無敗のチャンプ誕生マイタイザン!
2015年10月31日
2歳重賞第二弾『兵庫若駒賞』が10月29日に行われ、1番人気に支持されたマイタイザンが2番手から抜け出して快勝。デビューから4連勝で重賞タイトルを射止めた。
鞍上の杉浦健太騎手は、デビューから5年6ヶ月で嬉しい重賞初制覇。管理する新井隆太(たかひろ)調教師にとっても、開業3年で初のタイトルゲットとなった。
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新馬戦の820mから、2戦目の1400m、3戦目の1700mとそれぞれ違う距離をいずれも逃げ切ったマイタイザン。道中のペースの違いに戸惑うことなく、折り合いもスムーズで完成度の高さを感じさせる。当然1番人気に支持されることになった。
2番人気のウメマツサクラは2走前にマイタイザンに敗れている。3番人気のエイシンシンタも前走で後塵を拝している。
つまり勝負付けが済んだと思われているが、成長伸びやかな2歳馬のこと、各陣営も逆転を狙う。
初対戦となるのは、道営出身の移籍初戦リラフェスタ(4番人気)。未勝利ながら、レベルの高い道営で2着2回、3着2回の成績を挙げていて不気味な存在。
JRAから移籍後3戦目のキサナドゥー(5番人気)は、移籍初戦は3着と敗れたが、良い脚は披露していた。前走はキッチリ勝って上昇ムードで臨む。
好スタートを切ったのはエイシンシンタ。前走ではマイタイザンを前に見る形でレースを進めたが、今回は逃げの手で勝機を見出す作戦。
すんなり控えたマイタイザンが2番手に取り付く格好となった。スマイルプロバイド(6番人気)が3番手で折り合いを付ける。
スタートで躓いたウメマツサクラは、すぐさま立て直して4番手の位置。リラフェスタが5番手、キサナドゥーは8番手で末脚に賭ける。
かなり早い段階から手綱を動かし、追っ付て行くエイシンシンタの大山騎手。
それを外から余裕の手応えで並んでいくマイタイザンの杉浦騎手。この時点で2頭の勝負は決着がついた。
あとは後ろから何が来るか。3コーナーからしきりに後ろを気にする、初重賞制覇を狙う杉浦騎手。その後ろのには重賞を100勝以上もしている大ベテラン川原正一騎手のウメマツサクラが迫っていた。
馬体を併せられてから追い出したのでは勢いで負けてしまう。十分に相手との間隔を確認しながら、タイミングを計って追い出す杉浦騎手。
展開的にはウメマツが有利だったが、追い上げても差が詰まらない。
結局のところ底力が違った。最後は1馬身差も、鞍上が左手を大きく挙げられるほど余裕を持ってマイタイザンが人気に応えて勝利。
マイタイザン、鞍上、調教師すべてが初の重賞制覇となった。
3着に、末脚を活かしたキサナドゥーが食い込み、スマイルプロバイドがしぶとく4着。逃げたエイシンシンタは5着に敗れた。リラフェスタは6着。レベルの高い道営出身といえども、未勝利馬に兵庫県の有力馬が負けるはずはなかった。
表彰式の壇上、初重賞の新井調教師、杉浦調教師には涙などなく、笑顔満開だった。
表彰後にその訳を訊いてみると、新井師は「次があるからね~、泣いてられへん。もっと大きいところを獲ったら泣くかも知れんけどね」とはにかみながら答えてくれた。
次走はJRAや他地区から強豪集う『兵庫ジュニアグランプリ(JpnⅡ)』(11月25日・園田1400m)。
ここで勝てば、涙を見せないはずはない。
うん、涙が見たい!
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男
混戦姫山クリアーが制す!
