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2022 西日本ダービー レポート

2022年09月15日(木)

 

◆重賞『第7回西日本ダービー』(園田1870m) ◆

兵庫、佐賀、金沢、高知、笠松、名古屋の西日本6場の持ち回りで実施されている西日本ダービー。

各々所属競馬場の生え抜き馬による限定戦ながら、西日本チャンピオンを決めるレースとして毎年注目を集める一戦。

6年かけ西日本の競馬場を一周し、今年また園田に舞台が戻ってきた。

 

 

1番人気はスーパーバンタム(金沢)、単勝1.3倍の断然人気だった。金沢三歳四冠のうち、出走した北日本新聞杯と石川ダービーの二冠制覇を成し遂げるなど、今年負けなしの6戦6勝。重賞4連勝中で、昨年末からは7連勝中。今回、Wダービー制覇をかけての遠征となった。

 

2番人気は単勝7.3倍で地元兵庫のベルレフォーン。兵庫三冠の一冠目、菊水賞を豪脚で差し切って勝利。その後、兵庫チャンピオンシップ、兵庫ダービーと奮わずに敗れた後、クリスタル賞も1番人気ながら6着。今回、一度叩かれての上積みが期待された。

 

3番人気は単勝7.7倍でスターフジサン(金沢)。去年スーパーバンタムに勝ったこともあったが、今年の石川ダービー、加賀友禅賞では完敗。しかし、スーパーバンタム不在の前走、金沢四冠の最後となるサラブレッド大賞典で重賞初制覇を果たし、そこから中10日という強行軍での遠征となった。

 

去年の兵庫若駒賞でガリバーストームにクビ差まで迫ったピロコギガマックスが単勝12.2倍の4番人気。さらに、デビューから8戦オール連対で重賞初挑戦のアイファーファイト(名古屋)が単勝21.4倍の5番人気で続いた。

 

 

9月も中旬というのに真夏がぶり返したような暑さ。上空は晴れて実況席の気温も33℃に達する中、良馬場でスタートが切られた。

 

スーパーバンタム(金沢)が好スタートを決めて一旦は先頭に立つかに思われたが、内からフィールマイラヴ(高知)が出てきてハナを主張すると、すんなり譲って2番手で落ち着いた。3番手にピロコギガマックスが取り付き、中団6番手にベルレフォーン、その後ろにスターフジサン(金沢)となって、道中はスローペースで淡々と流れた。

 

大きな動きがないまま2周目の3コーナー手前でスーパーバンタムが逃げるフィールマイラヴに並んで、そのまま馬体が合ったまま直線へ。2頭の追い比べが長く続いたが、ゴール手前で勝負根性を見せたスーパーバンタムがクビ差だけ前に出て優勝。スーパーバンタムは8連勝。今年無敗。他地区での重賞は初勝利で、重賞5連勝となった。

金沢勢の西日本ダービー優勝は初めて。

 

道中中団待機のアイファーエポックがゴール前で一気に差し込むも、フィールマイラヴが2着はギリギリ確保し、アイファーエポックはアタマ差の3着。

2番人気の菊水賞馬ベルレフォーンは中団追走から伸びを欠き、7着に終わった。

 

上位3頭は1番人気→8番人気→6番人気の決着で、三連単は23,650円だった。

 

 

スーパーバンタムは、重賞5連勝。
今年7戦7勝の無敗で、昨年末からの連勝を8に伸ばした。

 

<獲得タイトル>
2022 ノトキリシマ賞(金沢)
    北日本新聞杯(金沢)
    石川ダービー(金沢)
    加賀友禅賞(金沢)
    西日本ダービー(園田)

 

 

 

青柳正義騎手は重賞通算23勝目。
兵庫重賞は7度目の挑戦で初制覇。
西日本ダービーは初制覇。

 

 

鈴木正也厩舎の兵庫重賞勝利は、2007年兵庫牝馬特別をチヨノドラゴンで制して以来で2勝目。
西日本ダービーは初制覇。

 

 

 

レース結果はこちら>>>(NAR 地方競馬情報サイト)

 

 

 

 

◆出走馬

 

1 (名)アイファーファイト(倉地学)  長谷部駿弥騎手 5番人気

 

2 (高)フィールマイラヴ(目迫大輔) 塚本雄大騎手 8番人気

 

3 (笠)アイファーエポック (加藤幸保)  渡邊竜也騎手 6番人気

 

4 ベルレフォーン (新子) 下原理騎手 2番人気

 

5 (名)ローザキアーロ (角田輝也)  村上弘樹騎手 12番人気

 

6 (笠)ナンジャモンジャ (大橋敬永)  藤原幹生騎手 10番人気

 

