2026 新春賞 レポート
2026年1月3日(土)
例年は1月2〜4日の3日間開催となる園田の年始シリーズだが、今年は中央競馬が4日スタートということもあり、2、3日の2日間開催となった。新春恒例のハンデ重賞「新春賞」はいつも通りの3日に施行。園田金盃の上位2頭が不在ながら、次位の3着と復活の兆しを見せたラッキードリーム、同じ新子厩舎の新戦力、元中央のヘラルドバローズ、昨年の覇者インベルシオンと今年の兵庫中距離界の主役を狙う馬たちが顔を揃えた。
ハンデ戦ではあるが、その差は56〜57.5キロとわずか1.5キロの範囲内で実力拮抗。2026年兵庫県競馬の最初の重賞タイトル、その“一番福”を求めてフルゲート12頭が激突した。

1番人気は、単勝2.4倍でインベルシオン。
昨年のこのレースの覇者。新春賞後は白鷺賞でも3着と善戦したが、その後に球節の不安があったことと、暑い夏を避けるため10カ月の休養に入った。復帰戦となった昨年12月のA1A2特別では、序盤で位置が取り切れず、道中は折り合いも欠く厳しい展開に。しかしその状況から最終的には外から猛然と追い上げて勝ち馬とクビ差の2着まで迫り、結果として“負けて強し”を印象付けた。復帰2戦目、スムーズな競馬で連覇を目指す。
2番人気は、単勝3.7倍でヘラルドバローズ。
元中央のOP馬。その後に南関東を経由して、昨秋に兵庫へ。その転入初戦となった10月のA1A2戦は、白鷺賞馬にして、のちの園田金盃の覇者オディロンを5馬身ちぎる逃げ切り圧勝。相手は長期の休み明けだったが、こちらも転入後間もなく、陣営も手探りな中での勝利だった。その後は浦和記念(Jpn2)で古巣の中央勢に挑んで6着だったが、終始外を回るロスも響いた。前走に比べれば今回は相手関係的にチャンス十分、新天地で待望の重賞初制覇となるか。
3番人気は、単勝5.9倍でラッキードリーム。
一昨年6月の六甲盃を勝ったあと、再び南関東に移籍。結果がなかなか振るわない中で、昨年再び兵庫に帰ってきたが、ここでもかつての強さは見せられず敗戦が続いた。
陣営によれば、加齢よりも喉のポリープが影響していたとのことで、六甲盃後に喉の手術をして以降は、姫山菊花賞4着、園田金盃3着と復調を見せる。
道営三冠を含む重賞12勝馬が兵庫の中距離王者に返り咲くか、復活が期待される。
このように上位人気3頭はいずれもトップハンデの57.5キロ。中央から転入後3戦3連対、摂津盃2着のエイシンレジューム(57キロ)が単勝10.4倍で4番人気。松浦厩舎のもう1頭、園田金盃5着と重賞でも健闘続くフラフ(56キロ)が12.7倍の5番人気で続いた。
出走馬












