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ヒシサブリナが短距離王に!~園田CC~

園田の短距離王決定戦『園田チャレンジカップ』(9月4日・1400m)は、遠征馬のない地元馬11頭で行われ、川原騎手が騎乗した3番人気のヒシサブリナ(牝4・盛本厩舎)が優勝。初の重賞タイトルを手に入れた。

 

川原正一騎手は3年ぶり2度目の同レース制覇で、通算101勝目の重賞勝ち。管理する盛本信春調教師は通算3勝目のタイトルとなった。

 

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レース結果はコチラ。

 

川原騎手が、また新たな金字塔を打ち立てた。

 

笠松競馬所属時代に2856勝。園田に移籍後、9年7ヶ月で2000勝の大台に乗せた。しかも、それを重賞の舞台でやってのけるのだから、ドラマにもほどがある。

 

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注目されたのは、この距離のオープンで9戦連続連対中のニホンカイセーラ。前走1700mの『摂津盃』を使われ、折り合いを欠き11着と大敗していた。得意距離に戻るが、前走の後遺症がないかと心配された。それでも、ファンは1番人気に支持した。

 

中央出身のマルトクスパートが2番人気。これまで園田では【14-4-2-0】と3着を外していない超堅実派。オープン特別で5勝を挙げており、悲願の重賞制覇がかかる。

 

復調ムード漂うニーケ(4番人気)とポセイドン(6番人気)のトーコー軍団も実績があり、当然有力候補。JRA時代、短距離を中心に活躍していたトリニティチャーチは距離短縮が有利な材料と見られ、5番人気となった。

 

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揃ったスタートからのスピード争いは思いのほか激しくならず、金沢の吉原騎手が騎乗したマルトクスパートがすんなりハナを奪う。トーコーニーケが2番手。ハナを奪うか注目されたニホンカイセーラは、行く構えすら見せず控える競馬で中団からレースを進める。

 

ヒシサブリナはトーコーポセイドンと前後しながら4、5番手を追走する形となった。

 

オープン馬、しかも重賞レースとは思えぬほどのスローな流れとなり、レースを引っ張るマルトクスパートにとっては絶好の展開。それを許すまいと懸命にプレッシャーを与えに行く二番手のトーコーニーケと吉村騎手。しかし、馬体を併せるまでには至らない。

 

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ニホンカイセーラも向正面から動いて行くが、思うように差を詰められないでいる。それより後方にいたトリニティチャーチの方がいい脚で先団めがけて上がって行く。この時点でポセイドンが脱落。

 

その間に、内からジワジワ差を詰めていたのが川原騎手のヒシサブリナだった。

 

4コーナー。あとは残るスタミナをすべて使い切って逃げ切るだけのマルトク。それを追うニーケ。外からトリニティとセーラがようやく迫る。そして内から忍び寄るサブリナ。

 

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誰もが吉原騎手のマルトクが逃げ切ったと思ったその瞬間、外に切り替えた川原騎手のヒシサブリナがゴール前で鮮やかに差し切って見せた。

 

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笠松(岐阜県競馬)、園田(兵庫県競馬)と所属した2つの主催者で2000勝を挙げる偉業を、なんと重賞レースで決めてみせたのでした。

 

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マルトクスパートはなんとか2着は確保。トーコーニーケが3着。追い上げたトリニティチャーチが4着で、ニホンカイセーラは5着。スローペースで差し馬には厳しい流れとなったレースだった。

 

この日の川原騎手は2勝を挙げて、園田所属での2000勝に王手をかけていた。迎えた第8レースで、単勝1.4倍と断然の支持を受けたキクノレヨンに騎乗。直線で堂々と抜け出して、勝ったと思わせた瞬間、わずかにハナ差で差し切られて、記録達成がお預けになっていた。

 

終わってみれば、この敗戦も重賞レースの劇的な幕切れの演出となった。

 

『金字塔』という言葉は、ピラミッドの日本語表現。先人たちのネーミングセンスに感服する。

 

ただ積み上げるのではなく、四辺の土台を築いた上でないとたどり着けない境地。

 

笠松時代と園田に来てからと、ふたつのピラミッドを築いたのだ。これは世界にも例を見ない、ギネス級のものだろう。きっとそうだ!