7 (金)スターフジサン (加藤和義) 吉原寛人騎手 3番人気

 

8 (佐)ミヤノランオー (東眞市)  鴨宮祥行騎手 11番人気

 

9 (金)スーパーバンタム (鈴木正也)  青柳正義騎手 1番人気

 

10 (高)マオノウイッシュ (工藤真司)  田中学騎手 7番人気

 

11 (佐)ライジングセーラ(北村欣也)  出水拓人騎手 9番人気

 

12 ピロコギガマックス(南)  杉浦健太騎手 4番人気

 

 

 

 

 

◆レース

気温33℃、再び真夏の暑さがぶり返した中、馬場状態「良」でスタートが切られた。

 

【スタート】 9スーパーバンタムがトップスタート。1アイファーファイトが1馬身ほど遅れた。

 

【1周目向正面】 スタート直後に1馬身抜け出し、そのまま逃げていくかに思われた9スーパーバンタムだったが、スタートで若干後手を踏んだ2フィールマイラヴが気合をつけられて先頭へ。外からは出鞭も入った12ピロコギガマックスが3番手に付け、その内4番手に10マオノウイッシュ。その1馬身半後ろから6ナンジャモンジャ。

 

【1周目3コーナー】 外の4ベルレフォーンと内の3アイファーエポックが並んで中団を追走。その後ろから7スターフジサン。1アイファーファイト、11ライジングセーラと続いた。

 

【1周目スタンド前①】 5ローザキアーロが内から1頭抜いて後方3番手に上がり、最後方から8ミヤノランオーが追走。馬群全長は12馬身圏内で進む。

 

【1周目スタンド前②】 各競馬場の看板を背負って参戦の12頭が西日本ダービーの装飾が施されたゴール板前を通過、あと1周。

 

【2周目2コーナー~向正面】 大きく隊列は変わらず、比較的落ち着いた流れのまま2周目へ。

 

【2周目3コーナー】3コーナー手前で仕掛けられた9スーパーバンタムが逃げる2フィールマイラヴに馬体を併せていく。3番手は3頭。10マオノウイッシュが食い下がるところに、内から12ピロコギガマックスに代わって3アイファーエポックが上がってきて、外に4ベルレフォーン。

 

【最後の直線①】 内の2フィールマイラヴと外の9スーパーバンタムが馬体を併せての追い比べ。

 

【最後の直線②】外から赤い帽子の3アイファーエポックが前の2頭に迫り、内ラチ沿いからは白い帽子の1アイファーファイトも脚を伸ばす。

 

【最後の直線③】 2フィールマイラヴと9スーパーバンタムの猛烈な競り合い。

 

【最後の直線④】 塚本騎手と青柳騎手が馬を懸命に鼓舞。残り50mでもまだ2頭の追い比べは続く。

 

【最後の直線⑤】 高知vs金沢、西日本チャンピオンを懸けた意地のぶつかり合いに、笠松と名古屋も加わらんとする。

 

【最後の直線⑥】 ゴール直前、9スーパーバンタムがわずかに2フィールマイラヴの前に出たその刹那、3アイファーエポックも一気に2頭に襲い掛かる。

 

【ゴールイン】クビ差で9スーパーバンタムが重賞5連勝のゴールイン。2着は2フィールマイラヴで、アタマ差まで迫った3アイファーエポックが3着。1アイファーファイトが4着で、10マオノウイッシュが5着。前走サラブレッド大賞典で重賞初制覇の7スターフジサンは6着で、地元期待の菊水賞馬4ベルレフォーンは直線伸びきれず7着。もう一頭の地元馬12ピロコギガマックスは勝負所でついていけずに8着に敗れた。

 

 

 

金沢のダービー馬が、石川ダービー&西日本ダービーのWダービー制覇を成し遂げた。

過去6回は、兵庫3勝・高知2勝・佐賀1勝。今回初めて金沢勢が西日本ダービーを制した。

 

 

デビューは昨年6月。新馬戦は6頭立ての5番人気。スタート後に内側に逸走して騎手を振り落として競走中止というほろ苦いデビューだった。9月に4戦目でようやく初勝利を挙げるとJRA認定戦で2勝目。その勝ちっぷりから、初の重賞挑戦となった「金沢シンデレラカップ」は1番人気に支持されたほど。そこでは4着に敗れたものの、その後から無敗の快進撃が始まった。

 

2歳の暮れに3勝目を挙げると、冬季休養を挟んで3月から復帰。3歳A1連勝で臨んだ「ノトキリシマ賞」で重賞初制覇。
その後、「北日本新聞杯」「石川ダービー」と二冠制覇を遂げ、金沢三歳最強馬となった。
そして、2ヶ月弱の休養からの復帰戦となった「加賀友禅賞」(1着)をひと叩きして臨んだ今回。初めての他場遠征も克服して、金沢に初めて「西日本ダービー馬」の称号をもたらした。

