logo

クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

令和3年度 優秀競走馬

写真

 
5歳時に兵庫に移籍してきたが、
当初はオープン特別で勝ち切れないレースが
続く善戦マンの印象が強かった。
ところが6歳の夏に突然覚醒。
爆発的な末脚を武器に短距離戦で4連勝を飾り、
一気に重賞ホースへと華麗なる変貌を遂げた。
 
7月の1230mオープン特別。
この日は不良馬場で、
逃げ切り続出の断然前が有利の馬場状態。
スタートで後手に回り、
8頭立ての最後方からレースを進めたコウエイアンカ。
4kg減の佐々木世麗騎手が騎乗するワシヅカミが
スイスイ逃げる最後の直線、大外に持ち出すと、
不良馬場もお構いなく豪快に差し切り、周囲を驚嘆させた。
 
続く8月のオープンでは重賞6勝馬エイシンエンジョイ
を差し切って勝利。このときの上がり時計が2着馬を
2秒3も上回る異次元の末脚。
この勝利で誰しも重賞級の決め脚だと認めざるを得なくなった。
さらに次走でもう一度エイシンエンジョイを降し、
その地位を確固たるものとした。
 
迎えた9月24日の『園田チャレンジカップ』は
5連勝と飛ぶ鳥を落とす勢いで重賞制覇へ
コマを進めてきたハナブサが人気を集めた。
それでも陣営は仕上げと末脚に絶対の自信を持ち、
ブレずに後方待機策でレースに臨んだ。
 
逃げ馬のエイシンエンジョイ、
ナチュラリーが折り合いをつけ前が有利な流れとなったが、
4コーナーで大外に持ち出すとまずはハナブサを抜き去り、
先行する各馬や、高知の実力馬ダノングッドらを
差し切って優勝。
遂にタイトルホースへと上り詰めた。

 
 

写真

 
ホッカイドウ競馬出身で2020年11月に兵庫に移籍。
3歳となった昨年はオープン特別で
2、4、3、2着と差のないレースを続けたが、
重賞では当然軽い扱いを受け、
6番人気で出走した『のじぎく賞』。
そこでものの見事に快勝して一躍、牝馬の頂点に立った。
 
中団のインコースで脚を溜めたクレモナ。
1走前から手綱を握る田中学騎手とのコンビで
ロスなく立ち回る見事なレースぶり。
直線で外に持ち出すと、逃げていたパールプレミアを
あっさり捉え、最後は3馬身の差をつけて快勝した。
管理する長倉功調教師にとって、
開業18年目にしての嬉しい重賞初制覇となった。
 
次走に選択したのは高知競馬のダービー『高知優駿』。
好位のインコースをロスなく立ち回る、
のじぎく賞同様のレースぶりで差を詰めるも、
先行した2頭を捉え切れず3着。
それでも後続は完全に完封して、
4着以下には6馬身の差をつけた。
 
その後は『園田オータムトロフィー』や
B1クラスの条件戦でも大敗し、
春の実績が色あせ始めたが、
川崎競馬場で行われた『ロジータ記念』(2100m)で
大健闘の5着と結果を残した。
南関東の強豪相手に初めて2000mを超える長距離、
初めての左回りを克服しての好走。
レースぶりも後方でじっくり脚を溜め、
末脚勝負をする戦法で新味を見出した。
この一戦が大きく評価され、
重賞1勝ながらも最優秀牝馬の座に就いた。

 
 

写真

 
JRAで新馬勝ちしたのち、南関東へ移籍。
3歳の8月から兵庫在籍となり、
B1条件を軽々と大差ぶっちぎって連勝した。
断然の1番人気に支持された『秋の鞍』(名古屋)では、
逃げたトミケンシャイリを捉え切れずまさかの敗戦を喫する。
ところが、地元に戻って全国交流の『楠賞』で本領を発揮した。
 
全国各地からとにかくテンに速い馬が揃い踏み。
力量も確かで、中途半端な出走馬は見当たらず、
少数精鋭の9頭立てとなった。
そんな中、ハナに立ったのがイグナイターだった。
道中は余裕のペース配分。
勝負どころでも他馬を寄せ付けず、
直線に向いてさらにリードを広げ、
4馬身差をつけて快勝した。
 
何頭かが出遅れたために楽々と先手を奪えたが、
仮に他の馬がスタートを決めてたとしても勝っていただろう。
そう思わせる完勝で、力の違いを見せつけた。
それを立証したのが年末の『兵庫ゴールドトロフィー』。
並みいるJRAの強豪相手に3着と激走。
さすがに最後はいっぱいとなったが、
ジーワン馬ワイドファラオには3馬身の差をつける快走だった。
 
最優秀3歳に選ぶ声も挙がったが、
地元デビューのダービー二冠馬には敵わなかった。
さらに、最優秀短距離馬の選定も考えられたが、
こちらは4歳以上の括りが邪魔をした。
ただ、これがキッカケで来年度以降は
3歳も含めて短距離馬や中長距離馬が選定される見込み。
今年はさらに規格外の活躍を期待したい。

 
 

写真

 
8歳になり衰えを感じさせるどころか、
年明けの『新春賞』の激戦を制し、見事に3連覇、
通算4度目の同レース制覇を成し遂げた。
これで3歳時からの6年連続重賞制覇も達成している。
 
3月には佐賀競馬場の『はがくれ大賞典』に出走。
好位から抜け出し、
持ち前の粘り強さで他馬の追撃を凌いで優勝。
このレースも3度目の制覇を飾る偉業。
4年連続の連対も果たした。
 
暑い時期が苦手で、
暮れから春にかけての季節に滅法強いエイシンニシパ。
大事に使われていることもあって、
年齢を重ねてもパフォーマンスが落ちないのが素晴らしい。
 
『兵庫大賞典』では3世代下の僚馬ジンギに敗れたものの
他馬を寄せ付けず2着を確保。
6月の『六甲盃』では不得手な2400mの距離に泣き
4着となった。
 
夏をスキップして迎えた秋初戦『姫山菊花賞』はまたもや
僚馬ジンギに敗れ2着。
それでも3着馬には4馬身の差をつけた。
次に16戦ぶりに重賞ではないオープン特別に出走。
同世代の重賞7勝馬マイタイザンを競り負かし
グランプリへと駒を進める。
 
グランプリレース『園田金盃』は道中、
ジンギを徹底マークの形でレースを進め、
真っ向勝負を挑んだが1馬身3/4差の2着。
このときも3着馬には5馬身差をつけていた。
 
重賞で3度後塵を拝したが、兄弟子として胸を貸し続け、
ジンギを大成させた陰の立役者ともいえるエイシンニシパ。
今年は9歳になったが『新春賞』
4連覇&5度目の制覇を達成して凄味を増す。
再び相まみえるジンギとの同部屋対決を楽しみにしよう。
 
 
※成績、年齢表記は昨年時のもの

 
 
(順不同)

 

文 :竹之上次男
写真:斎藤寿一

クローズアップbacknumber