 

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表彰式が終わったあと、川原騎手が胸に秘めた想いを自ら語ってくれた。

 

「本当はね、盛本先生が、ぼくがマルトクスパートに乗るものだと思って、金沢の吉原くんに依頼するからと言ってきたんよね。でも先生、それはやめてください!と言った。先生はぼくに気を遣ってそう言ってくれたんだけど、ぼくは盛本厩舎で主戦のように乗ってるわけだから、勝っても負けてもヒシサブリナに乗るって言った。戦績からはマルトクに乗るのが普通だけれど、盛本厩舎に乗らないとダメでしょう!」

 

四辺の土台を振り返って、積み上げる石を決めたのだ。

 

こうして川原騎手は、笠松での2000勝、園田での2000勝、重賞100勝と決して崩れることのないピラミッドを積み上げてきた。

 

来年、5000勝というピラミッドが建とうとしている。川原騎手のレースを見ていると、軽々と勝ち星を積み上げているように見えるが、決してそうではない。ひとつひとつの勝利に、しかっりと重みを感じているからこそ、強固な塔を造り上げられるのだ。

 

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写真:斎藤寿一
文:竹之上次男

古豪復活~摂津盃~

伝統の真夏のハンデ重賞『摂津盃』は、6番人気のダイナミックグロウが勝利。一昨年『姫山菊花賞』以来の重賞2勝目を挙げた。同馬は1年2ヶ月の長期離脱がありながらの見事な復活劇を見せた。また、11歳での重賞勝利は、兵庫県最高齢記録ともなった。

 

松浦政宏騎手は、16年ぶりの同レース2勝目。重賞は通算15勝目。管理する小牧毅調教師は同レース初勝利、重賞は2勝目となった。

 

レース結果はコチラ

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レースは戦前からすでに動きがあった。なんと大本命に推されていたエーシンサルサに騎乗予定だった木村騎手が、腰痛のため急きょ笹田知宏騎手に乗り替わりとなってしまったのだ。

 

1倍だったエーシンサルサのオッズは次第に上がり、結局3倍ちょうどのオッズでユニフィケーションと並んで、票数で1番人気を譲ることになった。

 

兵庫を代表するエースジョッキーからの乗り替わり。それは笹田騎手だからではなく、誰であってもオッズには影響しただろう。

 

エーシンサルサはゲートをすんなり出すことができるかどうか不安を持っている馬。加えて、牝馬にとっては酷とも思える57kgの斤量。当然ダッシュ力にも影響してくる。

 

そんな状況下で、笹田騎手はスタートを決めて3番手にとりつくソツのない騎乗を見せる。

 

一頭大きく出遅れたのはバレーナボス。この馬は毎回出遅れる馬だが、さすがに今回は置かれ過ぎた。その他の馬は揃った飛び出しを見せた。

 

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ダイナミックグロウが中でも良いスタートを決めて先頭に立とうとする。そこへ、ニホンカイセーラが並びかけハナを奪って行く形となった。

 

3番手にエーシンサルサ。ユニフィケーションは中団にとりつき、これに前後するようにして4番人気のサウスウインドがポジショニング。

 

短距離を中心に使われていたニホンカイセーラは久々の1700m戦が影響したのか、折り合いを少し欠き、ややかかり気味。

 

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スローな逃げペースとはならず、展開も縦長となった。

 

向正面では外に切り替えて先頭に並びかけるダイナミックグロウ。すると、逃げていたニホンカイセーラがあっさり下がってしまう。やはり距離なのか…。

 

勝負どころの3コーナーで、一旦置かれそうになるエーシンサルサだったが、笹田が踏ん張って食い下がる。

 

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この時点で1番人気のユニフィケーションの動きが悪い、伸びる気配が感じられない。サウスウインドも4コーナーでは置かれてしまう。

 

ダイナミックグロウとエーシンサルサの一騎打ちで直線。粘るグロウに懸命に追いすがるサルサ。

 

最後は斤量の差も出たか、55kgのダイナミックグロウが半馬身差で57kgのエーシンサルサの追撃を振り切った。

 

