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2022菊水賞 レポート

2022年04月07日(木)

 

◆3歳重賞『第54回菊水賞』(園田1700m) ◆

兵庫三冠の第1戦「菊水賞」。
2007年から開催時期が変わり、菊水賞→兵庫チャンピオンシップ→兵庫ダービーという三冠路線となった。

昨年、兵庫若駒賞、園田ジュニアカップを含む、5戦5勝と無敵の強さを誇った最優秀2歳馬ガリバーストームが3月に予定されていた今年初戦を前に戦線を離脱。
代わって主役候補となったのは重賞連勝のバウチェイサーだった。

 

 

単勝1.2倍の圧倒的1番人気に支持されたバウチェイサー。
笠松「ゴールドジュニア」は2.6秒差で圧勝し、前走「兵庫ユースカップ」も6馬身差で完勝。
今回初めての1700m戦とはなるが、重賞連勝のパフォーマンスが評価され、断然人気となった。

 

2番人気は、ベラジオボッキーニ。(単勝5.9倍)
兵庫若駒賞3着の後、休養に入っていたが、3/17の復帰戦を好時計で勝利。潜在能力の高さを見せ、逆転候補の筆頭と目された。

 

3番人気は、デビュー戦以外ずっと1700~1800m戦を使われ、前走1700mを快勝していたベルレフォーン(単勝17.4倍)。

門別から転入後4連勝を果たしたものの、兵庫ユースカップは5着に敗れて今回人気を落としたエイシンクエーサー(単勝17.9倍)が4番人気で続いた。

 

レースは、ここ2走逃げて勝っていた1番人気バウチェイサーが五分のスタートから3番手の外につける展開。その内にエイシンクエーサーがいて、すぐ後ろにベラジオボッキーニが追走。ベルレフォーンは後方3~4番手のインで末脚を溜めていた。2周目向正面から早くも動いて、逃げるニネンビーグミにプレッシャーをかけて行ったバウチェイサーが直線に入るところで先頭に立ったが、そこからの伸び脚がジリジリ。その間に大外に持ち出されたベルレフォーンが素晴らしい切れ味を披露し2馬身半突き抜けて優勝を果たした。

 

2着は好位3番手インを立ち回ったエイシンクエーサー、バウチェイサーは3着。
上位3頭は3番人気→4番人気→1番人気の決着で、三連単は24,110円。

 

ベルレフォーンは、重賞3度目の挑戦で初制覇。

 

下原理騎手は、エイシンビッグボスで制した昨年の園田オータムトロフィー以来となる重賞76勝目。
菊水賞は6勝目。(03マイネルエクソン、06チャンストウライ、09カラテチョップ、14ニホンカイセーラ、20ステラモナーク、22ベルレフォーン)

 

新子雅司厩舎は、3/16の黒船賞(高知)をイグナイターで勝利して以来となる重賞48勝目(今年5勝目)。
菊水賞は4勝目(13ユメノアトサキ、16シュエット、20ステラモナーク、22ベルレフォーン)。

 

レース結果はこちら>>>

 

 

◆出走馬


1 ニネンビーグミ(松平)  大山真吾騎手 5番人気

 


2 エイシンクエーサー (橋本) 田中学騎手 4番人気

 


3 ベルレフォーン (新子) 下原理騎手 3番人気

 


4 アンサン (木村) 松木大地騎手 7番人気

 


5 エイシンクレモナ (森沢)  川原正一騎手 8番人気

 


6 バウチェイサー (新子)  笹田知宏騎手 1番人気

 


7 タンバグリ (坂本) 竹村達也騎手 10番人気

 


8 キングレジェンド (高馬)  広瀬航騎手 6番人気

 


9 ベラジオボッキーニ (坂本)  吉村智洋騎手 2番人気

 


10 サヨノハッピー (有馬)  田野豊三騎手 12番人気

 


11 ホクザンゴールド (橋本)  長尾翼玖騎手 11番人気

 


