2026 コウノトリ賞 レポート
2026年1月15日(木)
兵庫所属4歳以上牝馬限定の重賞に生まれ変わって3年目となる「コウノトリ賞」。この先のグランダムジャパンや、春の兵庫女王盃(Jpn3)へ名乗りを挙げるのはどの馬になるのか?重賞常連馬に条件戦から着実に力をつけてきたメンバーもいて、兵庫牝馬路線の今後を占う重要な一戦だ。
※11番のメリッササンライズは鴨宮祥行騎手から新庄海誠騎手に騎乗変更となった。

単勝1番人気(2.6倍)は重賞初挑戦のスマートアンバー。
兵庫転入初戦となった前走のA1戦は主導権を握ると、勝負どころから徐々に加速。後続に5馬身差をつける圧勝で2年ぶりの勝利となった。JRA時代は短距離中心に起用され、ダート1400mで3勝を挙げている。中距離戦は2022年の新馬戦(阪神ダ1800m)以来。距離対応と折り合いに不安のある馬を下原騎手がどう操るのか見物だ。
2番人気(単勝2.9倍)はヴィーリヤ。
昨年の兵庫サマークイーン賞は2番手追走から抜け出しての勝利。格上挑戦、初の重賞出走でタイトルを獲得した。摂津盃は7着に敗れたが、前走のA1A2戦は好位から早めに抜け出しての快勝。本来の走りができれば最上級でも戦えることを示した。今回は4カ月半ぶりの実戦となるが、兵庫転入後9戦8勝とまだ底を見せていない5歳馬だ。
連覇を目指すラヴィアンは単勝3番人気(3.7倍)。
昨年のコウノトリ賞を勝って初重賞制覇を飾ると、その後は牝馬重賞を中心に起用された。高知、名古屋、金沢にも遠征して、各地の強豪と戦ってきた経験は強みとなる。前走のA2戦は向正面から発進すると、捲り切って後続馬の追い上げを封じた。発馬に不安は残るが、確実なひと脚で連覇を目指す。
以降は上がり馬のモンゲーギフト、2年前の勝ち馬で復活が待たれるスマイルミーシャの順で人気が続いた。
出走馬











レース












ゴールイン
コウノトリ賞当日は、お昼ごろから薄い雲が広がり始めた。最高気温は12℃前後だったものの、無風で1月にしては比較的過ごしやすい気候だ。馬場状態「良」で大一番の発走を迎える。
スムーズな枠入りでゲートが開かれた。デンタルフロスとグランコスメの2頭が出遅れたが、他の9頭は良い飛び出しを見せる。スマイルミーシャ、ラヴィアンもまずまずのスタートを切った。まずは、内から二の脚の速いスマートアンバーが出てくる。外からハナを狙う馬はなく、そのまま主導権を握ることになった。少し気合いを入れたキミノハートが2番手の外につけて1周目の3コーナーを通過する。3番手は併走で内にモンゲーギフト、外にアキュートガールが追走。直後はインからスマイルミーシャ、マダムホーク、ヴィーリヤの3頭が並ぶ。差のない8番手にはメリッササンライズ、連覇を目指すラヴィアンは9番手で待機。出遅れたグランコスメ、デンタルフロスが後方で続き、最初のスタンド前へ向かう。
逃げるスマートアンバーは多少力む面を見せるが、うまくペースを落として自分のペースで駆け抜ける。後続から競りかけてくる馬はなく、隊列に目立った変化がないまま1コーナーへと進入した。
先頭で2コーナーを通過したスマートアンバーはリズムを崩すことなく向正面に入る。逃げ馬の絶妙なペース配分に後続馬は動きたくても動けない状況だ。追いかけるキミノハートは余力がなく、追走がやっとという感じに見える。スマイルミーシャ、ヴィーリヤの2頭は騎手が促しているものの反応は一息。後方にいたラヴィアンは残り800m付近から進出を開始。ポジションを押し上げていくが、スマートアンバーの背中は遠かった。
レースを支配したスマートアンバーは勝負どころでも手応えは抜群。4コーナー付近で追われると、さらに加速して後続との差を広げる。力強い走りを継続したまま先頭でゴールを駆け抜けた。2着馬に5馬身差をつける快勝で重賞初挑戦初制覇。レース後に落鉄が判明したが、その影響を感じさせない強さだった。
連覇を目指したラヴィアンは、勝負どころから外を回る形となったが、長く良い脚を使って2着を確保。ペースが落ち着いたのは誤算だったが、上がり最速の脚を繰り出して意地をみせた。3着は終始インをロスなく立ち回ったモンゲーギフト。久々の中距離戦だったが、自己条件戦で見せていた器用な走りを披露した。4着はアキュートガール、5着にマダムホークが入った。
勝負どころで遅れをとったスマイルミーシャは6着、ヴィーリヤは7着。直線で力尽きたキミノハートは8着に敗れた。
並み居る重賞ホースに何もさせなかったスマートアンバーが冬の女王に輝いた。園田に芦毛のニューヒロインが誕生した瞬間だ。

