では同期や師匠は大山龍騎手をどう思っているのだろうか。
佐々木世麗騎手は、園田と西脇で所属も違うので
そこまで接点はないとしながらも
「私たち同期ってみんな1回悩む時期があって、
それがレースを見ていても分かりますね。
減量が取れることとかの違いを
みんな分かってきたんじゃないかなと想像しますけど。
龍ちゃんはどんどん成長していっているようには見えます。
それにかわいいですもんね。
ずるいところはありますよね。
私よりかわいいもん」と段々饒舌に。
そして大山龍騎手が佐々木騎手を意識していると伝えると、
「私が勝ったら直接言ってきますもんね。
『勝たんで!』って。
だから私も『ええって。自分も勝ってるやんけ!』
って言いますけどね(笑)」。
同期らしく微笑ましいやりとりもちゃんとあるようだ。
一方、「ほんま弟みたいですけどね。
ずっと」と笑顔で答えてくれたのは長尾騎手。
「競馬学校の試験の時の会場からずっと一緒なんで。
でも謎めいてますよね。
僕もこれだけ一緒にいますけど本性が分からないです。
常識はそれなりにはあるんですけど、
ハチャメチャな感じというか、僕は好きですけどね。
そういうのが龍太郎のかわいいところじゃないですか。
初めは『南関東に行きたい』って向こうが言っていたので、
僕が『絶対園田がいいんじゃない?』
って一応誘いましたけどね。
レベル高いし、地元京都やし」。
そして12月のヤングジョッキーズについては、
「頑張ってほしいですね!“もってる男”ですから」
と最後は“同期”兼“弟”へのエールで締めくくった。
そして、3人目は師匠である坂本和也調教師。
大山龍騎手を手取り足取りサポートし、指導してきた。
「もうちょっと早いペースで100勝できるように
厩舎サイドは取り組んでいたんですけどね。
どうしても色々あってそれで遅れをとったのも
あったかなと思います。
減量のある間はバックアップできましたが、
減量が消えてどうかというところですよね。
動きとかそういうのは慣れてきたのかなと思いますし、
道中の姿勢とか悪くはなくなってきたけど、
今後レースに臨むにあたっては
“読み”や“駆け引き”がいるんですよね。
どの馬が逃げて、どうしたら勝てるかとかの状況判断、
微妙なことの積み重ねが勝利に繋がるから、
その辺はもっと課題を自分で作って、
それに取り組まないと一流の仲間には入れないと思います。
自分のルーティン化された鞭の持ち替えもそう。
馬によっての思考の柔軟性、対応力が彼には必要で、
逆にそこがあれば伸びる子です。
身体能力も馬乗りに適しているし、
技術的にもちょっとずつ伸びてきているのは間違いないので。
同じ失敗をしない、プロとしての自覚を持つことですね」。
ヤングジョッキーズについては、送り出す身として
不安を口にしながらも、
「チャンスをものにできたというのは
何かもっているのかなとも思いますし、意外性はあるかなと。
あとは運を味方につけられるか、
それって結局は日頃の努力なんですよね。
騎手としての自覚を持っていけば、自ずと色々な面で
人間的にも成長できるのかなと思いますけどね。
一流ジョッキーの仲間入りできるようには育てたいですし、
これから弟弟子もできますからね。
負けないようにならないといけないと思いますよ」
と今後への思いを語ってくれた。
ちなみに兄弟子の竹村達也騎手は
「坂本先生が口酸っぱく言っているので
自分は言うことないです。
抜けてるし、よく忘れるしっていうのはありますけど、
一生懸命、ガムシャラに乗っていますから。
頑張っていますよ」と、適度な距離から優しく見守っている。
幼少期、特に憧れはなかったが、
騎手になりたかった父の影響でこの道を選んだ。
当時競馬の動画を見てかっこいいなとは思ったが、
どんなレースでどんな馬だったかは覚えていない。
親の進言を受け、乗馬を習い、
その後中央競馬の騎手試験を受けるも不合格。
このとき、中央と地方の区別も本人にはついていなかった。
「あのかっこいい騎手になれるなら。
中央も地方も関係ないかなと」とこの頃から
ようやく競馬に興味を持ちはじめた。
競馬学校に3つ上の石堂響騎手が来たとき、
競馬への思いはさらに強くなったという。
「当時、特に行きたい競馬場はなかったんですが、
そのとき園田を紹介してくださって。
騎手同士仲が良い、新人でも比較的乗せてくれる
と聞いて『ああ、良いな』と。それがきっかけですね」。
少年時代習い事はいくつもやっていた。
水泳、テニス、空手に加え、合気道にピアノ。
アウトドア好きの親の影響で、
休日はキャンプや登山などいろんなことを経験した。
しかし、その中で特別本人に刺さるものはなかった。
そんな中で競馬を知った。
ようやく楽しいと思えるものと出会えた。
しかし、競馬はハマるというより、あくまで仕事。
「休みの日はゴロゴロしていますが、
大阪へショッピングには行きますね。
車を持ったら色々やれることは増えるんで、
そこから趣味をいっぱい作りたいなと思います。
坂本先生との約束で『減量が取れたら運転免許を取っていいよ』
ということになっていて、今取りに行っているので、
やっと息抜きできるかなと思います」。
今後はプライベートの方も充実しそうだ。
「人と違うことがしたいなとは思います。
やっぱり吉村(智洋騎手)さんとか見ても
違うじゃないですか。オーラとか乗り方も。
ほんまに上手いと思います。
咄嗟の判断力、ゲート出てからの位置。
バケモンみたいな体力と、追い方もアクションが大きいのに
型が決まっているんですよ。
あれは才能だと思いますし、
だからあれだけ勝てるんだと思います。
僕は賢くないんで積極的に乗るというのを心がけている
というのはありますね。
それは坂本先生の教えでもあるんですけど。
今はどれだけゲートを上手く出せるかとか考えています。
今後の目標は、「特に何勝したいとかでなく、
まずジョッキーを続けていくこと。
できれば勝ちたいですけど。
あ、でもやっぱり佐々木世麗には勝ちたいですね。
結構意識してますね(笑)。
それと僕はメンタルが弱いのでそこは課題ですね。
積極的な行動が大事かなと。
なんでもやってみたいと普段から思っていて、
遊びにしろ、仕事にしろ、思い切ってやろうって思っています」。
取材の結びに改めてヤングジョッキーズへの意気込みを聞いてみた。
「さっき不安ですと言ってしまったんですけど、
楽しみもあります。芝が初めてなんで。
それにほぼ同年代で参考になる方達もいるので。
刺激になりますし、負けたくないという気持ちもあります。
絶対勝ちます!」。
揺れ動く若き心、今度のファイナルはまた一つ自身の
成長の場になるはずだ。
「こんな人間でも応援してもらえるので、
その応援に応えられるようにしっかり結果を
出して行きたいなと思います」。
最後はこの日一番のやや強めの口調で締め括ってくれた大山龍騎手。
そういえば、冒頭で触れたコモドドラゴンは
その見た目とは裏腹に、
食物連鎖の頂点に立つほどの強さを誇るらしい。
前途洋々の騎手人生において、まずは同年代の頂点へ。
大山龍太郎騎手の昇龍の如き活躍に期待したい。