2025 園田チャレンジカップ レポート

2025年9月26日(金)

先週の園田プリンセスカップから8週連続で重賞が続く園田競馬。その中でも特に今週は、全国各地の2000勝以上の名手が腕を競う「ゴールデンジョッキーカップ」が24日に、2歳重賞の「兵庫ジュベナイルカップ」が25日に、そして26日にはこの「園田チャレンジカップ」が行われるという豪華なラインナップとなった。
西日本交流ではあるが、今年の参戦は高知のみ。ただ出走馬中、半数の5頭が高知からの遠征馬、残る5頭が地元兵庫馬という顔ぶれになり、“高知vs兵庫”、真っ向勝負の構図となった。

1番人気(単勝1.8倍)の支持を集めたのは地元兵庫のオマツリオトコ。ダートグレードの勝ち馬ながら、気性面の課題がつきまとい、中央からの転入後も善戦止まり。それが前走のA1A2特別戦では道中鮮やかなインまくりを決め、2着のエイシンレジュームに7馬身差をつける圧勝劇。2022年にここ園田で兵庫ジュニアグランプリ(Jpn2)を制して以来、実に約2年8ヶ月ぶりの勝利となった。今回も前走同様に短期放牧を挟んでの臨戦。勢いに乗り、実力馬の完全復活となるか。

2番人気(単勝3.7倍)は高知のロレンツォ。元々中央3勝クラスに在籍していたが、前走から高知に転入。その初戦はC1の四組とはいえ、ヴァリアントやラプラスといった強敵相手に完勝を見せた。前走を使って上昇ムード、中央時代でもキラリと光っていたその鋭い末脚を武器に、初の園田で重賞初制覇を狙う。

3番人気(単勝5.1倍)は同じく高知のルコルセール。川崎からの転入初戦となった前走はいきなりの園田遠征。その高知兵庫の交流戦「夜さ恋サマースプリント」は中団から鮮やかな差し切りを決める快勝だった。中央在籍時の5勝は全てマイル以上、加えて1700m戦のエルムステークス(G3)で4着という実力馬で距離延長もむしろ歓迎か。馬体重は前走時のー16kgから今回+5kgと少し戻してきた。馬場適性も前走ですでに証明済み、初タイトル奪取となるか。

4番人気(単勝14.5倍)は高知のミスズグランドオー。前走の重賞「建依別賞」ではスタート直後に躓き、落馬競走中止となる不運があったが、今回仕切り直しの一戦で能力発揮となるか。鞍上は引き続き、現在東海リーディングを快走中の塚本征吾騎手(名古屋)。兄である故・雄大騎手が所属していた目迫大輔厩舎とのタッグで悲願の重賞制覇を目指す。

5番人気(単勝19.7倍)は兵庫のスマートビクター。転入初戦で結果を出した1400mへの距離短縮で一変を狙う。

このように単勝オッズ上位3頭と4番人気以降は人気が乖離する形となった。

出走馬

1番  (高)タマモマスラオ (高)畑中信司騎手
2番 (高)イモータルスモーク 大山龍太郎騎手
3番 ミルトプライム 大山真吾騎手
4番 オマツリオトコ 下原理騎手
5番 (高)ミスズグランドオー (名)塚本征吾騎手
6番 (高)ルコルセール 小牧太騎手
7番 ミステリーボックス 吉村智洋騎手
8番 グリュースゴット 廣瀬航騎手
9番 スマートビクター 鴨宮祥行騎手
10番 (高)ロレンツォ (高)赤岡修次騎手

レース

スタート

スタンド前①

スタンド前②

2コーナー〜向正面

向正面

3~4コーナー

4コーナー

4コーナー〜最後の直線

最後の直線①

最後の直線②

最後の直線③

ゴールイン

今週からようやく秋到来といった感じのさわやかな気候になってきた園田競馬場。
その園田のスペシャルウィークを締めくくるナイター重賞「園田チャレンジカップ」が漆黒の空の下、場内に響く歓声とともに幕を開けた。

