2025 園田FCスプリント レポート

2025年06月19日(木)

2010年まで行われた園田フレンドリーカップから生まれ変わって今年で15回目となる820m重賞「園田FCスプリント」。6年ぶりに佐賀からも参戦可能となった昨年は、その佐賀代表・オールスマートが快勝を収めた。

今年は高知から3頭、佐賀から2頭を
迎えてのフルゲート12頭立て。高知のダノンジャスティスは5年連続の参戦となった(過去は3着、2着、3着、4着といずれも好走)。
ここまでの戦績は、兵庫7勝、高知5勝、佐賀3勝(※2018年は高知と佐賀の1着同着)。今年も各地から選りすぐりのスピード自慢たちが集結した。

今年も全国交流として行われ、船橋から2頭、大井から1頭の計3頭の遠征馬が参戦。重賞ホースも6頭出走するなど、実力拮抗のメンバーが揃った。

1番人気は、単勝オッズ1.3倍の圧倒的な支持を集めた兵庫のスマートセプター。
これまで1230m戦では6戦6勝、いずれも他馬を寄せつけぬ圧勝劇を演じてきた。今回は満を持して初めての820m戦に挑む。スタートダッシュ力がより問われる舞台だが、これまでの圧勝ぶりから大きな期待が集まった。永島太郎厩舎はルクスランページと二頭出しでの重賞初制覇を目論む。

2番人気に推されたのは、単勝5.3倍のゴールドボンド。
園田820mと姫路800mを合わせて8勝を誇る、兵庫が誇る韋駄天スプリンターだ。
抜群のスタートを武器に、ワンターンの短距離戦を逃げて押し切るスタイルで数々の勝ち星を積み上げてきた。絶好の2番枠を引き、理想的な展開が見込まれる。兄エコロクラージュに続くタイトルホースを目指す。

3番人気は、単勝8.7倍で高知の3歳牝馬ユアマイドリーム。
高知の重賞では2戦ともに7着に敗れたものの二の脚の速さは折り紙付きで、今回ワンターン戦への適正を見込んでの遠征となった。3歳牝馬ゆえに負担重量は53kg。軽量を味方にそのスピードがどこまで歴戦の古馬に通用するかに注目が集まった。

さらに、昨年地元最先着の3着だったルクスランページ4番人気(単勝9.5倍)で続き、5番人気以下は34倍以上と大きく離されていた。

出走馬

1番 (高)ダノンジャスティス (高)畑中信司騎手
2番 ゴールドボンド 小牧太騎手
3番 (高)ユアマイドリーム (金)吉原寛人騎手
4番 ケンジーフェイス 田野豊三騎手
5番 ルクスランページ 長谷部駿弥騎手
6番 (高)カレンロマチェンコ (高)赤岡修次騎手
7番 トリニティノット 中田貴士騎手
8番 ディアタイザン 鴨宮祥行騎手
9番 リケアサブル 大山龍太郎騎手
10番 スマートセプター 下原理騎手
11番 (佐)ラインガルーダ (佐)金山昇馬騎手
12番 (佐)アビエルト (佐)山下裕貴騎手

レース

スタート
向正面
3コーナー
3~4コーナー
4コーナー~最後の直線
最後の直線
最後の直線
最後の直線

ゴールイン

梅雨入りしてすぐは雨が降った近畿地方だが、わずか1週間で梅雨前線は一旦消滅。この週から始まった“そのだサマー競馬”に合わせるかのように気温が上昇し、一気に真夏のコンディションとなった。隣接する豊中市で最高気温は33.6℃を記録。灼熱の乾いた砂の上で4ハロンの電撃戦が繰り広げられた。

820mで何より大事なスタートは、カレンロマチェンコが遅れた以外はほぼ揃った飛び出し。外でスマートセプター抜群スタートを見せ、内からはダッシュ良くゴールドボンドが飛び出して主導権を奪いにいく。しかし、二の脚がついたユアマイドリームがゴールドボンドに並びかけるとスピードを見せて3コーナーまでに外から被せるように先頭を奪った。2番手は内にゴールドボンド、外にスマートセプターで、その1列後ろにディアタイザンとラインガルーダが並走。ルクスランページは6番手中団。その後ろはダノンジャスティス、ケンジーフェイス、トリニティノット、リケアサブルの4頭一団となり、後方追走がアビエルト、カレンロマチェンコとなった。

4コーナーで後続を2馬身離したユアマイドリーム。直線に向いてもその勢いは最後まで衰えず、結局1馬身半差で逃げ切り勝利を収めた。820mの舞台で見事に重賞初制覇を成し遂げた。

2着争いは人気を集めた地元馬2頭で、クビ差競り勝ったスマートセプターが2着、ゴールドボンドが3着。追い込んできたルクスランページそこから2馬身差の4着に入った。

◆高知のユアマイドリームは重賞3度目の挑戦で初制覇。3歳牝馬による園田FCスプリント制覇は史上初。牝馬による戴冠は4頭目。高知勢は、13エプソムアーロン, 15サクラシャイニー, 18カイロス(1着同着), 21ダノングッド, 22ダノングッドに続く勝利で同レース6勝目。

獲得タイトル

2025 園田FCスプリント

◆吉原寛人騎手は重賞通算188勝目(地方187勝、中央1勝)で、今年9勝目。兵庫重賞は昨年の兵庫ゴールドトロフィー(フォーヴィスム)に続き、通算12勝目。
6月8日の東北優駿(水沢)を皮切りに、笠松、金沢、川崎、園田と12日間で重賞5勝の大活躍。