 

 

「仕上がりは良かった。輸送がどうかと思ったが、思ったほど体重も減らなかったので良かった」と鈴木師が話した通り、473kgの馬体重は前走から-3kg。残暑厳しい中、初の長距離輸送だったが、力が発揮できる状態でレースを迎えることができた。

 

青柳騎手は、「距離が長いので外々を回らされる展開は嫌だなと思ったので、ハナか2番手を取れれば」と理想通りの2番手で折り合いも良く進めた。

「このペースなら後ろは多分ないだろう」と相手を逃げ馬に絞り、「前回ほどの手応えがなかったのでちょっと早めに動いた」と3コーナー手前から仕掛けた。しかし、スローペースで逃げていたフィールマイラヴも脚を残しており「ヤバい」と思った直線だったが、「最後は勝負根性で交わしてくれた。馬に感謝です」とタフなレースを勝ち切った愛馬を労った。

 

「道中落ち着いて回って、脚を溜められるようになった点はすごく成長した」(青柳騎手)、「すごい成長している、精神的にも。ビックリしています」(鈴木師)と連勝の中でもさらにパワーアップしているようだ。

 

 

 

青柳正義騎手 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

 

鈴木正也調教師 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

 

 

 

次走のプランについて問われると、「ありません!これ一本だったので」と西日本ダービーに全力投球だったと鈴木師。

“3歳秋のチャンピオンシップ”の一戦ということで、10/2(日)のダービーグランプリ(盛岡2000m)への声も掛かるだろうが、次走については「馬の状態を見ながらこれから考える」とのことだ。

 

「金沢には牝馬で最強のハクサンアマゾネスがいる」と青柳騎手は、ここまで重賞13勝を挙げている2歳年上の石川ダービー馬の名前を挙げた。「ゆくゆくは対戦することになるが、恥じないレースをしたい」と金沢最強馬の座も見据えている。

 

 

この世代の3歳限定戦も数少なくなってきたが、兵庫には11/2(水)に3歳馬の全国交流重賞「楠賞」(1400m)がある。
スーパーバンタムが再び遠征してくれば主役候補の一頭になるのは間違いないだろう。

 

次は、地元戦か遠征か・・・金沢のニューヒロインに熱視線を送りたい。

 

 

 

写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと

2022 園田オータムトロフィー レポート

2022年09月08日(木)

 

◆重賞『第5回園田オータムトロフィー』(園田1700m) ◆

9月は重賞が5つも組まれている園田競馬場。その皮切りとなったのが、地方競馬3歳秋のチャンピオンシップの一戦と位置付けられた「園田オータムトロフィー」だ。

兵庫ダービー馬バウチェイサーを中心とした春の上位勢力に、トライアルのクリスタル賞でデビューから6連勝を飾ったエコロクラージュなどの上がり馬も加わって10頭で争われた。

 

 

1番人気はバウチェイサー。前走は果敢に大井のJpn1ジャパンダートダービーに挑戦し13着に敗れたが、ここまで兵庫ダービーをはじめとして重賞3勝を挙げた実力は3歳屈指。単勝1.9倍の人気はダービー馬の証でもある。

 

2番人気は単勝2.9倍でエコロクラージュ。トライアルのクリスタル賞を勝ってデビューから無傷の5連勝。未知の魅力に期待が集まった。

 

3番人気は単勝8.2倍でシュルヴィーヴル。
クリスタル賞は、道中最後方追走ながら3着。勝負所から何度か前が詰まるシーンがありながら、直線で見せた末脚に光るものがあった。

 

兵庫ダービー3着馬ローグネイションが単勝13.5倍の4番人気。さらに、園田ジュニアカップ2着馬で春の不振を脱したアンサンが単勝21.4倍の5番人気で続いた。

 

 

当日は、ヤングジョッキーズシリーズトライアルラウンド園田も行われ、場内は賑わいを見せていた。
雨の予報も出ており1日中曇天だったが、幸い雨は降ることなく良馬場でスタートが切られた。

 

ウインドケーヴがロケットスタートを決めてすんなりハナ、スタート後の3コーナーで一気に先頭の外まで並んでいったダービー馬バウチェイサーだったが2番手で抑えた。エコロクラージュは好位イン3番手の絶好位を取り、道中はスローペースで淡々と流れた。

 

大きな動きがないまま2周目の4コーナー。バウチェイサーの動きは鈍く、逃げるウインドケーヴに並べないまま直線へ。
直線に向くと一完歩ずつ脚を伸ばしたエコロクラージュが逃げ粘るウインドケーヴを内から抜いて先頭に立ち、そのまま無傷の6連勝を飾った。
エコロクラージュは重賞初めての挑戦での優勝となった。

