2026 兵庫ユースカップ レポート
2026年2月19日(木)
今シーズンは8週間の編成で開催される姫路競馬場は、今週から後半戦の5週目を迎え第3回開催がスタートした。ときおり冷たい突風が吹き荒れる時間帯もあったが概ね過ごしやすい穏やかな気候でレースが進んだ。天候晴、馬場状態は良で第18回兵庫ユースカップが行われた。今年は高知からの遠征馬が1頭、地元馬11頭の当初12頭の組合せになったが9番のスターアイセーラが出走取消、11頭立てとなり施行された。

戦前から記者の本命馬がバラバラで混戦の様相を呈する中、1番人気は出走メンバー中唯一の重賞勝ち馬、高知のトサノシュジンコウ(単勝3.3倍)となった。昨年末に金の鞍賞を勝ち、年明けの特別戦(2着)を叩いての参戦、工藤真司厩舎と多田羅誠也騎手のコンビで姫路といえば昨年ドライブアウェイ(兵庫クイーンセレクション)の圧勝が記憶に新しい。
2番人気(単勝3.6倍)はべラジオソニック。門別で2勝を挙げ兵庫県競馬に移籍。除外を挟んで3戦2勝の成績。とりわけ前哨戦の特別戦(食べようひょうごの畜産物賞)は、1番枠から馬群を縫いつつ外に出して突き抜けるという姫路適性も示しながらの勝利だった。今日も自慢の末脚を繰り出すか。
ミルトイブニングが3番人気(単勝5.2倍)に推された。2歳時に2勝してからチャレンジした2つの重賞(兵庫ジュベナイルカップ・ネクストスター園田)ではともに6着に敗れたが、一般戦の前走では好位からの抜け出しで快勝。一味違うレースぶりを見せた。その後はこのレースに向けて坂路施設で調整を図り、改めての重賞挑戦となった。
差のない4番人気(単勝5.5倍)がアングレ。評判馬ながらなかなか結果が出せずにいるが今回は大外枠に入りリベンジのチャンスを窺う。そしてバウチェイサーの全弟ながら管理する新子雅司調教師が「兄とはまったく似ていない」「タイプが全然違うので1400mに狙いを定めました」と語るバウヴォーグが5番人気(単勝5.6倍)となった。単勝10倍以下に5頭がひしめき、エーデルリッター、ゴーゴーツヨシなど伏兵陣も虎視眈々。混戦ムード漂う一戦となった。
出走馬











