2026 兵庫若駒賞 レポート

2026年2月26日(木)

8週間にわたる今年の姫路開催もいよいよ後半から終盤へと差しかかる6週目に突入。
今週は地方競馬全体のシステムメンテナンスの影響でイレギュラーの水曜日スタートとなったが、前日の火曜日から降った雨の影響で、初日の25日は久々に“不良”、26日は“重”の馬場コンディションでレースが行われた。
(ちなみに姫路の不良馬場は、2025年の3月4日と5日以来。園田を含めると2025年の12月25日、兵庫ゴールドトロフィーデー以来となる)

そんな前日から1段階回復した重馬場を舞台に行われた兵庫若駒賞はフルゲート12頭が激突。昨年はのちの無敗の三冠馬オケマルが圧倒的なパフォーマンスを見せて、早々に世代一強を知らしめたが、今年はそこまで抜けた存在はいない。
ただ、門別出身の重賞2勝馬エイシンイワハシル、エイシンリガーズこそ不在も、暮れの園田ジュニアカップの上位組が顔を揃え、役者は揃った。果たして今後の兵庫クラシック三冠路線の主役候補に名乗りを挙げるのはどの馬か。

1番人気は、単勝1.6倍でゴッドフェンサー。
デビュー当初から陣営の評価が高かった馬だが、キックバックを嫌がるなどの課題もあり、重賞では入着止まりだった。距離を1700mに延ばした2走前のオープン戦では好位から上がり最速の末脚を繰り出しサザンウォリアーに完勝。続く大晦日の園田ジュニアカップでは、発馬時にすり傷を負うアクシデントがあり、一旦は最後方まで位置を下げたが、そこから外々を回る競馬で豪快な差し切りを決め、見事2歳王者に輝いた。この中間の1週前追い切りでは盛本調教師も驚くほどのいい動きを見せ、充実一途。今回は吉村智洋騎手とコンビ復活、厩舎の大先輩オケマルに続けるか。

2番人気は、単勝3.3倍でリーガルタイム。
昨年の夏、1400mの新馬戦で1分31秒3という脅威の勝ち時計を叩き出した本馬。今の白砂に入れ替わった2020年以降の2歳新馬の同距離では歴代1位のタイムとなった。そのインパクトの通り、その後の重賞戦線でも力は示すが、あと一歩及ばずの3戦連続2着という結果に。前走のジュニアカップでは「道中掛かっていたことが影響したかもしれない」と陣営は振り返る。この中間は馬体を絞るのに苦労しているようだが、動き自体は良好。小牧太騎手との新コンビで悲願の重賞初制覇を狙う。

3番人気は、単勝7.3倍でサザンウォリアー。
4走前のネクストスター園田こそ、砂を嫌がる課題を見せたが、その後のアッパートライを完勝。距離を1700mに延長した直近2戦も勝ち馬ゴッドフェンサーの0.3秒差の2、3着と安定感が出てきた。今回は外枠を追い風に園田勢筆頭の力を見せる。

4番人気は、単勝7.7倍でシェナマックス。
ここまでキャリア11戦全て掲示板確保の堅実派。前走こそ初の姫路が影響したのか発馬が一息ではあったが、最近はいいスタートから好位を取れている。元々繊細なタイプということで、一度コースを経験したことは大きい。下原理騎手との新タッグで今度こそ脇役返上へ。

5番人気のゼウスシルエットは単勝人気49.3倍、6番人気のエーデルリッターで51.7倍、7番人気以降は100倍以上となり、上位4頭とは大きくオッズが乖離した。

出走馬

1番 リーガルタイム 小牧太騎手
2番 サザウキ 山本屋太三騎手
3番 ゼウスシルエット 笹田知宏騎手
4番 ベルマ 田野豊三騎手
5番 イービジョンエイト 永井孝典騎手
6番 ライクシュガー 山本咲希到騎手
7番 リクノインパクト 板野央騎手
8番 シェナマックス 下原理騎手
9番 イデアールマッチ 小谷哲平騎手
10番 サザンウォリアー 廣瀬航騎手
11番 エーデルリッター 土方颯太騎手
12番 ゴッドフェンサー 吉村智洋騎手

レース

スタート
1周目3〜4コーナー
1周目スタンド前①
1周目スタンド前
1周目スタンド前
1〜2コーナー
2コーナー向正面
向正面
向正面②
最後の直線①
最後の直線
最後の直線

