2025 園田ジュニアカップ レポート
2025年12月31日(水)
大晦日の大一番「園田ジュニアカップ」は、来年の3歳クラシックに繋がる2歳王者決定戦。過去にロードバクシンやオオエライジンなど兵庫を代表する名馬が勝利し、過去3年の勝ち馬(スマイルミーシャ、マルカイグアス、オケマル)は翌年の兵庫優駿(兵庫ダービー)馬に輝くなど、出世レースとして知られている。
「地元デビュー馬優先出走」という条件であることから、門別から転入し重賞連勝を果たしたエイシンイワハシルは出走が叶わず、2021年から5年連続で生え抜き馬のみメンバー構成となった。

1番人気は、単勝1.9倍でリーガルタイム。
新馬戦を1.31.3の好時計で勝利したことで一躍注目を浴びる存在に。前々走の兵庫ジュベナイルカップは3角手前の不利がありながら直線追い込んでハナ差2着。前走のネクストスター園田はリベンジに燃えたが、またしてもエイシンイワハシルの後塵を拝する2着だった。天敵不在の今回、初の1700mで初タイトル奪取に闘志を燃やす。今回で重賞3連続1番人気、3度目の正直なるか。
2番人気は、単勝2.6倍でゴッドフェンサー。
新馬戦を1.31.7の好時計で勝利し、主役候補と目されていたが、キックバックを嫌がる面を見せ、これまでの重賞2戦は入着止まりと案外な結果に終わっていた。しかし、吉村騎手がレースを教えてきたことが奏功し、前走のステップアップ競走では好位馬群の中で我慢しながら抜け出すという進化した一面を見せて勝利した。今回、主戦の吉村騎手は高知遠征で不在のため、小牧騎手との初コンビでタイトルを狙う。
3番人気は、単勝9.0倍でサザンウォリアー。
11/11のアッパートライでは後続に1.7秒という大差をつける圧勝で名乗りを上げた。キックバックを嫌がったネクストスター(5着)以外は全て連対を果たしており、道中の捌き一つで主役に躍り出る可能性を秘めていると目され人気を集めた。
そのほか、1700m戦を使い続け、距離経験の豊富さが有利になると思われたシェナマックスが単勝11.1倍で4番人気。また、前走こそ崩れたが、リーガルタイムやエイシンイワハシルに肉薄する走りを見せていたアングレが12.6倍の5番人気で続いた。
6番人気以下は単勝45倍以上と上位5頭から大きく離れたオッズだった。
出走馬












レース












ゴールイン
2025年最後の日。来年のクラシック候補を一目見ようと、4725人のファンが詰めかけた園田競馬場。馬場は「良」。気温10度とこの時期らしい寒さの中、曇り空に今年最後の重賞ファンファーレが響き渡り、若駒の登竜門レースがスタートした。
ロングラスティングが半馬身ほど出負けした他はほぼ互角の飛び出し。まずは4番枠から砂を被りたくないサザンウォリアーが気合いを付けられて逃げていく。その外からリーガルタイムが2番手へ。好スタートから控えたシェナマックスが3番手で、その外から折り合いを欠きながら上がってきたパズー、一番外からアングレが並びかけて3番手集団を形成した。中団にはゼウスシルエット、ポアゾンポレスターと続き、その後方はバラバラの展開。スタンド前では、ロングラスティング、サザウキ、スターアイセーラが2馬身ずつの間隔で後方追走。ゴッドフェンサーは後方2番手となり、最後方からブライトローズ。
馬群全長15馬身ほどでゴール板前を通過。2番手のリーガルタイムが口を割りながら逃げるサザンウォリアーを突く展開となり、ペースは落ち着くことなく進んでいく。
向正面でも中団までは大きく順位は変わらなかったが、大外に出されたゴッドフェンサーが少しずつポジションを上げ、残り400m地点で3番手集団に取り付いた。
内ではシェナマックスが抵抗を見せるが、外のアングレは後退。内をロスなく立ち回るゼウスシルエットが3番手を伺いながら4コーナーを迎えた。
そして、最後の直線。逃げるサザンウォリアーになかなか並べないリーガルタイム。その外から一気にゴッドフェンサーが並び、3頭の攻防で残り100m。
ここからもうひと伸びを見せたゴッドフェンサーが食い下がるリーガルタイムをねじ伏せ優勝。3度目の挑戦で見事に重賞初制覇を果たした。
2着はリーガルタイム。これで重賞3連続2着、みたび涙を呑む結果となった。3着は逃げたサザンウォリアー、厳しい流れの中でよく踏ん張っていた。ここに最後迫ったシェナマックスが4着。ゼウスシルエットが5着。アングレは7着と2戦連続で崩れてしまった。
上位は2番人気→1番人気→3番人気の堅い決着となった。

