く連覇で通算4勝目。
前週のかきつばた記念(Jpn3)、兵庫大賞典に続いて重賞騎乗機会3連勝ともなった。
松平幸秀厩舎は、重賞3勝目(今年2勝目)。
のじぎく賞は初制覇。
レース結果はこちら>>>(NAR 地方競馬情報サイト)
◆出走馬
1 セトノダイヤモンド(徳本) 長谷部駿弥騎手 5番人気
2 データアナリシス (高馬) 広瀬航騎手 8番人気
3 (川)ケウ (林) 伊藤裕人騎手 2番人気
4 ウーニャ (盛本) 下原理騎手 7番人気
5 ニフティスマイル (田中一) 吉村智洋騎手 1番人気
6 ダイヤモンドダスト (雑賀) 松木大地騎手 9番人気
7 ピロコギガマックス (南) 杉浦健太騎手 10番人気
8 ニネンビーグミ (松平) 田中学騎手 4番人気
9 (浦)スターオブケリー (繁田) 酒井忍騎手 3番人気
10 ラッキーライズ (栗林) 鴨宮祥行騎手 11番人気
11 (金)カスターニャルーナ (井樋) 松戸政也騎手 12番人気
12 トウケイラオフェン(永島) 笹田知宏騎手 6番人気
◆レース
朝から雨が降り続き、一つ前の第10Rから馬場状態は重馬場へと変更。雨の中でレースはスタートした。
【スタート】 ほぼ横一線の飛び出しの中、3ケウが半馬身の出負けからダッシュつかず最後方に。二の脚が速かった8ニネンビーグミが一旦クビほど前に出たが、内から主張した2データアナリシスが3コーナー入口でハナを奪った。
【1周目3コーナー】 9スターオブケリーも逃げ争いに加わろうとしたが3番手外まで。
前3頭から2馬身開いて、中団は1セトノダイヤモンド、6 ダイヤモンドダスト、5ニフティスマイル、12トウケイラオフェンの4頭が一団。
後方にかけて、7ピロコギガマックス、10ラッキーライズ、4ウーニャ、11カスターニャルーナと続き、3ケウは最後方。
【1周目スタンド前】 序盤は縦長だった馬群は、ペースが落ちて10馬身圏内に固まる。最後方にいた3ケウが外を通ってポジションを上げていく。
【2コーナー~向正面】 3ケウが6番手まで上がって向正面へ。2番手追走の8ニネンビーグミの田中騎手が残り800m標識を合図に軽く仕掛けてペースアップを促すと、後ろの騎手達も遅れまいと追い出しを開始。一気にペースが上がった。
【向正面~3コーナー】 8ニネンビーグミが楽な手応えで2データアナリシスの外に併せていく。6ダイヤモンドダストが3番手に上がり、その後ろから5ニフティスマイルが馬群を縫うように前との差を詰めていく。
【3~4コーナー】 8ニネンビーグミは、後ろが来るのを待てる抜群の手応え。3番手まで上がった5ニフティスマイルは先頭との差を1馬身半に縮め、内から外に持ち出していく。3ケウと9スターオブケリーはここで脱落し、代わって7ピロコギガマックスと10ラッキーライズが上昇開始。
【4コーナー~最後の直線】 直線に入る直前でようやく追い出された8ニネンビーグミが突き放しにかかる。その2馬身後ろに5ニフティスマイル。内ラチ沿いでは2データアナリシスが脚色一杯に。
【最後の直線①】残り100m。粘る8ニネンビーグミに、追う5ニフティスマイル。2馬身差がなかなか詰まらない。その後ろで10ラッキーライズもいい末脚で3番手に上がってくる。
【最後の直線②】兵庫クイーンセレクションでハナ差のマッチレースを演じた2頭だが、今日は並ばせない8ニネンビーグミ。
【ゴールイン】3/4馬身差で8ニネンビーグミが優勝のゴールイン。兵庫クイーンセレクションに続く重賞2勝目を挙げた。ニフティスマイルは3度目の重賞2着。またしてもニネンビーグミの後塵を拝する形となった。3着はさらに3馬身差で10ラッキーライズ。
牝馬特有のカリカリした面があって、体重がなかなか増えないというのが課題としてあったニネンビーグミ。昨秋からレースの度に体重が減少していたため、兵庫クイーンセレクション優勝後は休養に入って馬体回復に努めた。
しかし、復帰戦となった前走菊水賞でも馬体減少は止まらず6着。逃げには持ち込んだが、強い馬に早目に競りかけて来られる展開で厳しかった。
