2026 兵庫クイーンセレクション レポート

2026年1月22日(木)

2026年午年は合計8週、24日間で行われる冬の姫路競馬開催。開幕週の3日目に3歳牝馬限定の西日本交流重賞「兵庫クイーンセレクション」が行われた。どの馬も勝てば重賞初勝利となる若き乙女たち、遠征馬1頭、地元馬11頭の12頭が出走した。

重賞勝利馬がいない組合せとなったが、人気はゴーゴーツヨシに集まった(単勝1.5倍)。ここまで4戦2勝と突出した成績ではないが、道中動いてまくり切った2戦目、そして前走「日本軽種馬協会特別」の長く良い脚を使って勝利したレースのインパクトが強く、小牧毅調教師と小牧太騎手の兄弟船にも大いに期待された。

西日本交流の重賞競走で、ここ2年は他地区からやってきた馬が勝ちをもぎ取ってきた競走だが、今年は他地区からの遠征馬は1頭のみ。その1頭、名古屋からの遠征馬クィーンズジョリーが2番人気(単勝3.8倍)に推された。門別で4戦1勝、名古屋に転入してから勝利は得られなかったものの2着が3回、評判馬アストラビアンコに離されながらも食い下がった経験がここで生きるか。

園田820m戦での3連勝が光るバイシュウが3番人気(単勝13.1倍)、前走敗戦も船橋から転入2戦目で変わり身が見込まれたエルフィダンスが4番人気、ゲート難を克服して前走の勝利で意気上がるコマンタレヴーが5番人気、2歳時に鞍上川原正一騎手と共にJRA芝挑戦が話題となったベラジオレジーナが6番人気で続いた。

前走ゴーゴーツヨシの2着でどんな相手でも必ず直線伸びてくるクリスタルピットは7番人気、そして前走同じレースで追い込んで3着だったジューンキートスが8番人気、伏兵陣も虎視眈々と重賞初制覇を狙っていた。

出走馬

1番  ピースラッキー 下原理騎手
2番 バイシュウ 山本咲希到騎手
3番 ベラジオレジーナ 川原正一騎手
4番 ジューンキートス 小谷哲平騎手
5番 コマンタレヴー 田野豊三騎手
6番 エルフィダンス 廣瀬航騎手
7番 ヤクモドリーム 塩津璃菜騎手
8番 (愛)クィーンズジョリー (愛)今井貴大騎手
9番 クリスタルピット 永井孝典騎手
10番 トゥレアレンシス 井上幹太騎手
11番 アンジュベル 松木大地騎手
12番 ゴーゴーツヨシ 小牧太騎手

レース

スタート直後
スタンド前
2コーナー
向正面
3コーナー
4コーナー
最後の直線①
最後の直線②
最後の直線③
ゴールイン

開幕週の姫路は3日間とも最高気温が一桁台、最低気温は日によっては氷点下に落ち込むほど寒い中での開催となった。雪が吹き込んでくるような時間帯もある中ではあったが、3日間ともに良馬場のコンディションでレースが行われた。3日目は向正面が追い風、正面スタンド前の直線が向かい風、ときおり凍えるような北風が吹き荒れる中(天候は晴)、発走の時刻を迎えた。重賞ファンファーレが鳴り響き、枠入りは順調に進行、外から3番目のトゥレアレンシスが最後に収まって、第27回兵庫クイーンセレクションのゲートが開く。

ほぼ揃った飛び出しから好ダッシュを見せたのが重賞初騎乗の塩津璃菜が跨るヤクモドリーム。ハナを窺う仕草を見せる中、二完歩目からスピードを一気に上げてきた大ベテラン川原正一騎手騎乗のベラジオレジーナが内から譲らない姿勢を見せる。2頭の内にはバイシュウが差がなく追走、外側にクィーンズジョリーを従えて先団は4頭が形成してゴール板前を通過した。1馬身後方では、外にトゥレアレンシスとアンジュベル、馬群の中にはコマンタレヴー、内側にはジューンキートスが入って1コーナーを右手にカーブしていく。中団グループの一番後ろがエルフィダンスで、そこから2馬身離れてゴーゴーツヨシは後方3番手でレースを進める。後方内側にピースラッキー、外側わずかに最後方がクリスタルピットという隊列となり、先頭からシンガリまでは約10馬身。淀みない流れで2コーナーへと入っていった。