ゲートが開き、そろった飛び出しを見せた兵庫5頭と高知5頭の全10頭。今日はスタートが決まったミルトプライムがまずハナを叩くと、高知のミスズグランドオーが2番手、スマートビクターが3番手にすっと付けていく。中団の内にイモータルスモーク、外にルコルセール、その背後に今回は後方からとなったタマモマスラオら高知勢が続き、差がなくグリュースゴット、後方3頭はばらけて高知のロレンツォ、ミステリーボックス、そしてオマツリオトコが最後方の展開で1コーナーへ。

ミルトプライムがやや後ろを離しながら切符よく逃げて、隊列は15馬身程度の長さで2コーナーから向正面に入る。ミスズグランドオーがその後ろでがっちり2番手をキープ。
そのインコースからじわっと前との差を詰める昨年の覇者イモータルスモーク、さらにはスマートビクター。向正面中央あたりで徐々にペースアップし、各騎手の手が動き始める。ルコルセール、タマモマスラオ、グリュースゴットが変わらず中団に位置し、それらを追ってロレンツォ、1頭交わして後方2頭目から前を追うオマツリオトコ、最後方ミステリーボックスの形で3コーナーに進入。


残り300m付近でミスズグランドオーが先頭に立つと、苦しくなったミルトプライムが後退加減。代わってイモータルスモークとルコルセールが2番手に上がり、さらにはロレンツォも後方から脚を伸ばして前へと接近、その後方からようやくエンジンかかったオマツリオトコが6番手、先頭との差7馬身の圏内で4コーナーのカーブから最後の直線へと入る。

早め先頭のミスズグランドオーが1馬身半のリードで残り200m、イモータルスモークとルコルセールが併せ馬でこれを追って2番手、外から差を詰めるロレンツォと、高知勢が前を固める中、大外からオマツリオトコが勢いよく追いこんで5番手に。

残り100m、リード2馬身で押し切りを図るミスズグランドオーに猛然と迫るロレンツォとオマツリオトコ。

残り50m、ミスズグランドオーにロレンツォが並びかけ、最後は捕らえてゴールイン。
中央時代でも披露していた自慢の末脚が炸裂し、高知に転入後、連勝で見事重賞初制覇を飾った。

2着は最後わずか体半分交わされたミスズグランドオー。兄である故・雄大騎手は自厩舎の目迫厩舎では重賞で勝ち馬とクビ差の2着が最高成績。弟の征吾騎手と目迫厩舎とのタッグでの悲願達成には惜しくも届かなかったが、また次の機会に期待したい。

3着は道中最後方から懸命な追い込みを見せた地元兵庫のオマツリオトコ。ロレンツォと同じ上がり最速タイの37.7秒の末脚を繰り出したが勝利とはならなかった。

今年は高知勢のワンツーフィニッシュで幕を閉じた園田チャレンジカップ。これで西日本交流となった2021年以降は、高知3勝、兵庫2勝となった。

◆ロレンツォはこれで通算26戦6勝、中央から高知に移籍後2連勝。重賞初挑戦初制覇を達成した。

獲得タイトル

2025 園田チャレンジカップ

◆赤岡修次騎手(高知)は重賞107勝目。6月の高知優駿(ジュゲムーン)以来、今年の5勝目。兵庫重賞は昨年9月の兵庫ジュベナイルカップ(ラピドフィオーレ)以来の9勝目となった。このレースは初制覇。

◆田中守調教師は重賞81勝目。6月の高知優駿(ジュゲムーン)以来、今年の6勝目。
園田チャレンジカップは昨年のイモータルスモークに続き、連覇達成。兵庫重賞はそれ以来の勝利で通算6勝目。

◆赤岡修次騎手 優勝インタビュー◆
 (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

最後は同じ高知所属のミスズグランドオーを差し切り、ゴール前の混戦を断ったロレンツォ。

「もう3コーナーを回るぐらいには捕まえられるなという感じではあったんですね。ただちょっとコーナー(を回るの)が下手な部分があって、まだ外へ張りながら走るんで。直線はきっちり手前を変えて、前向いて、そこでハミを噛んでくれたらなと思っていたんですけど。まぁ直線向いたら(先頭に)変わるぐらいの勢いでぐんぐん行ったんで」

