2026 白鷺賞 レポート
2026年3月12日(木)
西日本交流の古馬重賞「白鷺賞」。例年1月末から2月にかけて組まれていたが、今年度から3月に開催時期が変更となった。過去6年で5勝という地元馬が強さを見せる中、今年は高知3頭、名古屋1頭の計4頭が他地区から参戦し、フルゲート12頭で争われた。

1番人気は、単勝2.5倍でジグラート。
4歳時にはあと一歩勝ち切れない印象のあった馬だが、5歳になると覚醒し昨年3月以降は11戦10勝と快進撃を見せる。一度の敗戦はあったが、その後7連勝で今回の重賞初挑戦となった。重賞ホースが7頭もいるメンバーだが、勢いが買われて1番人気の支持を受けた。
2番人気は、単勝3.2倍でラッキードリーム。
元門別三冠馬。兵庫移籍後は中距離界を牽引する存在となり、一昨年の白鷺賞を制するなどしたが、喉のポリープが影響して昨年は低迷した。ポリープ除去手術以降、徐々に本来の走りを取り戻すと、今年の新春賞で久々の重賞勝利を飾り重賞タイトルは13。完全復活を果たした古豪の底力に期待が集まった。
3番人気は、単勝8.7倍でインベルシオン。
昨年の新春賞で重賞初制覇を果たし、白鷺賞では逃げて3着と健闘を見せたが、球節の不安で10カ月の休養に入っていた。年明けの新春賞は僅差の4着。今回は、休養明けから4走目となる。
4番人気は、同じく単勝8.7倍のオッズでヘラルドバローズ。
昨年の移籍初戦、白鷺賞馬オディロンに完勝するも、新春賞は不完全燃焼の5着。2月の川崎遠征は、本馬場入場の際に跛行が見られたため除外になり、今回は仕切り直しの一戦となる。レース前日のダイオライト記念(Jpn2)でオディロンが殊勲の勝利を挙げたことで、同馬を破っていたこの馬にもさらに注目が集まった。
5番人気は高知のダノンフロイデで単勝9.8倍、さらに名古屋のダグフォースが6番人気の11.6倍と他地区の馬たちが続いた。
出走馬












レース














ゴールイン
今年の姫路開催最終日ということもあり、祝日開催を除く平日の姫路では今年最高の2114人ものファンが詰めかけた姫路競馬場。
姫路の6,7週目は初日に雨が降って道悪のコンディションでの競馬が続いたが、最終の8週目は3日間とも晴れ、良馬場とお天気に恵まれた。気温は11℃前後、時に強い風が吹くコンディションの中でレースを迎えた。
スタートはバラついた。サンライズホープとゲンヨウサイが後手を踏み、ジグラートとダグフォースもやや遅れて後方となる。
ヘラルドバローズがスタートを決めたが、まずはセイルオンセイラーがハナを主張して逃げて行った。ヘラルドバローズが2番手を取り、タマモマスラオがその後ろ。一旦は前に行きかけたインベルシオンが4番手まで下げ、その直後にラッキードリーム。サンライズホープとダグフォースが中団でその後ろにジグラート。後方は、ダノンフロイデ、ナムラタタ、アキュートガール、ゲンヨウサイの順。馬群の長さは15馬身ほどの隊列となり、スタンド前を通過していく。
セイルオンセイラーとヘラルドバローズは大きくペースを落とすことなく進み、1~2コーナーでは3番手以下は4馬身離れた。ジグラートが少しずつポジションを上げながら向正面へ。残り600m標識を過ぎたところでセイルオンセイラーに鞭が入ると、ヘラルドバローズが唸るような手応えで先頭に変わった。すぐ後ろにはインベルシオンとラッキードリームも迫って3コーナー。その後ろでは、動きが鈍いジグラートを抜いて、ダノンフロイデとサンライズホープが4,5番手に浮上した。
4コーナーで強く追い出した小谷哲平騎手のアクションに応えてヘラルドバローズが脚を伸ばすとリード2馬身で最後の直線へ。残り200mでインベルシオンを抜いてラッキードリームが2番手へ、前のヘラルドバローズに迫ろうとするが、差は詰まらず。
最後は2馬身半とリードを広げて、ヘラルドバローズが初の重賞タイトルを手に入れた。17歳の小谷哲平騎手は、兵庫クイーンセレクションに続いて早くも重賞2勝目となった。
ラッキードリームが2着で新子厩舎はワンツーフィニッシュ。そこから2馬身差の3着は外から伸びたサンライズホープで、内から伸びたダノンフロイデがクビ差の4着。インベルシオンは粘れず5着。1番人気のジグラートは道中でポジションを上げるも、勝負所での反応がひと息で6着に終わった。