結局ベラジオレジーナがハナを譲らず向正面へ。6枠2頭ヤクモドリーム、クィーンズジョリーがこれを外から追う形。4番手インに入ったバイシュウ、これに外からコマンタレヴーとトゥレアレンシスが並びかけていく。ここまでが集団となった。その後ろは2馬身半開いて内からジューンキートスがやや促しながらの追走、外にアンジュベルが並んで追い風の向正面も後半に差し掛かる。さらに2馬身後方でエルフィダンスとそしてゴーゴーツヨシが並んでの追走。ゴーゴーツヨシはそこまでジョッキーのアクションが大きくはなかったが、勝った2走のように途中から動く得意の形に持ち込めてはいないようだ。最後方からピースラッキーとクリスタルピットも息を潜める。いよいよ勝負所の3コーナーへ。

ベラジオレジーナが粘り込みを図るところに外からクィーンズジョリー、内からバイシュウが迫る。2馬身後ろでジョッキーが激しく手を動かすコマンタレヴーの内から明らかに進みの良い馬がいる。ジューンキートスだ。4コーナーから直線、前3頭の壁のどこへ突っ込んでいくのだろうか。ゴーゴーツヨシはその後ろまで追い上げてきていたが、先行集団とは6馬身以上の差があった。その後ろでクリスタルピットが大外に持ち出し、最後の直線勝負。

先行していた3頭の内を突く形となったジューンキートスはまだ伸びている。内が深いはずの姫路の最内馬場をものともせず先頭で突き進んでいく。ベラジオレジーナとバイシュウは苦しくなり、直線入口でよれるシーンのあったクィーンズジョリーだが2番手争いで踏ん張っている。コマンタレヴーとゴーゴーツヨシも外から伸びているが、伸び脚があと一歩。それよりも大外に出したクリスタルピットの末脚が際立っている。最終的にはクィーンズジョリーとクリスタルピットが内外離れての2着争いとなった。

その2馬身半前方で勝負を決めたジューンキートスが歓喜のゴールへと飛び込み、馬も人も嬉しい重賞初制覇を果たした。勝ち時計は1分34秒7(良)。

2着は写真判定に持ち込まれたが大外から伸びたクリスタルピットに軍配。今日も末脚は目立った。

名古屋から参戦のクィーンズジョリーが3着。外に出して伸びてきたコマンタレヴーが4着。1番人気のゴーゴーツヨシは今日も大外枠から運んだが、流れにうまく乗れなかったのか5着に敗れた。

兵庫クイーンセレクションにおける地元馬の勝利は3年ぶり。勝ったジューンキートスは重賞初挑戦となったこのレースを見事に制覇、4戦目から小谷哲平騎手が手綱を握り、馬も人も一戦毎に成長を遂げている中での重賞制覇と相成った。

◆ジューンキートスは重賞初挑戦初制覇。通算成績を9戦2勝とした。父ミスチヴィアスアレックス、母ジューンアイリス(母父ダンカーク)。

獲得タイトル

2026 兵庫クイーンセレクション

◆小谷哲平騎手は重賞4回目の騎乗で初制覇。姫路競馬場での初勝利を重賞で飾るという離れ業をやってのけ、「17歳9カ月26日」での重賞制覇は兵庫県競馬史上最年少記録という快挙を達成。デビューからの日数としては「282日」で、大山真吾騎手の「281日」に次ぐものとなった。
◆碇清次郎厩舎は重賞4勝目。2020年兵庫ダービー(ディアタイザン)以来、約6年ぶりの重賞制覇となった。姫路競馬場の重賞は初制覇。

※従来の兵庫最年少重賞勝利記録(※データが電子化された1973年以降の記録)
 原口清人騎手:19歳7カ月9日
(生年月日1954/7/17・重賞制覇1974/2/26<第9回兵庫大賞典 シンコウオーザー>)

<重賞初制覇スピード記録の比較>
      年齢    経過日数 騎乗数 重賞騎乗
小谷哲平|17歳9ヶ月26日 282日  702戦目 4戦目
大山真吾|20歳5ヶ月 0日  281日  503戦目 3戦目

◆小谷哲平騎手 優勝インタビュー◆
 (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

「ゲートが決まれば勝ち負けできると思っていた」と、人気とは裏腹に自信を持ってレースに挑んでいた小谷哲平騎手。


「今日もしっかりゲートが決まったので自信を持って乗れました。一回仕掛けだすと一生懸命頑張ってくれる馬なのでそこを信じていました。ペースは流れると思っていたので枠をふまえてもインを進んでいこうという気持ちはありました」