ゴールイン

不良馬場の前日は前残りが目立ったが、重に回復したこの日はそこまで偏ったバイアスは見られなかった。天気は回復、日中は16℃台と春の陽気の中、ファンファーレと歓声が西日に染まる場内に鳴り響いた。

スタートが切られ、後手を踏んだのはゴッドフェンサー。ハナ争いは、積極的に出していくライクシュガーを抑えて、連闘策のエーデルリッターが外から先手を奪う。前2頭が飛ばす形で1周目の4コーナーへ。そこから5馬身と距離をとって3番手にサザンウォリアー、並んでゼウスシルエット。出負けをすぐさまリカバリーしたゴッドフェンサーが外の5番手、その内シェナマックスが6番手で中団を形成。それらを2馬身後方から見る形でリーガルタイムが追走、正面スタンド前に入る。


後方にはベルマ、イデアールマッチ、サザウキ、リクノインパクトが差がなく追走。1頭離れて最後方からイービジョンエイトが追う展開、隊列は20馬身と長いまま2コーナーのカーブから向正面へと入っていった。

馬順に大きな変化はないものの、徐々にピッチが上がり出した向正面中間。残り600mの地点で内から順にエーデルリッター、ライクシュガー、サザンウォリアー、そしてゴッドフェンサーと、前4頭が横並びに。差のない2列目にゼウスシルエット、シェナマックス、そしてゴッドフェンサーの真後ろでこれをぴったりマークのリーガルタイム。前の集団は固まって3、4コーナー中間へ。

ここでサザンウォリアーが先頭に変わるも、楽な感じでそれを射程圏に入れているゴッドフェンサー。それについていこうとするリーガルタイムだが、先んじて馬群の間からシェナマックスが一気に上昇し、3番手の一角に。一歩遅れたリーガルタイムもそれらを追って4番手外まで浮上し、4コーナーから最後の直線へ。

残り200mで早くも先頭に立ったゴッドフェンサー。外から追ってリーガルタイムが2番手、その内のシェナマックスが3番手。苦しくなったサザンウォリアーが4番手に後退。

結局早めに抜け出したゴッドフェンサーが1馬身半差を守り1着でゴールイン。これで重賞連勝。リーガルタイムも懸命に追ったが、この差が縮まらず、またもや2着でレースを終えた。そのあとにシェナマックス、サザンウォリアーが3着、4着で続き、5着がゼウスシルエット、6着がサザウキと、3着と4着が入れ替わっただけで上位6頭は園田ジュニアカップの着順とほぼ同じ結果に。

昨年の勢力図そのままに、2歳王者が堂々主役のままで兵庫クラシック戦線へと向かうこととなる。

◆ゴッドフェンサーはこれで7戦5勝。昨年2025年の園田ジュニアカップに続き、重賞2勝目となった。ルヴァンスレーヴ産駒の3歳牡馬で、今では貴重な青森県産馬でもある。

獲得タイトル

2025 園田ジュニアカップ
2026 兵庫若駒賞

◆吉村智洋騎手は重賞通算55勝目(今年初)。重賞勝利は2025年の高知県知事賞(オディロン)以来。 兵庫若駒賞は3勝目(2017年トゥリパ、2019年エキサイター)。

◆盛本信春厩舎は重賞通算17勝目(今年初)。重賞勝利は2025年の園田ジュニアカップ(オケマル)以来。
兵庫若駒賞は昨年のオケマルに続き連覇達成、通算2勝目。

◆吉村智洋騎手 優勝インタビュー◆
 (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

インタビューの第一声、「前評判通り、いいレースができたかなと思います」と、落ち着いた口調で答えた吉村騎手。

「ほどよくリラックスして、返し馬もできていたんで雰囲気はいいんじゃないかなと思っていました」と、2走ぶりに跨る背中の印象を振り返った。



戦前、課題としても挙がっていたスタートでは後手を踏む形になったが、

「中枠の方でちょっと暴れる馬がいて…」と、その間スタートを待たされ、タイミングが合わなかったようだ。

しかし、大外枠を利してすぐさま巻き返し、中団前に取りついたゴッドフェンサー。
馬群全長20馬身ぐらいの長い隊列でレースは進んだが、馬の並びは鞍上の思惑とは違っていた。