◆ヘラルドバローズはシニスターミニスター産駒の7歳牡馬。JRAで4勝を挙げたのち、大井へ移籍。昨年後半に兵庫へ移籍し、今回が移籍後4戦目だった。
これで32戦8勝(地方12戦4勝)とし、重賞7度目の挑戦で初制覇を果たした。
獲得タイトル
2026 白鷺賞


◆小谷哲平騎手は重賞2勝目。兵庫クイーンセレクションをジューンキートスで勝ち、兵庫の最年少重賞勝利記録(17歳9カ月2日)を樹立したが、その2カ月後に早くも重賞2勝目をゲット。今回は、所属する新子雅司厩舎の馬での嬉しい重賞制覇となった。
◆新子雅司厩舎は重賞74勝目。1月の新春賞(ラッキードリーム)に続き、今年重賞2勝目。白鷺賞は3勝目(2020タガノゴールド、2024ラッキードリームに続く勝利)。
◆小谷哲平騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

新子厩舎2頭出しで臨んだ白鷺賞。
新春賞でヘラルドバローズの手綱を取った下原騎手はこの日名古屋遠征で不在。笹田騎手がラッキードリームに引き続き騎乗したため、まだデビューから1年に満たない17歳に騎乗が回ってきた。そして、初コンビのヘラルドバローズを初タイトルに導いた。
勝利騎手インタビューで小谷哲平騎手は、レースでの騎乗が決まった時の心境を問われ、「勝ち負けできる馬。本当にすごい馬なので、緊張が走ってきました」と初々しく答えた。

新春賞の時は、同厩舎のラッキードリームが逃げたため、3番手の外で前に気を使いながらレースをせざるを得なかったこともあり、不本意な結果に終わってしまった。そして、今回もラッキーと一緒のレース。序盤の位置取りが一つのポイントだったが、厩舎の中で話はできていたようで「どちらか速い方が行こうというプラン」だったとのこと。
かくしてスタートを決めたヘラルドバローズの方がラッキードリームの前に出たが、横で何が何でも逃げたいという構えで杉浦騎手が手綱を押していた。「セイルオンセイラーが飛ばすだろうなとは思っていたんで」とこれは想定内。小谷騎手は落ち着いて2番手に誘導してレースを進めた。
「馬が(自分で)行くような感じがあったんで、できるだけ殺さないように握っていた感じです。促していくようなペースを作れるように頑張りました。ほとんど捕まっていただけというか、本当に馬の能力で勝たせていただきました。引っ掛かってしまったこともあって、最後の直線は残ってくれっていう気持ちでした」とレースを振り返ってくれた。
ゴールの瞬間には、グッと左の拳に力を込めた。
「すごい感情が出てきました。もう嬉しいっていう素直な気持ちが出てきました」
調教で乗ったことは一度もなく、今回のレースが初コンタクトだったというが、「すごい馬力がある馬」という最初の感覚を大切に、その特徴を潰さない巧みな騎乗で見事勝利に導いた。

