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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

エキサイター、快進撃!

 

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体重をおさえる闘いはいまもつづいている。
半月休めればまた560kg超になり、絞るのがむずかしくなる。
「だから、年末まで使って、それから休養させようと考えている」のだという。
 
さて、その年末までの今後のプランだが、
次走はJRAのデイリー杯(11月9日京都・1600m)が決まっているそうだ。
 
「デイリー杯を使って疲れがひどいようだったら、
つぎは暮れの園田ジュニアカップ(12月31日・1700m)でしょうか。
もしくは他場に行くか…。
どちらかというとダートより芝に向いている」というのが長南師の見方だ。
 
大きな躯をもつエキサイターは、そのせいか普段はとてもおとなしい。
馬房ではただじっと立って、一点を見つめたままびくとも動かない。
そんな様子から育成牧場に預けたときに付けられたあだ名が
“走る牛”だったそうだ。
 
「そう呼ばれてたんです。普段はすごくおとなしくて反応もにぶい。
ただ、競馬場に来ると狂ったようになる。
だから、追い切りで動かなくたって本番になると変わるんだろうなって…」。
オンとオフの使い分けを知っているのか、
一旦スイッチが入ると猪突猛進になるのがエキサイターという馬である。
そういう性格をもった馬だけに、日頃のケアとこまやかな調整には
万全の気配りが必要で、馬のバイオリズムをつかむための努力を怠ってはいない。

 

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全国のセリ市をめぐり「感じる力」を養う

エキサイターが体重面のリスクをかかえる馬であることをここまで書いてきた。
体重をおさえる手段としてハードな坂路調教が有効であることもわかった。
問題はその施設の有無である。
JRAと地方競馬の施設の格差である。
中央の馬は、脚に負担の少ないクッションの効いた坂路を駆け上がって
スパルタ調教をしている。
そういう施設の格差が馬をつくっていくうえにおいてむずかしい点だと、
長南師は胸のうちを明かす。
 
「中央の馬が年明けて3歳になったら、
施設の差によって馬の力の差も開いてくると思うんです。
いまの段階だからまだ通用しているのでね…」
 
トレーニング施設の差はいかんともしがたいものがある。
そこで、多少とも救いとなるのが優秀な馬に附与される補助金制度である。
優れた馬をさらに強くするために競馬組合が設けているもので、
すでにエキサイターはその権利を得ている。
年明け2カ月ほどは坂路コースのある施設でハードに鍛える計画だというから、
楽しみは来年へとつながる。
 
ところで、長南師は調教時は馬には乗らない。
騎手時代に傷めた頸椎症のため馬に乗れない状態がつづいている。
辛うじて車の運転ができる程度である。
今年開業してちょうど10年目、最初は管理馬2頭からのスタートだった。
 
「裸一貫もいいとこですよ。厩が空いてたんでウサギを飼ってました(笑)」
 
馬2頭とウサギ数匹からはじまった厩舎が今年、
大輪の花を咲かせようとしている。
エキサイターの快進撃がそれを予感させるのである。

 

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「ぼく、セリにはたぶん全国の調教師のなかで一番行ってると思う」と長南師は言う。
乗馬部に所属していた学生のころから騎手時代を経て現在まで、
高い意識をもって馬の良し悪しを見分ける力を養ってきた。
エキサイターの非凡なバネを見いだしたように、
馬を見て感じる力を全国のセリ市を踏破することで磨いている。
 
「はずれの馬もいっぱい見て、当たりの馬もいっぱい見て…
こんなのが当たるんだよなっていう第六感を働かせるためには(全国のセリに)行くのが
やっぱり勉強になります」
 
セリ市に出かけ、たくさんの馬を観察し眼を養ってきた、
その向学心に富んだ姿勢がエキサイターとの出会いを生んだといえるだろう。
 
エキサイターという馬の今後の期待度を最後に訊いた。
 
「持っているいま現在の能力は出せてると思う。
今後、成長するにつれもうちょっと走ると思っています。
体重とのアンバランスは否めないんですけど、
こまやかなケアをしながら強めの調教を重ねていけば、
さらなる高みをめざしていけるのかなと思う」
 
「3月半ばから他場の重賞を使って、それをステップに園田の重賞を。
地元で走る場合は、もちろん大きなところはいきたいですね」
 
ここまで全6走を経験し、エキサイターにとってのスタンダードが
上がったことはたしかである。
一段階ステップアップしたエキサイターの、
成長した3歳の走りをファンとともに大きな期待をもって見守っていきたい。
 
 

文 :大山健輔
写真:斎藤寿一

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