◆ゴッドフェンサーは青森県産馬。2024年の北海道サマーセールにて1,100万円で購買されたルヴァンスレーヴ産駒の2歳牡馬。おばにエピセアローム(セントウルS、小倉2歳S優勝)がおり、その仔である2025年阪神ジュベナイルフィリーズ優勝馬スターアニスはいとこに当たる。6戦4勝で重賞初制覇となった。
獲得タイトル
2025 園田ジュニアカップ


◆小牧太騎手はJRA時代含め重賞通算113勝目(2025年3勝)。園田ジュニアカップは3勝目(1997年リッチリッチ、2001年ホクザンフィールドに続く)。
◆盛本信春厩舎は重賞通算16勝目(2025年5勝)。園田ジュニアカップは昨年のオケマルに続く連覇で2勝目。
◆小牧太騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

大晦日当日は高知遠征があり、ゴッドフェンサーに騎乗できなかった吉村智洋騎手から今回バトンを受けた小牧太騎手は、「馬が強かったんで、本当に助けられました」とまずは開口一番振り返った。
「ゲートには1番先に入った後ずっと大人しくしていたんですが、最後の馬が入ったタイミングでガタついてしまった」とのことで、吉村騎手から「ちょっとゲートの中が怪しいところがあると聞いていた」通りの所作を見せたとのことだった。

ゲートが開いた後の飛び出しは五分。しかし、全くダッシュがつかずに序盤は後方に置かれてしまった。小牧騎手の作戦か?とも思ったが、実のところゲートでアクシデントがあったとのことだ。
「トモ脚をちょっと怪我していたみたいで、最初は痛がっていたんじゃないですかね」
発走直前にゲート内でガタついた際に裂傷を負っていたとのことで、その影響でスピードに乗れなかったという。
思ったよりも後ろのポジションになってしまい「ちょっと半分諦めかけてましたね」と小牧騎手はうそぶいたが、「前がちょっとやり合ってペースが速かったので、1コーナー回る頃には、“走る馬なのでここからでも十分捉えられる”と思っていました」とチャンス到来を感じていた。
「後ろからだったので、砂を被るのはもうしょうがなかったんですが、向正面に入って、一番外まで出したら反応がすごく良かったんで、これはもう交わせると思いました。直線は余裕でしたね」

初騎乗で感じたいいところは、「やっぱりスピードですね。こんな競馬ができたらどんな競馬でもできると思う。次も乗せてくれたら乗りたいです」と吉村騎手のお手馬ではあるが、その素質に小牧騎手も惚れ込んだ。
キックバックを嫌がる面を克服させようと、吉村騎手がデビューから5戦で丹念に教え込んできたことが、大一番での素質開花につながった。