レース












ゴールイン
年始の園田は、2日には時折雪が舞うなどこの時期らしい厳しい寒さに見舞われた。この日も冷たい風が吹きつけ、さらに9レースの頃には雨も降ったが、時を合わせるかのようにメインの頃には雨も上がり、青い空が戻ってきた。
こうなると場内のボルテージも最高潮。年末シリーズから続く大賑わい、年始シリーズの来場者数は、2日が6791名、この日3日が7372名と大変な熱気に包まれたが、その熱量が大きな歓声と拍手に変わり、今年最初のファンファーレを伴って、新春の空に響き渡った。
スタートが切られ、出遅れたのはタイキフォース。好発を決めたのはベラジオウマムスコとミグラテール、さらにヘラルドバローズなど。インベルシオンはスタートは決まったがそこからダッシュが効かず、懸命に促す廣瀬騎手。対してラッキードリームは発馬直前で動いてしまったか、出が甘く、二の脚で前へ。ヘラルドバローズが先頭に立ったところですかさずインベルシオンがハナを奪い、さらにはその内からラッキードリームも上がってこちらが結局先手を取った。
序盤から見応えのある先行争いがあり、その直後4番手グループにエイシンレジューム、テーオーターナー、ベラジオウマムスコの3頭が続き、前6頭がほぼ一団となって最初の3、4コーナー中間点へ。馬群は開いてミグラテール、フラフ、タイキフォースが中団、キングレジェンド、メイショウハクサンが後方に位置し、最後方で末に賭けるナムラタタの展開でスタンド前に入る。
序盤はやや縦長の隊列だったが、ホームストレートでラッキードリームがペースを落とし、スローペースの流れに。その外の2番手にインベルシオン、さらにその外の3番手にヘラルドバローズと、新子厩舎2頭の間にインベルシオンが入る形。人気を集めるトップハンデの3頭が後続を引き連れて1コーナーへ。
それらをインコースで見ながらエイシンレジュームが4番手、テーオーターナー、ベラジオウマムスコ、タイキフォースにミグラテール、さらにフラフと、切れ目なく中団を形成し、後ろから3番手までポジションを上げたナムラタタ、続いてキングレジェンド、最後方はメイショウハクサンに変わって向正面へ。
大きな馬順の変化はないものの、各馬が徐々にペースアップ。この間にフラフ、その背後からナムラタタが脚を伸ばし、前との差を詰めていって3コーナー坂の下り。
残り400m。半馬身差で先頭を守るラッキードリーム、追いすがるインベルシオン。
ヘラルドバローズが伸びあぐねる間に、内のエイシンレジュームが虎視眈々と前が開くのを待って3番手追走。外から上昇し、そこに加わるフラフと2馬身差で追うナムラタタが6番手で最後の直線へ。
残り200m。コーナーワークで1馬身半とリードを広げたラッキードリームが先頭をキープ、食い下がるインベルシオン。前2頭の間を割りたいエイシンレジュームは、それが叶わず、内に押しこめられる形となってインベルシオンとの2番手争い。さらにはその外から勢いよく追い込んでくるナムラタタ。
残り100m。粘るラッキードリーム、1馬身差でこれを追うエイシンレジューム、インベルシオン、ナムラタタの2番手グループ。
結局最後まで粘りに粘ったラッキードリームが1馬身1/4差を守り、逃げ切ってゴールイン。大接戦の2着争いは追い込んできたナムラタタが内のエイシンレジュームをハナ差捉えて2着。直線若干窮屈になったエイシンレジュームは惜しい3着、差がなくインベルシオン、ヘラルドバローズ、フラフが4〜6着を占めた。
逃げればしぶといラッキードリームの見事な復活V。重賞は2024年の六甲盃以来、1年7カ月ぶりの勝利となった。明け8歳も衰え知らず、“喉さえ治れば、まだまだやれる” それを完全に証明して見せた形だ。
2024年秋から南関東に所属し、昨年2025年の春に兵庫県競馬に再転入。兵庫復帰5戦目で完全復活。新子調教師と笹田騎手も師弟タッグで幸先のいいスタートを切った。

◆ラッキードリームはこれで42戦21勝。2021年の門別三冠馬。
重賞勝利は、一昨年2024年の六甲盃以来、1年7ヶ月ぶりの通算13勝目。新春賞は初制覇。
獲得タイトル
2020 サッポロクラシックカップ(門別), JBC2歳優駿 (門別 Jpn3)
2021 北斗盃(門別), 北海優駿(門別), 王冠賞(門別)
2022 姫山菊花賞, 園田金盃
2023 兵庫大賞典, イヌワシ賞(金沢), 姫山菊花賞
2024 白鷺賞, 六甲盃
2026 新春賞