のじぎく賞に向けて、この中間はまず馬体回復に重点を置いての調整。馬体が少し戻った分、菊水賞の時にはできなかった追い切りをかけてしっかりと馬に負荷をかけることができた。追い切りで負荷をかけたことで、当日の馬体重は前走からわずか+1kgという微増にとどまったが、馬の仕上がりが違っていた。
「長目からしっかり追い切りができたので、それが最後の踏ん張りになったかなと思います」と松平師も追い切りの効果を認めた。
<松平幸秀調教師 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
「根性もあって、競馬が上手で、毎回課題をクリアしてくれる賢い馬。今回は道悪もクリアしてくれました」と目を細め、「(田中)ジョッキーが、無駄に脚を使うことなく乗って、この馬の良いところを全部出してくれた」と、名手の手綱捌きにも賛辞を送った。
また、「スタッフが付きっきりで頑張ってくれた」と、体重コントロールが簡単ではないニネンビーグミのコンディション調整に心を砕きながらも、良い状態に仕上げた厩舎スタッフに対しての労いの言葉も印象的で、厩舎一丸となって勝ち得た“のじぎくの称号”だった。
次走は兵庫ダービーで3歳馬の頂点を狙う。
「ダービーは強い牡馬もいるのでそんなに甘くはない」と松平師は謙遜したが、初重賞制覇を兵庫ダービーでやってのけたその手腕に期待したい。
“ニネンビーグミ松平先生”の挑戦はいざ兵庫ダービーへ。本番まで4週間。しっかり食べて体を作り、牡馬との戦いに備える。
写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと
2022 兵庫大賞典 レポート
2022年05月8日
2022年05月05日(木祝)
◆古馬重賞『第58回兵庫大賞典』(園田1870m) ◆
春の古馬王者決定戦「兵庫大賞典」。
2020,2021年と2年連続年度代表馬に輝いた絶対王者ジンギが、連覇を狙って今年も出走。さらに同じ橋本厩舎の好敵手エイシンニシパも後輩へのリベンジを狙って参戦。園田の看板馬2頭に、園田で4戦4勝圧勝続きのシェダルが加わり、三強ムード漂う頂上決戦となった。
圧倒的1番人気は、単勝1.5倍のジンギ。
2020年10月の姫山菊花賞で同厩の先輩エイシンニシパに敗れて以降、地元馬には一度も負けていない兵庫の絶対王者。
園田金盃を優勝した後、白鷺賞→名古屋大賞典と昨年と全く同じローテーションで兵庫大賞典に臨む。
前走名古屋大賞典はJRA馬相手に果敢に逃げを打ち、向正面で自分から後続を突き放しにかかる積極果敢な競馬で3着。昨年より着順を1つ上げ、内容も非常に濃い一戦だった。
2番人気は、単勝3.2倍のシェダル。
元JRA4勝のオープン馬で、昨秋兵庫に転入をすると園田のレースでは4戦4勝と平場戦では力の違いを見せつけた。58kgという重い斤量を背負ってもパフォーマンスを落とすことなく楽勝続き。満を持してジンギ、エイシンニシパに挑戦する。
3番人気は、単勝5.0倍のエイシンニシパ。
今年9歳となったが、新春賞→はがくれ大賞典と重賞連勝。積み上げた重賞タイトルは15勝にのぼり、兵庫県競馬の最多重賞勝利記録をさらに伸ばして、今年も昨年と同じローテーションで春の大一番に臨む。
僚馬ジンギには一昨年の姫山菊花賞で勝って以来、直接対決5連敗中だが、先輩の意地を見せたい一戦だ。
新春賞でエイシンニシパにクビ差まで迫ったエイシンガネーシャが単勝27.5倍の4番人気、JRAから移籍2戦目のフーズサイドが単勝58.2倍の5番人気で続き、6番人気以降は単勝100倍越えだった。
レースは、ほぼ横一線の飛び出し。スタート直後は一旦エイシンダンシャクが逃げるかに見えたが、外から被せるようにジンギが逃げていく。そして、シェダルもすぐにジンギの背後に忍び寄り、ピタッと2番手で横綱の一挙手一投足を見逃すまいとする態勢を序盤で築いた。エイシンニシパは5番手の内でレースを進めたが、1周目のスタンド前で開いた内からエイシンダンシャクを抜いて3番手に上がり、三強がお互いを意識しながら1周目のゴール板を過ぎた。
