3月16日に高知競馬場で行われたダートグレード
「第24回黒船賞(Jpn3)」で、
兵庫から遠征したイグナイター(牡4歳/新子雅司厩舎)
が田中学騎手の騎乗で優勝。
兵庫勢のダートグレード制覇は4年ぶりで史上7頭目となる快挙だ。
ダートグレード優勝の歴史は、
2001年兵庫三冠に輝いたロードバクシンの
兵庫チャンピオンシップに始まった。
そして、2008年佐賀記念(チャンストウライ)、
2014年かきつばた記念(タガノジンガロ)、
2017年かきつばた記念(トウケイタイガー)、
2018年黒船賞(エイシンヴァラー)、
2018年サマーチャンピオン(エイシンバランサー)
と兵庫勢の快挙が続いた後、
しばらく優勝から遠ざかっていた。
そんな中、過去6勝のうち3勝を挙げていた
新子厩舎からまた1頭ヒーローが誕生した。
そのヒーローの名は、イグナイター。
兵庫転入当初からその秘めたる素質に大きな期待が寄せられ、
次々とその期待に応えてきた新時代のエースが、
ダートグレードのタイトルをついに得た。
昨年、全国交流の楠賞を制したイグナイター。
年末の兵庫ゴールドトロフィーでは、
快速馬揃いのJRA勢相手に逃げて0.4秒差の3着に粘り、
今年への飛躍を期待させた。
今年の初陣は、高知競馬場。
黒潮スプリンターズカップを7馬身差で圧勝した。
新子師も「過去に遠征馬が勝ったことがないくらいの
難しいレースだったが、目一杯の仕上げではない中でも
快勝してくれた」と、愛馬の強さを再確認した中、
黒船賞当日を迎えた。
「状態は前走の時より上がっていたので自信はありました」
と新子師が話せば、田中騎手も
「返し馬で(パワーの要る)馬場は影響しないなと。
すごく状態はいいんだろうなと思った」
と当日の印象を語った。
黒船賞は近年ずっと重か不良馬場で行われており、
良馬場で行われるのは実に15年ぶりのことだった。
例年以上に非常に重たくてパワーのいる砂だったそうで、
「スピードのいるダートだとJRAの馬に
置かれてしまうところがあるので、
高知のああいう馬場はイグナイターにとって合う。
JRA馬はあそこまでパワーの要る馬場では
走ったことがないし、有力馬もああいう馬場は合わない
だろうなと思っていたので」(新子)と
十分チャンスがあると陣営は見ていた。
実際に馬場に出たイグナイターは、
タフな馬場をものともせずスムーズに返し馬を行い、
「自信を持ってレースに臨めた」(田中)という。
枠は3番。
高知競馬場の内側はかなり深いことで知られており、
「できればもう少し外がよかったかな」
と当初思ったというが、現地の騎手や関係者から
「今日は内が使えるよ」と聞き、
「逃げ馬の後ろを取ってレースできたらいいかな」
という思いでレースに向かった。
田中騎手が注意したのは、ゲートと折り合い面だった。
「ゲートの中で落ち着きがなくてイライラする面がある」
とのことだったが、良いスタート切り、
スッとイン3番手につけることができた。
逃げ馬の後ろ・・・
まさに戦前に描いた通りの展開に持ち込めた。
また、3歳時は折り合いを欠き暴走気味に走ってしまう面
が度々見られたため、気遣っていたという折り合い面。
「ハナに行ったときは行きたがるけど、
前走で3番手の外だったらすごくハミが抜けて
リラックスできていて・・・
今回は、前に馬を置いて砂被る状態になった時も
思いのほかハミが抜けてリズムよく走れていた」と、
確かな成長も感じつつ、レースは進んだ。
3コーナーから4コーナーの勝負所で、
「ラプタスとヘリオスの動きが悪く、
外に吉原(サクセスエナジー)がいたので外
には出せないと思った。ちょっと早いなと思ったけれど
ハミを噛んだところで『行かな!』と思った」と、
右鞭を1発入れてスパートを促した。
直線に向く手前で、あっという間に内から
前の2頭を抜き去って先頭に立つと、そのまま直線は外へ。
「反応が良くて抜け出す時の脚が速かった。
直線は外の良いところを走りたいなと思って。
ただ、速い脚を4コーナーで使った分、
最後は一杯一杯になってしまったね。
後ろから脚音が聞こえてきたので最後は少し焦った」
と振り返ったが、
きっちり後続の追い上げも1馬身差振り切って
1着でゴール板を駆け抜けた。
ハンデ戦ではなく別定戦で、
JRA勢に真っ向勝負を挑んでの勝利に、
「それが一番大きいですね。
正攻法で勝ちに行ってのものですし、
この2走はレースの幅も広がってすごく成長を感じる。
折り合いさえつけば、距離も持つと思う」
と今後に向けても自信を覗かせた。
珍しく大きなガッツポーズを見せた田中学騎手は、
「嬉しかったですね。
みんな応援してくれる(兵庫の)代表で行っているので」
と、浦和のジャジャウマナラシで勝った
2014年兵庫ジュニアグランプリ(Jpn2)以来、
自身2度目となるダートグレード勝ちを喜んだ。
「グレードを勝ったということで注目も浴びるし、
出るレースで人気も背負うと思うので、
それに応えられるような結果を出したいですね。
グレードレースに乗るのは楽しいですよ。
イグナイターとジンギは絶対に乗りたいと思っています。」
熟練の名手が目を輝かせた。