12 ウーニャ (盛本)  永井孝典騎手 9番人気

 

 

◆レース

上空は快晴。連日20℃を超える陽気で、馬場状態は「良」。先週末に満開を迎えた1700mスタート地点に咲く未来桜も見守る中、スタートが切られた。

 

 

【スタート】 5エイシンクレモナと7タンバグリが若干後手を踏んだ以外は大きな出遅れはなかった。6バウチェイサーはほぼ五分のスタート。

 

【1周目3コーナー】 最内枠から好スタートを決めた1ニネンビーグミが逃げる展開。4アンサンがいて、6バウチェイサーが3番手。その後ろに2エイシンクエーサーと9ベラジオボッキーニ。3ベルレフォーンは後ろから3頭目。

 

【1周目4コーナー】 各馬比較的すんなりとポジションは決まったが、馬群全長は13~14馬身と少しばらけた。

 

【1周目スタンド前】 1ニネンビーグミと4アンサンの牝馬2頭がミドルペースで引っ張る。

 

【2コーナー~向正面】 2エイシンクエーサーがコーナーワークで3番手へ。6バウチェイサーは外を回って4番手。9ベラジオボッキーニは一旦中団に控える形となり、3ベルレフォーンは2頭抜いて中団の後ろまで上がった。

 

【向正面~3コーナー】 向正面に入ったところから早くも笹田騎手が促して6バウチェイサーが2番手に浮上。それに遅れまいと吉村騎手が鞭を入れて9ベラジオボッキーニも早めに動く。

 

【3~4コーナー】 6バウチェイサーが逃げる1ニネンビーグミに並びかける。3番手のインで2エイシンクエーサーが食い下がる中、9ベラジオボッキーニの勢いが鈍る。代わって内から最低人気の10サヨノハッピーが良い脚色で上がってきて、その後ろから3ベルレフォーンも追い上げを開始。

 

【4コーナー~最後の直線】 6バウチェイサーが1馬身差抜け出して直線へ。2番手は、内に1ニネンビーグミ、中に10サヨノハッピー、外に持ち出された2エイシンクエーサーの3頭が広がった。最内から大外に持ち出された3ベルレフォーンが5番手まで浮上。

 

【最後の直線①】残り100m。ここ2戦と違って後続との差を広げられない6バウチェイサー。そこに外から2エイシンクエーサーがじわじわ差を詰める。

 

【最後の直線②】さらに大外に目をやると、3ベルレフォーンが1頭違う脚色で追い込んでくる。

 

【最後の直線③】残り50m。3ベルレフォーンがあっという間に先頭に変わる。

 

【最後の直線④】2着争いは、2エイシンクエーサーが6バウチェイサーを捉えた。

 

【最後の直線⑤】ゴール20m手前で勝利を確信して、早くも手が上がった下原理騎手。

 

【ゴールイン】3ベルレフォーンがあっという間に2馬身半差をつけて優勝のゴールイン。重賞初制覇を果たした。

 

前走からコンビを組む下原騎手も「まさか勝つまでの想像はしていなくて、驚かされました」 という勝利だった。

長所は「折り合いがつきやすいところ」で、「(距離は)長ければ長い方がいい味が出そう」と今後も楽しみが広がる。

 

新子厩舎は2頭出しでの1,3着。ベルレフォーンについては、「かなりしっかり仕上げたのでそれが結果に出た」(新子師)と前走からの上積みも大きかったようだ。

大きな期待を集めながら3着に終わったバウチェイサーについては、「ゲートで滑って行き脚がつかなかったことが気になった。ああいう競馬をしたのが初めてで、人気しているので攻めのレースをしないといけない所も裏目に出たかな」と振り返った。

新子師は兵庫ユースカップ後に「エスポワールシチー産駒にしてはフワッとした感じで走ってくれるので、1800mくらいまでは大丈夫」と話しており、初めて走った1700mという距離に敗因を求めるのは早計かもしれない。

