2024 兵庫女王盃(Jpn3) レポート
2024年04月04日(木)
大井競馬場で行われていたTCK女王盃(Jpn3)が今年から様変わり。桜の季節の園田競馬場1870mに舞台を移して行われることになった。
グランダムジャパン古馬シーズンも今年から春・秋の二部制となり、この兵庫女王盃は春シーズンの第5戦。1ヶ月後の最終戦エンプレス杯(Jpn2 川崎2100m)に繋がる一戦だ。
第1回兵庫女王盃(Jpn3)は、JRAからグレードホース2頭を含む4頭が参戦。地方他地区は大井・笠松・金沢・高知からそれぞれ1頭ずつ、地元兵庫馬は4頭がエントリーし、フルゲート12頭で争われた。
1番人気は、単勝2.3倍でJRAのサーマルソアリング。昨年3連勝で一気にオープン入りを果たし、5ヶ月ぶりの実戦となった3月の総武Sでは牡馬相手に2着といきなり好走した4歳馬。レース前にはテンションの高さを見せるが、好位をうまく立ち回れるセンスがある。
2番人気は、JRAのアーテルアストレアで単勝2.5倍。昨年のレディスプレリュード(大井)でダートグレード(以下DG)初制覇を果たすと、今年のクイーン賞(船橋)でDG2勝目。良績が左回りに集まっていることと、コーナーでややもたつく点が懸念はあるが、Jpn1のJBCレディスクラシック3着もあり、メンバー中実績は最上位だ。
3番人気は、単勝5.3倍のJRAライオットガール。昨夏、新潟のレパードSでは牡馬を破って好時計V。昨年のクイーン賞(船橋)でDG2勝目を挙げた。アーテルアストレアには3戦全敗と分は悪いが、小回りの舞台で逆転を狙う。鞍上岩田望来騎手は故郷の園田でのDGは初騎乗となる。
さらに、単勝9.8倍の4番人気でJRAヴィブラフォン、13.6倍の5番人気で大井のキャリックアリードが続いた。地元兵庫期待の重賞6勝馬スマイルミーシャは17.5倍の6番人気だった。
出走馬
レース
ゴールイン
向正面と3角に植樹された“未来桜”と名付けられた園田競馬場を彩る8本の桜は今年も花をつけた。天候は曇り、馬場状態は重。
淡い桃色を纏った2分咲きの未来桜も見つめる中、第1回の幕開き。この日のために作られた新しいファンファーレが高らかに生演奏で響き渡り、オープニングを彩った。
スタートは、若干アーテルアストレアとエイシンレミーが後手を踏んだ以外はほぼ五分。一瞬は内からヴィブラフォンが出を伺うが、外から少し気合をつけられたライオットガールが早々に自身初となる逃げに持ち込んだ。キャリックアリードが外から2番手に上がると、ヴィブラフォンはインの3番手。サーマルソアリングはさらに外の4番手。
好位を見る形でマヤローザとアンティキティラ、その1列後ろの中団インにスマイルミーシャ。さらに、レッツゴーローズ、アキュートガールがいて、アーテルアストレアは後方3番手のポジション。マラッカとエイシンレミーが最後方。馬群全長15馬身ほどで1周目のスタンド前に入った。
ペースが落ち着いたホームストレートでアーテルアストレアが外から6番手まで浮上し、向正面に出るところではそのままの勢いで5番手まで押し上げていく。
向正面に入ると徐々にペースアップ。まずは3番手にいたヴィブラフォンがついていけずに後退。さらに3コーナー入口ではキャリックアリードも遅れ始めた。
先頭争いは3頭。サーマルソアリングが逃げるライオットガールに並びかけると、向正面で仕掛けられて一気に動いたアーテルアストレアが外から一瞬先頭へ。しかし、3~4コーナーを回りながらライオットガールが難なく先頭を奪い返すと、リード1馬身から2馬身と広げて直線へ。
最後の直線も追ってくる後続を寄せ付けずその差をキープしたままゴール。ライオットガールが初代女王に輝き、DG3勝目を挙げた。
2馬身差で2着はアーテルアストレア。陣営が課題に挙げていた小回りのコーナーでスピードに乗り切れない点が出てしまった印象はあるが、直線でサーマルソアリングを競り落とし3馬身の差をつけた点は地力の証。