 

しぶとい粘り腰でウインドケーヴが2着。重賞では兵庫ユースカップに続く2度目の2着となった。
3着には中団インをロスなく立ち回っていたアンサンが直線で差し込んだ。

1番人気の兵庫ダービー馬バウチェイサーは6着に終わった。

 

上位3頭は2番人気→8番人気→5番人気の決着で、三連単は26,970円だった。

 

 

エコロクラージュは、重賞初挑戦で初制覇。
デビュー6連勝でタイトルホースとなった。

 

<獲得タイトル>
2022 園田オータムトロフィー(園田)

 

 

 

吉村智洋騎手は重賞通算37勝目。
今年は新春賞、はがくれ大賞典(佐賀)、摂津盃に続き4勝目。
園田オータムトロフィーは初制覇。

 

 

 

保利良平厩舎は重賞3勝目。
2021年園田チャレンジカップをコウエイアンカで制して以来の重賞制覇。
園田オータムトロフィーは初制覇。

 

 

レース結果はこちら>>>(NAR 地方競馬情報サイト)

 

 

 

◆出走馬

 

1 エコロクラージュ(保利平) 吉村智洋騎手 2番人気

 

2 ウインドケーヴ (柏原) 川原正一騎手 8番人気

 

3 アンサン (木村) 大山真吾騎手 5番人気

 

4 シュルヴィーヴル (北野) 広瀬航騎手 3番人気

 

5 エイシンクエーサー (橋本) 田中学騎手 7番人気

 

6 サラヘレン (新井) 田野豊三騎手 9番人気

 

7 ベラジオサキ (栗林) 鴨宮祥行騎手 6番人気

 

8 ローグネイション (田中範) 杉浦健太騎手 4番人気

 

9 バウチェイサー (新子) 笹田知宏騎手 1番人気

 

10 ホクザンゴールド (橋本) 下原理騎手 10番人気

 

 

◆レース

気温は28℃くらい、吹く風に少しずつ秋の気配も感じられるようになってきた中、馬場状態「良」でスタートを迎えた。

 

【スタート】 2ウインドケーヴが抜群のスタート。4シュルヴィーヴルが半馬身ほど遅れた。

 

【1周目3~4コーナー】 すんなり逃げた2ウインドケーヴ。その外から9バウチェイサーが五分のスタートから気合をつけられて2番手に取り付いた。1エコロクラージュが3番手インを取り、その外に6サラヘレン。外から折り合いを欠いて8ローグネイションが中団に上がり、その内に3アンサン。

 

【1周目スタンド前】 5エイシンクエーサーが差しに構え、後方勢は3頭横並び。内4シュルヴィーヴル、中7ベラジオサキ、外10ホクザンゴールド。

 

【2周目2コーナー】 馬群は7馬身圏内に固まって、スローペースで2周目へ。

 

【2周目向正面~3コーナー】向正面半ばから徐々にペースが上がるが、大きく馬順は変わらず。

 

【2周目3~4コーナー】 逃げる2ウインドケーヴはまだまだ楽な手応え。9バウチェイサーはやや手が動いての2番手。1エコロクラージュは外には出さずに内で溜めながら直線へ向かう。3アンサンが内をロスなく立ち回って、前との差を詰めにかかる。

 

【最後の直線①】直線内を狙った1エコロクラージュが逃げ粘る2ウインドケーヴの内側から馬体を併せる。9バウチェイサーは前との差を詰められず3番手に遅れた。

 

【最後の直線②】1エコロクラージュが残り100mで力強く先頭に立つ。直線外に持ち出された3アンサンが9バウチェイサーを捉えて3番手に浮上。さらに外から4シュルヴィーヴル、7ベラジオサキの後方待機勢が伸びてくる。

 

【最後の直線③】 1エコロクラージュが完全に抜け出し、2ウインドケーヴが2番手でしぶとく粘る。

 

【ゴールイン】1馬身半差で1エコロクラージュが6戦6勝のゴールイン。重賞初挑戦で初制覇を果たした。2着は2ウインドケーヴ。その2馬身後方で3アンサンが3着。外から2頭併せ馬で追い込んできた7ベラジオサキが4着で、4シュルヴィーヴルが5着。ダービー馬の9バウチェイサーは6着に敗れた。

 

 

 

 

エコロクラージュは、2歳時は体質が弱くてレースに使えず、デビューは2月の姫路戦だった。
そこから無傷の4連勝を飾ったが、賞金面でも兵庫ダービーには間に合わず。

 