「気難しいところがある。あの馬なりに周りに気を使いながら走っていたのかも。今回は全力を出し切っていない」と悔しさを滲ませた。

 

下原理騎手 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

新子雅司調教師 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

 

ベルレフォーンとバウチェイサーは、共に兵庫チャンピオンシップ(Jpn2)に向かう予定だ。毎年非常に強力なJRA勢が参戦するこのレース。今年も、昨年の全日本2歳優駿の優勝馬ドライスタウトが早くも参戦を表明しており、ハイレベルな戦いとなりそうだ。

近年はダービーシリーズを見据えて有力馬が回避することも多いが、今年はタイトルホースが兵庫代表として参戦する可能性が高い。大いに期待しよう。

 

 

写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと

2022兵庫ユースカップ レポート

 

2022年03月10日(木)

 

◆3歳重賞『第14回兵庫ユースカップ』(園田1400m) ◆

2003年に創設されたが、その後2013~2018年の6年間休止を挟んで、2019年に復活。

過去の優勝馬には、オオエライジンやジンギといった兵庫を代表する名馬達も名を連ねる一戦は、昨年、東海・北陸・近畿地区交流戦から高知・佐賀勢も出走可能な西日本地区交流戦と生まれ変わり、それと共に「兵庫ユースカップ」とレース名称も変わった。
昨年は1度だけ姫路競馬場で行われたが、今年は再び園田競馬場が舞台。

今年は他地区からの遠征馬はなく12頭全て地元馬同士の争いとなった。

 

 

1番人気は、バウチェイサー。(単勝1.4倍)
昨年11月「兵庫ジュニアグランプリ(Jpn2)」でJRA馬相手に逃げるスピードを見せ、0.5秒差の4着に粘って潜在能力の高さをアピール。前走は笠松「ゴールドジュニア」で後続を2.6秒ちぎる圧勝で重賞初制覇を成し遂げた。
2番人気は、エイシンクエーサー。(単勝2.8倍)
門別では未勝利だったが、兵庫に移籍後に4戦4勝の快進撃。前走は2着馬に8馬身差と自力強化を見せ、打倒バウチェイサーの最右翼と目され、2強ムード。

3番人気はデビューから5戦オール連対(2勝2着3回)のパー(単勝12.9倍)で、そのパーに連勝したローグネイション(単勝15.4倍)が4番人気で続いた。

 

レースは、スタートを決めたバウチェイサーがそのまま逃げる展開に。先のレースも見据える中で「できれば何かに行って欲しいと思っていた」と笹田騎手と新子師が口を揃えたが、「メンバー的に無理して抑えることもない」(新子師) と、スピードの違いでハナを奪った。

「次の1700m(菊水賞)を考えたペースの作り方」で逃げたという笹田騎手とバウチェイサーがマイペースに持ち込む中、向正面入口からエイシンクエーサーが一気に動くなどしてプレッシャーをかけたが、「3コーナーでエンジンをかけていくと反応はすごく良かった」という言葉の通り、直線で後続を突き放したバウチェイサーが、最後は6馬身差で逃げ切って勝利。重賞連勝を飾った。

 

2着は2番手追走から粘ったウインドケーヴ、3着は中団インを上手く立ち回ってラスト伸びたダイヤモンドダスト。
上位3頭は1番人気→7番人気→5番人気の決着で、三連単は19,220円という結果となった。

 

 

バウチェイサーは、前走のゴールドジュニア(笠松)に続いて、重賞連勝で重賞2勝目。

 

笹田知宏騎手は、バウチェイサーと共に制した1月のゴールドジュニア(笠松)以来となる重賞8勝目。
地元重賞は2020園田ウインターカップをナチュラリーで制して以来。兵庫ユースカップは初制覇。

 

