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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

まだ若い子には負ける気がしない。/竹村達也 騎手

PROFILE

竹村達也(たけむら たつや)
1983年3月1日、大阪府生まれ。
2001年4月デビュー。
同期には、板野央騎手、
広瀬航騎手がいる。
 
同期の中では最多騎乗を誇り、
まもなく10000回騎乗を迎える。
 
スタートから積極的に先行する騎乗
がウリで”逃げの竹村”の異名を持つ。
 
趣味はパチンコで、
今年は幸先良く、
かなりのプラス収支とのこと。
 
家族は妻、一男一女。

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ヴェルジェーズ、ただいま6連勝中

1日の仕事(騎乗)を終え、
緊張から解き放たれた騎手の表情は晴ればれとしている。
悔しいレースもあっただろうし凡ミスもあったはずなのに、
それを引きずる様子はない。
むしろ人も馬もケガなく無事に1日を終えた、
ささやかだけれど切実なよろこび、
安堵感のほうが大きい。
 
この日、竹村達也は自分に与えられた
2つのレースを無事に終えて、風呂に入り、
さっぱりとした表情であらわれた。
騎乗したレースが3Rと5Rだったこともあり、
まだ陽の高い時刻で時間はゆったりと流れている。
 
デビュー19年目の今年、
あと140レースほど乗れば通算1万回騎乗に達する。
長年の騎手生活で大きなケガもなくつづけてこれたことの
それは証でもある。
本人もそのことは意識していて
「骨折は3回してますし何度も落馬してるんですけど、
不死身でやってこれました」とケロッとしている。
出走時、ゲートを出た瞬間に足の小指をケガする騎手は多い。
竹村もゲートに足をぶつけて何度か小指にヒビが入ったり
骨折した経験がある。
足の小指の骨折なんぞケガのうちに入らない。
1万回騎乗を目前にした不死身の男はそう言いたげだ。
 
昨年の竹村の勝ち鞍は43勝。43勝で終わったというべきか、
43勝まで伸びたというべきか。
キャリアハイが58勝(2016年)であることを思えば物足りないし、
前年(2017年)の勝ち鞍37勝から比べればよく伸びたともいえる。
 
「まあ、よく頑張ったかなと思うし、
取りこぼしもあるんでもう少し伸ばせたかなとも思います」。
竹村にとって50勝ラインは毎年の目標であり、
目の前のカベだと感じている。
 
「毎週1勝ずつすれば月4勝ペースで年間48勝。
少し頑張って、まあ、50勝ラインに届けばいいなと
考えてるんですけど。乗る馬とのめぐりあわせもあるんで…」
 
これまで1番人気の馬に乗る機会というのはほとんどなかった。
人気薄の馬を勝たせることでファンを沸かせる、
自分はそういうタイプだと位置づけてきた。
そんな竹村に楽しみな馬があらわれた。
取材前日(2月12日)のレースで騎乗(結果は1着)した
自廐舎のヴェルジェーズ(4歳牝)である。
竹村が乗ってこれまで7戦、最初こそ2着に終わったがその後は6連勝し、
牝馬の重賞路線を狙える期待馬に成長した。
 
「素直でおとなしい馬です。
(調教で)いつも乗り慣れてるんでゲートだけ決めれば落ち着いて乗れます」。
直近の3レースはすべて1番人気だが、プレッシャーは感じていない。
「ぼく自身、6連勝は騎手人生はじめてのことなんで、
騎手やっててよかったなと。
辛抱してきたからめぐりあえたのかなと思ってます。楽しみな馬です。
いまは調教してても楽しいです」と、
自廐舎の乗り馬が連勝をつづけていることが大きな励みになっている。

 

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ジョッキーはつらいよ

朝の調教は年を経るにしたがって徐々に頭数が減っているという。
午前3時台にスタートして10頭ほどだからかなり少なめである。
一番の原因は腰痛にある。
若いころにやったギックリ腰にはじまり、
その後も断続的に痛みが出る。
ハリとマッサージをつづけているが
「ぼくらの仕事って調教してレースに乗って、
それがつづくのでケアしても追いつかないんです。
理想をいえばトレーナー的な人がそばにいて
毎日ケアができればいいんですけど…」。
調教で20頭近く乗り、レースで7、8頭乗る
という騎手の仕事はきわめて過酷である。
 
「ぼくの感覚でいえば、調教で体が疲れすぎているので
レースしててもレースしてる気分じゃなくなるんですよ。
調教の頭数を減らしてレースでしっかり乗るほうが集中できると思います」
 
若いうちは西脇の全休日に園田まで出かけ、
他廐舎の馬の調教を買ってでた時期が長くつづいた。
その甲斐あって園田の廐舎からいまでも騎乗依頼がある。
「腰痛のせいで回数は減ってますけど、
それでも毎年二、三度は園田の調教に顔を出すようにしてます」
 
根気よく、周囲に対する自己アピールをつづけているという竹村。
ランキング中間層、あるいは下位に位置する騎手の多くは、
そうした地道な努力を重ねて騎乗のチャンスをつかむのである。
重ねていうが、騎手の仕事というのは想像以上に過酷なのだ。

 

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