10月28日の最終12R、コンゴウレイワに騎乗して勝利した下原理騎手は、
地方通算3000勝を達成した。
この日は3勝の固め勝ちで、一気に節目の勝利を決めてみせた。
デビューから丸25年での3000勝について、
「デビュー当初は3000勝できるとは思っていませんでした。
『2000勝すれば、ここ園田競馬場で行われる
ゴールデンジョッキーカップに出場できる』というのがあったので、
1000勝した時はそこが大きな目標でした。
2000勝した段階で『3000勝できたらいいな』と思っていたんですが、
思ったよりあっという間やったかな」と振り返った。
それもそのはず、デビューから1000勝までに14年7ヶ月、
そこから2000勝までに6年4ヶ月の月日を要した。
そして、2000勝から3000勝まではわずか4年1ヶ月で駆け抜けたのだから
“あっという間”という本人の感覚も頷ける。
「2000勝の時はゴールデンジョッキーカップに
乗れるという喜びが大きかったです。
3000勝ももちろん嬉しいですが、
ここまで乗せていただいてという感謝の気持ちで一杯です。
それだけ有力馬に乗せていただいているということなので…」
と感謝の言葉を口にする。
2015年に212勝を挙げて川原正一騎手に次ぐリーディング2位に躍進すると、
そこから毎年200勝以上を記録。
2016年に267勝を挙げて初の兵庫リーディング、
そして2017年は273勝で全国リーディングにも輝いた。
有力馬の騎乗を任され、結果で応える。結果を出すから、
また有力馬の依頼が舞い込んでくる。
その好循環を手に入れ、まさに脂の乗り切った充実の時を迎えている。
「昔は、首や肩を怪我したり、お腹も手術したり、
色んな怪我をしました。
最近は大きな怪我なく来られているので、
この4年も怪我なく乗れたのは大きかったですね。
年もだいぶ取っている分、やっぱり治りが遅いと思うので。
ここまで来たら4000勝してみたいなと思いますね。
無事に乗れたらいいですね。できるだけ怪我をしないように・・・」
と次の節目4000勝という数字も視界に捉えている。
ちなみに3000勝は、兵庫県生え抜き騎手としては、
田中道夫、小牧太、木村健、田中学に続き、下原理騎手で5人目の記録。
全国で地方競馬3000勝以上を挙げた騎手はこれまで33人(ばんえい含む)。
その輝かしい記録を持つ騎手の一覧表を実際に見てもらったところで、
それまで冷静な語り口だった下原騎手のトーンが一変した。
「えっ!?これだけしかいないんです?
それはすごい、びっくりした!これは嬉しいですね!
もっとたくさんいると思っていました。
3000勝、まさかこれだけしかいないなんて、いや~これは嬉しいですねぇ~!!」
11月13日に名古屋競馬場で行われた重賞“東海菊花賞”を
タガノジーニアスで優勝した下原理騎手は重賞71勝となり、
木村健騎手の持っていた兵庫県生え抜き騎手による
地方重賞最多勝記録を塗り替え、新記録を樹立した。
デビューからちょうど4年後の1999年
白鷺賞(ユウターヒロボーイ)が重賞初制覇。
そこから様々な名馬と共に71ものタイトルを積み上げた。
「71勝という数字だけだとよく分からないけど、
実際に勝ったレースと馬の名前を一覧で見ると
すごく勝っているなぁと思います。
1つ目の白鷺賞も覚えていますし、
あの時からやったなぁと思いますね。
良い思い出です。
やっぱりベストタイザン(9勝)、
チャンストウライ(7勝)がかなり占めていますけど、
今年また姫路で白鷺賞を勝った(タガノゴールドで21年ぶりに優勝)
というのは嬉しかったですね。」
中でも、やはりダートグレードの勝利は格別なようだ。
2008年にチャンストウライで佐賀記念(佐賀Jpn3)を勝利し、
さらに2018年にはエイシンヴァラーで黒船賞(高知Jpn3)、
エイシンバランサーでサマーチャンピオン(佐賀Jpn3)を制した。
「グレードレースは難しいです。
ペースがいつもと違うので変についていくとこっちも厳しくなるし、
でもある程度の位置にいないと勝負にならないし、
また違った難しさがあります」と語るハイレベルな戦いを
3度も勝利したことは誇りだ。
他では、アクロマティックでの勝利が印象深いと振り返る。
2016年に新春賞、梅見月杯、名港盃で重賞3勝を挙げた馬だが、
とにかく乗り難しい馬だったそうだ。
「アクロマティックは人間に逆らう感じがあって、
すごく悩まされたんですよね。
ハミを噛んだら一気に行くけど、馬が行きたくない時に
行かせようとすると反抗してレースをやめようとするんです。
自分で行く気になった時にいかに一気に行かせるか。
(行く気になるのを)こちらが待つのも難しかったし、
無理して行かせたらだめだし・・・
促し方が本当に難しくて、噛み合わないと走らなかった。
それだけにこの馬は重賞に限らず、勝つたびに嬉しかったですね。
勝ち負けをする能力はあるのに、
こっちがそれを引き出せなかったら辛いですから。」
馬の性格を掴み取ろうと日々試行錯誤し、
どう乗れば結果が出せるか悩み続ける中で掴んだ勝利だったからこそ
格別な味として記憶に刻まれている。
前出のエイシンバランサーも「すごく難しい馬」と話していたが、
そんな気難しい馬を宥めすかして能力をしっかり引き出す、
これこそが新記録を打ち立てた匠の技なのだ。