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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

厳しい環境の中で積み上げた100勝

 
兵庫県競馬初の女性騎手が誕生した2021年。
多方面から注目を集める中、
4月13日の第3Rでデビューを迎える。
初日に勝ち星を挙げる事は出来なかったが、
翌日のメインレースで初勝利。
続く最終レースも勝ち自身初のマルチ勝利を記録した。
 
6月16日に自身初の1日3勝を記録すると、
夏場の開催で勝ち星を量産。
デビューイヤーは年間87勝を挙げる活躍で厩舎関係者、
競馬ファンを驚かせた。
数々の新人記録を更新すると、
NARグランプリ2021優秀女性騎手賞を獲得。
華々しい1年目となった。
 
さらなる飛躍が期待された2年目。
年始開催後からの体調不良により2ヶ月間戦線離脱。
所属厩舎を新子雅司厩舎から中塚猛厩舎に変更し心機一転。
3月の園田開催から復帰すると、
5月13日に通算100勝、
5月18日に見習い騎手卒業も決める。
 
デビューから1年4か月が経過。
地方競馬の歴史に残る大記録を達成した
佐々木世麗騎手に今の心境を伺った。
 

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厳しい環境の中で積み上げた100勝

デビューイヤーに87勝をマーク。
兵庫県競馬の新人騎手勝利記録、
地方競馬新人女性騎手の年間最多勝記録を更新。
 
5月13日には通算100勝を達成。
デビューから396日目、通算870戦目は、
デビューからの通算日数、
騎乗回数共に地方競馬女性騎手史上最速の記録。
5月18日には見習い騎手卒業を決めて
一般騎手の仲間入りを果たす。
女性騎手が一般騎手になると特別・重賞競走を除き
「◇-2kg」で騎乗ができる。
 
「まずは達成できて嬉しいです。
減量が4kgから3kgに変わった時は
馬の進みが全然違うなと感じました。
4kg減の時は馬が勝手にグングン前に進んでいってくれて
最後まで粘ってくれました。
1kg重くなるだけでこんなに違うのかと思いました。
ただ、3kgから2kgに変わった時は感じませんでしたね。」
 
兵庫県競馬は園田の帝王と呼ばれた田中道夫騎手(現調教師)。
JRAで活躍する小牧太騎手、岩田康誠騎手、
兵庫ダービー5勝の木村健騎手(現調教師)など名騎手を多数輩出。
 
現在も2000勝を超えるゴールデンジョッキーが4名いる。
4年連続で兵庫リーディングを獲得している吉村智洋騎手。
兵庫県競馬生え抜き騎手の重賞勝利記録を更新している下原理騎手。
今年ダートグレード2勝で先月通算4500勝を達成した田中学騎手。
地方通算5700勝以上を挙げている川原正一騎手など腕達者が揃う。
 
「デビューする前からレベルの高い方が沢山いて凄い所だなと思いました。」
 
厳しい環境の中でも天性のスタート勘と
積極的なポジション取りで勝ち星を量産。
今年は7月27日時点で25勝。
兵庫リーディング15位につけている。
2ヶ月の休養期間はあったが同期の大山龍太郎騎手、
長尾翼玖騎手と差のない勝利数を記録している。

 

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きっかけは乗馬体験

佐々木世麗騎手は広島県出身。
幼少期からバレエ、水泳、ピアノ、
落語と様々な習い事を経験。
 
落語は小学校1年生の時から
六ッ家千艘(りくつやせんそう)師匠の下で学び、
高座で落語を披露した経験がある。
母が命名した「いねむり亭オーロラ姫」という名で活動。
子供の時によく寝る子供だったことから
「いねむり亭」と名付けたとの事。
 
同時期に乗馬も習っていて、
馬に乗る方を仕事にしたいと思って騎手の道を選択。
少ない準備期間ではあったが、
2019年4月に地方競馬教養センターに入学。
教養センター、半年間の競馬場実習でプロとしての心構え、
技術を学んだ。
 