新子雅司厩舎は、1月の黒潮スプリンターズカップ(高知)をイグナイターで勝利して以来となる重賞46勝目。
地元重賞は2021楠賞をイグナイターで制して以来。兵庫ユースカップは2勝目(2020年ステラモナークで勝利)。

 

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◆出走馬

 

1番 シルバーブリス(盛本)  永井孝典騎手  10番人気

 

2番 ラッキーライズ(栗林)  下原理騎手  6番人気

 

3番 ダイヤモンドダスト(雑賀)  松木大地騎手  5番人気

 

4番 イナリ(木村)  大山真吾騎手  9番人気

 

5番 バウチェイサー(新子)  笹田知宏騎手  1番人気

 

6番 パー (松浦)  広瀬航騎手  3番人気

 

7番 ローグネイション(田中範)  杉浦健太騎手  4番人気

 

8番 エイシンクエーサー (橋本)  吉村智洋騎手  2番人気

 

9番 ウインドケーヴ(柏原)  川原正一騎手  7番人気

 

10番 ホクザンゴールド (橋本)  長尾翼玖騎手  8番人気

 

11番 ヴィンチトーレ(栗林)  竹村達也騎手  11番人気

 

12番 カヌレドボルドー(田村)  鴨宮祥行騎手  12番人気

 

 

◆レース
気温が20℃近くまで上がって春の陽気に包まれる中、馬場状態「良」で行われた。

 

 

【スタート】 大きな出遅れはなく各馬まずまずのスタートを切った。

 

【スタンド前①】 5バウチェイサーがダッシュ良く先頭に立つと、一旦前に接近した9ウインドケーヴや6パーはすんなりと抑えた。

 

【スタンド前②】 8エイシンクエーサーは4番手好位を取り、3ダイヤモンドダストが5番手。その外を7ローグネイションがやや掛かりながら追走する。展開は1コーナーまでに落ち着いた。

 

【2コーナー~向正面】 先頭から最後方まで12~3馬身。向正面に入ってすぐ、4番手にいた8エイシンクエーサー吉村騎手が促して早くも外から動きを見せる。

 

【向正面~3コーナー】 8エイシンクエーサーの外からの動きに、2番手の9ウインドケーヴも呼応し、5バウチェイサーに向正面からプレッシャーをかけにいく展開となったが、5バウチェイサーも即座にスピードを上げて対応。馬体を合わさせることなく1馬身差をキープしたまま3コーナーへと入る。

 

【3~4コーナー】 スピードに乗った5バウチェイサーが後続との差をジワジワ広げていく。大きく隊列は変わらないまま4コーナーへ。

 

【4コーナー~最後の直線】 5バウチェイサーが2馬身差を付けて直線へ。2番手は9ウインドケーヴの内から6パーが並びかける。早目スパートの8エイシンクエーサーはやや遅れを取った。

 

【最後の直線①】残り100m。5バウチェイサーがリードを広げ、9ウインドケーヴがしぶとい二枚腰で2番手。8エイシンクエーサーの内から3ダイヤモンドダストが伸びてくる。

 

【最後の直線②】5バウチェイサーが独走に入り、焦点は2着争い。9ウインドケーヴが内の6パーの追い上げを振り切り2着を確保。3ダイヤモンドダストが最後に一伸びを見せ、3着争いが接戦に。

 

【ゴールイン】5バウチェイサーが6馬身差をつけて優勝のゴールイン。2019.3.10生まれの同馬にとっては自らの誕生日を祝うバースデーウィンともなった。

 

 

「輸送が2回続いたこともあったので若干余裕をもって作った」(新子師) こともあり、前走から+19kgという馬体での出走だったバウチェイサー。今後を見据え、強い馬と戦っていくことも想定しながらレースをした中で、「合格点以上」(笹田騎手) の内容で勝利し、この馬の強さを再確認した。

 