「ダービーは出られなかったのでなんとか秋に大きい所を」との思惑で秋に備えて早目に休養に出し、成長を促したことが奏功した。

 

復帰戦のクリスタル賞では、初の1700mで、初めて好位に控える競馬。
勝負所で砂を被り、直線で前が狭くなりながら間を割る根性も見せて勝利した。
これまで経験したことがない競馬を全部まとめてクリアした姿に、保利師は「春先からグンと状態が良くなったのが分かった。ポテンシャルが高い」と太鼓判を押していた。

さらに、最終追い切りでの迫力満点の姿を披露し、“これならダービー馬にもきっと勝てる!”と陣営は自信を持って臨んだ本番だった。

 

 

レースは、「想定通り」(吉村騎手)の好位イン3番手を取り、「終始手応えも良かった」中で迎えた直線。

「川原騎手(ウインドケーヴ)が内にステッキを持ち替えたので、内が開くなと思った」と冷静な判断でインを突くと、「直線半ばでも余裕があった」と振り返る完勝だった。

デビューから無傷の6連勝に「地元デビューの馬でここまで来られたのは嬉しい」と、兵庫生え抜きの愛馬に目を細めた。

 

保利師も、「まだ奥が深い。厩舎を引っ張っていって欲しい」と大きな期待を寄せる。

 

 

 

吉村智洋騎手 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

 

保利良平調教師 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

 

 

 

レース翌日の状態も全く問題なく元気一杯とのこと。
次は、状態面を見ながら、9/27(火)の秋の鞍(名古屋1500m)か10/2(日)のダービーグランプリ(盛岡2000m)を目指す。

“3歳秋のチャンピオンシップ”の兵庫チャンピオンが、他地区代表馬との頂上決戦の舞台に上がる姿が見られるかもしれない。

 

吉村騎手が勝利騎手インタビューで「センスの塊」という言葉を何度も使ったように底知れぬ可能性を秘めた3歳馬。

 

「センスで走っている感じなのでまだ伸びしろもある、世代を代表する馬になっていける。」

 

無敗の連勝記録がどこまで伸びるのか、そしていずれ訪れるであろうジンギやシェダルといった兵庫を代表する古馬との対戦も今から楽しみだ。

 

 

 

写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと

第29回ゴールデンジョッキーカップ レポート

2022年09月07日(水)

◆第29回ゴールデンジョッキーカップ◆

 
9月7日(水)、通算2000勝以上の騎手による名手の祭典「第29回ゴールデンジョッキーカップ」が開催された。

コロナ禍による中止を挟んで3年ぶりの開催となった今回、出場資格のある地方競馬32名・中央競馬8名の中から選ばれし12名が園田競馬場に集結した。

 

最年長は川原正一騎手63歳、最年少は山本聡哉騎手34歳。
12人の勝利数合計は実に47600勝以上という豪華絢爛なメンバーだ!

 

 

 

◆出場騎手◆

岩田康誠騎手(JRA) 出場:3大会連続18回目

 

戸崎圭太騎手(JRA) 出場:5大会連続8回目

 

福永祐一騎手(JRA) 出場:4大会連続4回目

 

山本聡哉騎手(岩手) 初出場

 

森泰斗騎手(船橋) 初出場

 

岡部誠騎手(名古屋) 出場:4大会連続8回目

 

赤岡修次騎手(高知) 出場:9大会連続9回目

 

山口勲騎手(佐賀) 出場:11大会連続12回目

 

川原正一騎手(兵庫) 出場:21大会連続21回目

 

下原理騎手(兵庫) 出場:4大会連続4回目

 

田中学騎手(兵庫) 出場:5大会連続9回目

 

吉村智洋騎手(兵庫) 初出場

 

 

 

◆第1戦 ファイティングジョッキー賞 (1230m)◆

 

第1戦ファイティングジョッキー賞は、2番手追走から抜け出した福永祐一騎手(JRA)のサトノアヴァロンが勝利。
福永騎手がまずは20Pを獲得。

 

好位追走からゴール前で2着に浮上した岩田康誠騎手(JRA)が15P。
道中果敢に逃げを打った初出場の吉村智洋騎手(兵庫)が3着に粘って13Pを獲得した。

 


出場の過去3回は5位8位9位と奮わなかった福永祐一騎手が、初優勝に向けてまずは幸先よく初戦に勝利。
なお、サトノアヴァロンを管理する中塚猛調教師はこの勝利が通算1120勝目。
保利照美調教師の記録を抜いて、兵庫県競馬調教師の通算勝利数歴代単独7位に浮上する勝利ともなった。

 

 

◆第2戦 エキサイティングジョッキー賞 (1400m)◆

 

