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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

3年連続リーディングの胸中

 

前人未到の記録

クローズアップ

 
2018年に年間296勝を挙げて自身初となる
リーディングジョッキーを獲得すると、
2019年は兵庫県競馬史上初となる年間300勝を
突破する334勝。
そして、昨年はさらに記録を塗り替え
年間357勝をマークした吉村智洋騎手。
21世紀に入って以降、
3年連続でのリーディング獲得は吉村騎手が
初めてで、記録を次々と塗り替えていく様は、
本当に“凄い”の一言だ。
 
「時代によって条件も違いますし
騎手の人数も違うので、過去の記録とは
比較できないと思いますけど、
300勝を超えられたのは嬉しいですよね。
99勝の時(2014年)に実は200勝が目標でしたと
言ったからにはやらなあかんなと思っていましたし、
その後300勝目標と言ったからにはやらなあかんなと。
300勝は今までになかったことなので嬉しいです」
と高い目標を設定し、それをちゃんとクリアした
という達成感に大きな喜びを感じたようだ。
 
それと共に、「周りの関係者の皆さんへの
感謝しかないです。一人じゃ無理ですからね。
周りの人に乗せてもらわないとできないですから。
良い馬に乗せてもらえているので、
これくらいの結果は当たり前かなとは思います」
と、自分一人でできる記録ではないことも
しっかりと自覚している。
 
良い馬に乗せてもらうために、
「簡単なことですが、朝の調教からしっかりやるとか、
時間を守って遅れないように行くとか、
それをずっとやり続けることと、
あとは関係者とのコミュニケーションを大事にしています」
と、人間関係をしっかり積み重ねてきたという自負がある。
そして、関係者の期待にレースできちんと応える。
 
「応援してくれて乗せてくださる人達に
感謝しかないです」と何度も感謝の思いを口にした。

 

クローズアップ

 

数字を楽しむ

吉村騎手は、今年開幕以降、
園田・姫路で騎乗した日に1勝もできずに終わった日がない。
3/26時点では、36日間連続で勝利している。
 
その話題が出ると、
「確か川原さんがすごい記録を作っていたんじゃ?」
「僕もいっぺん40何日連続やっていませんでしたっけ?」
といった反応が返ってくるからこちらも驚く。
筆者が記録を取り始めた2014年以降でという
注釈が付くが、川原正一騎手が2015年に7/24から
12/1にかけて53日間連続勝利という記録を残しており、
吉村騎手も2018年終盤から年を跨いで
49日間連続で勝利した。
 
さらに、
「今回の連続記録も大晦日の日に勝てていれば
もっと続いていたでしょ?」とすぐに出てくる。
ちゃんと自分の数字を把握しているのだ。
(ちなみに、昨年大晦日に勝てていれば
19が足されて55日間連続勝利になっていた。)
 
「気にしないという人もいますけど、
僕は数字を結構気にします。
今は、3日間開催で2勝ずつ計6勝をノルマにしています。
300勝を目標に掲げていた時も、
1ヶ月平均25勝しないといけないから、
今何勝でこのままだと遅れているとか思ったりしていたし、
周りからも数字のことを言われるようになって
結構気にするようになりました」
と、目標に向かって数字を積み上げていくことに
楽しみを見出している感じが伝わる。
 
リーディングを取る前、
100勝前後の成績だった頃は、
1日3勝以上の固め勝ちもするが、
リズムが悪くなるとなかなか勝てないという、
好不調の波が激しかった印象がある。
「勝てない月が1ヶ月くらいあったのは覚えていて、
当時は焦りとかも一杯あったと思います。
100勝を超えたいという思いが強かった分、
勝ちたいばかりで余裕がなくリズムが悪くなると
それが焦りになっていたんじゃないですかね。
好不調の波はメンタルも影響していたと思います」
と、当時を振り返った。
 
数字を気にしてそれが焦りに繋がることも
あったというが、年を重ねて様々な外的要因に
左右されない強いメンタルを手に入れた。
これは300勝を達成できたことと無関係ではないだろう。
今は「乗る時に数字を気にして焦って
パフォーマンスを落としていたら話にならないと思う」
と言い切れるくらい成熟している。

 

クローズアップ

 

誰にも負けないストロングポイント

 
吉村騎手自身にストロングポイントを訊いてみた。
「何なんですかね・・・。
考えないと出てこないぐらいなので、
無いんじゃないですかね」と最初は言ったが、
何の強みのない騎手が3年連続でリーディングを
取れるはずがない。
 
続いて、
「滅茶苦茶勝ちたいと思っているだけなんじゃないですか。
皆勝ちたいと思っているでしょうけど、
誰よりも勝ちたい思いが強い、
気持ちの部分が一番じゃないですか」
とまさかの精神論が展開された。
しかし、すぐになるほどと思わされた。
 
「勝ちたい気持ちが日々の生活に
出てるんじゃないですかね。
競馬に対する取り組みの部分とか。
例えば、予想紙もただ見るだけではなく、
道悪の巧拙とか、内枠外枠どちらが良いとか、
血統とか、様々なデータは結構当てはまるので、
しっかりと見るようにしています」
と、普段からレースに向けて色々と考えを巡らしているようだ。
 
また、自分の騎乗馬のみならず、
「他の馬の特徴や癖、他の騎手の癖なども頭に入れて、
自分の馬をいかに有利に運ばせるかを意識して
色々と情報を入れるようにしている」とのことだ。
 
ターニングポイントは、2015年頃だった。
「200,300と勝っていこうと思ったら、
今の情報量だけでは足りないなと。技術だけではだめで、
もっと真剣に勉強しないといけない、
色んなこと知らないといけない」と思い、
レースへの取り組みが変わったそうだ。
それからというもの毎年勝ち鞍が伸び続けている。
 
誰よりも勝ちたい思いが強い。
だから、誰よりもレースに向けて良い準備をする。
それが吉村騎手のストロングポイントだ。

 
 

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