2015年10月17日
混戦の『姫山菊花賞』は、エーシンクリアーが1番人気に応えて快勝。今年最後のナイター重賞を鮮やかな勝利で飾った。
同馬はこれで重賞6勝目。鞍上の木村健騎手は66回目の重賞勝ち。管理する橋本忠明調教師は今年の『新春賞』に続いて2つ目のタイトル獲得となった。
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遠征予定だった名古屋競馬の実力馬ピッチシフターが回避により混戦模様。いや、恐らく同馬が出走していても混戦だったと思われるメンバー構成。
1番人気に支持されたのはエーシンクリアー。2歳時から毎年重賞勝ちを収めていて、トップクラスの力を示し続けている。ただ、他場での活躍が目立っていて、園田競馬場の重賞となれば2歳時の『園田ジュニアカップ』まで遡らなければならない。地元戦での決め手に不安が残る。
2番人気はエーシンサルサ。昨年は重賞3勝を含むオープン6連勝で、鬼のような強さを見せた。ところが今年は、『サマークイーン賞』で重賞勝ちを収めたものの、『摂津盃』で2着、前走で7着と思わぬ大敗…。全盛期を過ぎたと見るのか…。
『摂津盃』で復活成った11歳馬のダイナミックグロウが3番人気。先行力は健在で、2年ぶりの同レースの勝利を狙う。ただ、前走のオープン特別で1番人気を裏切り3着。高齢馬が真夏で好走したあとの反動も気になるところ。
『摂津盃』4着のあと、オープン特別快勝で一気に主役の座を奪う位置まで来たメイショウヨウコウが4番人気。1400mの重賞『園田チャレンジカップ』に勝って勢いに乗るヒシサブリナが距離延長でも期待され5番人気。先行力のある金沢のヒカルカミヒコーキが6番人気で続いた。
うむ、やはり混戦だ。
一番スタートが良かったのはダイナミックグロウ。それを内から競りかけるように金沢のヒカルカミヒコーキが並びかける。それでも外から追っ付けて、やや強引にダイナミックグロウが制した。
エーシンサルサが3番手に付けて、エーシンクリアーが4番手。メイショウヨウコウ、ヒシサブリナは中団で脚をためる作戦。
一旦決まった隊列を崩したのがヒカルカミヒコーキ。内外の有利さを活かして、コナーワークで正面をすぎた1コーナーでハナを奪い切った。ハナに行く気で気合いを付けていた分、ダイナミックグロウはハナを奪われて苦しくなる展開。案の定、勝負どころで後退してしまう結果となる。
3コーナーでは2馬身の差を付けてヒカルが逃げ込みを狙って突き放す。いつも3コーナーで反応が鈍くなるエーシンクリアーだが、エーシンサルサよりいい反応だった。その分、大きく突き放されずついて行けた。
クリアーとヒカルの差は、4コーナーで1馬身差。確実に差を詰めている。こうなると勢いよく追いかける方に分がある。
直線でヒカルをキッチリ捉えきり、エーシンクリアーが差し切ってゴール。最後は2馬身半差と、終わってみれば完勝と言える内容だった。
混戦となったのは2着争い。粘りに粘ったヒカルカミヒコーキが2着、最後はしぶとく追い上げたエーシンサルサが3着で、中団から伸び脚を発揮したメイショウヨウコウがアタマ差の4着。笠松の9番人気タッチデュールがさらにアタマ差で5着に続いた。ちぐはぐな展開になったダイナミックグロウは、そこから8馬身も離された6着。さらにクビ差でヒシサブリナが7着。こちらはやはり距離が敗因か…。
エーシンクリアーは、地元では2歳時以来の重賞勝ちで通算6勝目。木村騎手自身が「3コーナーで反応が鈍った」と言ったが、それほどでもなく、直線の伸びもこれまで以上の決め手に見えた。
JBC指定競走だったこのレースを勝ったが、今後はJBCには向かわずに『園田金盃』(12月3日)→『新春賞』(1月3日)というプランが濃厚だ。
鞍上の木村騎手は、腰痛で戦列を離れていたが、前日の笠松『岐阜金賞』をバズーカで制していて、連日の重賞勝ち。もう完全復活と言えるでしょう。
「いえ、まだ56kg以上でしか乗れないので、まだまだです」と本人は否定した。
休養中に増えた体重調整に苦しみ、56kg以上の斤量でした騎乗できない現状。周りが思う以上に本人は重く受け止めているのかも知れない。
それでも、彼が帰って来たことで、園田がさらに活気付いたのは間違いない。
さて、このレースではもうひとつの話題が大きく報道された。誘導馬のマコーリーがこのレースの誘導を最後に引退するというニュースだ。
今回は『マコーリー引退記念』のサブタイトルがついていても良かったのではないか。また今後も『マコーリーメモリアル姫山菊花賞』と題してもいい。
そう思わせるほど、マコーリーの人気は絶大だった。ありがとうマコーリー!
