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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

日本一のチームワーク

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重賞初制覇

6月2日、笠松競馬場で行われた重賞
「ぎふ清流カップ」に出走したクリノメガミエースが
見事に逃げ切って勝利し、
石橋厩舎初の重賞初制覇となった。

元々JRAの新馬戦を圧勝した経験のある期待馬。
それだけにプレッシャーもあったというが、
「クリノメガミエースは、社長(栗本オーナー)
と橋本先生が『これで重賞勝て!』と言って
預けてくださった馬なんですよ。
その点でも、嬉しかったですね。」
 
3/23の移籍初戦は6頭立ての5着と奮わなかった。
「全然競馬にならなくてダメかなと思ったけど、
そこからスタッフが頑張ってくれて馬が変わってきました。」
入厩当初はイライラしてメンタル面に問題を
抱えていたというが、試行錯誤しながらスタッフと
苦労して立て直すことに成功した。
 
「馬のメンタルって本当に大事で、
走る馬は一杯いるのに、メンタル面で能力を
出し切れない子が多いので、そこは考えてやっていますね。
うちのスタッフはそこの扱いが上手いんです。」
 
石橋師がスタッフにも伝えているのが、
「過去に牧場でどういう状況だったとか、
この先自分たちの手を離れてどうなるかは
分からないけれど、馬に『ここに来てよかったな』
と思ってもらえるような扱いをしろ」ということ。
もちろん一定の躾は必要にはなるだろうが、
「繊細な生き物なのでできるだけ怒らず、
扱いには十分に注意するように。
子供のように扱いなさい」とスタッフにも言っていて、
実際に普段の接し方一つで変身する馬も多くいるのだという。
 
それは、クリノメガミエースでも。
彼女は、最初は馬房で人に噛みにきていたが、
途中からそれはなくなったという。
「確信はないですけどね・・・」
と前置きはしながらも、メンタルが落ち着いたことで
本来の能力をレースで出せるようになった可能性は
大きそうだ。その結果の重賞初制覇だった。
 
調教師として初めてタイトルを獲得したことは
もちろん嬉しかったが、その翌日にクツワノオジョウが
4連勝を飾ったことも「重賞と同じくらい嬉しかった。
1頭1頭違う喜びがあるんですよね」と。
どのレースも1頭1頭に真剣に向き合っているから、
格の違いは関係なく、どのレースでも勝利は嬉しいのだ。
 
「一番頑張っているのは厩務員さんなので、
勝ったらまずは一番に厩務員さんにありがとう」
と感謝の言葉をかけることも忘れない。

 

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石橋厩舎の看板馬

厩舎開業初年度から長きにわたって看板馬として
活躍中の馬、それがコスモバレットだ。
2月の姫路競馬で勝利したレース中に軽く脚を捻り、
そのまま半年間休養に出ていたが、
まもなく帰厩するとのことだ。
 
「この子こそ、うちに来て変わってくれた1頭なので、
この馬で重賞を勝ちたいという思いはあるんですよね。
今年のはがくれ大賞典はチャンスだと思っていたのですが…」
とのことだが、まだ先がある馬の今後を考えて
大事を取ったとのこと。
 
去年のはがくれ大賞典でエイシンニシパの2着に入り、
今年の新春賞でもエイシンニシパからクビ+アタマ差の3着
とタイトルまであと一歩のところまで来ている。
 
「ジンギにシェダル、さらにラッキードリームまで入ってきて…」
と苦笑いしていたが、
「金盃はやっぱり参加できるならしたいですし、
来年のはがくれ大賞典も視野に入れたいですね。」
 
また、石橋師にとって思い入れの深い1頭も紹介しておこう。
2019年兵庫ゴールドトロフィー(Jpn3)の2着好走
を記憶されている方も多いであろうイルティモーネだ。
 
イルティモーネは、石橋師が小牧厩舎で厩務員をしていた
時に調教師試験に合格するまで2年半以上にわたって
担当した馬だった。
気性が難しくJRAでデビューする前から去勢されていたくらい
うるさくて手が付けられない馬。
「ゲート入らなくなったり、ラチにぶつかったり、
色々あった分思い入れが強いですね。」
 
