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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

次世代エースは苦悩がお好き。/杉浦 健太 騎手

PROFILE

杉浦 健太(すぎうら けんた)騎手
1992年11月4日、兵庫県生まれ。
競馬とは無縁にの家庭に生まれながら馬が大好き
で、伊丹市出身ということもあり幼い頃から園田
競馬場にも通っていた。
小学校の頃には「将来は騎手になる」と早い段階
で夢を抱いて、その通りに実現させた。
 
2010年4月13日にホッカイパルニに騎乗し
て騎手デビュー。
そのレースで見事に逃げ切って、初騎乗初勝利と
華々しく初陣を飾った。
 
初年度は21勝。5年目に62勝を挙げてトップ
10入り(8位)。
昨年は82勝を挙げて年間100勝も視野に入っ
て来た。今年は62勝で(10月26日現在)、
昨年とほぼ同等のペース。若手台頭の旗頭として、
さらなる活躍が期待される。
 
大の高校野球好きで、大会期間中はレースがなけ
れば必ず観戦に行くほど。また自身を「園田競馬
のかみじょうだけし」と呼んでいる。
家族構成は、妻と愛犬のチョボくん。

写真

60勝ラインをクリアして変わったこと

勝負服の上に<TEAM TAIZAN>のネーム入りブルゾンを羽織って杉浦健太はやってきた。
この日(10月12日)は乗り替わりがあったりして(9鞍騎乗)、
ハードな一日だったにもかかわらず、いまが旬のジョッキーはまったく疲れを
感じさせない。
 
「取材、待ってました。まだかなって…」。
自分の番を待ちかねていたかのように、笑顔を向ける。
 
この日の時点で勝ち鞍は60勝(ランキング7位)。
昨年あげた82勝(キャリアハイ)とほぼ同じペースだが「夏ごろと比べ、
最近は勝てるペースが落ちてる」と気がかりを口にした。
杉浦には勝てない時期というのが年間を通して必ずあるらしい。
「ちぐはぐな時期が毎年どこかでやってくる。2着ばっかりとか。むかしからなんです」
 
年間勝利数が60勝ラインを超えたのがデビュー5年目の2014年(62勝)。
そのころから100という数字を意識しはじめたというが、
毎年やってくる悪い流れが100勝到達を阻むカベになっているようだ。
「そこを一定のペースでいけたら、もっと勝ち鞍は伸びると思うんですけど…」。
ワンランク上をめざす杉浦に与えられた、それが試練といえるかもしれない。
 
60勝ラインをクリアした2014年以降とそれ以前とのちがい、
競馬に対する考え方の変化を彼はこんなふうに話す。
 
「むかしは前に行ったほうがレースしやすいというのが一番にあって、
がむしゃらに行っていたレースが多かったんですけど、ちょっと余裕も出てきて…
行くだけじゃなくて、その馬に適った乗り方を考えるようになってきました。
最近は予想紙を見て、まわりの馬のクセも頭にいれてレースをイメージするように
してます」。
レース中も冷静に、広い視野で競馬をとらえる眼をもてるようになったのは成長の証だろう。
 
頭角をあらわす騎手には当然まわりが注目する。
「上のクラスの馬をあいつに乗せてみよう」。
そこで結果を出すことでほかの調教師の目に止まる。さらに注目度が高まる。
若手が成長する過程とはそういうものであろう。
 
2015年に新井厩舎に籍を移したこともステップアップする転機になったと
杉浦は考えている。
「新井先生も厩舎の馬を積極的に乗せてくれて、いろいろ勉強させてもらいました。
あの時期に経験を積めたことは大きかった。
そのへんからマイタイザンやノブタイザンとのつながりもできましたし…」
 
杉浦が「マジメで賢い馬」と評するマイタイザン。
デビュー前から北海道の牧場でふれあい、跨がっていたこともあって、
思い入れは人一倍強い。
「初重賞(2015年兵庫若駒賞)も獲らせてもらいましたし、
この馬と一緒に成長できたかなと思ってます」。
馬名の由来は杉浦の奥さん(舞さん)から。
「名前、考えていいよって言われ、立候補したらすんなり決まって」命名されたそうだ。
 
出走のたびに、舞さんはまるで自分が走るかのように緊張してるらしい。

 

日々悩みつづけることにたのしみを…

伊丹市出身の少年は、幼年期から無類の馬好きで、テーマパークなどにある
“ふれあい牧場”ではきまって馬に跨がっていた。
そんな息子を見て父親は、それほど好きならと園田競馬場に連れていってくれた。
そこには馬に乗ることを仕事にしている人たちがいた。少年の夢が大きくふくらんだ。
オトナになったらジョッキーになる、と決めたのは小学生のときだったという。
 
「いまでもテーマパークに行って馬がいると一目散に馬のとこへ行きます。
お金払ってでも1周乗ろうかなと思う」というからかなりの重症である。
「嫁さんに、あんたいつでも乗れるやんって言われます」。
馬がとことん好き、馬に乗ることを最上のよろこびと感じる少年が、
幼いころからの夢を叶えたのだから、杉浦健太はシアワセ者だ。
 
そんな杉浦だから朝の調教はまったく苦にならない。
午前1時から8時まで20頭ほど乗りこなす。
「つらいと思ったことはないですね」。
杉浦にとってはむしろ愉しみの時間である。
攻め馬を終えると「またお願いします」と関係者に礼を返す。
明るく素直な人柄が調教師や厩務員たちに好印象を与えていることは容易に想像がつく。
「厩務員さんとのコミュニケーションは普段から大事にしてます」と、
彼自身もサークル内の人間関係の大切さを心得ている。

 

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