2024 兵庫サマークイーン賞 レポート
2024年07月12日（金）
今年最初のナイター重賞として行われた牝馬限定戦、グランダムジャパン古馬秋シーズンの第２戦「兵庫サマークイーン賞」。
去年、初の長距離遠征を敢行し、このレースを制した“金沢の女傑”ハクサンアマゾネスが連覇を狙って今年も参戦してきた。
地元牝馬は、重賞６勝馬スマイルミーシャが不在。JRA３勝クラスから移籍をして２戦目を迎えるスマートムーランというニューフェイスに期待が集まり、２つ目のタイトルを狙うクリノメガミエース、マルグリッド、アキュートガールなどが参戦。
マヤローザが出走を取り消し、他地区からの５頭を迎えた１１頭で争われた。
１番人気は、単勝1.2倍でハクサンアマゾネス(金沢)。
昨年９月の秋桜賞こそ大敗したものの、その後７連勝中。ここまで重賞２３勝を挙げており、カツゲキキトキト（名古屋）が持っていた国内平地重賞勝利記録（２０勝）を更新しさらにその記録を伸ばし続けている。昨年、園田では兵庫サマークイーン賞と兵庫クイーンカップを勝っており、園田重賞３連勝を狙う。
２番人気は、スマートムーラン(単勝8.9倍)。
移籍初戦のA1A2戦は陣営も手探りながら出走した中、自ら勝ちに行っての２着と評価できる内容。JRA３勝はいずれもローカル小回りの1700m戦で挙げており、地方馬場への適正もあると示唆された。兵庫牝馬戦線のヒロイン候補として未知の魅力に期待が集まった。
３番人気は、単勝9.4倍でサーフズアップ(船橋)。
３歳時に南関東の牝馬重賞を２勝。近走勝利からは遠ざかっているが、３月の若草賞土古記念では２着と好走し、地方牝馬では上位クラスの力を持つことを引き続き証明。園田競馬場へは昨年の楠賞に続く２度目の遠征。この時は落馬の影響があってスムーズさを欠き、それでも４着と力を示した。リベンジ戦に燃える。
さらに、今年重賞２勝と波に乗るグレースルビー(大井)が単勝12.6倍で４番人気、 重賞４勝馬で園田で好走歴も多いアンティキティラ(高知)が20.1倍の５番人気で続いた。
出走馬
レース
ゴールイン
梅雨の終盤、前夜の強い雨の影響が残って馬場状態は不良。この日の開催前に馬場全周の内側に砂が補充された。
天候は徐々に回復し、途中からは青空も見られた。前週に記録した３５℃前後という猛暑は一時的に緩和し、レース時の気温は２７℃。少しの蒸し暑さを感じる中、その金ナイトに重賞ファンファーレが鳴り響いた。
スタートは、スマートムーランとマルグリッドがやや出遅れ気味。
まずは好スタートを決めたアンティキティラが内から押して先頭に立ち、６戦ぶりの逃げの手に打って出た。サーフズアップが２番手に付けると、ハクサンアマゾネスは３番手の外。地元金沢では近走逃げ切りのレースが続いていたが、昨年勝利した時と同様に好位の位置取りとなった。
アキュートガールが４番手イン。オーサムサンライズ 、クリノメガミエース、スギノプリンセス、グレースルビーが中団馬群を形成し、スマートムーランは後方から３頭目。デンコウハピネス、マルグリッドの順でホームストレートを進んだ。
マイペースの逃げに持ち込んだアンティキティラが１～２角で後ろを３馬身近く引き離し、馬群全長は１２馬身ほどで２周目の向正面へ。
向正面に出ると、外を回るハクサンアマゾネスがじわっと動いて早くも２番手へ浮上し、自らアンティキティラを捕まえに行き１馬身差まで詰め寄る。他の馬たちも遅れまいとピッチが上がって３コーナー。スマートムーランが中団へじわじわと押し上げ、最後方にいたマルグリッドがやや目立つ脚色でポジションを上げていく姿が見られた。
３～４コーナー中間、残り400m地点でアンティキティラが再びハクサンアマゾネスを２馬身突き放し、好勝負の予感を漂わせる。この２頭が４コーナーまでに後続を６馬身離して直線へ。
直線入口で再び１馬身差に詰め寄っていたハクサンアマゾネスが、内で粘るアンティキティラを残り100mで抜き去り、１馬身半差をつけて連覇のゴールイン。着差以上の完勝といえる内容だった。
２着はアンティキティラ。久々の逃げに持ち込んだ多田羅騎手の判断も見事で十分に見せ場を作ったが相手が悪かった。
３着争いは８馬身後方でハナ差の接戦となり、外から伸びたグレースルビーが３着に浮上。内をロスなく立ち回ったアキュートガールが地元最先着の４着。前年のグランダム３歳女王マルグリッドは５着。
