2024 兵庫ユースカップ レポート
2024年2月22日(木)
3週連続で行われた姫路競馬の重賞競走は「兵庫ユースカップ」がトリを飾る。2019年に復活した3歳馬による西日本交流重賞は名立たる名馬が勝利している出世レースだ。
前年覇者のべラジオソノダラブは次走の菊水賞も逃げ切りで重賞連勝を飾った。当時無敗のスマイルミーシャに土をつけ、園田ジュニアカップのリベンジを果たす。鞍上の竹村達也騎手は1番人気のプレッシャーを跳ね除け、12年ぶりの重賞制覇を飾った。
春の重賞戦線へ勝ち名乗りを挙げるのはどの馬か?今年は高知から2頭が遠征、地元兵庫6頭の8頭立て。少数精鋭で頂点を競う。
重賞勝ち馬不在で混戦ムード。人気順は時間によって変動していたが、最終オッズは上位5頭が単勝10倍以下となった。
1番人気(単勝2.2倍)は高知生え抜き馬のワンウォリアー。
重賞挑戦のネクストスター高知は6着に敗れたが、高知の特別戦、準重賞で連勝を伸ばし、前走は高知の世代ナンバーワンと呼ばれているプリフロオールインに食らいつく走りを見せた。初の輸送競馬となるが、7戦続けてタッグを組む高知の岡村卓弥騎手が跨る。息の合ったコンビで初の天下取りなるか?
同率の2番人気(単勝3.7倍)は地元兵庫のクラウドノイズ。
2歳時に持ち前のスピードを駆使して通算5勝をマーク。強者揃いの重賞でも好勝負をしていた素質馬は一息入れて年明け初戦を迎える。前走に続き山本屋太三騎手とのコンビで重賞初Vを目指す。山本屋騎手はデビューから10ヵ月での重賞初勝利を狙う。
もう1頭の2番人気(単勝3.7倍)は高知から遠征のリケアサブル。道営のフレッシュチャレンジ(新馬戦)勝利後に高知へ移籍。転入初戦を勝った後は惜敗が続くが、JRA認定で連続2着、重賞のネクストスター高知と金の鞍賞も2着と安定感は抜群。年末以来のレースだが、鞍上に地方全場重賞制覇(ばんえいを除く)を狙う吉原寛人騎手を迎え初タイトルを狙う。
4番人気(単勝8.1倍)は重賞と同舞台のОP特別を勝利した兵庫のダイジョバナイ。笠松のゴールドジュニア3着から中1週で挑むインテンシーヴォが5番人気(8.9倍)で続いた。
出走馬
レース
スタート
スタンド前~1コーナー
2コーナー
向正面
3コーナー
4コーナー
最後の直線①
最後の直線②
最後の直線③
ゴールイン
6週目の姫路競馬は4日間競馬が行われたが、寒暖差が激しく天気に悩まされる開催となった。重賞当日も曇天の空模様で馬場状態は「重」。水分を多く含んだ走路コンディションでメインを迎える。
今年、姫路で最後の重賞ファンファーレが鳴り響く。順調な枠入りでゲートが開いた。
発馬はインテンシーヴォが出遅れて後方からとなる。最内枠のクラウドノイズも出は良くなく隣のダイジョバナイが1馬身以上前に出るが、クラウドノイズが内から押してハナを主張。ダイジョバナイは2番手で折り合う。2馬身後ろにワンウォリアー、リケアサブルの高知勢が追走。中団にはチョコレートデイ、プレストマーヴェル。インテンシーヴォは後ろから2頭目。レーヴエスポワールが最後方で1コーナーを通過。馬群全長は7~8馬身で向正面に入る。
クラウドノイズは何とか逃げに持ち込むが、2番手にいるダイジョバナイに圧力を掛けられ息の入らない競馬となる。3コーナー手前でダイジョバナイが動きを見せるとリケアサブルも上昇を開始。ワンウォリアーもその動きを見ながら追撃態勢に入る。クラウドノイズは抵抗する余力もなく後退。出遅れて後方となっていたインテンシーヴォも追い上げて5番手に浮上するが前とは6馬身近く差がある。
4角で頭一つ前に出たのはリケアサブル。直線の入り口でさらに加速するとダイジョバナイとの差を広げていく。外から追い上げるワンウォリアーが2番手に浮上。スピードが鈍ったダイジョバナイは優勝争いから脱落。残り100m手前から遠征馬同士のマッチレースとなる。
良い末脚を繰り出すワンウォリアーだが2~3馬身前にいるリケアサブルとの差が詰まらない。終いの脚が衰えないリケアサブルがリードを保ったまま先頭でゴールを通過した。
2着はワンウォリアーが入り高知勢のワンツーフィニッシュ。
8馬身離れた3着争いは地元のダイジョバナイが頭差先着。4着はインテンシーヴォ。2番人気のクラウドノイズは7着だった。
◆高知のリケアサブルはベストウォーリア産駒の3歳牡馬。3度目の重賞挑戦で初制覇。門別で新馬勝ち後に高知へ移籍。転入初戦を勝って以降は惜敗続きだったが、久々の勝利を遠征競馬で飾った。半兄のワールドタキオンは兵庫からJRAに復帰し、エルムステークス2着などオープンで活躍している。
獲得タイトル
2024 兵庫ユースカップ