◆6歳牝馬のスマートアンバーは重賞初挑戦で初制覇。父はシニスターミニスター、母はスマートサクソン、母父はドリームジャーニーという血統の元JRA3勝馬。
これで通算成績を15勝5勝とし、兵庫移籍後は2戦2勝となった。
獲得タイトル
2026 コウノトリ賞


◆下原理騎手は重賞通算101勝目。コウノトリ賞初制覇。
◆永島太郎厩舎は開業7年目で嬉しい重賞初制覇。
◆下原理騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

永島太郎調教師に初重賞制覇をプレゼントしたのは下原理騎手だった。騎手として数々の名勝負を演じてきた2人がタッグを組んで悲願のタイトルを掴んだ。
「僕がどこかで重賞初勝利をプレゼントしたいなという気持ちがあったので、すごく嬉しいです。有力馬に多く乗せていただけているので、良い恩返しができましたね」と、笑顔がはじけた。
コンビを組んだスマートアンバーはJRA時代はダートの短距離を主戦場としていた馬で新馬戦以来の中距離だった。
「折り合い面を考えたら行くのがベストかなと思いました。先生からも『行けたら行ってくれ』とのことだったので、思い切っていきました。初の1870m戦でしたし、園田の1周半というのは特有の流れになるので、馬がそれに耐えてくれるかが今日の課題でした」
短い距離向きの血統、体型でJRA時代は集中力に課題があった。乗り越えなければいけない問題がある中での重賞出走だったが、その不安を一掃する強い内容だった。
「道中で少し力む面もありましたが、それをカバーするぐらいの能力がありました。厩舎スタッフの皆さんがしっかり仕上げてくれて、良い結果に繋がりましたね」
今後に向けて重要な一戦だったが、距離も克服してレース選択の幅が広がった。
「牝馬の割には力む面が少ない所が強みですかね。牝馬の重賞路線に向かっていけたら嬉しいですね」と、大舞台で能力を発揮した相棒を評価した。
母のスマートサクソンは2017年に園田で2勝を挙げているが、そのときの鞍上も下原理騎手だった。母子の背中を知る名手の手腕が光った一戦だったといっても過言ではない。

「今年はいつ最初の重賞を勝てるかな?と思っていました。早い時期に勝てたので、今後は気楽に乗っていけそうですね」
下原理騎手は重賞101勝目。1月中旬に今年最初の重賞勝ちを決めた。2025年はオケマルと共に無敗の兵庫クラシック三冠を達成。三冠を決めた園田オータムトロフィーでは自身の重賞100勝も決めて、記憶にも記録にも残る1年となった。
数々の有力馬に跨る下原騎手にまた1頭、楽しみな牝馬が出現。2020年には年間重賞11勝を挙げた実績があるだけに、2026年も『馬上の魔術師』から目が離せない。

開業7年目の永島太郎厩舎は、嬉しい重賞初制覇。騎手時代に地方通算2043勝を挙げたゴールデンジョッキーだ。重賞通算は21勝。グランプリレース「園田金盃」で6勝するなど、名手が揃う兵庫にて第一線で活躍を続けた。コウノトリ賞は騎手時代に第1回(2008年)をディアースパークルで勝っていて、騎手と調教師の両方で制覇したことになる。
「理想通りのレースで強かったです。4コーナー手前でのゴーサインに反応していたので、大丈夫かなと思いました。チャンスがある馬を多く管理していましたが、まず1つ勝てて良かったです」と、ホッとした表情だった。
直近3年は年間60勝台でまとめ、さらに上位進出をうかがう注目厩舎だ。
競馬学校の同期で元騎手の松浦政宏厩務員が開業当初から在籍。現役時代に地方通算1216勝、重賞15勝を挙げた名手が厩舎を支えている。
「松浦厩務員が集中力を保つための工夫を調教でしてくれました。いろいろな事を考えて馬が喜んでハミを取るような教育が今回の結果に繋がりましたね」
気心知れた仲間と共に、まず重賞制覇という壁を乗り越えた。この勝利をきっかけにさらなる飛躍を期待したい。

総評


3着のモンゲーギフトはA2格付けの身で意欲の重賞挑戦だった。それでも条件戦で経験を積みながら力をつけてきた成果を久々の中距離戦でも発揮。この戦いぶりならこの先の重賞路線にも期待が持てる。
実績馬のアキュートガール、スマイルミーシャ、ヴィーリヤ、キミノハートもこのまま黙っているわけにはいかないだろう。本来の走りができれば、まだまだ重賞を獲れる逸材だけに巻き返しに期待したい。
2月以降は牝馬限定の重賞レースが各地で組まれている。春には園田で兵庫女王盃(Jpn3)も行われるだけに、兵庫勢が活躍する姿をみたいところだ。
文:鈴木セイヤ
写真:齋藤寿一