第2戦エキサイティングジョッキー賞は、2番手追走から抜け出して最後赤岡修次騎手(高知)の猛追をクビ差しのいだ下原理騎手(兵庫)のメイショウコハギが勝利。過去このコンビで5勝という騎乗経験豊富なお手馬を抽選で引き当てた下原騎手、その幸運をしっかり勝利に結びつけるのだからさすがは名手。1,2戦合計30Pとしてポイントトップに立ち、初優勝を視界に捉えた。

 

2着は道中は好位インコースでレースを進めた赤岡修次騎手。合計22Pとして3位に浮上。
3着は初戦2着だった岩田康誠騎手(JRA)で28Pとし、トップとわずか2P差の2位につけた。

 

第2戦を終えて、8位の岡部誠騎手(名古屋)までが優勝のチャンスを残して最終戦へと向かった。

 

 

◆第3戦 チャンピオンジョッキー賞 (1700m)◆

 

第3戦チャンピオンジョッキー賞は、好位インコースをロスなく進んだメイショウフウカの森泰斗騎手(船橋)が難なく抜け出して勝利。
第2戦終了時点でポイントトップだった下原騎手は11着、2位だった岩田騎手は12着でポイントが伸びなかったこともあり、6位タイだった森泰斗騎手が合計37Pとして、見事逆転優勝を果たした。
2着は山本聡哉騎手(岩手)、3着は山口勲騎手(佐賀)で大きくポイントを獲得したものの、第2戦までの低迷が響き、上位進出はならず。

 

森泰斗騎手に次ぐ2位は、合計32Pで2人が並ぶも、規定により1着のある下原理騎手。赤岡修次騎手が3位という結果に。

 

森泰斗騎手は、初出場初優勝の快挙!
これは、2011年度の第20回大会で横山典弘騎手(JRA)が記録して以来、9大会ぶりで10人目。 

 

 

総合優勝は、森泰斗騎手(船橋)。船橋競馬所属騎手の優勝は、第5回大会の石崎隆之騎手以来2度目のこと。

第2位は、下原理騎手(兵庫)。出場した過去3回は8位10位12位と奮わなかったが、4度目の出場で初の表彰台。

第3位は、赤岡修次騎手(高知)。第22回大会の3位に続く2度目の表彰台となった。

 

 

写真:斎藤寿一

文:三宅きみひと

2022 摂津盃 レポート

2022年08月12日(金)

 

◆重賞『第54回摂津盃』(園田1700m) ◆

お盆シリーズ恒例のハンデ重賞「摂津盃」、今年は10頭で争われた。
兵庫大賞典で絶対王者ジンギとクビ差の接戦を演じたシェダルと、JRAから転入後A2→A1と連勝したタガノウィリアムの2強ムードでレースを迎えた。

 

 

1番人気はシェダル。単勝1.4倍の断然人気に推された。昨秋の転入後、地方で7戦5勝。地元で負けた相手は2年連続年度代表馬ジンギだけ。それもクビ差と絶対王者を最後まで追い詰めた実力馬に対し、トップハンデとなる58.5kgが課された。ただ、A1特別では58kgを背負いながら何度も圧巻の強さを見せており、今回の斤量も問題ないと目された。

 

2番人気は単勝2.5倍でタガノウィリアム。
JRAから転入初戦は兵庫ダービー馬スマイルサルファーを7馬身ちぎり、2戦目はA2クラスの身でオープン馬相手に8馬身差圧勝。共に後続に影をも踏ませぬ逃げ切り勝ちだった。出走順位が自場収得賞金順となるため、兵庫のキャリア2戦の同馬にとって出走できるか否かが鍵となったが結果的にはフルゲート割れ。出走が叶った。

 

3番人気はメイプルブラザー。(単勝15.6倍)
昨年1月の地方移籍初戦で勝利して以来勝ち星はないが、ずっと相手なりに好走しており、今年の兵庫大賞典5着・六甲盃4着と重賞でも堅実に走ってきた力に期待が集まった。

 

2018年兵庫チャンピオンシップ(Jpn2)の覇者で、昨秋に地方移籍初戦となったオータムカップ(笠松)で2着以下を2.7秒をちぎった実績最上位馬のテーオーエナジーが単勝21.7倍の4番人気。さらに、前走A2を勝ったばかりで、切れる末脚が身上のフーズサイドが5番人気(単勝31.4倍)で続いた。

 

 

 

連日35℃超えの猛暑が続く中、お盆シリーズの目玉として行われた摂津盃。8R終了直後から突如降り始めた大粒の雨は、1時間半近くにわたって馬場を濡らし続け、馬場状態は稍重に。ただ摂津盃のパドック周回が始まる頃には雨も上がり、3,600人を超えるお客さんが見つめる中、スタートが切られた。

 