レース












ゴールイン
姫路で今年3回目の重賞ファンファーレが響いた。ゲートに不安を抱える馬もいる中、順調にゲート入りが進行、大外枠のアングレが最後に収まってゲートが開く。
ゴーゴーツヨシがもっさりとした飛び出しとなり後方からとなった。まずダッシュを利かせて飛び出したのがヤクモドリーム。ハナは譲らんとする姿勢を見せて先行する。バウヴォーグが早め2番手追走、今日は首を上げて鞍上とケンカするような形にはなっていなさそうだ。3番手外にシャークリュウセイがつけて1コーナーへ進入していく。4番手インコースに入ったのがエーデルリッター、その外にいるのが高知のトサノシュジンコウでちょうど真ん中くらいのポジションにべラジオソニックが入った。中団の後ろにポアゾンポレスターとアングレ。後ろから3頭目にパズー。そしてミルトイブニングは最後方の内にいて外側にやや出遅れたゴーゴーツヨシという隊列となった。馬群全長は15馬身程度で2コーナーへと入っていく。
出走11頭のうち2頭だけ出走してきた牝馬が先頭と最後方にいるという展開で向正面に立ち上がる。先行集団の後ろで流れに乗るトサノシュジンコウは、ジョッキーが若干促しつつの追走となる。べラジオソニックは前走ほど後ろの位置にはならず、中団のインで手応えを感じさせながらギアを上げにかかる。中団の後ろにいるアングレは早くもムチが入る苦しい展開となった。そして後方集団の大外からゴーゴーツヨシが早くも動きを見せる。後方集団の内でじっとしているミルトイブニングも少しずつポジションを上げたいところ。
3コーナーに入ったところでヤクモドリームが後退。バウヴォーグとシャークリュウセイの5枠2頭が抜け出しかけたところに、最後方から一気に行ったゴーゴーツヨシがまくり切って先頭に躍り出る。レースが動いたことで、これに呼応してトサノシュジンコウも促して前方へ。その内にいるべラジオソニックは手応えに余裕がありそうだ。その後方からはエーデルリッター、パズー、ミルトイブニングが差を詰めて4コーナーから直線勝負へと向かう。
直線に向くところで接触でもあったのか、べラジオソニックが一瞬バランスを崩すようなシーンがある。しかし田野騎手の叱咤激励は続き、馬もしっかり伸びてきた。この馬の外にいた高知トサノシュジンコウと2頭で抜け出す勢いだ。ゴーゴーツヨシは脚をなくし後退。最内で踏ん張っていたバウヴォーグも劣勢となる中、後方で息を潜めていたミルトイブニングが外に出して追い込んでくる。
残り150mを切ってからはべラジオソニックとトサノシュジンコウによるマッチレースとなった。内がべラジオソニック、外がトサノシュジンコウ。競り合いは続いたが、内のべラジオソニックの勝負根性が勝った。トサノシュジンコウをわずかに退けて栄光のゴールを通過した。
勝ち時計は1分33秒0(良)。田野豊三騎手は昨年の兵庫ユースカップではクビ差で涙をのんだが、今年はクビ差で重賞勝利のゴールテープを切った。
高知からの遠征馬トサノシュジンコウは惜しくも2着。結果的にはゴーゴーツヨシが動いたことで早めに進出せざるを得ない形となったのが最後に響いたのかもしれない。
後方から鋭い脚で追い込んできたミルトイブニングが3着を確保した。ここまでは後ろからの競馬では持ち味が生きないようなレースも見られていたが、ここにきて成長した姿を見せ、レースぶりに一段の進境を示す結果となった。
早め先頭に立つ形となったバウヴォーグが4着、大外から追い上げたパズーが5着、アングレは道中早々と手が動き争覇圏内からは脱落し9着に終わった。
勝ったべラジオソニックはこれで除外明けから3連勝で初重賞制覇を果たした。これまでは鋭い末脚を生かしての差し切りというイメージだったが、今日は好位の後ろで脚をためて直線は勝負根性を見せて他馬を振り切るという味な競馬を見せてくれた。
勝ち時計の1分33秒0は単純比較だが前週の古馬重賞兵庫ウインターカップのタイムが1分32秒4(やや重)であったことを考えれば優秀な部類と言えるのではないだろうか。

◆べラジオソニックは、ロゴタイプ産駒の3歳牡馬。重賞初挑戦初勝利となった。
デビューの地、門別で2勝。兵庫にきてからは移籍初戦の1700m戦3着のあと1400mに距離を変えてから3連勝で4戦3勝。通算成績を9戦5勝とした。
獲得タイトル
2026 兵庫ユースカップ


◆田野豊三騎手は重賞5勝目。昨年の西日本3歳優駿(高知)以来の重賞勝利。昨年はキミノハートとラピドフィオーレで重賞3勝、今年も2月で幸先よく重賞勝利を決めた。姫路での重賞は初制覇となった。
◆園田・諏訪貴正厩舎も重賞5勝目。マミエミモモタローで制した2023年ネクストスター園田以来、2年4ヶ月ぶりの重賞勝利となった。姫路重賞は初制覇。
◆田野豊三騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