2周目向正面に入るところで早くもジンギがスパート。田中騎手のアクションを受けてスピードを上げたが、シェダルは楽に付いていく。3番手のエイシンニシパ以下は遅れ始めて、世紀のマッチレースが始まった。
王座防衛か、新王者誕生か。2頭の馬体が合ったまま直線へ。無類の根性を持つジンギに対し、相手の長所を出せまいと敢えて少し馬体を離しながら追ったシェダル。2頭による極上の追い比べは、クビ差、クビ差、クビ差・・・最後の最後までその僅差を守り抜いたジンギが優勝のゴール。
絶対王者の座は譲らないとばかりに、ジンギは底力で挑戦者を撥ね退けた。
最後までジンギを苦しめたシェダルが敢闘の2着。
6馬身後ろで繰り広げられた3着争いもずっと2頭で追い比べを演じての接戦。ここはハナ差でエイシンニシパが意地を見せた。惜しくもエンシンダンシャクが4着。
上位3頭は1番人気→2番人気→3番人気の決着で、三連単は480円。
ジンギは、兵庫大賞典を連覇し、重賞10勝目。
兵庫大賞典連覇はロードバクシン(2005,06)以来16年ぶり。
生涯獲得賞金を1億8653万2000円とし、2億円超えも見えてきた。
<獲得タイトル>
2019 園田ユースカップ
菊水賞
2020 摂津盃
園田金盃
2021 白鷺賞
兵庫大賞典
姫山菊花賞
園田金盃
2022 白鷺賞
兵庫大賞典
田中学騎手は、重賞72勝目(今年6勝目)。
兵庫大賞典は通算5勝目で、連覇は下原理騎手(2013,14)以来。
橋本忠明厩舎は、重賞39勝目(今年4勝目)。
兵庫大賞典は通算4勝目で、連覇は曾和直榮厩舎(2005,06)以来。
レース結果はこちら>>>(NAR 地方競馬情報サイト)
◆出走馬
1 リリーマイスター(石橋) 長谷部駿弥騎手 12番人気
2 エイシンガネーシャ (森沢) 広瀬航騎手 4番人気
3 スパイスマジック (田中一) 井上幹太騎手 9番人気
4 サトノグラン (山口浩) 杉浦健太騎手 10番人気
5 メイプルブラザー (大山) 鴨宮祥行騎手 8番人気
6 エイシンニシパ(橋本) 吉村智洋騎手 3番人気
7 エイシンダンシャク (坂本) 大山龍太郎騎手 7番人気
8 ジンギ (橋本) 田中学騎手 1番人気
9 アワジノサクラ (北野) 大柿一真騎手 6番人気
10 シェダル (長南) 下原理騎手 2番人気
11 フラワーストリーム (田中一) 田野豊三騎手 11番人気
12 フーズサイド (北野) 大山真吾騎手 5番人気
◆レース
よく晴れて、気温は25℃超えの夏日。パサパサに乾いた良馬場で、春の最強馬決定戦は行われた。
【スタート】 いつものように8ジンギは目隠しされてのゲート入り。少し時間がかかったため、場内がざわつくシーンもあったが、ゲートが開くとトップスタートを決めた。他も五分のスタートで、大きな出遅れはなかった。
【1周目向正面】 8ジンギの内から7エイシンダンシャクもハナを狙って両馬の先行争い。100mほど進んだところで、7エイシンダンシャクが引き、8ジンギが逃げていく。
【1周目3コーナー】 3コーナーまでに10シェダルが2番手に上がり、8ジンギを徹底マークする構えに。
【1周目4コーナー】 7エイシンダンシャクが3番手に抑え、4番手外に9アワジノサクラ。6エイシンニシパはインコースの5番手を進む。馬群全長は10馬身圏内で比較的落ち着いた流れに。
【1周目スタンド前】 6エイシンニシパが、7エイシンダンシャクを内から抜いて3番手に浮上。先頭8ジンギ、2番手10シェダル、3番手6エイシンニシパと、三強が固まってお互いを意識しながらレースは進む。
【向正面~3コーナー】 8ジンギが2周目向正面に入ったところから早くもペースを上げにかかる。しかし、10シェダルも楽にスピードを上げてついていく。前2頭が3番手で競り合う6エイシンニシパと7エイシンダンシャクを2馬身離し、残り600mからはマッチレースの様相に。
