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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

ダービートレーナーに驕(おご)りなし。

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チークピーシーズ装着で走りが一変

「完勝でした。これでフロックではないことを証明できたと思います」
そう言って胸を張るのは、ダービージョッキーになった吉村智洋である。
 
兵庫チャンピオンシップ(5月2日)では、JRAのオープン馬を向こうにまわし
堂々3着の好成績をおさめ、兵庫県馬の実力を見せつけたバンローズキングス。
しかし兵庫ダービー(6月6日)では3番人気に評価を落としていた。
 
松平調教師は言う。
「前走(兵庫CS)がよかったので、内心は自信があった。あの3着は大きかったです」
 
そうして迎えた兵庫ダービー。
終始3、4番手につけ好機をうかがっていたバンローズキングスは、
直線一気に抜けだし1着でゴール板を駆け抜けた。
「フロックではないことを証明」した瞬間だった。
松平厩舎にとっては初の重賞勝ち、それが最高峰のダービー制覇となった。

 

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10回目の挑戦で初の栄冠を手にした吉村は
「(ダービーは)誰もが獲りたいと思ってる重賞ですしね。
5月6月と暑さがつづいたなかで、厩務員さんもきっちり仕上げてくれました。
(松平)先生の初の重賞勝ちに貢献できたことが一番の喜びです」
と顔をほころばす。
それを受けて松平師も「吉村が(内をまわって)ロスのないレースをしてくれました。
いまの吉村ぐらいに乗ってもらおうと思ったら
恥ずかしくない仕上げをして臨まないとね。
彼は頼りになりますし、満足するレースをしてくれる」と、互いをたたえあう。
 
菊水賞を走ったあと、バンローズキングスは
チークピーシーズを装着してレースに出走している。
競走馬は調教時やレース中にふとしたことで気が散り、走りに集中力を欠くことがある。
チークピーシーズはそうした馬の集中力を高める装具なのだが、
これが絶大な効果を発揮した!?
 
「ガラッと変わりましたね」。吉村はその効用を認める。
「兵庫CSで3着に食いこんだときは(JRAの馬との)レベルのちがいもあるのに、
よく走ってくれた。
時計も速かったし。チークの効果は明らかに出てるなと思いました」
兵庫CSでの好走、兵庫ダービー制覇の裏に
チークピーシーズというファクターがあったのは確かなようだ。

 

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次走は金沢MROに照準

バンローズキングスはそもそも道営出身の馬で、
門別競馬場でデビューして6戦未勝利のまま昨年の冬、園田にやってきた。
道営がシーズンオフの期間預かるかたちになったわけだが、
ところが園田に移っていきなり3連勝した。
こっちの水が合ったようだ。
 
重賞初挑戦した園田ユースカップ(7着)では
「このときは正直一番たのしみにしていた」と松平師は明かす。
「どれだけやれるんだろうという期待のほうが大きかった」と。
「菊水賞のときもたのしみのほうが大きかったですね。ひょっとしたらという思いがあった」。
結果は6着に終わったが、
これらの結果を踏まえてチークピーシーズ装着につながったわけである。
 
次走は大井のジャパンダートダービーを見送り、
MRO金賞(7月30日・金沢1900m)に照準を合わせている。
輸送時間が比較的短い金沢を選択したようだ。
そして、秋の重賞戦線へとつながってゆく。
 
ダービーの勝因を松平師は「オーナーがこっち(園田)に転厩させてくれたこと、
スタッフがしっかり仕上げたこと、ジョッキーが上手く乗ったこと、それがすべて。
いろんな要素がうまく噛み合わないと大きなレースは勝てない」と分析する。
ダービー馬の称号を手にしたバンローズキングスには今後きびしいマークが予測される。
 
「兵庫CS、ダービーと(コースの)内をまわってこれましたけど、
これからはマークがきつくなると思う。
外をまわらざるを得ないときに馬がどこまで反応してくれるか。
最後まで包まれてしまうということもありますし。
そういうとき、どう乗るかがぼくの課題でもある」
追われる立場になった吉村は、気を引き締めた様子で語った。

 

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