1期先輩には地方競馬最速の100勝を達成した
飛田愛斗騎手(佐賀)がいる。
昨年佐賀リーディング2位(144勝)、
今年も7月20日の時点で3位につけている。
 
「候補生時代から騎乗技術がうまかったです。
昨年のヤングジョッキーズシリーズは
一人だけベテラン騎手がいる感じがしました。」
 
2年間の厳しい訓練を乗り越え
2021年4月にデビューを迎えた。
 
2020年から続く新型コロナウイルス感染拡大防止
対策のため、新人紹介は動画でファンに配信された。
園田・姫路競馬場では2年半近く、
競馬ファンの前でメインレースの勝利騎手インタビューや
重賞競走の表彰式、インタビューが行われていない。
 
佐々木世麗騎手をはじめ、同期の長尾翼玖騎手、
大山龍太郎騎手、2021年秋デビューの青海大樹騎手は
ファンの前でのインタビュー経験がない。
 
「落語を人前で披露した経験はありますが、
インタビューはまた違うので・・・
どう答えたらいいのか分からなくて・・・。」

表彰式、勝利騎手インタビューの再開は未定だが、
2年目を迎えた騎手達は
どのような受け答えをしてくれるのか今から楽しみだ。

 

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目標に向かって地道にコツコツ

デビュー当時に掲げた目標は1000勝。
尊敬する宮下瞳騎手(名古屋)は
昨年11月に地方通算1000勝を達成。
日本の女性騎手初の大台突破。
平成23年に出産を機に一度、現役を引退。
2016年に現役復帰しての偉業達成となった。
 
2020年に年間105勝。(名古屋リーディング4位)
2021年は年間96勝。(名古屋リーディング6位)
子育てしながら名古屋リーディングの上位につけている。
 
「5年以上のブランクがあっての現役復帰は
簡単なことではないですし、
これだけ現場から離れたら普通戻ろうとは思えないですよね。
それで1000勝を達成するのは凄い事です。
そう考えると私の場合は・・・
長いな・・・道のり長いな。(笑)
地道に頑張っていきます。」
 
日々の積み重ねが数字となって表れるはず。
 
減量が取れることで苦労する面もある。
軽量の佐々木世麗騎手は現在も10kg前後の
重りをつけてレースに臨んでいる。
 
「検量から装鞍所へ持っていくときが大変です。
左右に1鞍ずつしか担げないので、
1度に2レース分しか持てないんですよ。
先輩みたいに4個、5個持っていけないです。
調教師の先生方も手伝って下さりますが
重くて大変そうです。(笑)
その鞍を背負うお馬さんも大変でしょうね。」
 
減量、体重維持で苦しむ騎手が多いが、
彼女の場合は騎手として必要な筋力をつけながら
体重を増やす事に苦労している。
佐々木世麗騎手ならではのエピソードだ。
 
佐々木世麗騎手が姉のように慕う厩務員さんがいる。
2019年から園田競馬場の厩務員として働く藤本里奈さん。
以前は園田競馬場の誘導馬に乗っていた経験がある。
 
「旅行や買い物に一緒に行ったりしていて、
騎手候補生時代からお世話になっています。
見た目が若くて私と同い年くらいかな?と思っていましたが、
10個上と聞いたときは驚きました。」
 
佐々木世麗騎手は藤本さんが担当している
トウケイメニモミヨ号で2勝を挙げている。
トウケイメニモミヨ号は藤本さんが厩務員になって
2歳のデビュー前から担当した思い入れのある馬。
 
「里奈さんの担当馬で勝利出来たのは嬉しかったです。
兵庫県新人最多記録の口取り写真は
自然と満面の笑みになっていました。」
 
これまでの兵庫で見ることが出来なかった女性騎手、
女性厩務員コンビの活躍。
兵庫県競馬に新しい風が吹き始めている。

 

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