トーコーヴィーナス、のじぎく賞をあっさり制覇!
2015年05月13日
単勝元返しの断然人気になったトーコーヴィーナス(牝3・吉行龍穂厩舎)が、その人気に応えて楽勝。これで同馬は重賞6勝目。世代別牝馬シリーズ『GRANDAME-JAPAN(以下G-J)』3歳シーズンの総合優勝をほぼ手中に収めた。鞍上の田中学騎手は重賞38勝目。管理する吉行龍穂厩舎は26勝目となった。
レース結果
GWに行われた兵庫大賞典も兵庫チャンピオンシップも、1番人気がハナを奪い。そのまま逃げ切るという全く同じ展開に。しかも、いずれもが砂が薄くスタートのときに上滑りすると言われている8枠を引いたのも同じ。だから騎乗した田中騎手はスタートに気を遣った。ところが、抜群のスタートを切ったものだから、もうこの時点で勝利が確定したようなものだった。
JRAから移籍後3連勝中のジョウショーエガオ(2番人気)が、内枠を利してハナを奪いに行こうとする。それを制してトーコーヴィーナスが先手を取ったので、行く気になって控えた分、馬がかかってしまった。
3番手に船橋のハッピーリーベ(4番人気)、4番手には高知のプリンセスボーラー(3番人気)。5番手に付けたのはドラマクイーン(5番人気)で、人気通りの隊列でレースが進む。向正面でスタートしたレースは、正面スタンド前では落ち着いたペースに。ジョウショーエガオもこの辺りでは折り合いを付けた。
実力で勝る2頭がレースを引っ張り、馬ナリでペースを上げて行くと、ハッピーリーベがまず脱落。プリンセスボーラーが突き放されながら3番手を死守するところへドラマクイーンが並びかけて来る。3コーナーを迎えるころ、先頭のトーコーヴィーナスはジョウショーエガオに1馬身半差をつけていた。 前半折り合いを欠いたことを考えれば、ジョウショーエガオは苦しくなり、きょうもトーコーヴィーナスの圧勝かと思わせた。ところが、思いのほか突き放すことができない。
どうやら一頭になって、馬が走るのをやめようとする悪いクセが出たようだ。 結局1馬身3/4の着差と圧勝ではなかったが、トーコーヴィーナスの遊ぶほどの余裕を見せての逃げ切りとなった。相手が遊んだにせよ、あれだけかかっていながら2着に粘り、3着に5馬身の差をつけるのだから、ジョウショーエガオの強さもなかなかのものだ。
トーコーヴィーナスに騎乗した田中騎手は「かなり遊んでいましたね」と振り返る。そう言えば、前走の『東海クイーンカップ』(名古屋)で圧勝したときも「ガツンと来るものがなかった」と勝っていながら、確かな感触を得られなかった様子。不安を抱かせながらも勝ってしまうのだから、相手関係が物足りないのかも知れない。
吉行調教師は「園田でレースをすると4コーナーでやめてしまうところがある。馬がもう覚えてもうてるんやろね。よそに行くとそうでもないもんね」とあまり気にはしていない口ぶりだった。
ここを勝ったことで『G-J』の総合優勝をほぼ手中に収めた。となると、『G-J』最終戦となる『関東オークス(JpnⅡ)』(6月10日・川崎競馬場)の出走は必要なくなり、次走は地元の世代王者を決める『兵庫ダービー』(6月4日)も視野に入ってくる。果たしてどちらのレースを選択するのか!?
吉行調教師は「関東オークスに決めました。ダービーでは(田中)学の乗り馬も重なるだろうし、早く決めてやらないと迷惑かかったらアカンしね」とJRAや他地区の強豪との対戦を明言。地元馬で唯一黒星を喫したインディウムとの再戦も観たかったが、全国3歳最強牝馬の称号を目指すことにワクワクする。
13戦10勝、重賞6勝の輝かしい戦績は、すでにして兵庫県史上最強レベルの牝馬。『関東オークス』では、遊ばせてくれないメンバーが、真の力を引き出してくれるはずだ。
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男
クロスクリーガーが他馬を寄せ付けず圧勝!!