「実は4コーナーでアクシデントがあって競走中止になるかなという感覚があった」と驚きの弁が出た田野豊三騎手。
4コーナーから直線に出るあたりのところでたしかにバランスを崩したところが見受けられた。多少の接触はあったのかもしれないが、改めてそのシーンを見るとたしかにヒヤッとさせられる。しかし後から聞いた話を紐解いていくと、どうやらそのタイミングで落鉄をしていたということのようだ。
田野騎手も「大丈夫そうだったのでがんばってもらいました。負けず嫌いのところが出てくれて高知の馬が来るぶん行く感じでした」と語っている。
今回は主戦の杉浦健太騎手が、笠松で行われた重賞(ブルーリボンマイルでヴィーリヤに騎乗)に遠征するため、田野豊三騎手が代打騎乗。追い切りで初めてべラジオソニックとコンタクトを取り、手応えを感じていた。
「いつもは杉浦くんがずっと調教してくれているので安心して競馬に挑めました。そんなに後ろになりたくはないという感じではあったが、ゲートをしっかり出てくれたので良いポジションがとれました。自分としては距離はもつと思いますよ。むしろ長ければ長いほどいいのではないかという感覚です」

破顔一笑の諏訪貴正調教師は「本当に田野ちゃんがあいていてよかったよ~!ありがとう!」と殊勲の田野豊三騎手に感謝しきりの様子だった。
諏訪調教師と馬主のべラジオコーポレーション株式会社のチームでは、べラジオドリームが自己条件の一般戦では勝利を重ねる中、重賞ではあと一息という悔しいレースが続いていたが、このべラジオソニックの快勝劇によって重賞勝利の美酒を味わうことができた。
勝利の記念撮影、いわゆる口取り写真の際にべラジオドリームの担当厩務員である今井さんが馬を迎えに来てくれていた。べラジオソニック担当厩務員の上野さんが表彰式に出席できることを信じて、待機してくれていたのである。まさにチーム一丸となっての嬉しい重賞制覇となった。

高知からはるばる播州へやってきたトサノシュジンコウの多田羅誠也騎手は、激流に変わった3コーナーからの動きが大きな鍵になっていたようで「理想的な流れでポジションもイメージ通り。だけど3コーナーでまくられて、本当はもうワンテンポ追い出しを我慢したかったけど、そのままだと勝ち馬にもいかれちゃう雰囲気だったから外に出して早めに動いた。直線最後はもう一度伸びてくれてはいたんだけど、勝ち馬の脚が上だった」と悔やんだ。
後方一気で3着まで上がったミルトイブニングの小牧太騎手は「今回はレースでもパシュファイヤーをつけた。それが影響しているのか前に行けなかったので開き直って後方から運ぶ形にはなったけど、直線なかばくらいではいけると思ったよ」とプランと違う形になりながら追い上げてきた脚には収穫があった様子だった。さらに上積みがあるようなら今年の3歳王道路線の中核を担う存在になっていく可能性もありそうだ。

バウヴォーグ(4着)の笹田騎手は「とにかくレース前からテンションが高い。レースではよく頑張ってくれているけどペースが流れている中で前半からつつかれて、後ろからもまくられて厳しかった」と語った。
パズー(5着)の廣瀬航騎手は「レースが流れてくれて展開が向いたのでこれは!と思いましたよ。最後まで脚を使ってくれているし、感触としては中距離よりも1400mぐらいが合っているように思えます」と話してくれた。
アングレ(9着)を管理する盛本信春調教師は「今回初めてレースでつけたブリンカーは逆効果だったかもしれない。追い切りではすごく動きが良かっただけに残念。なかなか難しいですね」とのことであった。

総評

どの路線を目標にするのか諏訪調教師に質問を向けたところ、田野騎手の勝利談にあった「距離は伸びれば伸びるほどいい」に背中を強く押されたこともあるのだろう。
「次は菊水賞へ行きます!」そう力強く宣言した。
鞍上に関しては、「普段から調教をつけてくれている杉浦健太騎手に戻す予定です。
今回は笠松への遠征でべラジオソニックへの騎乗が叶わなかった杉浦健太騎手も、陣営からの心意気を感じていることだろう。
杉浦騎手に手綱が戻るベラジオソニックのクラシック戦線での活躍に期待したい。

今年は果たして…まずは兎にも角にもべラジオソニック。
2026年春のクラシック戦線、勢いに乗る“金髪イケメン”から目が離せない。
文:井関 隼
写真:齋藤寿一