【4コーナー~最後の直線】 内に8ジンギ。少し馬体を離した外に10シェダル。王座をかけて2頭の猛烈な追い比べ。
【最後の直線①】残り100m。8ジンギがわずかにリード。その後ろで6エイシンニシパと7エイシンダンシャクの3着争いも熾烈。
【最後の直線②】絶対王者8ジンギを追う挑戦者10シェダル。場内のボルテージも最高潮に。
【ゴールイン】8ジンギがクビ差だけ前に出たまま優勝のゴールイン。これが絶対王者の底力だと言わんばかりの走りで兵庫大賞典連覇を果たした。
兵庫大賞典史に残る名勝負を制したのはジンギだった。兵庫大賞典連覇で重賞10勝目。
兵庫デビュー馬としては、オオエライジン(重賞10勝)と肩を並べることとなり、ロードバクシン(兵庫在籍時重賞12勝)に続く2位タイの記録となった。
(重賞10勝以上は、転入馬も含めると、エイシンニシパ(重賞15勝)、アルドラゴン(兵庫在籍時重賞10勝)もいる。)
クビ差2着だったが、王者に真っ向勝負を挑んだシェダルも賞賛されるべき走りを見せた。
ジンギの田中騎手が「シェダルの方が手応えが良かったので正直負けたと思った」と話したくらい王者を慌てさせた。
今日の悔しさを糧に、次の対戦が今から非常に楽しみだ。
昨年は無観客開催の中での優勝だったジンギ。
今年は、検量室に引き上げる前に、田中騎手がジンギをファンの前へと誘導し、ガッツポーズでファンの2年分の大きな拍手に応えた。
<橋本忠明調教師 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
管理する橋本師は、「逃げていければいいなとは思っていた。でも逃げるのも読まれて、下原君(シェダル)が2番手まで来るだろうなと読んでいた。(シェダルよりも)前で競馬したいと思っていた」と戦後話したように、お互いのポジション取りの駆け引きにも見応えがある一戦だった。
激闘の末、手にした勝利に、「本当に凄い馬です」と愛馬を労った。
ジンギの次走は未定とのこと。
「精神的にも大人になってきているので、この秋が勝負。夏に弱いので、まずはしっかり夏を乗り切りたい」と橋本師は話した。
昨年は六甲盃(2着)の後休養に入って、姫山菊花賞→園田金盃と秋2戦共に勝利を収めたが、今年はどんなローテーションを歩むのか。
地元でその強さを見続けたい気持ちもあるが、ダートグレードに果敢に挑戦して欲しい気持ちもある。実に贅沢な悩みだ。
絶対王者を慌てさせるライバルが出現した今年の兵庫大賞典。
この秋もジンギ王朝はまだまだ栄え続けるのか、それとも世代交代の下剋上があるのか・・・。古馬中距離戦線からますます目が離せない。
写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと
2022 兵庫チャンピオンシップ(Jpn2) レポート
2022年05月7日
2022年05月04日(水祝)
◆3歳重賞『第23回兵庫チャンピオンシップ(Jpn2)』(園田1870m) ◆
兵庫三冠の第2戦「兵庫チャンピオンシップ」。
第1回優勝馬はミツアキサイレンス(笠松)、第2回優勝馬は兵庫三冠にも輝いたロードバクシン(兵庫)。
しかし、第3回以降はJRA勢の20連勝中と、地方馬にとって高き壁となっているレースである。
21世紀に入ってから、日本競馬界においても徐々にダート馬の地位が向上し、レース体系も整っていった。
兵庫チャンピオンシップは、6月ユニコーンS、7月ジャパンダートダービー、8月レパードSと続く、3歳ダート路線の重要なレースの一つとして位置付けられ、年々その価値が上がっている。
過去10年の優勝馬の中から、コパノリッキー、ケイティブレイブ、クリソベリルという3頭のG1ホースが誕生するなど、日本のダート界を牽引する馬がこのレースから誕生しており、特に近年は本気度の高い強豪馬が多く参戦してくる。
そんな中でも、今年は特にハイレベル。
JRAからはいずれもダート2勝以上の5頭が遠征。地元馬も3年ぶりに菊水賞馬が参戦するなど重賞ホース2頭が迎え撃つ図式で、史上最高とも言えるメンバーが集結した。