父はエスポワールシチー。新子厩舎にはこのエスポワールシチー産駒の重賞ホースが、ステラモナーク(牝5)、イグナイター(牡4)、パールプレミア(牝4)とズラリ。ゲートオープンからスピード全開に走りたがる馬も多い中で、「エスポ産駒にしてはフワッとした感じで走ってくれる」(新子師) というバウチェイサーは、「1800mくらいまでは大丈夫」と今後の三冠路線に向けても自信を覗かせる。

 

笹田騎手も「レースに行って乗りやすいし操縦性も高い。今のところ想像以上の成長をしてくれている」とパートナーに信頼を寄せ、「もっと大きな舞台で勝負してみたい」と再びダートグレードへ挑戦する未来もハッキリと描いているようだ。

 

 

優勝の笹田知宏騎手は、この勝利がちょうど地方通算600勝目。
この日3勝の固め勝ちで、節目の勝利を重賞で飾った。

 

笹田知宏騎手 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

新子雅司調教師 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

 

 

元々このレースへの出走は予定されていなかったが、昨年兵庫若駒賞と園田ジュニアカップを制して、“最優秀2歳馬”に選出されたガリバーストームが故障により無念の戦線離脱。
兵庫ユースカップを圧勝したバウチェイサーが、菊水賞→兵庫チャンピオンシップ(Jpn2)→兵庫ダービーと続く、3歳三冠路線の主役に躍り出た。

 

 

写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと

2022兵庫ウインターカップ レポート

2022年02月23日(水祝)

 

昨年から全国交流として名前も新たに生まれ変わった古馬重賞『第6回兵庫ウインターカップ』。
今年は、川崎から2頭、大井・浦和・笠松からそれぞれ1頭ずつの遠征馬5頭を交じえた12頭で争われた。

 

 

1番人気は、地元兵庫のサンロアノーク。大井から転入後3戦2勝。
前走はJRA交流「夢前川特別」を快勝し、新しい短距離界のエース候補として一躍名乗りを上げての参戦となった。
2番人気は、川崎のベストマッチョ。南関東の1400m戦線でハイレベルな戦いを繰り広げてきた馬。
一昨年の「兵庫ゴールドトロフィー」ハナ差2着の雪辱を期しての遠征。
3番人気は、浦和のトーセンレビュー。昨年のこのレース2着の後、名古屋と金沢で重賞を勝った馬。
昨年のリベンジを狙って2年連続の参戦。

 

その他にも、昨年5連勝で一気に名を上げ今年更なる飛躍が期待されるハナブサ、
10歳にして初タイトルを狙う大井のドリームキラリ、
兵庫時代に重賞6勝を挙げ今年は笠松籍として参戦のエイシンエンジョイ、
2019,20年連覇でこのレース3勝目を狙う地元生え抜きのナチュラリー、
中距離戦線を主戦場に重賞7勝を挙げて一時代を築いた生粋の兵庫馬マイタイザン、
ダートグレード4勝の10歳古豪ノボバカラなど、
12頭中タイトルホースが8頭、合計で重賞28勝という豪華なメンバーが揃った。

 

逃げ馬ナチュラリーを筆頭にテンのスピードが速い快速馬が揃った一戦は、序盤3頭が競り合う展開となり、大方の予想通りのハイペース。そんな中、好位イン4,5番手を追走していた川崎のインペリシャブル(鴨宮祥行騎手)が直線でうまく外に持ち出して差し切り優勝。10番人気馬の大金星。2着はベストマッチョ(川崎)、3着はサンロアノーク(兵庫)。
上位3頭は10番人気→2番人気→1番人気の決着で、三連単は69,320円という波乱の結果となった。

 

 

川崎のインペリシャブルは2019鎌倉記念、2020黒潮盃に続いて、重賞3勝目。
全国交流となって2年目で初めて他地区勢が勝利。川崎勢のワンツーフィニッシュともなった。

 

 