2015年05月9日
3歳ダートグレード戦線初戦の『兵庫チャンピオンシップ(JpnⅡ)』は、JRA馬クロスクリーガーが2着のリアファル(JRA)に9馬身差をつけて逃げ切り勝ち。力の違いをまざまざと見せつける圧勝劇となりました。同馬は初重賞制覇。庄野靖志厩舎は同レース初優勝。鞍上の岩田騎手は’07年フェラーリピサ、’11年エーシンブラン以来、3度目の優勝を飾った。3着にもJRAのポムフィリア。そして4着に地元馬コパノジョージ、5着にインディウムが食い込んだが、やはり今年もJRA勢の壁は厚かった。
レース結果
7戦7勝の菊水賞馬で、回避が伝えられていた地元兵庫のインディウム(牡3・田中範雄厩舎)の急遽の参戦で注目度が高まり、俄然園田競馬場は活気づいた。
過去10年ではJRA勢が全勝。ワン・ツーフィニッシュが9回、3着までの独占が6回。4年前からJRAの出走頭数が5頭になると、初年度は除外馬も出て掲示板を占められることはなかったが、その後の3年間は完全に5頭に掲示板を独占されてしまい、馬場を貸すだけという状況が続いていた。
インディウムの参戦は、その牙城を崩すに違いないと、園田ファンや関係者は胸を熱くした。
しかし、そこに立ちはだかるクロスクリーガーの強さはケタ違いだった。
前日に行われた『兵庫大賞典』の新聞記事を読んで、クロスクリーガーに騎乗する岩田騎手は「外枠はゲートで滑るので、気を付けて行こうと思いました。でも、ちょっと滑ってしまいましたね(笑)」
そんなスタートでもダッシュを利かせてハナに立ちます。前走の『伏竜ステークス』で2着に負かしたリアファルが先手を奪いに行こうとするのを制して、主導権を握る。3番手に地元のマキシマムカイザー、4番手に『菊水賞』で2着だったコパノジョージが付けて、5番手にインディウムという展開。3番人気のタンジブルはスタートで立ち後れてしまい最後方から。
終始余裕の手応えでレースを進めるクロスクリーガー。徹底マークのリアファルとの2頭で、3番手以下を次第に突き放して行きます。
「速い流れなので、これは差し馬の展開になって、ひょっとして上位に食い込むチャンスがあるかも知れない」と奇しくもインディウムの木村健騎手とコパノジョージの田中学騎手は同じことを思った。
残り800mの地点で、先ず木村騎手が動いて行く。それよりも、一歩遅らせて田中騎手も追い出し始める。それでも一向に前との差が詰まらない。一方の岩田騎手の手応えは依然抜群で、持ったままで4コーナーを迎える。つまり、無理に飛ばして速い流れを作っていたのではなく、マイペース自体が、そもそも他の馬とは違っていたのだ。
直線でもその差はさらに広がり、最後は9馬身差の大楽勝。2着にリアファルがそのまま粘り、さらに5馬身差があって3着に中団で脚をためていたポムフィリアが上がる。コパノジョージが4着に粘って、地方馬最先着。無敗のインディウムは地元馬にも先着を許しての5着で、初めての敗戦を喫した。
勝った岩田騎手は「きょうは前に行った方が有利だと思い、行けそうならハナに行こうと思っていました。馬場にも助けられましたが、強かったですね」と言うものの、馬場の助けなのではなく、断然の能力差がもたらした結果。負けたリアファルの北村友一騎手も「相手が一枚上だった」と完全に脱帽の様子だった。
『日本ダービー』へのプランもあったそうだが、しばらくはダート路線に集中。7月8日の『ジャパンダートダービー(JpnⅠ)』(大井競馬場・2000m)に向かうとのこと。ドバイに遠征したゴールデンバローズがいないのであれば、敵などいないだろう。
今年は4着、5着に食い込んだ地元馬。4年連続の掲示板独占を阻止した活躍はお見事。最後はともに一杯になってバテてしまったが、残るJRA馬2頭には先着を許さなかった。『菊水賞』の着順が逆になり、6月4日の『兵庫ダービー』が楽しみになってきた。そこへ昨年の2歳王者、牝馬のトーコーヴィーナスの参戦となると、より一層園田の世代王者決定戦が盛り上がる。それにしても岩田騎手の笑顔が晴れやかだった。
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男
力通りにタガノジンガロ、大賞典を制覇!