３番人気サーフズアップは２番手を追走したが勝負どころで一杯となって後退し８着。２番人気スマートムーランは末脚不発で９着に終わった。
◆ハクサンアマゾネスはこれで４０戦２９勝、重賞２４勝目となった。自身が持つ、平地競走における重賞最多勝記録をさらに更新した。
ばんえい競馬のオレノココロが持つ、重賞２５勝の日本記録まであと１つ。
獲得タイトル
2020 ﾉﾄｷﾘｼﾏ賞、石川ﾀﾞｰﾋﾞｰ、加賀友禅賞、お松の方賞、中日杯
2021 JBCｲﾔｰ記念、利家盃、百万石賞、北國王冠、読売ﾚﾃﾞｨｽ杯、中日杯
2022 利家盃、百万石賞、お松の方賞
2023 金沢競馬移転50周年記念、利家盃、百万石賞、兵庫ｻﾏｰｸｲｰﾝ賞、
兵庫ｸｲｰﾝｶｯﾌﾟ、中日杯、金沢ﾌｧﾝｾﾚｸﾄC
2024 利家盃、百万石賞、兵庫ｻﾏｰｸｲｰﾝ賞
◆吉原寛人騎手は、地方重賞通算１６２勝目。今年重賞１２勝目。 兵庫の重賞は、今年の兵庫ユースカップ(リケアサブル)に続く９勝目。
◆加藤和義厩舎は重賞通算３３勝目（今年５勝目）で、他地区の重賞は2023兵庫クイーンカップ(ハクサンアマゾネス)に続く３勝目。
◆吉原寛人騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
ハクサンアマゾネスにとって昨秋の園田クイーンカップ以来の遠征競馬となった今回、輸送をしたうえでの馬体重は455kg。前走と同じ馬体重での出走に鞍上の吉原寛人騎手はまず安堵した。
「夏場の仕上げということであまり攻めることはできなかったんですけど、その中でも暑さに耐えてくれてしっかり調教も積めて良い状態で来られました」
地元戦では逃げて圧勝するレースが続いていたが、今回は去年勝った時と同じ好位からのレースとなった。
「あんまり競られてハイペースになってというのが一番嫌なタイプ。馬場傾向を見ても前は残っていたけれど絶対的な感じでもなかったですし、むしろ外から来られる方が面倒だと思っていました。リズムを優先に３番手でもいい、３頭分の外でもＯＫと思っていました」
レースは高知のアンティキティラが逃げる展開に。
「逃がすと怖い馬っていうのもあったので捕まえには行ったんですけど、３～４コーナーで一回離されたんでドキッとしました。でも、手応えはあったのでなんとかアンティが止まってくれないかなという思いでした」と、鞍上は正直な気持ちを吐露。それでも「直線はしっかり伸びてくれた」と危なげなく差し切るのだから恐れ入る。
「だいぶ精神的にも落ち着いて、うるさい部分もなくなってきたので逆に心配な部分もあるんですが、レースに行くとこれだけパワフルな走りをしてくれる」と信頼を寄せる。
これで８連勝となり重賞２４勝目。平地の重賞最多勝記録をさらに伸ばす一方、ばんえい競馬のオレノココロが持っている重賞２５勝の日本記録までもあと１つとなった。
「本当にすごい記録だと思います。これだけ連勝もしてくれて馬に頭が上がらないです。感謝しています。連覇ということで、園田の競馬ファンの方に力強い走りを見せられてよかったです。まだ日本記録を更新していきたいので、応援をよろしくお願いします」と勝利騎手インタビューを締め括った。
総評
加藤師は「ここ最近は気温が抑えられていて、耐えられる暑さだったので良かった。いつもと変わりない状態でした。
次走については、「金沢に帰って状態を見てからにはなりますが、グランダム（ジャパン古馬秋シーズン）を意識しているので、8/6(火)の読売レディス杯も視野に入れています」と話した。
「元々夏は強くない馬」とのことだが、この夏をうまく乗り切ればさらなる日本記録もグランダムのタイトルも近づいてくる。
「状態が良ければ、秋の兵庫クイーンカップも来たいです」と指揮官は話したが、同時期にあるグランダム最終戦 11/4 (振月)のＪＢＣレディスクラシック(Jpn1)への再挑戦を見てみたいというファンも多いはずだ。今後のレース選択を含めて、記録面や強豪馬との対戦など楽しみは尽きない。
地元馬は2020年のエイシンセラードの勝利を最後に４連敗。今年は３着までの独占を許す結果となった。
今年から１月に牝馬重賞のコウノトリ賞ができ、４月に兵庫女王盃(Jpn3)が誕生。近年は牝馬の上位層が薄い状態が続いてしまっているが、牝馬路線が整備されてきた中、なんとか地元馬の奮起にも期待したい。
文：三宅きみひと
写真：齋藤寿一
