2026 兵庫ウインターカップ レポート
2026年2月11日(祝水)
全国交流重賞の「兵庫ウインターカップ」は、今年の姫路シリーズで唯一の祝日開催(建国記念の日)に行われた。距離は1400mで短距離路線の今後を占う重要な戦いになる。
今年も他地区から5頭(浦和2頭、高知1頭、佐賀2頭)が参戦。地元勢は前走の兵庫ゴールドトロフィー(JpnⅢ)3着馬のオマツリオトコ、前哨戦のオープンを制したペースセッティングなどが挑む。残念ながらスマイルサルファーは出走取り消しになり、11頭立てで争われた。

単勝1番人気(2.5倍)は重賞3勝馬のポリゴンウェイヴ(浦和)。昨年の兵庫ゴールドカップ(園田)の勝ち馬で、2年ぶりにタイトルを獲得した。今回は高知の黒潮スプリンターズカップ(4着)から中10日での参戦となるが、自分の競馬ができれば押し切りのシーンも見られるかもしれない。鞍上は地元の吉村智洋騎手を確保。兵庫の剛腕と姫路制圧を目指す。
単勝2番人気(2.6倍)は地元兵庫のオマツリオトコ。JRA時代に2022年の兵庫ジュニアグランプリ(JpnⅡ・園田)で重賞初制覇を飾った。以降は全日本2歳優駿で2着、サマーチャンピオン(JpnⅢ・佐賀)も2着に入り、ダートグレード戦線で存在感を示す。昨年、兵庫に移籍すると8月に久々の勝利を挙げた。その後は園田チャレンジカップで3着、兵庫ゴールドトロフィー(JpnⅢ・園田)も3着と復調をアピール。威力のある末脚を姫路でも発揮できれば十分チャンスだ。
単勝3番人気(5.3倍)は兵庫のペースセッティング。JRA時代に挙げた勝ち鞍は2つだけだが、2023年のシンザン記念(GⅢ・中京芝1600m)で2着に入った実績がある。同年秋に初めて出走したダート戦で勝利をマークすると、オープンクラスでも安定した走りを見せていた。昨年6月に新天地の兵庫へ移っても堅実な走りを継続。一息入れた年明け初戦では鋭い末脚を繰り出して逃げ馬を捕らえた。姫路は初めてだが、調子を上げてきた素質馬の勢いは侮れない。
4番人気以降はジュゲムーン、オメガレインボーの2頭が10倍台で続く。2連勝式、3連勝式はポリゴンウェイヴ、オマツリオトコの2頭を中心に支持を集めた。
出走馬











レース

スタート

1周目スタンド前

1~2コーナー

2コーナー~向正面

向正面

3コーナー

4コーナー〜最後の直線

最後の直線①

最後の直線②

最後の直線③

ゴールイン
前日の夜から降り始めた雨は、午前11時前には止んだ。次第に天候は回復し、重賞の発走直前には晴れ間も見えてきた。ただ、雨の影響で馬場状態は「やや重」。今年の姫路シリーズでは初めて水分を含んだコースコンディションとなる。場内では野球評論家の福留孝介さんのトークショーも実施され、場内は大いに賑わった。その中でもゲート入りが円滑に進められ、兵庫ウインターカップのスタートが切られた。
飛び出しは若干バラついた。先手が予想されたポリゴンウェイヴは飛び出した直後に躓いて行き脚がつかない。さらに、ペースセッティングも発馬で脚を滑らせて、2頭とも後ろからの競馬を余儀なくされる。
波乱の幕開けとなったレースはメズメライザーが思い切ってハナを切った。その直後にはルクスメテオール、ロードミッドナイトが続く。一列後ろの好位にはジェットエンブレム、ジュゲムーン、スマイルミーシャが追走。遅れを巻き返そうとポリゴンウェイヴは中団7番手まで位置を上げる。後方は末脚に賭ける4頭。オメガレインボー、ペースセッティング、オマツリオトコ、オオイチョウの順で最初のコーナーを迎える。
淀みなく流れたまま向正面に入ると、ポリゴンウェイヴが外から位置を上げて4番手に浮上。先行勢にプレッシャーを掛ける。ペースセッティングもその動きに乗って中団まで押し上げた。後続各馬も前との差を詰めて、残り600m付近では馬群全長8馬身弱。オマツリオトコは一旦最後方に下がるも、吉原騎手が馬の癖を修正しながら追撃態勢に入る。11頭が固まった状態で3コーナーを通過した。
ポリゴンウェイヴが外から先頭に並びかけると、背後から抜群の手応えでペースセッティングが外から接近。しかし、レースを牽引してきたメズメライザー、ルクスメテオールも内で抵抗。前は4頭が横に並んだ。ジェットエンブレム、ロードミッドナイトは徐々に後退。馬混みを捌いて外に切り替えたオマツリオトコが6番手付近に上昇。インを回るオメガレインボーが直後に続き、最後の直線コースに入る。ジュゲムーンは馬群に沈み圏外に去った。
残り200mを過ぎると馬場の真ん中からペースセッティングがさらに加速。先頭に躍り出ると、後ろからオマツリオトコも伸びてきて首位争いは2頭に絞られた。メズメライザー、ルクスメテオールは一杯になって脱落。ポリゴンウェイヴも脚色が鈍り、内から伸びるオメガレインボーとの3着争いになる。
先頭を走るペースセッティングの3馬身後ろからオマツリオトコが懸命に追う。しかし、お互い長く良い脚を駆使していて中々差が詰まらない。そのままペースセッティングが先頭でゴールを駆け抜けた。前走の園田で見せた鋭い決め手を初めての姫路でも披露。外国産の良血馬が初タイトルを獲得した。
2馬身差の2着はオマツリオトコ。乗り難しい馬を初コンビの吉原騎手がうまく立て直しながら追い上げてきたが、スムーズに立ち回った勝ち馬には及ばなかった。3着争いは終始インをロスなく立ち回った10歳馬のオメガレインボーが制す。アタマ差の4着でポリゴンウェイヴ。発馬で躓いた影響で得意な形に持ち込めなかったが、掲示板は外さなかった。久々の7F戦だったスマイルミーシャは5着。ジュゲムーンは見せ場なく10着に敗れた。