◆工藤真司厩舎は重賞通算6勝目。今年3勝目。
兵庫重賞は今年1月の兵庫クイーンセレクション(ドライブアウェイ)以来2勝目で、園田重賞は初制覇。

◆吉原寛人騎手 優勝インタビュー◆
 (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

初めてのコンビとなった吉原寛人騎手が、3歳牝馬を初タイトルにエスコートした。

「速かったですね。初めてだったんでスタートが合うか心配でしたが、五分くらいには出てくれて、二の脚も付いてくれたので良かったです。小牧さん(ゴールドボンド)が結構速かったんでそこから並びかけるのはどうかなと思ったんですが、あまり2番手では進めたくなかったので、抜くまで行ってくれて『これは楽しみだな』と4コーナー回ってこられました。本当に速い馬だなとつくづく思いましたし、直線も反応してくれていたので、これなら斤量差もあったので交わされないかなと思いました」

53kgという軽量が生きたこともあっただろうが、彼女の印象を問われると、改めて「速いなぁ~!」と笑ったように、ユアマイドリームの天性のスピードに名手も舌を巻いていた。

吉原寛人騎手は、わずか12日間のうちに異なる競馬場で重賞5勝という離れ業をやってのけた。

6/8 水沢 東北優駿 (リケアカプチーノ)
6/12 笠松 ぎふ清流カップ (ケイズレーヴ)
6/15 金沢 石川優駿 (ビバロジータ) 
6/17 川崎 スパーキングスプリント (エンテレケイア)
6/19 園田 園田FCスプリント (ユアマイドリーム) 

先月末に第一子となる長女が誕生した吉原寛人騎手。
「子供が生まれてから調子良いので、娘のおかげかなと思います。パワーを貰いますし、癒されています」と目尻を下げた。

これまで14回行われたこのレースでは、8歳以上の馬が半分の7勝を挙げるなど、高齢馬の活躍が目立つ一方で、若い馬が苦戦。4歳馬の勝利はわずか1回、3歳馬に至っては過去5頭しか出走がなかったとはいえ、いずれも9着以下と苦戦していた。
しかし、今年はそのジンクスを覆して、3歳馬ユアマイドリームが園田FCスプリントの歴史に名を刻んだ。

総評

ユアマイドリームを管理する工藤師は、「高知での新馬戦と2戦目で800m戦を勝った時に、出脚は普通ですが二歩目三歩目が他より速く、2歳にしては優秀な時計で走っていたので、この距離が一番向くだろうと思っていました。このレースに選ばれて良かったです。強いメンバーでどれだけその速さが活かせるか、チャレンジ精神で挑みました。自分が思っていた通りに乗ってくれて、馬もそれに応えてくれて本当に嬉しかったです」とレースを振り返った。
「最後まで差してくる馬もいますし、周りはやっぱりオープンのこの路線で走ってきた強い馬たちばかりなので、最後まで気は抜けなかったです」と話す一方、「3コーナーで息も入れられて、最後の直線粘れたのは、吉原君の腕あってのものだと思っています」と初コンビの鞍上を称賛。
「高知だと不良馬場が向くんですが、園田は雨が降ると重くなるので、園田だと良馬場が良いと思っていました」と話した通りの馬場で、天も味方した。
スーパースプリント戦への適性を示し、「この勝利は自信になります」と今後に向けて収穫の大きい一戦となった。

輸送には不安はないタイプとのことで、「3歳で斤量も活かせるレースがあったら、短いレースを中心に今後も他地区への遠征も視野に取り組んでいきたい」と意欲を見せた。
次走については、7月12日(土)に行われる3歳の準重賞「魚梁瀬杉(やなせすぎ)特別」(高知1300m)が青写真として元々あったそうだが、「今回で800mに適性があるのがはっきり分かったので、吉原騎手にもアドバイスをもらいながらオーナーと相談して決めたい」と話した。

今回は吉原騎手が手綱を取ったが、元々ユアマイドリームの主戦を務めていたのは2年目の城野慈尚(しろのちかなお)騎手。
「慈尚自身もユアマイドリームに乗りたいという気持ちでいてくれています。慈尚も成長してきていますし、帰ったらまたお願いしようと思っています」と、工藤厩舎所属のホープに手綱を戻す予定とのことだ。


競馬場ごとに格付けの基準が異なるとはいえ、前走でC3クラスを走っていた馬が重賞を制した。
「過去このレースで3歳牝馬の結果が出ていないのは知っていましたが、チャレンジしないと適性も分からないですし、高知で一般戦の勝ち鞍はたくさんあったのでもしかしたら選んでもらえるチャンスがあるかもしれない」と出走登録したとのことだが、馬の適性を見抜いて果敢に挑戦を決めた陣営の慧眼は見事であり、結果を残したことで高知競馬の層の厚さを改めて印象づける勝利となった。
史上初の3歳馬勝利で、来年以降も適性を見込んで挑戦してくる3歳馬が現れるかもしれない。

今回2着に敗れたスマートセプターは、本来なら1230m戦で無類の強さを誇る実力馬。秋の兵庫ゴールドカップでの巻き返しは必至と見ていい。
一方、3着のゴールドボンド自身は1230m戦への参戦は微妙だが、その兄エコロクラージュが連覇を目指して出走してくれば、注目のスピード対決が実現するかもしれない。

短距離スペシャリストたちの戦いは、秋の1230mへと続いていく。


 文:三宅きみひと
写真:齋藤寿一  

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