2025年、小牧太騎手は年間229勝を挙げ、2003年以来22年ぶりとなるリーディングジョッキーの座に返り咲いた。
ずっとその胸中には、可愛がっていた弟弟子・松本幸祐騎手の存在があった。松本騎手は1月に急逝。
全レース終了後の“騎手年末挨拶”で小牧騎手は、名前に触れるだけで涙がこぼれると明かしながらも、「2年前までは、まさかまた園田でジョッキーとして活躍できるとは思っていなかった。園田のファンの皆さんのおかげで復活できたと思います」と感謝を口にした。
さらに、松本騎手から生前にかけられた「絶対リーディング取れるでしょう!!」という言葉が、背中を押し続けたという。
「幸祐のために、絶対リーディングを取るんだ!」
その決意を胸に一年間、懸命に乗り続けて掴んだ栄冠。
最後は天に向けて叫んだ——「幸祐、やったぞ!!!」


SNSにも関係者の喜びの声が溢れた。
オーナーの日下幸徳氏は、レース前に「ここを勝つために2年半前から準備を始め、セリに臨み、育成して頂き、無事にデビューを迎えました。そして、今日、念願のジュニアカップ出走。ここまで、どれだけの方のお世話になったことか。本当に感謝しかありません。あとは勝つだけ」などとSNSに投稿していた。
そして、愛馬の優勝はオーナー自身の重賞初制覇をももたらした。
レース直後は、何度も関係者と喜びの言葉を交わしていた日下オーナー。
「夢のようです。本当に涙出る。関係者の皆さまと応援して頂いたすべての方に感謝します」と感激のSNS投稿も行った。
また、管理する盛本師も、「オーナーと2年前から『ジュニアカップを本気で獲りに行こう』と言い続けてきた。その想いが、ついに現実になりました」とSNSでコメントを残した。

夢が叶った瞬間――
ここまでレースでゴッドフェンサーを育ててきた吉村騎手が不在という状況で、小牧太騎手がその想いも背負って騎乗し、勝利へ導いた。
当歳から積み重ねてきた準備と関係者の願いが結実した、まさに“勝つべくして勝った”重賞初制覇だった。

総評

砂を被りたくないゴッドフェンサーにとっては最も厳しい最内枠からのスタート。
「いやー最低の枠でしたが(笑)、結果的にその枠が関係ないようなレースをしましたね。ゲートは出たのにいつの間に下がっていったから、中でゴソゴソした時に、もしかしたらちょっと脚をぶつけていたのかもしれないですね」

「やっぱり前走まで吉村騎手がキックバックを受けさせて、ずっとレースを教えてくれていましたからそれも身になってきたのかな。成長はしてくれているなと思います。オケマルくらいになれるかどうかは分かりませんが、力は十分にありますし、今日のレース見ても本当に能力は高いなと思います」
次走は現段階では未定とのことだが、中距離レースを選択したいとのことで、「兵庫若駒賞(2/26・姫路1800m)あたりになるのかな」との言葉も聞かれた。
盛本厩舎の先輩オケマルが制し三冠制覇へ弾みをつけたレースも視野に入っている。
今回は、兵庫ジュベナイルカップ、ネクストスター園田を連勝したエイシンイワハシル不在で行われた大一番だが、「距離が延びるとまた逆転も狙えると思います」と再戦を待ち望む言葉も聞かれた。
スタートが決まったゆえに2番手で折り合いを欠いてしまったリーガルタイムは、重賞で3連続2着。どこかでタイトルを取れる逸材だが、もどかしいレースが続く。
入着を果たしたサザンウォリアー、シェナマックス、ゼウスシルエットといった面々もこれからさらに力を付けていくことだろう。
今回出走できなかった重賞2勝馬エイシンイワハシル、ネクストスター園田3着のエイシンリガーズ、兵庫ダービー馬を兄に持つバウヴォーグなども2026年の重賞戦線に絡んでくるだろう。
また、牝馬路線では、リマンシテの戦線離脱は残念だが、重賞3連勝でグランダムジャパン2歳シーズンで総合3位に入ったココキュンキュン、暮れの日本軽種馬協会特別を勝ったゴーゴーツヨシが有力馬として挙げられる。
2026年、ウマ年の3歳戦線からも目が離せない。
文:三宅きみひと
写真:齋藤寿一