「僕の後ろにリーガルタイムが付けたところがちょっとまずいなとは思っていたんで。
(相手は)あれぐらいかなとは思ってたんで」

そんな警戒するライバルの動きを背に感じながら、直線に入ると早々に先頭に立ったゴッドフェンサー。

「手応えもある程度きてたんで、これなら押し切れるかなという感じはありました」

追い出しのタイミングに関しては、

「特に何も考えてなかったです。気付いたらゴールしてたなという感じで。しっかり伸びてましたし、後ろから差される感じも(なく、リーガルタイムの)足音も聞こえてなかったので勝ったなと」

レースの途中からはライバルの動きも気にならないぐらい、ゴッドフェンサーの感触がよかったということだろうか。

昨年大晦日の前走こそ、自身が高知県知事賞でオディロンに騎乗するため、乗ることができなかったが、それまではデビューからずっと手綱を取り、競馬を教えこんできた。

「そうですね。今まで教えてきたことが、2走前ぐらいからしっかり結果として出るようになってきたので。まぁこれからも教えることはたくさんありますし、どんどん引き出しを作って成長していければいいかなと思います」

明け3歳、まだまだ成長段階にあることを示唆した鞍上は、現時点でのストロングポイントについて、

「特に今のところ何も考えなくて乗ってきても勝てるなというところが強みじゃないですか」と、笑みをこぼしながら相棒の非凡な能力を賞賛した。

今後の兵庫三冠戦線へは主役として向かうことになるが、

「これから勢力図もガラッと変わってくるとは思いますし、伸び盛りの3歳の勢いのいい馬も出てくると思うので、そんなに甘くはないと思いますけど、この馬もしっかり成長していければ、今の位置をキープできるんじゃないかと思いますんで、応援のほどよろしくお願いします」

あくまで謙虚にこの先の期待を述べた。

ちなみにインタビューの最後に吉村騎手は、

「20年ぶりにぐらいに姫路で重賞を勝ったんじゃないかなと思うんで、それを見届けていただいてありがとうございます」と、話していたが、実際は2021年2月25日にナリタミニスターで兵庫ウインターカップを制しており、5年ぶり2度目の姫路重賞制覇となった。

冗談だったのか、それともそれほど長い間勝っていないような感覚があったのか…。

とにもかくにも、名手の落ち着いた騎乗ぶりが光ったレースにもなった。

総評

今回は舞台が姫路ということで、西脇から競馬場への輸送距離が短くなる。
このことについて「この馬の場合はかえって太くなりすぎないようにするというのをずっと課題でやっていたので」と盛本師は話していたが、当日は前走から-1kgで出走させることができた。
まずその点に関して「(馬体重の調整は)ギリギリ、必死こいて(笑)。仕上がりもすごくいい状態で出せました」と、師からは安堵の色が見られた。
一方、スタートの出遅れについては、「しょうがないね、競馬やから」と苦笑い。
「でも、今日は馬自身が何かした訳ではなく、発走委員が真ん中枠で立ち上がった馬の動きを待ってたんで。それでタイミングが合わなかっただけなので。まぁこの枠だからすぐにリカバリーできたとも思いますけど」と、発馬そのものについては悲観はしていなかった。終始外々を回る立ち回りで、ライバルたちをねじ伏せたが、
「本当に着差以上に強い勝ち方だったと思います。(追い出しを)ずっと待ってましたからね。まぁ今後のレースにもつながると思います」と、盛本師も納得のパフォーマンス。

「(この中間は)牧場から体調を上げてもらって、調教の動きも実戦につなげられたかなという感じはしています。パワーアップはしていますし、(特にどこが優れているというより)全てにおいて高いレベルになってきているかなと。(厩舎の先輩の)オケマルと比べるのはなかなか難しいところもあるけど、近いものにはなってきているかなと思っています。とりあえず一つ一つ勝っていきたいですね」と、これからの兵庫三冠に向けても視界良好といった感じだ。ちなみに次走は菊水賞へ直行の予定。

徹頭徹尾安定したレース運びというより、ここ2戦は豪快な勝ちっぷりが目立つゴッドフェンサーだが、それでもすでに世代の主役としての貫禄のようなものが出てきている印象も受ける。

重賞2勝馬のエイシンイワハシルが短距離路線に行くとなると、さらにこの馬の中心は揺るがないものになりそうだが、それでもまだまだ成長途上の3歳馬。
今回で4戦連続重賞2着となったリーガルタイムも小牧騎手に悲観の色はなかった。兵庫三冠となるここからが真の戦い、この馬を筆頭にライバルたちの逆襲劇にも期待したいところだ。


文:木村寿伸  
写真:齋藤寿一  

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