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3着は中団以降で脚をためていた人気薄各馬の争いとなり、末脚勝負で勝ったオーケストラピットが確保した。サウスウインドは6着、ユニフィケーションは良いところなく11着に敗れた。

 

11歳の重賞勝ちは、園田競馬では最高齢記録。爪を悪くして休養を余儀なくされ、1年余り戦列から離れていた。前走で久々に挙げた勝利が復活の狼煙となり、ここで完全復活を成し遂げた。

 

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オーナーの理解、陣営の努力があってたどり着いた復活劇。何よりそれに応えたダイナミックグロウが素晴らしい。

 

次の目標は、一昨年に制した『姫山菊花賞』(10月16日)。11歳馬に負けてられぬと、巻き返しを狙う他陣営。また園田の夜がアツくなりそうだ!

 

写真:斎藤寿一
文:竹之上次男

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女王復活!~兵庫SQ賞~

鬼のような強さだった昨年のエーシンサルサ(牝5・橋本忠男厩舎)。その頃の強さには及ばなくとも、地力が違うとばかりに他馬をねじ伏せ『兵庫サマークイーン賞』を連覇して見せました。

 

 

同馬はこれで重賞4勝目。騎乗した木村健騎手は63勝目(中央1勝含む)。管理する橋本忠男調教師は47勝目。地元での重賞は、昨年の同馬で挙げた『摂津盃』以来の久々の勝利となった。

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レース結果はコチラ

 

スタートから波乱の幕開け。1番人気のピッチシフター(名古屋)が躓いて最後方からの競馬。場内からは悲鳴混じりのどよめきが起こる。
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逆に抜群のスタートを切ったのが船橋からの遠征馬、3番人気のケンブリッジナイス。1番枠を活かしてダッシュ良くハナを奪います。

 

昨年の覇者エーシンサルサ(2番人気)も好スタートながら、内のケンブリッジにハナを譲って2番手からの競馬。ピッチシフターは後ろから2、3頭目のポジションでレースを進めなければならなくなった。

 

今年はこの他にも、好メンバーが揃った。前年の年代表馬トーコーニーケ、南関東のクラシックホース、重賞6勝のカイカヨソウ。園田でも重賞勝ちがあり、昨年の3着馬タッチデュール。準オープンながら、オープン馬と五分に渡り合うリノワール、オープンで上位常連のアランロド、オーケストラピットなど。

 

それでも、上位人気3頭で決まってしまうのだから、ファンの皆さんの狙いは鋭い!

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向正面で追い上げを開始するピッチシフター。その時点でまだ先頭までは8馬身ぐらいの距離。この辺りで木村騎手は前だけを相手に絞って捕まえに行く。

 

「向正面から追い通しでしんどかったんですけど…」と木村騎手が振り返るように相手のしぶとさもあって、なかなか捕まえきれない。
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直線ではようやくピッチシフターも差を詰めるが、さすがに前半に使わされたスタミナが切れたか、脚があがる。

 

残り150m付近、力強く抜け出したのはエーシンサルサ。キッチリとケンブリッジナイスを捉えきり、2馬身半差を付けて快勝。ケンブリッジがそのまま2着を粘り、そこへクビ差に迫ったがピッチシフターは3着となった。それから4馬身離れて4着に入線したのが、まだ準オープンの身であるリノワール。今後に期待が持てる良い内容のレースだった。

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勝利を確信した瞬間、後ろとの距離を確認するような姿勢で左手を挙げて大きくガッツポーズした木村騎手。

 

「また左手を挙げてしまいました、(ファンの方を見ず)間違えました、すみません」と謝るほど、必死だったし、嬉しい勝利だったのだろう。

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「(昨年のような強さには)まだまだですね」という状態での勝利。夏が大好きな同馬と鞍上。ますます強さが蘇ってくるとなると、これからがさらに楽しみになってくる。

 

昨年取り逃した『GRANDAME-JAPAN』古馬シーズンの総合優勝を、今年は何としても決めたいという強い信念が陣営にはある。

 

わたしも実況していて、昨年のような強さをまだ感じられなかった。まだ状態が良くなってくるだろうし、まだ奥があるのだろうと思う。

 

他地区の皆さまは、そろそろ鬼の襲来に備えておいてください♪
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写真:斎藤寿一

文:竹之上次男

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