鴨宮祥行騎手は、2020ゴールドジュニア(笠松)をガミラスジャクソンで制して以来となる重賞5勝目。
地元重賞は2018園田チャレンジカップをセンペンバンカで制して以来2勝目で、姫路重賞は初制覇。兵庫ウインターカップも初制覇。

管理する高月賢一厩舎(川崎)は、兵庫重賞初制覇で、この勝利で地方通算1100勝を達成した。

 


(高月調教師不在のため、代理の兵庫・渡瀬調教師が記念写真に納まった)

 

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◆出走馬

    

1番 (川)インペリシャブル(高月)  鴨宮祥行騎手  10番人気

 

2番 (浦)トーセンレビュー (小久保)  田中学騎手  3番人気

 

 

3番 ハナブサ(森沢)  広瀬航騎手  4番人気

 

4番 (笠)エイシンエンジョイ(笹野)  藤原幹生騎手  7番人気

 

5番 マコトパパヴェロ (木村)  松木大地騎手  12番人気

 

6番 ナチュラリー (新子)  笹田知宏騎手  6番人気

 

7番 (大)ドリームキラリ(坂井)  下原理騎手  5番人気

 

8番 サンロアノーク (田中一)  吉村智洋騎手  1番人気

 

9番 (川)ベストマッチョ(佐々木)  井上幹太騎手  2番人気
(※長谷部駿弥騎手、疾病のため井上幹太騎手に変更)

 

10番 タガノラガッツォ (碇)  大山真吾騎手  11番人気

 

11番 ノボバカラ (柏原)  川原正一騎手  9番人気

 

12番 マイタイザン (木村)  杉浦健太騎手  8番人気

 

 

◆レース

吹く風は冷たく、気温5℃。「ウインターカップ」という名に相応しく、まだまだ寒さが残る中での大一番。
晴天の下、良馬場でスタートを迎えた。

 

 

【スタート】 バラバラのスタート。1インペリシャブル、6ナチュラリー、12マイタイザンの3頭が好発を切る一方、7ドリームキラリが大きく出遅れた。8サンロアノークや3ハナブサも後手を踏み、先陣争いに加わると思われた4エイシンエンジョイもやや遅れてしまった。

 

【スタンド前】 大方の予想通り、前は競り合う展開に。絶対に逃げたい6ナチュラリーに、大外から12マイタイザン、さらにその間から9ベストマッチョも加わり、3頭並んだ状態で4番手以下を離しながら1コーナーへ入っていく。

 

【2コーナー~向正面】 先頭から最後方まで15馬身以上という縦長の展開。6ナチュラリーが逃げて、9ベストマッチョは2番手。8サンロアノークは中団6番手。その2馬身後ろの7番手に2トーセンレビュー。出遅れたハナブサは後方3番手での競馬を余儀なくされた。

 

【向正面~3コーナー】 1番人気の8サンロアノークが早目に外から4番手まで押し上げる。1インペリシャブルはインで溜めたまま動かず、他馬が外から動く中で一旦ポジションを2つ下げる。

 

【3~4コーナー】 序盤から飛ばした3頭が粘りを見せる中、インで溜めていた1インペリシャブルの鴨宮騎手はタイミング良く12マイタイザンと8サンロアノークの間隙を狙って外へ進路を向ける。

 

【4コーナー~最後の直線】 6ナチュラリーが先頭で直線に向くが、すぐに9ベストマッチョが並びかける。外に持ち出した1インペリシャブル、さらに外から8サンロアノーク。これをマークしていた2トーセンレビューがその外へと持ち出し、後方待機だった3ハナブサは大外へ。

 

【最後の直線①】残り150mで 9ベストマッチョが先頭に立つ。外からは1インペリシャブルと8サンロアノークが伸びてくる。

 

【最後の直線②】先頭に立って必死の粘りを見せる9ベストマッチョに、1インペリシャブルが一気に襲い掛かる。

 

【最後の直線③】粘る9ベストマッチョに、外から8サンロアノークが追い込み、遅ればせながら馬群の間から7ドリームキラリも伸びてくる。

 