スタートは、シェダルとタガノウィリアムの人気馬2頭が共に半馬身の出負け。最内1番枠のシェダルだったが、他馬に前に入られることなく、スッと内から4番手のポジションを確保し、ある程度想定内でもあった出負けの挽回に成功した。一方、過去4勝が全て逃げ切りというタガノウィリアムにとっては大誤算のスタートに。二の脚もつかず、道中は中団よりも後ろのポジションを取らざるを得なかった。

 

タガノウィリアムかエイシンダンシャクのどちらかが逃げると見られていた中で、逃げたのはテーオーエナジー。園田では初めてとなる逃げに持ち込み、極端にペースを落とすことなく平均ペースの流れを作った。「もう相手はこれだ」と、2周目向正面から3馬身前を走るテーオーエナジー目掛けて、シェダルと吉村騎手は追い上げを開始。ただ58.5kgの重い斤量のせいか、いつものようなスムーズな追い上げとはいかず、ジワジワとしか差が詰まっていかない。それでも4コーナーで半馬身差まで詰め寄ると、直線半ばできっちりと差し切り、最後は1馬身半差で優勝。シェダルが遂に重賞初制覇を飾った。

 

実績馬テーオーエナジーが復活を見せて2着。道中後方2番手にいたフーズサイドが直線大外から伸びてゴール寸前で3着に上がった。好位で立ち回ったアワジノサクラが4着健闘。シェダルと人気を分け合ったタガノウィリアムは勝負所でも動いていけず10着の殿負けだった。

 

サラブレッド導入後、摂津盃で最も重い重量を背負って勝ったのは2010年のアルドラゴンで59kg。今回シェダルの58.5kgはそれに次ぐ記録。

 

上位3頭は1番人気→4番人気→5番人気の決着で、三連単は14,310円だった。

 

 

シェダルは、重賞レース3度目の挑戦で初制覇。

 

<獲得タイトル>
2022 摂津盃(園田)

 

 

 

吉村智洋騎手は重賞通算36勝目。
今年は新春賞、はがくれ大賞典(佐賀)に続き3勝目。
摂津盃は初制覇。

 

 

 

長南和宏厩舎は重賞4勝目。
2020年ゴールドジュニア(笠松)をガミラスジャクソンで制して以来の重賞制覇。
地元兵庫の重賞制覇は2019年の兵庫若駒賞をエキサイターで制して以来。
摂津盃は初制覇。

 

 

レース結果はこちら>>>(NAR 地方競馬情報サイト)

 

 

 

◆出走馬

 

1 シェダル(長南) 58.5 吉村智洋騎手 1番人気

 

2 デンコウハピネス (尾林) 52 杉浦健太騎手 7番人気

 

3 エイシンナセル (北野) 54 松木大地騎手 10番人気

 

4 ヒダルマ (柏原) 55 川原正一騎手 8番人気

 

5 タガノウィリアム (新子) 56 笹田知宏騎手 2番人気

 

6 フーズサイド (北野) 54 広瀬航騎手 5番人気

 

7 テーオーエナジー (橋本) 56.5 田中学騎手 4番人気

 

8 メイプルブラザー (大山) 55 永井孝典騎手 3番人気

 

9 アワジノサクラ (北野) 54 大柿一真騎手 9番人気

 

10 エイシンダンシャク (坂本) 55.5 大山龍太郎騎手 6番人気

 

 

 

◆レース

8R終了後から一時的に降り続いた夕立の影響で、馬場は水分を含んだ「稍重」でスタートを迎えた。

 

【スタート】 ほぼ揃って見えたが、1 シェダルと5 タガノウィリアム の2強が揃って半馬身ほどの出負け。

 

【1周目向正面】好スタートを決めた7 テーオーエナジーが迷わず逃げていく。同じく好スタートの10エイシンダンシャクも外から押して前に並んでいく。

 

【1周目3~4コーナー】 前2頭が後続を3馬身離し、単独3番手に9アワジノサクラ。その2馬身後ろに4ヒダルマ。1シェダルは出負けからすぐに巻き返して4番手グループにつけた。8メイプルブラザーもこの一団。

 

【1周目スタンド前①】 逃げか2番手には行きたかった5タガノウィリアムは中団からの競馬。その後ろに2デンコウハピネスがいて、6フーズサイドと3エイシンナセルの末脚切れる2頭は後方追走。

 

【1周目スタンド前②】馬群全長は14~5馬身と少しバラけ、それほどペースを落とすことなく7テーオーエナジーがレースを引っ張った。

 

【2周目2コーナー】 1シェダルは4番手で、逃げる7テーオーエナジーとの差は4馬身。その2馬身後方に5タガノウィリアム。

 