2015年05月9日
ダートグレード勝ち馬タガノジンガロ(牡8・新子厩舎)が貫録を見せ、春の王者決定戦『兵庫大賞典』を制しました。これで同馬は『かきつばた記念(JpnⅢ)』(名古屋競馬場)、『姫山菊花賞』に続く重賞3勝目。木村騎手は地方通算60勝目(他にJRA1勝)の重賞。新子雅司調教師は6勝目のタイトルとなった。
レース結果
やはり地元戦では力が違った。先手を奪ってハナに立つと、そのまま逃げ切ってあっさり勝利を手にした。「スタートだけを気を付けて、何が起ころうとも絶対に落ちないようにと心がけました(笑)」と騎乗した木村騎手。
園田競馬場の1700m、1870m戦では、外枠の馬がゲートで滑るようなスタートになることが多い。「砂厚が薄く、上滑りするような格好になる」というのが騎手たちの見解。そのため、外枠に入ると必要以上に気を遣い、対戦相手よりもまずは脚元の馬場との戦いが始まる。
断然人気が確定的だったタガノジンガロ。望んでいなかった11番枠を引き当て、思わず出た先ほどの木村騎手のコメントだった。
気にかけていたスタートは、幸い上手く決めることができた。その勢いでハナに立ってしまう。兵庫県最強馬が逃げる展開となっては、他馬は手も足も出ない。完全にレースを支配してしまった。
しかし、ただ一頭食い下がったのは2番人気のエーシンクリアー。こちらも良いスタートを決めハナを奪いに行く。ところがジンガロに勢いよく行かれて控えざるを得ない形に。そのとき鞍上の田中学騎手は「もう2着狙いしかないのか…」と思っていた。
道中で早めに競りかけて行けば、2着すらなくなってしまう。追い出しをゆっくりにして、最後の脚をためておきたいというのが騎手の心情。それでもこの日のクリアーの好調ぶりを感じていた田中騎手は、残り800mを過ぎた辺りからゴーサインを出します。この時点で「2着狙い」の乗り方を捨てて、勝ちに行く。
突き放そうとするジンガロに離れずついて行くクリアー。3番手以下は取り残され、大きく離されてしまう。完全にマッチレースの様相と化し、それがゴールまで続いた。
1月の対戦時、ジンガロがクリアーにつけた着差は4馬身。当然ここでも圧勝するだろうと思われていたが、しぶとく食らいつくクリアー。最後は1馬身3/4の着差でゴール。その後ろの3着争いは、大差遅れてしまったが、8番人気のアランロドが3着を確保した。タガノジンガロの強さが際立つレースになる予想が多かった中、エーシンクリアーも強いと印象付けるレースとなった。
レース後、管理する新子調教師は「思いのほか突き放さすことができなかったのは、ひょっとしたら距離なのかも知れません。今年は一応、中距離路線を中心にレースを選択しようと考えていましたけど、あと1、2走試してみて、木村騎手の感触を訊きながら路線を決めたいと思います」と今後のローテーションには慎重なコメント。
距離的なものもあったのかも知れないが、エーシンクリアーが力を付けているのも事実。兵庫生え抜き馬の成長は、関係者として非常に嬉しく思うところ。そのクリアーに、とても逆転できるとまでは感じさせなかったタガノジンガロは、やっぱり強い。昨年、年代表馬の称号は得られなかったが、この馬が兵庫No.1であることは誰もが認めるところ。全国の注目を集めながら、今年も兵庫をけん引する。
写真:斎藤寿一
文:竹之上次男