【最後の直線④】1インペリシャブルが残り50mで先頭に立ち、2着争いは9ベストマッチョと8サンロアノークの接戦。

 

【ゴールイン】1 3/4馬身差を付けて、1インペリシャブルが優勝のゴールイン。鴨宮祥行騎手は「自然と出た」ガッツポーズで会心の勝利を喜んだ。10番人気馬の勝利という波乱の結果に、姫路競馬場では2008年以来14年ぶりとなる3,000人超えのファンの歓声と溜息が入り混じった。

 

インペリシャブルは、元々2,3歳時に南関東で重賞を勝っていた実力馬。

近走成績から10番人気に甘んじていたが、確かな力を証明して見せた。

そして、好位のインでじっと我慢して4コーナーまでロスなく立ち回り、そこから絶妙のタイミングで外に持ち出して差し切った鴨宮騎手の好騎乗が光るレースでもあった。

 

<鴨宮祥行騎手 優勝インタビュー>  (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

 

優勝の鴨宮祥行騎手は、重賞5勝目。
2018年に金沢のイヌワシ賞(モズオトコマエ)で重賞初制覇を果たすと、その10日後に園田チャレンジカップ(センペンバンカ)を優勝して地元重賞初制覇。

その後、2020年に笠松で白銀争覇(エイシンエンジョイ)、ゴールドジュニア(ガミラスジャクソン)を勝っており、それ以来2年ぶりのタイトル奪取となった。

 

当日の売上10億4534万5300円は、姫路競馬場初の10億超えでレコード。(以前のレコード:9億1857万1500円 <2021/3/18>)
入場者数3,533人は、2008年7月21日の3,216人以来となる3,000人超。
コロナ禍でまん延防止等重点措置が出ている中ではあったが、祝日で今年の姫路開催最終週ということもあり多くのファンが今年最後の姫路競馬を楽しんだ。

 

写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと

2022白鷺賞 レポート

2022年02月03日(木)

 

西日本交流の古馬重賞『第51回白鷺賞』は、笠松と名古屋からの1頭ずつを加えた10頭で行われた。

 

2年連続年度代表馬に輝いたジンギ(橋本忠明厩舎)が、今年もこの白鷺賞から始動するとあって注目を集めた。

JRAオープン馬で移籍から強い競馬で連勝を飾ったシェダル(長南和宏厩舎)との初対戦の可能性もあったが、こちらは翌日の梅見月杯(名古屋)に出走を決めたことで、完全にジンギの1強ムードに。

レースは、単勝1.0倍の断然人気となったジンギが昨年同様に田中学騎手の騎乗で逃げ切って優勝、白鷺賞連覇を果たし、重賞9勝目となった。3歳時から4年連続の重賞制覇。

なお、兵庫重賞での単勝100円元返しは2019年楠賞(リンゾウチャネル(門別))以来。

 

 

白鷺賞の連覇は、アラブ時代のサチエノヒリユウ(1982,83年)以来39年ぶりのことで、当時騎乗していたのは騎手時代“園田の帝王”と称された田中道夫現調教師であり、田中道夫・学親子による同一重賞連覇の快挙ともなった。

 

騎乗した田中学騎手は白鷺賞連覇で2勝目。今年重賞3勝目で通算69勝目。
管理する橋本忠明調教師も白鷺賞連覇で2勝目。今年重賞2勝目で通算37勝目。

 

騎手の白鷺賞連覇は、岩田康誠騎手(2001,02)以来20年ぶり。
調教師の白鷺賞連覇は、阿部和男調教師(1982,83)以来39年ぶり。

 

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◆出走馬


1番 エイシンデジタル(新子)  下原理騎手  2番人気

 


2番 ディーグランデ (松平)  吉村智洋騎手  8番人気

 


3番 ユウキラフェール(碇)  杉浦健太騎手  6番人気

 


