兵庫県初の女性ジョッキー誕生で沸いた今年度。
男性2人を含めて華やかに3人のルーキーが兵庫の騎手に加わった。
しかもデビュー週にそれぞれが初勝利を挙げる大活躍!
彼らの意気込みや決意を語ってもらい、
全力でバックアップする師匠たちにも話を訊いた。
なんといっても注目を集めたのが、
兵庫県競馬から初めての女性ジョッキー、
佐々木世麗騎手が誕生するということ。
迎え入れたのはここ数年、リーディングをほしいままにする
新子雅司調教師。いやが上にも期待が高まる。
デビュー当日、レース前に意気込みを訊いた。
「デビューできてすごく嬉しいです。
緊張はしていますけど、しっかり馬の気持ちを考えて乗っていきたいです。
少しだけ自身を持って、全力を出し切るのみです。
レースはたくさんの方に乗せてもらっているので、
ひと鞍ひと鞍、技術の向上に繋がるように乗っていきたい。
女性騎手としてのプレッシャーはないので、
ひとりの騎手として実績を上げていきたいと思います」と力強く結んだ。
兵庫初の女性騎手、その初勝利という歴史的瞬間は、
翌日のメインレースという大舞台で訪れた。
師匠の新子師が管理する断然人気のワシヅカミに騎乗して
逃げ切り勝ち。同期の中で初勝利一番乗りを果たした。
「デビュー戦よりも緊張していたと自分で感じました。
笑顔になったとき、唇が震えてきたら緊張している証拠なので、
デビュー戦よりも震えていたのが自分で分かりました」。
緊張を感じながらも、客観的に自身を捉える冷静さを
既に持ち合わせている。本当に緊張していたのか!?
緊張の大きな要因は、逃げ馬であるワシヅカミのスタートを
決めなければならないということだった。
「兄弟子(笹田騎手)と先生のアドバイスを聞いて
『馬に任せておけばいい』と言われていたので、
しっかり馬についていくことだけ考えていました。
思ったように好スタートを切れましたし、
横を見たときに誰もいなかったので、まずは安心しました」
デビューして初めて逃げる展開。
自分でペースを作ることに集中した。
「しっかりハミをかけて、後ろの馬を見ながら行けばいいと
言われていたので、後ろを見つつゆっくり行けて、
自分としてはいいペースでレースができましたと思います。
直線は後ろから詰め寄って来てちょっと怖かったですけど、
そこは覚えていないぐらいにがむしゃらに追いました。
ゴールの瞬間はホッとしたというより嬉しい気持ちの方が大きかったです」
騎手教養センターでは、
教官から「強運の持ち主」と言われていた世麗騎手。
ここぞというときほど力を発揮するとは、まさに勝負師!
その日の一番注目されるメインレースで、
全国に大きくアピールできるという強運を発揮した。
注目するファンからは大歓声と拍手が沸き起こった場内。
このレースを実況していた筆者は、
通常の歓声とは違う雰囲気を感じた。
地元初の女性ジョッキーの初勝利が、
まだまだフワフワした感じの動揺を含んでいたように思う。
うん、実況もそんな感じだった…。
「歓声がものすごく聞こえて嬉しかったです♪」と
愛らしく微笑んだ。世麗騎手の方が冷静だ。
彼女は次の最終レースでも勝ち、初の連勝も経験。
翌日にも勝ち鞍を挙げ、デビュー週でいきなり3勝の活躍を見せた。
3週間の騎乗を終えて38戦6勝2着1回3着1回。
勝率18.4%は期待以上の成績だ。
「いまは逃げばっかりでの勝利、
次は差す競馬で勝てるようなレースをしたいです。
気持ちは少し落ち着きが出てきたと思います。
馬が強いと勝てるし、減量が効いていると思います」
と実績を謙虚に受け止めている。
師匠の新子雅司調教師はどう見ているのか。
「3人とも安定している。みんなよく乗れていると思う。
世麗は1週目と違って2週目はフォームが安定してきましたね。
普段は心拍を上げるトレーニングや、
木馬でフォームを整えることやっています」
木馬には調教に乗るだけでは得られない、
ひとつひとつの関節の動きなどを教えることができるのだという。
心拍数に関しては、170/分を超えるところまで上げ、
そこから持続させるトレーニングを積むことが大事なのだそうだ。
当初、苦しさからこのトレーニングに消極的だった世麗騎手だったが、
一週間実戦を経験し、自分のスタミナのなさに気付いたのか、
積極的にトレーニングに励むようになった。
プロの騎手としての意識が、今後のさらなる成長を促していく。
まだまだあどけなさが残る17歳。
というよりおぼこさが残るほど。
そんな龍太郎少年は、すでに西脇トレセン内でも
多くの人に可愛がられるほど、弟キャラが定着している。
「(デビューは)とても嬉しいです。
緊張もありますけど、皆さんの期待に応えたいです。
アピールポイントは小柄な体格を活かした
優れたバランス感覚で騎乗ができるところです。
騎乗馬が多いことはすごくありがたいと思います。
ひと鞍ひと鞍全力で騎乗します」と意気込みを語ってくれた。
初勝利はデビュー3日目だった。
第9レース、自厩舎のナリタウルフに騎乗して
後方から胸のすくような追い込みを決めた。
「とにかく勝ててうれしいです。
先に佐々木(世麗騎手)が3勝を挙げていたので、
結構焦る気持ちがありました。
本当に嬉しかったです。
差し切りは気持ち良かったです」と満開の笑顔を見せた。
道中は先に名手・田中学騎手が動く展開になり、
それについていく形で追い上げていった。
「動くタイミングはいまだ!と感じられました。
馬も脚が十分あったので、直線までついて行って
追い上げようと考えていて、その通りのレースができました」。
早くもイメージ通りにレースを進められるとは並の新人ではない。