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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

NARグランプリ2022

 
 

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2/16、地方で活躍した馬や関係者らを顕彰する
「NARグランプリ2022」の表彰式が
東京都内の東京プリンスホテルで行われた。
 
昨年、黒船賞とかきつばた記念を連勝し、
秋にはマイルCS南部杯4着、JBCスプリント5着とJpn1でも
JRA勢相手に健闘したイグナイターがNAR年度代表馬に輝いた。
兵庫勢としては、1996年のケイエスヨシゼン以来となる
26年ぶり2頭目の年度代表馬で、
サラブレッドとしては史上初の快挙だ。
4歳以上最優秀牡馬、最優秀短距離馬も含めた
「三部門同時受賞」もまた兵庫では史上初のことだった。
 
さらに、保利良平調教師が最優秀勝率調教師賞、
吉村智洋騎手が最優秀勝利回数騎手賞を受賞し、
華やかな式典に臨んだ。

 
 

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3年ぶりの表彰式典

COVID-19による影響で2年間表彰式の開催が
見送られていたNARグランプリ。
以前は、招待されたファンも交え、
表彰式に加えて立食形式の華やかな
祝賀パーティーが催されていたが、
社会情勢を鑑み極力接触が少ない形に縮小されての
開催となった。
それでも3年ぶりの再開には関係者から多くの喜びの声が聞かれた。
 
表彰式典は、E.エルガー作曲の行進曲「威風堂々」の
生演奏で幕を開けた。
園田・姫路競馬の本馬場入場曲として長年にわたって
使用されている曲ということもあり、
弦楽四重奏による心地良い調べに
兵庫県競馬関係者は一同に胸を高鳴らせた。
 
場内の大型スクリーンでは、
「威風堂々 譲れない、譲らない、砂の誇り。」
の文字と共に、各部門の受賞馬・受賞者が
ぎゅっと凝縮された60秒ほどの映像が流れ、
華やかに表彰式典のオープニングを迎えた。
 
フリーアナウンサーの小堺翔太さんと田中歩さんの司会で、
地方競馬全国協会の斉藤弘理事長による
主催代表挨拶から始まった式典は、来賓挨拶、乾杯と進んだ後、
歓談の時間とステージでの表彰を繰り返しながら
祝宴は2時間にわたって続いた。

 
 

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最優秀勝率調教師賞
保利良平調教師

2022年のリーディングトレーナー争いは熾烈を極めた。
9/7時点で2位飯田良弘厩舎と最大10勝差をつけていた
保利良平厩舎だったが、10月はわずか3勝止まりで
一気に差が詰まり、一旦は勝利数で並ばれた。
また、この両者に11月下旬から猛攻をかけた
新子雅司厩舎も加わって、三つ巴の争いは
大晦日までもつれ込んだ。
最終日に決定的な2勝を挙げた保利師が、
年間87勝で自身初となる
兵庫県のリーディングトレーナーに輝いた。
最終的には、飯田師86勝、新子師85勝という
1勝差ずつの大接戦だった。
 
また、全国の勝率トップを争う戦いも
大晦日まで縺れ込む大激戦に。
11月末時点で勝率30%近かった保利厩舎だったが、
兵庫のリーディングトレーナー争いを制するために
12月は1つでも多くの勝利数を求めて出走ラッシュとなった。
その分、勝率がじわじわと下がり、
12/30の段階での数字は、保利良平調教師が26.98%、
打越勇児調教師(高知)が26.89%、
鮫島克也調教師(佐賀)が26.78%で、
わずか0.2%の中に上位3人がひしめく状況。
最終日の結果次第で3人共にチャンスがあった。
 
大晦日に保利師は5頭を出走させた。
もし1勝もできずに終われば、
ライバル厩舎の成績にかかわらず関係なく
タイトルが手からこぼれ落ちる状況だった中で見事に2勝。
最終的には勝率を27.19%とし、
同じく最終日に2勝を挙げた打越師の26.77%の追い上げを
振り切り、また大晦日は開催がなかった鮫島師の数字も
上回ったまま2022年をフィニッシュ。
保利良平調教師は、自身初となる最優秀勝率調教師賞の
タイトルを初めて獲得した。