サーマルソアリングが3着、地方馬最先着がキャリックアリードで4着だった。
5着ヴィブラフォンから3馬身半差の6着に兵庫勢最先着のスマイルミーシャ。初のダートグレード挑戦は悔しい結果に。
◆ライオットガールはこれで通算14戦6勝、ダートグレード3勝目となった。
獲得タイトル
2023 レパードS(JRA新潟 G3)、クイーン賞(船橋 Jpn3)
2024 兵庫女王盃(Jpn3)
◆岩田望来騎手は地方重賞通算5勝目。デビュー6年目、兵庫のダートグレード初騎乗で初優勝。
◆中村直也厩舎は地方重賞通算2勝目。開業3年目、兵庫のダートグレード初出走で初優勝。
◆岩田望来騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
今回ライオットガールは、初めて逃げてレースをした。
「地元ジョッキーに聞いても、逃げの内が有利だと聞いたので、出していってハナが取れそうだったので逃げる選択をしました」と岩田騎手。これまでも何度か逃げる競馬を試みていたが、テリオスべスという強い逃げ馬がいたので行けなかったという。
初めての逃げでも馬は戸惑うこともなく、「すごいリズム良く行けました。3コーナーからペースを上げていきました。外から(2頭が)来たんですけどスムーズに移行できたので、直線もこの雰囲気なら大丈夫だなと思いました」とまさに盤石の競馬での1勝だった。
岩田望来騎手の父は康誠騎手。ここ兵庫で1991年10月にデビューすると2006年3月にJRAへ移籍するまでの14年半で地方通算2941勝(内重賞42勝)を挙げ、4度兵庫リーディングにも輝いた名騎手。
望来騎手は2000年生まれ、5歳まで園田で育った。幼少期の園田での記憶はあまりないと話すが、「父の地元でもある園田で勝てて本当に嬉しいと思います」と地元での凱旋勝利を喜んだ。
表彰式では岩田騎手にファンからも大きな声援が飛び、サインの依頼にも快く応えていた。
総評
「前に行った方が良い感じでレースが運べる馬。うまく逃げられた。折り合いがつく馬なので、スタンド前もゆったり走れていた。その分ラストまで頑張れたかな」と振り返った。
前走比-10kgの馬体については、「前回は輸送で思ったより減らなかった。今回はしっかりと調教してうまく走れる体重で持ってこられました」と胸を張った。
「馬が順調なら、目標にしやすいレース。折り合いもつくので距離は心配していない。今日のメンバーでも勝ち切ってくれたので、今後が楽しみ」と今後の見通しについても中村師は語った。
牝馬ダート路線での存在感をきっちり示したライオットガール。敗れたアーテルアストレアやサーマルソアリングも広いコースなら巻き返し必至だろう。
秋にはJBCレディスクラシック(Jpn1)が今年は佐賀の1860mで行われる。今年は初のJBC九州開催、九州頂上決戦が今から楽しみだ。
兵庫の現役最強牝馬として挑戦したスマイルミーシャだったが6着と残念な結果に終わった。
騎乗した吉村騎手は「正直なところ力が足りなかったですね。内をロスなく立ち回って、3角くらいでは前のヴィブラフォン(5着馬)は交わせるかなという感じで、4コーナーも内が空いてなんとか5着はと思ったんですけど、相手も伸びていったんで…。最後は力尽きちゃいましたね」と完敗の弁。
「今回の走破時計が2.03.2。兵庫クイーンカップと園田金盃が2.03.3だったので、馬場状態考えたらしっかり走れているとは思うんですけどね。現時点でグレードは厳しかったですが、経験も大事なので。まだまだ経験を積んでいかないと。しっかりは走れているので問題はないとは思います」
強敵と戦ってこそ成長がある。初めてのダートグレード挑戦は悔しい結果に終わったが、今回の敗戦を糧にさらなる成長してくれることを期待しよう。
文:三宅きみひと
写真:齋藤寿一