◆笹田知宏騎手は重賞通算16勝目(今年初)。重賞勝利は2025年金沢の読売レディス杯(ヒメツルイチモンジ)以来。 新春賞は2勝目(2023年アキュートガール以来)。
◆新子雅司厩舎は重賞通算73勝目(今年初)。重賞勝利は2025年佐賀の鳥栖大賞(アラジンバローズ)以来。
新春賞は4勝目(2016年アクロマティック、2023年アキュートガール、2024年アラジンバローズ以来)。
新子雅司厩舎は14年連続の重賞制覇となり、自身と田中範雄厩舎の記録(13年連続重賞勝利)を塗り替え、兵庫県競馬の重賞連続勝利の新記録となった。
◆笹田知宏騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

検量に引き上げてくる時には、腕を大きく広げ、勝利の喜びを表現した笹田騎手。
勝利インタビューでは、笑顔というよりも仕事を終えた安堵感がその表情に滲み出ていた。
「若干、無理矢理ハナに行く形にはなってしまったんですけど、なんとか押し切ってくれてよかったです。できれば自分のリズムで走らせてあげたかったので、なにがなんでもという気持ちでいきました」
スタートはあまり良くなかったが、二の脚で積極的にインベルシオンから先手を奪った、あの序盤の立ち回りが勝負のポイントだったのかもしれない。

そして、そこからスタンド前に入る頃にはうまくペースダウンして、自分の流れに持ち込んだ。
「馬が賢いんでね。自分で息入れながらリズムを整えてくれてたんで、あとは自分のタイミングでスパートして、後ろに脚使わしながらなんとか残ってくれたらなという気持ちで乗りました。(後続の)足音は聞こえていましたが、ラッキードリーム自身も最後までしっかりしてくれていました」
笹田騎手は、園田金盃、姫山菊花賞に続いて3度目のラッキードリームとのコンビとなったが、この日が一番状態がよかったとのこと。そのコンディションで出走させた陣営に感謝の言葉を述べた。

「なんとか復活させたいという気持ちで僕ら頑張ってきたので、本当に結果を出せてよかったなという気持ちの方が大きいです」
“逃げれば尚強い”というイメージもあるラッキードリームだが、
「正直、僕自身としては逃げなくてもいいのかなという印象なんですけど、ただこういう小回りのコースなんで自分のリズムで走らそうと思うと、どうしても逃げという形がベストなんじゃないかとは思ってしまいますけど」と、実際はこのようなイメージのようだ。

笹田騎手自身、昨年は笠松、金沢と他地区ではタイトルを手にしていたが、地元重賞となると、姫路で行われた2023年2月の兵庫ウインターカップ(パールプレミア)以来、園田は2023年1月の新春賞(アキュートガール)まで遡る。これに触れると、
「ご無沙汰してまーす」
と、場内の笑いを誘った。

笹田騎手らしく終始、実直な受け答え。その人柄がインタビューでは滲み出ていた。
年の初めの縁起の良い重賞を制した笹田騎手の今年の飛躍に期待したい。

総評

ナムラタタに騎乗した吉村騎手は、レース後、「上がりも最速でしょうし。前半折り合ってためればこうやって脚を使えるって、今日で間違いなくそうだって分かったんで。展開待ちではあるんですけど、どこかでまた一発あるでしょう。今日も前残りの展開の中で来ていますしね」と、確かな手応えを口にしていた。

そして、新子雅司厩舎は前述の通り、14年連続の重賞制覇となり、自身と田中範雄厩舎の記録(13年連続重賞勝利)を塗り替え、兵庫県競馬の重賞連続勝利の新記録となった。
<連続重賞勝利記録> ※1990年以降
1.新子雅司 2013~2026年 14年連続(継続中) ←New!!
2.田中範雄 2007~2019年 13年連続
3.曾和直榮 1998~2009年 12年連続
4.橋本忠明 2015~2025年 11年連続(継続中)
5.橋本忠男 2008~2017年 10年連続
今年は“重賞年間15勝”を目標にしている新子厩舎、更なる高みへ、今年も目が離せない。
文:木村寿伸
写真:齋藤寿一