2カ月近く前の1月22日、今年の姫路最初の重賞「兵庫クイーンセレクション」で姫路初勝利を挙げた小谷哲平騎手。姫路初勝利が重賞というのもすごい記録だが、兵庫の最年少重賞勝利記録も塗り替えた。2月19日には、全て3番人気以下の馬で1日5勝という離れ業もやってのけた。
そして、姫路の最終日の重賞「白鷺賞」も勝って、この姫路だけで重賞2勝。最初と最後の重賞を勝つインパクト十分の活躍を見せた。
前回は、碇厩舎のジューンキートスでの初タイトルだったが、今回は師匠の新子雅司調教師の管理馬での勝利。また格別の思いがある。
「もう本当に嬉しいです!たくさん迷惑かけてきていましたし。本当に素晴らしい馬に乗せていただきありがとうございます」と師匠への感謝の気持ちも語った。

「今、何歳ですか?」「17歳です」のやり取りにウイナーズサークルは温かい笑いに包まれた。最年少記録もさることながら、17歳で重賞2勝という記録も当分は破られることはなさそうだ。
「まだまだ技術を上げていかないと、やっぱり勝ってはいけないと思うので、これからも頑張ります」と本人は慢心などしていない。大活躍の姫路で得た自信をいい形で園田の騎乗に繋げることだろう。

総評

オディロンが前日のダイオライト記念を勝っていたこともあり、「負けられへんな」という気持ちがあったという。
「本当はダイオライトに行きたかったからね」という悔しい気持ちを白鷺賞にぶつけることとなった。
「若干飛ばしていってるかなとは思っていたけど、ジョッキーには馬のリズム崩さないように、4角先頭くらいのつもりで乗ってこいって言っていて、その指示通りに乗ってくれた」と満足そうな表情を浮かべていた。

手塩にかけて育成中の小谷哲平騎手と掴んだ初タイトルに、喜びを噛み締めていた。
「今日の朝から『緊張してます』って言っていたんで、『まだ早い』って言っていた(笑)でも、レースに行ったら忘れるみたい。笹田はもう出来上がっていたジョッキーだしね。(愛弟子とのコンビでの重賞は)嬉しいね。一から育てたっていうのはね。
3歳重賞と古馬の交流重賞ではまた違うと思うし、これでもう一皮むけてくれれば。最近は、股関節とか膝とか、関節の使い方が若干柔らかくなってきたかなって思う。彼もトレーニングしてるからね。いずれ日本全国を渡り歩いて行ってくれるようなジョッキーになってくれればと思っています」と成長と期待を口にした。
レース後、トモの歩様の乱れが気になった。
「やっぱりちょっと関節が弱い分。上がりの気になるところはあるけど、前回よりはマシかなと思う。一旦休養を挟んで、また立て直していければと思います」
調教では全然そういう所はないそうなのだが、除外となった川崎と、今回のレース後と2度続いた。この後は一旦休養に出されて、間に合えば夏の摂津盃が目標になるという。
「いずれ状態が上がってくればダートグレードにも挑戦したい」とまだまだ上を目指している。
ちなみにラッキードリームは遠征には行かずに、地元戦を使う予定とのこと。
牡馬が出走可能な古馬中距離重賞の完全制覇をかけて夏の摂津盃を目指す予定がある。
中距離に戻したアラジンバローズや門別時代重賞2勝のブラックバトラーもいて、新子厩舎はやはり使い分けが大変そうだ。
今回敗れたジグラートなども強い相手との戦いを糧にして、また力を付けてくるだろう。
この後、兵庫の古馬中距離重賞は6月4日(木)の六甲盃(園田1870m)までしばらく空くことになる。
今回出走してこなかったオディロンやオケマル、アラジンバローズ、マルカイグアスといったタイトルホースたちは、ダートグレードへと矛先を向けている。
これらがどこで激突するか。いつになく駒が揃い、充実の兵庫中距離戦線が熱い。
文:三宅きみひと
写真:齋藤寿一