それはそうと『オオエライジン記念』はどうなったのだ!
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男
【更新情報】
2015年10月7日
【更新情報】
クローズアップのコーナーを更新しました。
騎手を引退して、調教師に転身した有馬澄男師へのインタビュー。
『波乱万丈の騎手人生。長く曲がりくねった道の先に―。』
道営ランランランが園田PCを制す!
2015年09月18日
世代別牝馬シリーズ『GRAVDAME-JAPAN2015』2歳シーズンがスタート。その皮切りとなる『園田プリンセスカップ』が園田競馬場で行われ、ホッカイドウ競馬から参戦したランランラン(牝2・田中淳厩舎)が3番手から抜け出して快勝した。
同馬はこれで5戦2勝、初の重賞勝ち。管理する田中淳司調教師は一昨年のカクシアジ以来2度目の同レース制覇。鞍上の川原騎手は2年ぶり3度目の同レース制覇。通算では102勝目の重賞勝ちとなった。
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遠征馬か、地元馬か!?
地区交流から全国交流になり、遠征馬のレベルが一気に強化した。
今年もホッカイドウ競馬(道営)から2頭、笠松から3頭。いずれも道営出身で、認定勝ちがある実力馬が出走してきた。
一方の地元馬は、デビューからいずれも逃げ切って3連勝中のスマイルプロバイドが筆頭格。前走2着も、鋭い決め脚が武器のナツが迎え撃つ。
速さ自慢が揃った中、ハナを奪ったのは1番人気のスマイルプロバイドだった。2番手に道営のエムティーシャトル(5番人気)が付け、その動きを見ながら同じく道営のランランラン(2番人気)が3番手に取り付いた。
3番人気のナツは7番手。その後ろに笠松のシャイニーネーム(4番人気)が付ける展開となった。
スタートも良く、逃げるスピードがありながら敢えて控えたランランラン(川原騎手)は、終始余裕の手応え。
「少しハミがかかって行ってしまった」とレース後振り返った川原騎手がいうように、早めに前を潰しに行く形となった。
こうなると前にいる各馬が苦しくなる。逃げていたスマイルプロバイドがたまらず後退していく。2番手のエムティーも失速。
逆に展開が味方したのが後方で脚をためていたナツ。
4コーナーでは一旦ナツが先頭に躍り出たランランランに並びかける。
そのままナツが突き抜けて行くと思われたが、ランランランにはまだ余力が十分にあった。
内から差し返しを見せ、ナツを退けて優勝した。
7馬身離された3着にはシャイニーネームが追い込んだ。
果敢に先行したスマイルプロバイドは8着に大敗し、初めて苦杯をなめた。
勝ったランランランを管理する田中淳司調教師は、2年前のカクシアジに続く同レース2度目の制覇。そのときのコンビも、川原正一騎手だった。
なお、レース終了後に同馬の兵庫(盛本厩舎)への電撃移籍が発表され、関係者を驚かせた。
『GRANDAME-JAPAN』の優勝、ダートグレード制覇、GⅠへの道…。
走り続ける先にはいろんな夢が待っている。
それを身近で見守ることができると思うと、いやが上にも心が弾む。
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男