圧倒的1番人気は、単勝1.8倍のドライスタウト(JRA)。
デビューから無傷の3連勝で「全日本2歳優駿」を制した2歳ダート王。
今回はそれ以来4ヶ月半ぶりのレースで、初めての右回りに距離延長と、若馬にとって決して楽な条件ではなかったが、秘めたるポテンシャルが高く評価された。
2番人気は、単勝3.9倍のノットゥルノ(JRA)。
デビューから2戦は芝で勝ちきれなかったが、ダートに転向して連勝。スタートダッシュはやや遅いものの長く良い脚が使える馬で、前走伏竜Sは落鉄がありながら2着。素質の片鱗を見せていた。
3番人気は、単勝4.0倍のブリッツファング(JRA)。
新馬戦の勝ちっぷりが実に鮮やか。続くヒヤシンスSでは1番人気の支持を集めるも9着に敗れたが、前走自己条件の平場戦を勝って園田に参戦した。スッと好位に取り付いてレースができるセンスの良さがある。
デビューから連勝した後、前走海外遠征のサウジダービーで3着に入ったコンシリエーレ(JRA)が単勝6.8倍と続き、JBC2歳優駿の優勝馬アイスジャイアント(JRA)が大きく離れた単勝29.8倍で続いた。
地元馬の中での人気上位は、菊水賞馬ベルレフォーンが6番人気(単勝121.2倍)、兵庫ユースカップなど重賞2勝のバウチェイサーが7番人気(単勝126.7倍)だった。
レースは、スタートでドライスタウトが躓いてしまい痛恨の出遅れ。兵庫のバウチェイサーが逃げ、2番手にコンシリエーレ。3番手外にブリッツファングがつけ、中団6番手集団の内にノットゥルノ、その外に巻き返したドライスタウトがポジションを取った。ベルレフォーンは8番手のインを立ち回りながら末脚を溜めた。
2周目向正面で早々とコンシリエーレがバウチェイサーを抜いて先頭に立つと、ブリッツファングもピッタリついていってこの2頭で後続を3馬身離していった。
しかし、勢いには明らかな差があり、4角でブリッツファングが手応えよく抜け出すと、直線では後続を8馬身ちぎって圧勝劇を演じた。
ノットゥルノがゴール前で2着に上がり、コンシリエーレは粘れず3着。
上位3頭は3番人気→2番人気→4番人気の決着で、三連単は5,010円。
ブリッツファングは、重賞初挑戦で初制覇。これでデビューから4戦3勝。
池添謙一騎手は、プライドキムで制した2004年兵庫ジュニアグランプリ以来となる2度目の兵庫重賞制覇となった。
大久保龍志厩舎は、兵庫のダートグレード初優勝。
レース結果はこちら>>>(NAR 地方競馬情報サイト)
◆出走馬
1 (笠)クレールアドレ(伊藤勝) 松本剛志騎手 11番人気
2 ローグネイション (田中範) 杉浦健太騎手 9番人気
3 (J)ノットゥルノ (音無) 武豊騎手 2番人気
4 ベルレフォーン (新子) 下原理騎手 6番人気
5 アントラシート (保利平) 広瀬航騎手 10番人気
6 ベラジオボッキーニ(坂本) 吉村智洋騎手 8番人気
7 ブリッツファング (大久保龍) 池添謙一騎手 3番人気
8 バウチェイサー (新子) 笹田知宏騎手 7番人気
9 (J)コンシリエーレ (稲垣) D.レーン騎手 4番人気
10 (J)アイスジャイアント (高柳瑞) 三浦皇成騎手 5番人気
11 タンバグリ (坂本) 竹村達也騎手 12番人気
12 (J)ドライスタウト (牧浦) 戸崎圭太騎手 1番人気
◆レース
晴、良馬場のコンディション。3年ぶりにファンが入場可能なゴールデンウィーク開催となり、4800人を超えるファンで場内は大いに賑わった。このレースは、薄暮開催のため第8レースに組まれ、16時20分にスタートが切られた。
【スタート】 圧倒的1番人気の12ドライスタウトが躓いて痛恨の出遅れ。場内は大きくどよめいた。
【1周目向正面】 地元兵庫の8バウチェイサーがいち早く飛び出してハナを奪う。
【1周目3コーナー】 2番手に9コンシリエーレ。3番手の内に6ベラジオボッキーニ、外に7ブリッツファングがポジションを取る。
