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クローズアップ ホースマン達の勝負に懸ける熱き想い

Tomo's Cafeオープン!

 

DIYで環境づくり

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クラッシックやジャズなど、
心地の良い音楽を聴きながら馬を愛でる。
そこへこだわり抜いたコーヒーをいただくという贅沢空間。
そんなカフェが、なんと園田競馬場の厩舎内にあると
聞きつけてやってきた。
 
森澤友貴厩舎は園田競馬場厩舎地区の一番奥にあった。
ツタの絡まる建屋は、他厩舎とは一線を画す。
 
必要に迫られ始めたというDIYで、
ログハウスのような木のぬくもりを感じさせる
空間を作り上げている。
植栽もふんだんに取り入れ、
自然に囲まれたような“Tomo’s Cafe”が爆誕していた。
 
「オーナーやそのご家族、取引する業者さんなどが、
コーヒーを飲んで楽しんでくださっています」
となかなかの繁盛ぶりのようだ。
 
このように書けば本物のカフェのようだが、
これが森澤ステーブル。
テーマは山小屋。壁も漆喰の塗装を施す。
ガーデニングをして独自色を出したかったと師は語る。
 
「植栽、ガーデニングを施して、
ごみごみした汚い空間ではないものを作りたかったんです。
働いている時間というのは人生の大半だと思うので、
良い環境にしたいと考えました」
 
職場環境づくりが心のゆとりを持たせ、
仕事に対する意欲の向上、
ひいては競走馬の成績向上へと繋がるのだろう。
 
自宅近くに自家焙煎している珈琲店があり、
そこがお気に入り。厩舎仕事を終えてから事務仕事をする際でも、
この空間でコーヒーを飲みながらする仕事は落ち着くし、
捗るのだそうだ。
 
「職場は気持ち良く過ごしたい。
西脇で開業して、植栽は植木鉢ひとつから始めました。
当時は独身で暇でしたから。
その後に園田に転厩し、
さらにエスカレートしてこうなりました(笑)」

 

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リーディングを狙える態勢が整う

「ミーティングをして、行動方針と
ヴィジョンの共有について話し合っています。
管理している馬を見ていると、楽観的ですけど、
これぐらいは勝てるかなという計算ができます。
それを積み重ねていけば十分リーディングも狙える
ところまできているんじゃないかと。
それぐらい良い馬を管理させてもらっていると
再認識させられています」
 
毎年の勝ち鞍が安定していて、
リーディング争いでも常に上位をキープ。
そろそろ、その先へと期待が膨らむ。
 
「体質が弱い馬もいて、休ませながら克服して、
良いレースができています。
無理のないローテーションで使わせてくれたり、
休養させてくれたりする、
いい意味で任せきりにしてくれる理解あるオーナーさんが
多くてありがたいです。
信頼していただいているというのが嬉しいです」
 
確かに、森澤厩舎の管理馬は大事にゆったりとした
ローテーションでレースを使うケースが多い。
休みながらでも連勝を重ねる馬が何頭もいる。
 
「休養を取れば、クラスが下がって勝ちやすい
メンバーになるのは確かです。
それでも、賞金が上がる上のクラスで勝つことを
求められるのも当然なので、
それぞれが上位クラスまで押し上げられるように頑張ります」

 

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リーディングに対する考え方を訊くと
「この仕事をしている限り、リーディングは狙いたい。
それと重賞を勝ちたい」と勝ち鞍だけでなく、
質にもこだわる。
 
2018年には79勝を挙げて、リーディング3位に躍進。
昨年も69勝で4位に入るなど、
リーディング上位の厩舎と認められる地位に辿り着いた。
また、今年に入って2月末現在、14勝を挙げていて、
トップの新子師(16勝)に次ぐ2位につけている。
 
「軌道に乗って来たと思えるのは3年ぐらい前からだと思います。
以前に取材してもらったとき(2015年7月。
通算500勝当時)は馬房にも空きがありましたし、
体調を崩して休養に行く馬がいても、
代わりに走る馬がすぐに入ってくるという入れ替えが
スムースではなかったです」
 
その後に、既存の馬主に加えて、
新規の馬主にも恵まれてその心配がなくなった。
 
「ようやく形ができてきたのだと思う」と
いよいよ頂点を見据える態勢が整ったようだ。

 

偉大な父の背中を追って

 
父の森澤憲一郎元調教師は、
年間勝利数118勝という、
当時としてはとんでもない兵庫県記録を打ち立てた。
地方競馬生涯勝利数は1851勝で、
これも当時の兵庫県記録だ。
 
あのころは開催日数こそ多かったが、
連闘はできないシステムで、成績による降級制度もない時代。
にもかかわらずこの成績を叩き出した。
さらにJRAでもプラセールで2勝を挙げる活躍を見せている。
 
しかも定年となる65歳(現在は延長が可能)まで
2年を残して引退していながらのこの数字。
稀代の名伯楽なのだ。
 
そんな偉大な父の話題に当然発展する。
 
「この世界に入る前も、厩舎で育っていたので、
おやじの馬が出るたびに弟と一緒になって応援していました。
たとえ3、4コーナーで後れを取っていても、
勝って当たり前だと思って見ていました」
 

※弟さんは三冠馬オルフェーヴルを
担当した森澤光晴調教助手

 
その後に父の下で厩務員、調教師補佐を経験。
当然、憲一郎師の手法がベースになっている。
 
「基本的に、スタッフへの要求、運動量、
ブラッシングの時間など、結構なものを求めていました。
自ら率先して調教も乗って、馬を見て、厩舎を動かしてきた人です」
 
職人気質で無口な印象を筆者は持っていたが、
競馬に関して話を訊くと、いろんなことを教えてくれたし、
長話にもなった。
決して「背中を見てついてこい」という
説明下手な武骨なタイプではなく、
理論がしっかりとしていて説明が上手い。
その証拠に、友貴師というしっかりとした後継を
育て上げたのだから素晴らしい。
 
「馬の見方を教わりました。飛節の角度など、
明確に走る馬の形を把握しているんです。
ぼくはまだそこまでは見られていない。
それに、プラセールでJRAで2勝しているんですよね。
調整としては、特別なことは決してしていなかったのですが、
しっかりと結果を残すわけですし凄いですよ」
 
現在、兵庫からJRAに挑戦すること自体が少なくなっていて、
現実に勝とうとするととてつもなく難しいことが容易に想像がつく。
それを事も無げに達成してしまう。本当に偉大だ。
 
現在は74歳。
いまは穏やかな気候の地で悠々自適の生活を送っていて、
孫と遊ぶのを楽しみにしている。
 
「やり切ったという実感、そして引き際が美しい」
と息子は絶賛する。

 
 

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