◆金沢の吉原寛人騎手は兵庫の重賞8勝目。姫路重賞を初めて勝ち、この勝利でばんえい競馬を除く現存する地方競馬全14競馬場の重賞制覇という前人未到の偉業を達成した。
◆高知の田中守厩舎は兵庫の重賞3勝目。姫路の重賞は初制覇。
(※田中守調教師不在のため、表彰式は代理で工藤真司調教師が出席)
◆吉原寛人騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
リケアサブルが先頭でゴールした瞬間に歓声が挙がった。金沢の吉原寛人騎手が地方競馬全14場の重賞制覇(ばんえい競馬を除く)という偉業を達成した。
「全場重賞制覇をした人がいなかったので記録は意識していました。達成したらどんな感じかと思いましたが、ファンの声援のおかげで良い記念日となりました」
昨年9月に佐賀競馬場(西日本ダービー)で勝って全場制覇へ残すは姫路のみとしていた吉原騎手。だが、昨年11月の道営記念(門別)で落馬負傷。大怪我を負ったが僅か1ヵ月弱で戦列に復帰すると、12月末の移転50周年記念金沢ファンセレクトカップをハクサンアマゾネスで勝利。今年は黒潮スプリンターズカップ(高知)、報知オールスターカップ(川崎)と重賞を立て続けに勝って全場制覇へ弾みをつけていた。
ただ、姫路競馬は2020年に復活してからは開催時期が1月~3月の冬場限定。重賞レースも数が少なく、偉業を決めるには最難関の場だ。吉原寛人騎手は兵庫ウインターカップから3週連続で姫路重賞に参戦。兵庫ウインターカップは4着、白鷺賞は2着と王手のまま、今年最後の姫路重賞を迎えていた。
「今年のラストチャンスだったので背水の陣で挑みました。今年最後の姫路重賞で決められて嬉しかったです」
デビュー3年目の2003年に地元金沢で初重賞制覇を飾ると、名古屋、笠松、盛岡、川崎、船橋、大井、水沢、門別、浦和、園田、高知、佐賀、姫路の順で現存する地方競馬全14場の重賞をコンプリート。2021年のJBCクラシックで交流G1を制覇するなど、これまで積み重ねた地方重賞勝利数は「153」。優勝請負人の名に相応しい活躍を続けている。
「次は重賞200勝を目標に頑張ります」
前人未踏の記録を打ち立てた金沢の名手はさらなる記録を目指して、今年も各地を飛び回る。
初コンビを組んだリケアサブルは門別の新馬戦を勝った後は高知へ移籍。転入初戦を勝った後は高知2歳のNо.1ホース「プリフロオールイン」の壁に苦しんでいた。
「調教で跨ったことは無かったが、返し馬で凄く背中の良い馬だったので自信を持って乗りました。枠も良かったので行きたい馬を行かせて、外追走で自分の動きたいタイミングで動こうというプランでした。理想通りの展開になりましたね」
3番手の外で折り合うとダイジョバナイが動くと同時に浮上を開始。楽な手応えのまま併走に持ち込んだ。
「内のワンウォリアーを見ながらどのタイミングで抜け出そうかと考えていました。ダイジョバナイを楽に逃がすと手強いので早めに捕まえにいきました。後ろにいたワンウォリアーも不気味でしたが、手応え良く抜け出して最後まで良い脚を使ってくれました」
去年7月の高知条件戦以来の勝利を重賞レースで飾ったリケアサブル。弾みをつけて高知最強馬と再激突となる。
「高知に強い馬がいますけど、これからさらに良くなる馬です。今後の活躍に期待したいです」と将来性に期待している。
総評
「成長途している段階ですが初の遠征競馬で結果を残せたのは大きいです」と笑みがこぼれた。
「久々でしたけど入念に乗り込めていました。輸送で馬体は減りましたが力を発揮していくれました」と、昨年末の金の鞍賞以来の実戦となったが不安は無かった。
「次走は未定。オーナーと相談してから決めますが将来が楽しみです」。本州に渡って初タイトルを掴んだリケアサブルの更なる飛躍に期待したい。
近年、高知は全国でも通用する馬を多数輩出している。2023年に高知三冠を達成したユメノホノオを筆頭に、昨年の六甲盃でラッキードリームを撃破したグリードパルフェ。羽田盃を勝っているトランセンデンスは先週の白鷺賞2着と復活の狼煙を挙げた。
今回の兵庫ユースカップは来月28日に園田競馬場で行われる新設重賞、第1回ネクストスター西日本(1400m)、3歳短距離路線の頂点を決める戦いに生まれ変わった第25回兵庫チャンピオンシップ(4月29日・園田1400m)に向けての重要なステップレースとなる。
今回は重賞3勝馬で無敗のマミエミモモタロー、園田ジュニアカップ勝ち馬のマルカイグアスが不在。2頭に待ったをかける新星の登場を期待されていたが、結果は高知の重賞で善戦していた2頭に完敗。1月の兵庫クイーンセレクションに続き遠征勢にタイトルを奪取されてしまった。まだ重賞に登場していない素質馬もいるだけに兵庫勢の奮起に期待したい。
文:鈴木セイヤ
写真:齋藤寿一