◆6歳牡馬のペースセッティングは通算26戦5勝、重賞6度目の挑戦で初制覇。JRA時代にシンザン記念2着の実績がある。父はイギリス産のShowcasing。母のJet Settingは2016年のアイリッシュ1000ギニー(英国・GⅠ)の勝ち馬。
獲得タイトル
2026 兵庫ウインターカップ


◆下原理騎手は重賞102勝目。コウノトリ賞に続き今年重賞2勝目。姫路重賞Vは昨年の兵庫若駒賞(オケマル)以来。兵庫ウインターカップは初制覇。
◆田中一巧厩舎は重賞7勝目。昨年の兵庫サマークイーン賞(ヴィーリヤ)以来の重賞制覇。姫路重賞初制覇。
◆下原理騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

6歳にして初タイトルを獲得したペースセッティング。冷静な立ち回りで勝利に導いたのは下原理騎手だった。
「強かったですよ。ゲートで脚を滑らせたうえに、前を塞がれて後ろからになりましたが、折り合い重視で乗ろうと意識していました。速い馬が結構いたので、いつもより折り合っていた感じでしたね」と、インタビューでは笑みがこぼれた。
序盤は後方から3頭目で1コーナーを通過し、ポリゴンウェイヴの背中を見ながらスムーズに外へと持ち出すと、持ったままの手応えで勝負どころを迎える。
「内もゴチャつくと想定していたので、外へ出そうと思っていました。目の前にポリゴンウェイヴがいたので、様子をみながら良い雰囲気で追走できましたね。勝負どころも良い感じで上がっていけました。一息入れてどこで動くか考える余裕もありましたよ。小回りで外回しの競馬はどうかと思っていましたが、その心配は不要でした」
直線で抜け出すと、後ろからはダートグレード勝ち馬のオマツリオトコが追い上げてきたが、トップのままゴールを駆け抜けた。
「相手(オマツリオトコ)の特性を分かっていたので、それだけを気をつけていました。後ろさえ来なければいけると確信していましたよ。以前よりも直線の弾け方が良くなっていましたからね」
10月のA1A2戦(4着)後は、3ヵ月間の休養に入った。坂路施設で過ごした時間で心身ともに向上。その効果が1月の復帰初戦で結果となって表れた。今回に向けて更なるパワーアップを図って再び坂路施設へ移動。さらに良化して園田へと帰厩した。
「昨年は転入初戦は勝ったけど、以降は手応えの割にダラダラ伸びる感じでした。どうしたら走るのだろうかと考えていましたね。脚元が難しい馬とのことですが、携わっている皆さんのお陰でどんどん良くなっています。距離は短い路線の方が良いと思いますよ」
JRA時代からそういった不安を抱えながらも成績を残してきたペースセッティング。兵庫短距離路線に新たな柱が加わった。

2月11日の姫路本場入場人員は4513名。この数字は2006年以降の姫路競馬最多入場記録となった。(前記録 2023年2月23日 3938名)
「姫路競馬場にたくさんの人にお越しいただいて嬉しかったです。騎手の間でも『姫路でこんなにお客さんが入ったのは今まで見たことあったかな?』という話をしていました」
競馬場南側の駐車場も満車になるぐらいの盛況で、開門前は各入場門で長蛇の列ができていた。この日を楽しみにしていたファンが多かったというのは嬉しいことだ。実況エリアで業務していても、これまでの祝日開催よりもファンの歓声が大きく感じられた。
「中央のGⅠ場外時の姫路も場内は賑わっているかと思いますけど、姫路競馬開催中も来ていただけると嬉しいです」
現在の馬券購入はインターネット投票が主流だ。しかし、現地に大観衆が集まったあの光景は強く感銘を受ける。競馬業界に携わる関係者にとっても胸が高鳴る1日だったことだろう。今年の姫路シリーズは3月12日まで続く。ぜひ、本場で熱い声援を送っていただきたい。

総評


令和7年度の兵庫県競馬4歳以上最優秀短距離馬に選出されたエコロクラージュは、2月23日(祝月)のかきつばた記念(JpnⅢ・名古屋)に向かう。保利良平調教師によると、ここまで調整は順調に進んでいるとの事で、初のダートグレード制覇へ期待が高まる。
その他にも今回、出走枠には入れなかったスマートセプターもオープンで持ち前のスピードを発揮して結果を残している。条件戦から勝ち上がってきている新興勢力からも目が離せない。アリュールレーヴ、ウインディーパレス、べラジオガルフ、べラジオドリームも順調に行けば春以降の重賞に参戦する可能性もある。
5月4日(祝月)には春の短距離王者を決める戦い「兵庫大賞典(園田・1400m)」が予定されているだけに、今年はどの馬が兵庫のスプリント路線を牽引していくのか注目していきたい。
文:鈴木セイヤ
写真:齋藤寿一