【1周目4コーナー】 10アイスジャイアントが単独5番手を進み、その後ろの中団6番手の内を3ノットゥルノが立ち回る。スタートの出遅れから巻き返した12ドライスタウトが中団外まで進出。
【1周目スタンド前】 4ベルレフォーンは8番手のインを立ち回りながら末脚を溜め、その後ろに2ローグネイション。後方集団に11タンバグリ、5アントラシート、1クレールアドレと続いた。馬群全長は15馬身ほど。
【1周目ゴール板前】 ややペースを落とした8バウチェイサーのすぐ後ろのグループが一気に固まり、中団まで7頭が3馬身圏内に犇めき合う。
【2コーナー~向正面】 10アイスジャイアントが早々と脱落し、前の集団は6頭に。8バウチェイサーが残り800m過ぎから促してスピードを上げ始めると、JRA勢もピッタリついていく。
【3コーナー】 残り600mで9コンシリエーレが先頭に立つと、8バウチェイサーはズルズル後退。代わって外から7ブリッツファングが良い手応えで先頭の外へ並びかけていく。
【3~4コーナー】 鞍上レーン騎手の手が激しく動く9コンシリエーレに対して、7ブリッツファングの池添騎手は余裕の手ごたえ。この2頭が3番手の3ノットゥルノ以下を3~4馬身引き離す。
【4コーナー~最後の直線】 直線に向く手前で7ブリッツファングが楽々先頭に立って、残り200mで早くも9コンシリエーレを振り切った。コーナーで少しもたついていた3ノットゥルノが3番手から前を追う。
【最後の直線①】残り100m。7ブリッツファングが独走。勢いの鈍った9コンシリエーレの外から3ノットゥルノが一気に差を詰め、残り20m地点で2番手は逆転。
【最後の直線②】弾むようなフットワークで、7ブリッツファングが差を広げる。459kgとダート馬としては小柄な馬体が、500kg超えの大型馬たちを置き去りに。
【ゴールイン】7ブリッツファングが後続に8馬身差をつけて優勝のゴールイン。重賞初制覇を果たした。
「デビュー前から期待をしていた馬」と池添騎手が話した素質馬が、園田競馬場でその能力を開花させた。
例年以上に素質馬揃いの中で8馬身差というレース史上2番目の大きな着差(2015年優勝馬クロスクリーガーの9馬身差に次ぐ)での勝利に、「今日は本当に良いメンバーが揃っていたと思うので、その中でこれだけの強い勝ち方ができたので今後が楽しみになった。ようやくダートで良い馬に巡り合えた」と池添騎手も喜んだ。
<池添謙一騎手 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
<大久保龍治調教師 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
管理する大久保師は、「事前に池添騎手と立てた作戦通りにレースを進めることができた」とレースセンスの良さに安心感を持ってレースを見つめていた。ただ、「ここまで強いとは・・・そこだけが想定外だった」とG1レース4勝のチュウワウィザードなどを育てた名調教師も驚きを隠さなかった。
「とにかくバネが良い馬、今まで扱った馬の中でもトップクラスの素質を感じるのでG1を取れるような器にしていきたい」と大きな期待を寄せていた。
次走は、大井のジャパンダートダービー(Jpn1)を視野に入れ、3歳ダート王の座を狙う。
ブリッツファングとは、ドイツ語で雷光を意味する“Blitz”に、英語の“fang”(牙)。
園田の白い砂を雷光のようなスピードで駆け抜け、次の戦いへ向けてさらに牙を研ぐ。
将来はコパノリッキーやケイティブレイブ、クリソベリルのように日本のダート界にその名を大きく轟かせて欲しいものだ。
写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと
第23回 兵庫チャンピオンシップ:情報ページ公開中!
2022年05月3日
『第23回 兵庫チャンピオンシップ』
5/4(水祝)
過去10年間のレース結果など
盛りだくさんの内容です。是非ご覧ください。
>ページはコチラから
レースは5/4(水祝)発走!!