【2周目向正面~3コーナー】1シェダルは残り700mくらいからスパート開始。斤量58.5kgの影響か、思ったほど上昇の勢いがつかない中でもジワジワと前との差を詰めていき、3コーナー入口で2番手に上がった。

 

【2周目3~4コーナー】 逃げる7テーオーエナジーとの差を1馬身にまで詰めた1シェダル。3馬身差で9アワジノサクラと10エイシンダンシャクが3番手で競り合い、その2~3馬身後ろに5タガノウィリアム。1シェダルとは6馬身離されてしまった。

 

【4コーナー~最後の直線】 7テーオーエナジーとやや馬体を離しながら1シェダルが並びかける。後ろは4馬身離れて9アワジノサクラが単独3番手。5タガノウィリアムは馬群に呑み込まれた。

 

【最後の直線①】直線半ばで7テーオーエナジーを1シェダルが捉えて先頭に立つ。粘る9アワジノサクラに大外から6フーズサイドが一気に脚を伸ばす。

 

【最後の直線②】58.5kgの1シェダルが、56.5kgの7テーオーエナジーをねじ伏せる。唯一の地元生え抜き9アワジノサクラが懸命に3着に粘らんとする。

 

【最後の直線③】ジンギがいないここでは負けられない1シェダル。7テーオーエナジーもダートグレード勝ちの意地を見せて最後まで食い下がった。

 

【ゴールイン】1馬身半差で1シェダルが優勝のゴールイン。重賞3度目の挑戦で初制覇、2着は園田競馬場では初めて逃げた7テーオーエナジー。
その3馬身後方の3着争いは2頭接戦となったが、大外一気に追い込んだ6フーズサイドが9アワジノサクラをゴール直前で抜いて3着浮上。5タガノウィリアムは10着と最下位に沈んだ。

 

 

 

 

「中間で順調さを欠いたところもあり、正直万全の態勢ではない」と戦前話していたシェダル陣営だったが、終わってみればトップハンデ58.5kgを背負いながらの勝利。圧倒的1番人気の期待に応えての勝利に「ホッとしました」と長南師も胸をなでおろした。

 

「ゲート内での駐立が今日は悪かった」と吉村騎手が話したように、スタートは出負け加減。外から内へと馬が入ってくる中で、1番枠だっただけに「最初の3コーナーまでに通るスペースが無くなる心配」(長南師) があったが、うまくそのピンチを切り抜けて好位4番手を取ることができた。

 

戦前の予想とは裏腹に、5タガノウィリアムは1シェダルの後ろでの競馬となった。「初めの3コーナーで『ん?(前に)タガノがいないな』と・・・これはチャンスだなと思い、そこで相手をテーオーエナジー1本に絞ることができた」(吉村騎手) とすかさず判断を切り替えるあたりはさすがリーディングジョッキー。前だけを見据えて、勝負所の2周目向正面までじっくりレースを進めていった。

 

吉村騎手が仕掛けた時には、「斤量のせいなのか、手を押していかないといけない状態でちょっとまずいな」と思ったというが、ジワジワと差を詰め、4角でテーオーエナジーを射程圏に入れた時には勝利の確信を持ったという。

「やめるような馬じゃないので並んだらそのまま押し切ると思っていました」という長南師の言葉通り、直線しっかり伸びてシェダルは勝った。

 

 

遂に勝ち得た初タイトル。体調が万全ではない中、トップハンデの58.5kg、最内枠を克服しての勝利は、よりシェダルの強さを物語る結果となった。

 

 

レース後、シェダルと吉村騎手はゆっくりとゴール板の前まで歩を進め、立ち止まってファンに勝利をアピール。

 

 

 

吉村智洋騎手 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

 

長南和宏調教師 優勝インタビュー> (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

 

 

 

長南師は「これが通過点であって欲しいです」と控えめに話したが、まだまだタイトルを取れる素材だという期待が胸の奥にあるはずだ。

 

ファンはジンギとの再戦を待ち望んでいる。
「なるべくなら対戦したくないんですけど・・・」と長南師はチラリ本音も覗かせたが、「また面白いレースができたら」と意欲十分だ。

今後は、オーナーサイドと体調面との相談とはなるが、9/29(木)の姫山菊花賞(園田1700m)に向けて調整していく予定とのことだ。

 

 

今回2着に粘ったテーオーエナジーはジンギと同じ橋本忠明厩舎の馬で、担当厩務員さんもジンギと一緒とのこと。何とも因縁を感じる構図ではないか。

秋には充電を終えた“真打ち”も戻ってくる。

 

 

「待ってろジンギ!」

 

その舞台は、姫山菊花賞か園田金盃か。

この秋、絶対王者に再びシェダルが挑む!

 

 

 

写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと

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