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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

重賞初出走、初制覇の快挙!

 

第二のホースマン人生は上昇一途

地方通算3560勝という輝かしい数字を残して
2017年7月の騎乗を最後に引退した兵庫のレジェンド木村健騎手。
2018年4月から木村健“調教師”として
第二のホースマン人生をスタートさせ、同年9月に初陣、
そこからまもなく2年半が経とうとしている。
 
昨年10月には兵庫クイーンカップをマコトパパヴェロで制し、
早くも重賞初制覇を果たした。
「充実しているかな、ちょっとずつ成績も伸びているので」
との言葉の通り、18年5勝、19年25勝、20年31勝と
着実に勝ち鞍を増やしている。
 
木村厩舎には20~50代のスタッフが4人いるが、
「やはりスタッフが頑張ってくれているというのが一番」と
成績向上はスタッフの頑張りのお陰と労いの言葉が一番に出た。
 
「騎手時代にはじっくり馬を触ったことがなかったので、
慣れるまで時間がかかりました。ジョッキーの時とは全然違う。
レース後に馬の状態を見たりするのも最初は心配だったけど、
最近はレースに集中できているかな」と
少しずつ調教師としての仕事に慣れてきたことも、
間違いなく結果に結びついているのだろう。
「でも、未だに馬を引くのは怖いですね。
厩務員さんはすごいなと思います。」と
馬の口を取って歩くのが苦手だというのだから、
あれだけ馬上で上手に操れる人が…と意外に思う。
 
毎朝、木村師自身も4頭くらいには乗って調教を付けている。
ジョッキーの時は毎日痛み止めの薬を飲みながら
レースに乗っていたため、
内臓面にも負担がかかっていてボロボロだったというが、
今はその薬を飲む必要はなくなっているという。
ただ、「騎手時代ほどではないけど、
たまに調教で乗っていてピリピリすることはある」と
いうからやはり大変そうだ。
「腰が良くないので一杯は乗れないけど、
乗れる範囲で乗っていきたいですね。」
 
木村厩舎として心掛けていることは、「とにかく無事に」。
「攻め馬でしっかり乗っていない馬は使いたくない。
ちょっとでも歩様が悪いと感じたら使わない」と、
常に脚下が万全な状態で出したいという思いがある。
 
馬を大切しながら育てるという方針に、
馬が結果で応えて成績が上昇。
歯車がうまく回り出している。

 

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喜び溢れる重賞初制覇

昨年10月30日、園田競馬場1700mで行われた
兵庫クイーンカップをマコトパパヴェロで制し、
木村厩舎は初の重賞タイトルを手にした。
その背中には、木村師にとって鎬を削った
騎手時代のライバルでもあり、
幼い頃からの大親友でもある田中学騎手が騎乗していた。
 
「1230mや1400m中心で使ってきて、
短い距離でも結構道中行きたがるところがある馬なので
1700m戦は不安でした」という中でのレース、
田中騎手はなんと逃げる作戦に出た。
デビュー57戦目にして初めての“逃げ”だったが、
「学君も『かかっても良いや、行け!』と
思ったと言っていたし、僕も『行け!』と思った」と
1周目3コーナー手前でお互いの思惑は完全に一致していた。
「逃げた分で折り合いもついた」マコトパパヴェロは、
後続の追い上げを振り切って優勝。
ゴールの瞬間、田中騎手が力強く握った左手には
大きな喜びが込められていた。
 
木村調教師も満面の笑みで田中騎手を迎え、
思わず抱きついたという。
「興奮しとったね。(勝利調教師インタビューでも)
嬉しすぎてずっと笑っとったもんね。
周りからも『笑顔ばっかりやん』と
あとで随分突っ込まれましたけど、
やっぱり嬉しいもんですね」と
3ヶ月前の出来事を感慨深げに振り返った。
 

遡ること10年近く前、福山牝馬特別(福山競馬場の交流重賞)で
ゴールドピアースを2011,12年連覇に導いたのが
木村健“騎手”だった。
そこで繋がった山口正行オーナーの所有馬
マコトパパヴェロを厩舎開業と同時に預かることになった。
移籍当初はB1クラスで足踏みが続きなかなか勝てなかったが、
次第に力も付けてA2クラスの常連となっていった。
ただ、「とにかくずっとフケ(発情)に悩まされていた馬で、
調子が良くて今回は行けると思っていたら
装鞍所でフケが来てしまって、
好調がレースに繋がらなかったこともありました」とのことで
苦労が絶えなかったようだ。
 
そんな中での重賞制覇だっただけに苦労が報われた思いだった。
その後の牡馬相手の中距離戦では結果を出せなかったが、
今年は再び折り合い面が楽になる1400m辺りの
レースを中心に使いながら次のタイトルを目指していく。

 

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