人の波が正入場門に向かって押し寄せている。
時間を10分繰り上げ、午後1時50分開門になったのだが、
すでにゲート付近には溢れんばかりの人垣ができていて、いまや遅しと開門を待ちかねている。
300人ほどはいただろうか。列に並ぶよう促す係員の大声が響く。
兵庫チャンピオンシップのあった前日は、正門と東入場門を合わせて600人ほどが開門を待った、
と関係者から聞いた。
きょうもそれに匹敵するほどの混みようだ。
1時50分になって、ようやく開門。と同時にサンバのリズムがはじまり、
お出迎え隊がいっせいに踊りだした。途端にあたりが陽気なリオっぽい空気に一変した。
5月5日のこどもの日。快晴。気温は26.7度の夏日。
半袖姿のお客さんでにぎわう競馬場は人気のテーマパークのようである。
「人、多いなあ…」という声が、まわりで飛び交っている。
ゴールデンウィークを家族ですごす子ども連れが目立つ。
パパは競馬、ママとちびっこたちはハイキング気分といったところか。
1R、2Rあたりが暑さの盛りで、真夏のような陽光が地面をカッと照りつけている。
ファミリー客は建物の日陰になった一角に、家から持参のレジャーシートやパイプ椅子を広げ、
日差しを避けて陣取っている。万事怠りなし。じつに手慣れたものだ。
2012年秋の試行開催にはじまったその金ナイターも今年6年目をむかえ、
すっかりファンのあいだに定着した。
ゴールデンウィーク中はとりわけ来場者が多く、ファミリー向けのイベントも多彩である。
サンバあり、お笑いライブあり(この日は東京からお笑いコンビのハマカーンが来演)、
チャリティーオークションあり、子どもたちがポニーに乗って遊んだり、
そのたんと記念撮影をしたり…
園田アミューズメントパークは大にぎわいだ。
陽が西に傾きかけたころ、フードコーナーをのぞくと、ここも黒山のような人だかり。
レースとレースの合間に腹ごしらえをする人たちで混みあっていた。
競馬必勝法の第一は「朝食をシッカリ食べること」と『草競馬流浪記』に山口瞳氏は書いている。
これは昼の競馬の必勝法であって、ナイターとなれば「早めの夕食をシッカリ食べること」
になるのではないか。
フードコーナーに集まった皆さん方はそこらへんはしっかり心得ているようで、
カレーライスを食べる人、うどんをすする人、まぐろほほ肉ステーキ丼を頬張る人、
いか焼きと生ビールの人…しっかりと腹を満たしている。
時間をずらせて同じ場所に行ってみると「まぐろの一八」という店では一品物はすべて売り切れ、
丼物と飲み物だけになっていた。
新しく開設されたお座敷投票所にも何度か足を向けたが、
「ただいま大変混雑しております」の立て札が立っていて、この日は一度ものぞけなかった。