 
 

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保利良平調教師
インタビュー

「本当に11月ぐらいから胃が痛くなるような思いで・・・
すごい先輩調教師らが追い上げてくるものですから。
こっちも必死に考えて・・・
だけど厩務員スタッフが全然諦めてなかったので
何とか僕も頑張って、
馬の采配をして馬の入れ替えなど考えてやりました。
 
ミーティングの時に、(厩務員スタッフが)はっきりと
(馬の)状態を伝えてくれて、
去年はそこが一番大きかったかなと思います。
一昨年の夏に(厩舎の馬房に)クーラーを導入し、
(同年の)9月にコウエイアンカで園田チャレンジカップ
優勝したんですが、その時に一頭一頭の馬をきっちり
管理しないと勝てないなと思ったんです。
 
2022年になる前に厩務員スタッフに『来年は3頭持ちにして
一頭でも多く勝とう』という話ができていましたから、
それが2022年の結果だと思います。
 
(2023年は)追いかけられる立場という意識は本当になくて、
管理している一頭の馬を勝たせたいというその思いで
これからもやっていくつもりです。
結果は後からついてくるんじゃないかなと思います。
 
重賞も2勝させていただきましたが、
平場のレースでの勝利の方が多いので、
やっぱり大きいところも今年は狙っていきたいと思います。
今(の看板馬)は、コウエイアンカとエコロクラージュですけど、
これから入ってくる馬もチャンスがあると思います。」

 
 

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年度代表馬イグナイター
26年ぶりの栄誉

3歳時に楠賞で全国の強豪を抑えて優勝し、
初のタイトルを獲得したイグナイター。
年末の兵庫ゴールドトロフィー(Jpn3)でも
JRA馬相手に3着に好走し、翌年への飛躍を予感させた。
 
2022年の始動戦は、
高知の黒潮スプリンターズカップで7馬身差の圧勝劇。
再び高知に遠征した黒船賞(Jpn3)は砂の重い内目の好位を
うまく立ち回りって優勝し、JRA馬を相手に
ダートグレード初優勝を果たした。
さらに、名古屋のかきつばた記念(Jpn3)も制して、
兵庫県競馬史上初のダートグレード2勝馬となった。
 
そして、秋は2度にわたってJpn1に挑戦。
マイルチャンピオンシップ南部杯(Jpn1)は
0.2秒差の4着という惜敗だった。
鞍上の田中学騎手が「自分がうまく乗れていれば」
と悔しさを滲ませた一戦で、管理する新子雅司調教師は
「ジーワンを勝つチャンスが来た」と確信するレースとなった。
続くJBCスプリントは5着と敗れはしたものの、
2戦連続で盛岡への長距離輸送の中、
Jpn1で2走続けて地方馬最先着を果たした。
 
2022年の地方競馬界において唯一のダートグレード2勝、
秋にはJpn1でも健闘の走りを見せたイグナイターは、
1年を通しての活躍が認められ、
満場一致でNARグランプリ年度代表馬に輝いた。
同時に最優秀4歳以上牡馬、最優秀短距離馬も獲得し、
三部門で栄冠を勝ち得た。
 
兵庫県競馬にとっては、アラブレース時代の1996年に
兵庫アラブ三冠(菊水賞、楠賞全日本アラブ優駿、
六甲盃)を制したケイエスヨシゼン以来、
26年ぶりのNAR年度代表馬が誕生。
サラブレッド導入後としては初の快挙を遂げたイグナイター、
今年は兵庫初のジーワン制覇に大きな期待がかかる。
 
 

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馬主 野田善己氏
インタビュー

「本日はこのような素晴らしい名誉のある賞を
いただきまして、誠にありがとうございました。
新子先生、田中学騎手、武田厩務員はもちろん、
イグナイターに関わってきていただいた生産者さんや
育成の方々すべてに感謝しかないです。
 
もちろんこんな色んな夢を見させてくれた
イグナイターにもありがとう、感謝ですね。
素晴らしい大きな賞をいただけたんだなと実感も湧き、
私も年度代表馬にふさわしいような馬主にならないと、
と改めて実感しました。
本日はありがとうございました。」
 

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