4番 エイシンミコノス(岡田)  長谷部駿弥騎手  10番人気

 


5番 ジンギ (橋本)  田中学騎手  1番人気

 


6番 アワジノサクラ (北野)  大柿一真騎手  5番人気

 


7番 (笠)リードザフィールド(栗本)  竹村達也騎手  9番人気

 


8番 タガノディグオ (新子)  笹田知宏騎手  4番人気

 


9番 エイシンイナズマ(平松)  永井孝典騎手  3番人気

 


10番 (名)サウンドテーブル (宇都)  廣瀬航騎手  7番人気

 

◆レース


【スタート】 9エイシンデジタルが好スタート。圧倒的人気の5ジンギは五分のスタート。2ディーグランデと1エイシンデジタルがやや後手を踏んだ。

 


【1周目3コーナー】 5ジンギが昨年同様にハナを奪い、9エイシンイナズマはジンギを行かせて2番手で抑える。8タガノディグオがインコースから3番手を伺い、6アワジノサクラが中団6番手。1エイシンデジタルは後方4番手となった。序盤は少し縦長の展開。

 


【1周目ホームストレート】 5ジンギがマイペースの逃げに持ち込み、馬群が少し凝縮。各馬折り合いに専念する中で、1エイシンデジタルがインコースから1コーナーまでにスルスルと5番手まで浮上する。

 


【1周目ゴール板前】 重賞デーらしくたくさんのファンが見つめる中、現役最強馬5ジンギを先頭に10頭が駆け抜けていく。

 

【2周目2コーナー】 大きな動きはなく、ペースは落ち着いたまま馬群は6馬身圏内に固まる。

 


【2周目3コーナー】 向正面から3コーナーにかけて各馬が一気に動きを見せ、逃げる5ジンギに迫っていく。中団にいた6アワジノサクラが大外からジワジワと脚を伸ばし始める一方、1エイシンデジタルは反応鈍く後方2番手まで下がってしまう。

 


【2周目4コーナー】5ジンギが9エイシンイナズマを2馬身離して直線に向かう。内に8タガノディグオ、外に6アワジノサクラの3番手2頭。

 


【最後の直線】地力に勝る5ジンギが後続を突き放す一方。9エイシンイナズマが粘り込みを図る所に、6アワジノサクラが追い上げ、ゴール前で2番手に浮上。8タガノディグオはやや脚色一杯に。

 

【ゴール】5ジンギが昨年同様に今年も7馬身差で盤石の勝利。白鷺賞連覇で重賞9勝目を挙げた。

2着は外から伸びた6アワジノサクラ。兵庫生え抜きで2年前は最下級C3クラスを走っていた馬がメキメキ力をつけて重賞で初めての連絡み。兵庫生え抜き馬のワンツーとなった。

3着は9エイシンイナズマが粘った。兵庫ユースカップ2着、菊水賞2着、兵庫ダービー3着とあと一歩のところで涙を呑んだ昨年。夏に船橋へ移籍も出走せずに笠松へ。東海地区で2戦するも勝利なく兵庫に復帰し、今回3戦目だった。復帰当初は精彩を欠いたが今回の3着で復調をアピール。高素質馬が揃う4歳世代の一角を担う。

昨年の摂津盃の優勝馬で2番人気の支持を受けた1エイシンデジタルは、勝負所で置かれてしまったことも響き、7着に終わった。

 

優勝の田中学騎手は、兵庫クイーンセレクション(ニネンビーグミ)、黒潮スプリンターズカップ(イグナイター)に続き、今年早くも重賞3勝目。

田中学騎手 優勝インタビュー

橋本忠明調教師 優勝インタビュー

 

現役最強の力を誇示したジンギは、次走、昨年同様に名古屋大賞典(Jpn3 名古屋1900m)を見据える。

昨年4着のリベンジを果たし、弥冨への移転前最後となる名古屋のビッグレースを制するシーンを期待したい。

 

 

写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと

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