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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

令和元年、年末の大舞台に若きジョッキーが挑む!

 
中央・地方の枠を超えて、全国の若き騎手たちが頂点をめざす
ヤングジョッキーズシリーズ(以下YJS)。
金沢からはじまった今年のトライアルラウンドで、
地方競馬の総合順位1位~4位を独占したのは兵庫県勢だった。
あたかも兵庫県ジョッキーの騎乗技術の高さを証明したかたちだ。
大井競馬場(12月27日)、中山競馬場(12月28日)に挑む4騎手に意気込みを聞いた。
 

長谷部 駿弥 騎手 (20歳)3年目
去年の反省を生かし、悔いのないレースを。

 

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デビュー3年目の長谷部にとってYJSへのエントリーも
今年で3度目になる。
はじめてファイナルラウンドに進出した昨年は
14人中6位の成績を残し入賞を果たした。
「はじめての競馬場、はじめての大きな馬場だったんで、
去年は何もわからないまま終わったって感じでした。
わからないことが多かったんですけど…でも、楽しかったな、
いい経験させてもらったなというのが大きいですね」。
はじめて大井、中山を走った感想を長谷部は率直に語る。
今年のトライアルラウンドでは
笠松の2戦を2着2着でまとめ(40ポイント獲得)、
一気に総合3位まで浮上したが、
園田ラウンドで木本直に逆転され4位に下がってしまった。
そのため最終トライアル(川崎)の結果次第で当否が決まるという
状況に追い込まれていたのだが…。
 

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「川崎が終わった時点で松木(大地)さんの総合1位が
確定したんで(松木がイチヌケとなり)、
4位だったぼくまでが行けるようになったんです。
ラッキーでした」
「去年経験したこと、その反省を生かして、
今年は結果はどうあれ悔いのないレースをしたい。
自分の納得のいくレースをめざして頑張ります」
ツキを味方にして挑む2度目の大舞台に意欲をみせる。
今年4月、はじめて大きなケガを体験した。
3着でゴールした直後に馬がつまずき、
前のめりに落馬し右手を馬に踏まれるという事故だった。
右手親指の粉砕骨折。
2カ月半レースから遠ざかった。
「成績もいい感じで伸びてきた頃でしたから…」と、
2カ月半のロスを悔しがる。
そんな不利な条件にもかかわらず、
勝ち鞍は3年連続の右肩上がり、
今年はじめて30勝ラインをクリアした。
「去年以上の勝ち鞍を毎年の目標にしてきたので、
達成できてよかったです」
ケガを経験したことで、焦らず、我慢することも覚えたことだろう。
YJSファイナルでは「とにかく悔いのないレースを。
そこが一番ですね。
それで結果がついてきたらラッキーかなと思ってます」
熾烈な争いが予想されるファイナルステージ。
結果をおそれず、雰囲気に呑まれず、
平常心でもってレースを楽しんでほしいものだ。
 

木本 直(なお) 騎手 (19歳)1年目
玉子焼パワーで夢の舞台に挑む!

 

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YJSファイナル進出をデビュー1年目で決めた木本直は
「ぼくなんかが(ファイナルに)行っていいんですかね」と、
新人らしい初初しさをみせた。
友人たちからは「デビュー戦でケガをしたのに
ビッグなレースに出場できるんやから、
お前は強運を持ってる」と励まされたという。
極度の緊張とプレッシャーから、晴れのデビュー戦を
しくじる新人ジョッキーというのは多いと思うが、
木本の場合は、デビュー戦を走る以前の馬場入場のおりに
馬道で事故に遭ってしまったのだ。
突然、馬が暴れて横転し、
乗っていた木本は身をかばって左手で壁を支えた。
そのときの記憶が曖昧で、気がついたら振り落とされていたという。
またたく間に手が腫れあがり、足にもケガを負った。
馬も腰を擦りむいていて当然レースは競走除外。
1レースも乗らないうちに勝負服が破れるという散々な目にあった。
「まさかデビュー戦のデビュー馬でケガするとは思わなかったので、
ショックでした」
この日は、あと4つのレースに騎乗予定があり
「親や友だちも応援に駆けつけてたから、
(保利)良平先生もなんとか出してやりたいと言ってくれたんで
痛み止めを服んで2つのレースだけは出ました」。
診断の結果は左手首と親指、中指の骨折。
1カ月半の療養を余儀なくされた。
そんなトラブルを克服してのファイナル進出なのである。
園田での初勝利は傷が癒えた6月12日だった。
ここまで16勝(11月19日現在)。
しばらくはケガを怖れて気持が入らなかったようだが
「8月に入ってポンポンと勝ってから、
さあ、頑張ろうって思い直した」という。
「いまは乗るのが楽しいです。
応援してくれる友だちもいっぱいいるんで。
見に来てくれたときは、カッコいいカッコいいって
言ってくれるんでヤル気が出ます」。
ちょっぴりお調子者だが、明るく素直で、陽気なルーキーである。
騎手学校の同期生10人の中でYJSファイナルに出場できたのは
木本一人だけらしい。
「もう思いきって乗るだけ。仲間のぶんまで頑張りたい」
と意気込んでいる。
 

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園田で行われたトライアルラウンド、
レース前の騎手紹介で彼はこう言っていた。
「ぼく、きのう美味しい玉子焼を食べたんで、
そのパワーで頑張ります」。
結果、そのとおりになってファイナルの切符を手に入れた。
玉子焼は木本のラッキーアイテムかも。
本人も「大井と中山を走る前には、また食べようと思ってます」
と験(げん)をかつぐ。
ともかくも彼の場合は、デビュー時に不運な体験をしたことで、
そのあと運が好転したといえなくもない。
友人が励ましてくれたように、自分の強運を信じて、
令和元年の夢の舞台に挑んでくれることだろう。

 

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