転入初戦となった前走は高知のC1ということもあってもっと楽に前目で追走できていたが、今回はオープンクラスで速いメンバーがそろっていたため、後方からの追走を余儀なくされた。

「中央でも後ろから、いつも上がり最速で走ってきていた馬なので、動くだろうという気持ちで乗って、(それで)動いてくれたんでよかったです」

中央時代は短い距離で戦ってきたロレンツォだが、前走高知のマイル戦の走りから、「(もう少し長い距離も)全然走れそうですし、距離はもう少し融通が効くんじゃないかなと思っているんで楽しみはあると思います」と、赤岡騎手は今後の可能性も感じているようだった。

兵庫5頭対高知5頭の構図で行われた今年のレース、高知勢の連覇となったことについては、「今高知も強い馬がいますしね。園田の馬も高知に来て最近勝っているし、お互いいい刺激になって、お互いの競馬場の馬が強くなればいいなと思います」と返答。このあたりはさすが高知のトップジョッキー、各所への気遣いが言葉に表れていた。

2日前はゴールデンジョッキーカップに出場し、惜しくも5位と表彰台を逃したが、こうしてその後の重賞はしっかりと仕留めていく赤岡騎手。昨年も同じような流れでゴールデンジョッキーカップの悔しい4位から、当日メインの兵庫ジュベナイルカップで重賞制覇を決めた。

「そうですね。ゴールデンジョッキー後の園田の重賞は赤岡買いかもしれないですね(笑)」と、さすがの返しで場を沸かせてくれた。

「たくさん観に来てくれて本当にありがたいです。暑さもだいぶ和らいできて競馬も見やすい時期になってきたんでね。これからもどんどん園田競馬場に足を運んで、高知競馬があるときは高知競馬を応援してください」と来場者に呼びかけ、ベテランらしく見事なまとめで締めくくってくれた。

総評

今回はロレンツォ、ルコルセール、イモータルスモークと3頭出しで挑み、見事連覇を果たした稲場澄オーナーと田中守調教師のタッグ。
稲場オーナーは「(ロレンツォは)直前まで使うかやめるか、状態を見ながら一番迷っていた馬だったので、使って良かったなぁと(笑)。上がりもずっと最速できていた馬だったんで、まだ終わってないんじゃないかなと思って(田中守)先生にお願いしたんですけど。
赤岡さんも前走後『これいけるよ』と言ってくれていたんで良かったです」と勝利を喜んだ。
一方、その田中守師は、「元々そんなに前目の位置取りにこだわる馬じゃないし、押していっても進んでいかないもんね。あんな競馬になるんだろうなとは思っていたけど、前が流れてくれたんでね。上がりは確実に脚使ってきてたんで、前走も中央でも。JRAで着順は悪くても時計はよかったんでね」と、ある程度イメージ通りの競馬だった模様。
「園田は高知より涼しくてええわ、馬にとってもよかったかも。あと走りやすいよ、高知より砂が。高知は深い馬場でキックバックも痛いからね」と、続ける田中師。
「高知は1コーナーも園田みたいに狭くないから、トップスピードで入ってこれるし、行きっぱなしで緩むところがない。そりゃ馬はしんどいと思うよ。だから勝手に強くなっていく」と、最後に興味深い話もしてくれた。

高知勢の強さの源は、普段から負荷のかかる馬場、流れで鍛えられていることにあるというところか。ロレンツォは7歳だが、まだキャリアも26戦で消耗も少なそう。ちなみにこのロレンツォ、ルコルセール、イモータルスモークの3頭は次走、またもや園田の兵庫ゴールドカップ(10月17日)出走の意向を示している。今回掲示板をほぼ独占する形となった他の高知勢らも含めて今後も兵庫勢の手強いライバルとなりそうだ。高知で行われた9月7日の西日本3歳優駿こそ兵庫のワンツーとなったが、8月の交流戦も含めてホームでは敗戦が続いている。オマツリオトコを筆頭に次走以降地元勢の巻き返しに期待したい。


 文:木村寿伸  
写真:齋藤寿一  

information