最後の直線でインコースに突っ込んでいく覚悟はあったようだ。

ジューンキートスを管理する碇清次郎調教師は「最近はスタートで出遅れ気味になることが多かったんだけど、今日はスッと出られてビックリしていた。レース前からジョッキーには勝てるようなレース展開をよくイメージして乗るようにとは伝えていたんだよね。勝負所で外に行くのかなと思って見ていたけれど内が開いていたのでそこに突っ込んでいったね。直線は声が出たよ」

勝負所から直線までその勝負勘を頼りに最内に突っ込んでいく姿には迷いがなかったように見えた。ただ馬の背中で鼓舞していたジョッキーにとっては余裕はなかったようだ。

「相手は小牧さん(ゴーゴーツヨシ)だと思っていたので、外から最後来るんじゃないかとヒヤヒヤしながら一生懸命追うだけでした」

しかし直線入口で勝負を決めたジューンキートスに肉薄できる馬は皆無であった。昨年春にデビューして姫路競馬場は初めての騎乗となった小谷哲平騎手はこの三日間でしっかり姫路競馬場のポイントを彼なりに理解し、勝てるようなレース展開も読んで最高の結果へと結び付けた。デビューから1年足らずでの重賞初制覇。これから彼の騎乗ぶりに全国から視線が集まることは言うまでもないだろう。

最後にひとつ。小谷哲平騎手の師匠である新子雅司調教師はこの日、笠松競馬場で行われた重賞・白銀争覇に管理馬ブラックバトラーを出走させていたため姫路には不在であったが、新子調教師は自身のSNSで「哲平ーーーー!ナイス!」と嬉しさを爆発させていたことも付け加えておきたい。

今日も良い脚を使って追い込んできて2着だったクリスタルピットの永井孝典騎手は「道中後方にいたけど悪くない感じで運べていた。ただもう少し前の集団に動きがほしかった。だけど最後の直線はしっかり脚を使ってくれていた」と語ってくれた。展開に左右される面はあれど、この馬のシュアな末脚は今後も注意を払わなくてはならない存在になるだろう。

唯一の遠征馬・名古屋のクィーンズジョリーは3着だった。騎乗した今井貴大騎手は姫路2度目(2025白鷺賞・フークピグマリオン2着)の参戦だったが「思っていたよりも一つ前のポジションで運べていい競馬ができました。ただもともと外に張る面があってコーナーのきつい初めての馬場で馬に戸惑いがあったかもしれない」と振り返ってくれた。

4着のコマンタレヴーの田野豊三騎手は「物見をする面はあったが、能力は高くて競馬も上手。レースぶりも安定してきたのでもう少し追い切っていければもっといいレースができる」と手応えを感じた様子だった。

1番人気に推されたゴーゴーツヨシは5着に終わった。小牧太騎手は「前走のような脚が使えなかった。初めての馬場で馬が戸惑っていたのかもしれない。今日はエンジンがかからなかった」と兄弟タッグでの重賞制覇が叶わずに残念がっていた。

総評

同日の9R(ララモンドール)で地方競馬通算1000勝を達成、1001勝目が久々の重賞制覇で破顔一笑の碇清次郎調教師は「本当にうまく乗ってくれたよ」と喜んだ。「今後も哲平くんで行きますか?」という問いには「もちろんだよ!」と力強く答えてくれた。

距離については「やっぱり展開次第にはなるだろうけど、道中掛かる馬ではないのでこなせると思っていますよ。それよりも牡馬相手になってくるのでそこですよね。
これからもチャレンジャーの気持ちでいきます。選択肢が増えたのは喜ばしいこと、オーナーさんともよく相談したいと思います」と語った。

ここ2年は遠征馬に勝利をさらわれていたが、2026年は地元馬によるワンツーとなった。
賞金を加算できたことで選択肢が広がった陣営にとっては園田のじぎく賞が最大目標になるのか、あるいは地元で牡馬との戦いに挑むのか。
それともグランダムジャパンを見据えて他地区への遠征も視野に入ってくるのか、今後の動向を楽しみにしたい。

今年も冬の姫路開催がスタート、姫路では2月19日(木)の兵庫ユースカップ、2月26日(木)の兵庫若駒賞と2つの3歳重賞が控えている。昨年はエイシンハリアーが、そしてオケマルが、世代のキーとなる馬が勝利を収めてきた。昨年グランプリホースとなったオディロンが制した白鷺賞が行われる3月12日(木)までの24日間。
今年も寒さに負けずに熱い戦いが繰り広げられる姫路競馬場でのレースが今年を占う大きな鍵になるかもしれない。


 文:井関隼   
写真:齋藤寿一  

information