この1年間は移籍して他地区でレースを重ねていたが、
近走結果が出なくなっていた9歳馬を石橋師はずっと気にかけていた。
 
「映像を通して見ても状態が良くなさそうだったので、
オーナーさんに『もしこのまま引退させるつもりでしたら
僕にやらせてください』と言って預けていただいたんです。」
 
夏前の入厩から3戦してまだ結果は出ていないが、
「うちに来てだいぶ状態面は戻ってきました。
展開次第だとは思いますが、
この子をもう一度勝たせてあげたい」
と、“調教師として”プレゼントする1勝を夢見ている。
 

日本一のチームワーク

「僕自身、厩務員生活が長かったので、
『厩務員さんの気持ちになって考える』ことは
一番意識しています。
うちのスタッフは、自分から進んで何でもやってくれるし、
本当にスタッフに恵まれています。
この成績が出ているのも、馬主さんに可愛がって
いただいてるのと、スタッフのおかげなので。」
 
現在の厩務員スタッフは男性4人、女性1人の5人だが、
先月から2馬房増えたことで新たなスタッフを募集中だ。
 
「今後馬房数がさらに増えて、新しいスタッフが入って
きたとしても、このチームワークが崩れなければ数字は自然と
伸びてリーディングも見えてくるんじゃないかな。
チームワークは全国で一番だと思う。
絶対負けないです。
うちほど厩務員同士が仲良くて、
しっかりコンタクトとって、
楽しそうに仕事をしているところはないんじゃないですかね。
セリなどで厩舎を空けても、
みんなで助け合ってやってくれるんで、
何の心配もないんです」とスタッフたちを心から信頼している。
 
目標を達成したら、ボーナスがもらえたり、
厩舎スタッフ皆で旅行に行ったりと、楽しみながら
目標を持って仕事ができるような工夫もされていて、
スタッフは日々モチベーション高く仕事している。
 
それが好成績に直結していることは明白だ。

 

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今後の目標と夢

今年ここまで38勝(8/30時点)で、
2年目の47勝というキャリアハイを塗り替えるペースだ。
「20頭という馬房数(8月から2馬房増えて22馬房)を
考えたら、正直できすぎと思います。
年初の目標が年間50勝で10位以内だったのですが、
その目標は絶対クリアしないと」としながらも、
さらに上を目指せる数字を残している。
「今はリーディング5~10位が大混戦なので、
そこを勝ち抜いて最終的には5位が目標ですかね」
と後半戦は初のトップ5入りを狙っている。
 
さらに、目先の目標としては、
「JRAで勝ちたいです。
清水久詞先生と大竹正博先生にお世話になったので、
恩返しがしたいんです。
『あの研修に来てた子だよ』と言ってもらえると思うので、
それがしたいですね。
重賞を勝ちたいというよりも、
むしろこっちの目標が大きい。
自分が見つけ出した馬で勝てたら一番いいですね」
とJRA遠征への意欲も強い。
 
「夢はそこから飛躍して外国に行きたいですね。
リーディングよりも記憶に残ることがしたいというのは
ありますね。
サウジだったら可能性なくはないじゃないですか。」
海外遠征となると多額の遠征費がかかるが、
2月のサウジカップデーは招待競走のため費用面の心配がない。
全日本2歳優駿で結果を残せば、
海外遠征も夢物語ではないのだ。
 
「新子先生の調教技術とか、橋本先生の外交力とか、
飯田先生の番組を把握してレースを使うところとか、
自分なりにはやっていますけどそこは敵わない」
と相手をリスペクトしつつも、
チーム石橋には誇るべき「日本一のチームワーク」がある。
 
紫の固い絆で結ばれた新進気鋭の石橋満厩舎が、
ここから更なる旋風を巻き起こす。

文 :三宅きみひと
写真:斎藤寿一

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